◆ 社会参加事業 ◆

「アクアラインで房総の海へ行こう」

参加者、藤川氏の寄稿



海ほたるは健康的だった

藤川景(52歳男性、C5)

 「9月になったら海ほたるに行きませんか」と日本せきずい基金の藤木さんから電話がかかってきたのは、まだ夏が来る前だった。9月になったらというのは、夏に弱い頸損のことをおもんぱかってのことだろう。ハンディキャブを出してくれるという。ただでさえ出不精な重度障害者は、外出となればリフトつきタクシーをチャーターしなければならず、これが何万円もかかるので遠出はむつかしい。

 「あまり外へ出ないひとがいたら誘ってください」といわれて思い浮かんだのは、国リハに入院中に相部屋だった友寄(ともよせ)さんだ。退院してから3年間部屋から一歩も出なかったというひとだから、十分資格があるだろう。1988年に別れて以来、13年ぶりの再会になる。

 2001年9月13日(木)朝、自宅で友寄勝明・真由美夫妻を待っていると、保育園に行こうとしていた孫娘(4歳)がいっしょに行きたいと言いだした。

 東京都脊髄損傷者協会の森上登さん(39歳男性)運転のハンディキャブでやってきた友寄夫妻は、私を「ジーちゃん」と呼ぶ女の子を見てびっくりし、笑っていた。いつの間にというわけだ。13年もたてばいろいろ変わる。

 ヘルパー(60代女性)とともに乗車、先に乗り込んでいた友寄さん(C5、43歳、自走式車椅子)の後頭部に向かって挨拶、車は出発した。

 うちのヘルパーさんは昔観光バスに乗っていたひとで、道中なにかとガイドしてくれるのだが、あいにく私の位置からはほとんど道路しか見えない。それだけにホテルニューオータニが見えたときはうれしかった。「こら水増しホテル、税金返せ」と大いに毒づく。

 約2時間で海ほたる3階の駐車場に到着。4階5階が飲食店やみやげもの店などの商店街になっている。とりあえず持参の脚立を車椅子の前に立て、その上に頭を乗せるかたちで前のめりし、背中を休める。背中に圧痛があるので長時間の外出にはこの脚立が欠かせない。前のめりしないと頭から顔から冷や汗が吹き出てくる。この痛みさえなければ一人でどこへでも出かけてしまうのだが……。

 体を起こしてビール。とりあえずビール、何はなくともビール。曇天の海をながめながら飲んでいるところへせきずい基金の白井さん(22歳男性、自走式車椅子)到着。ビールをすすめたが、車を運転してきたという。損傷レベルは「C6のB3」とのこと。B3は三頭筋が使えるという意味だそうだ。初めて聞いた。

 和食レストランつばきに入って昼食。ここで意外なことを発見した。海に来たのだ。サザエの壺焼きか何かをつまみながら生ビールをぐぐっとやりたいと思うのは人情だろう。ところが置いてない。高速道路の休憩所だからアルコールのサービスはしないのだそうだ。えらい! 高速道路を走る機会なんかめったにないから気づかなかったが、日本の道路行政は道徳的になっていたのだ。すばらしい! しょうがないから持参の缶ビールを飲んだ。

 海ほたるの中を一巡り。バリアフリーと言っていいだろう。車椅子のひともたくさん見かけた。みやげもの店にも入れそうだったが、狭い通路を縫うように走るのが面倒で入らなかった。ひとつだけ閑散とした無料休憩所に入った。昔の海女さんたちの写真パネルが並んでいる。健康的なオッパイがたくさん見られてうれしかった。