会報9号 ページ5

電話相談「せきずい110番」実施報告書

  (平成12年度日本財団助成事業) 2001年1月31日

特定非営利活動法人 日本せきずい基金

【はじめに】 脊髄損傷は様々な後遺障害をもたらす疾患であり、長期の医療的フォローアップが必要とされるが、その体制は充分ではない。この電話相談は、リハビリ、介護、医療・福祉制度、排泄などの問題に当時者が相談に乗る中で、相談者がそれぞれの生活課題を解決する契機となることを目的に実施した。その内容を集約し、脊髄損傷者の抱えている問題点をここに明かにする。

  さらにこの電話相談で寄せられた脊髄損傷者の<痛み>の問題について考察し、疼痛管理法の向上をめざす「痛みに関する情報ネットワーク」の設立を提言する。


I. 概 況

*実施期間  2000年9月17日〜11月19日までの毎週日曜日(12時〜T6時)、計10日間開催。

*相談件数  総数 95件(表1参照)

*広報体制  記者会見を開催、その内容が読売新聞、日本経済新聞、東京新聞に掲載された。

ポスターを1万部作成し郵送、医療・福祉機関へ掲示を依頼した。

機関紙「日本せきずい基金ニュース」第7号(8月)、第8号(10月、各1万部)において広報するとともに、ホームページに掲載した。

*実施体制  横浜市内にスペースを確保し、電話機・ファックスを設置、当事者及びボランティアがペアとなって相談に当った。


  電話相談は気安く相談できる半面、正確に情報を聞き取りアドバイスするには限界があり、相談者の多くは当事者との話し合いの中で自分なりの方途に気付いて行く傾向がある。

  電話相談してきた問題当事者の年代は60代以上が4割を占め、近年の脊髄損傷における高齢者の増加を裏付けるものとなった(表2)。主たる相談内容としては、医療関係が41%を占め、排泄の問題、生きがいや人間関係の問題がこれに続いた(表3)。それらの問題点へのコメントは各項に記し、この事業の実施によって明らかになった課題を以下に列挙する。


・ 電話相談の定期化・常設化:Eメールも含め、相談に対応できるスタッフ、場の確保、専門家の協力体制が不可欠である。

・ ピアサポート体制の育成:脊損病床を持つ医療機関におけるピアサポートの実施、同世代・同性のピアグループの育成が社会復帰への大きな力となる。

・ 標準的な「脊髄損傷セルフケアマニュアル」の作成とその頒布。

・ 脊髄損傷のリハビリテーションの充実:スタッフの充実には診療報酬アップが必要である。

・ 脊髄情報センターの設立:難病情報センターが設立されているように、脊髄損傷に関するデータバンクの設立が求められている。

  これらの問題は政策的に解決すべき課題もあり、日本せきずい基金だけではなく、多くの当事者団体や専門学会などとの協働の中で取組んで行くべきものであろう。




II. 電話相談総括表

【表1】 相談件数(内訳)
実施日 9/17 9/24 10/1 10/8 10/15 10/22 10/29 11/5 11/12 11/19
件 数  19  10  11  9  5  6  10  10  9  6 95


【表2】 問題当事者の年齢(判明分)
年 代 〜19歳 20代 30代 40代 50代 60代 70代以上
構成比(%)  7.7 11.5 15.4 5.8 19.2 21.2 19.2 %


【表3】 主たる相談内容
医 療 * 39件(41%)   .   性関連 4件
排 泄   11 . 法律相談 4
人間関係   9 . 仕 事 4
生活全般   6 . 年 金 3
健康一般   4 . その他 11    合計:95件

* 医療関係では、痛みに間するもの:10件
   治療法:5件、リハビリ関係:3件


【表4】 原疾患(判明分:64 件)
脊 髄 損 傷 :38 名(C 1,2 ;1 名、C 3-8 :18 名、 T1-12 ;13 名、
 部位不明;6 名)
脊髄小脳変性症 :4 名、小児麻痺:3 名
以下、各1名 :脊柱管狭窄症、頚部圧迫、脳挫傷、脊髄虚血、脳梗塞、
 脊髄空洞症、頚椎狭窄症、二分脊椎、大腿骨骨折
そ の 他 :10 名


【表5】 受傷(発症後)の期間(判明分:51 件)
期 間 3ヵ月未満 1年未満 5年未満 10年未満 20年未満 20年以上
人 数   6   8   23   6   2   6


【表6】 電話相談を何で知ったか   (判明分  N=29)
新聞の催事欄 13名(43%)
病院等のポスター  9 (30%)
インターネット  5 (17%)
そ の 他  2 (10%)


【表7】 相談者の性別
男 性  43名   (45%)
女 性  52名   (55%)
 計  95名   




III. 主な相談事例

1】「痛み」について…………………………

▼コメント:脊髄損傷では痛みの緩和は困難なことが多い。それは、痛点の刺激による痛みではなく、知覚異常による神経刺激を脳が痛みとして認識する場合があるからであり、適切な疼痛管理をすることができにくい。

  高齢化などによりヘルニアが脊椎を圧迫している場合は、牽引や温熱療法、服薬などにより原因を解消すれば痛みは消失することができる。

  相談者はほとんど高齢期の女性であり、老化による骨密度の低下や筋力の低下により脊椎を圧迫し、ヘルニアが神経を刺激、それが痛みとなって現われてくる。

  痛みの強度は測定できないため、医療の現場では患者の訴えがなかなか理解されず、それが医師不信を招くという悪循環も見うけられる。主治医との話し合いによる医療的管理と生活療法の組み合わせで緩和しているのが現状といえよう。  


◆事例1 70歳、女性 

  10年前、J大学病院で脊柱管狭窄症で手術したが、後遺症で癒着した。痛みがあるが医師に分かってもらえない。手術後の処置が悪かったのではないか。再手術はできないか。週1、2回、水泳はできる。

<対応> 痛みの除去は難しく、どこの病院へいけば治るというものではない。水泳など、できることを楽しみ気分転換をしてみることを勧める。


◆事例2 65歳、男性 

  20年前に受傷(腰髄 L2-4)し、関西のO厚生年金病院(形成外科)で治療、その後、漢方医院も受診。リウマチがある。触れたところが痛んだり、全身に痛みを伴うことがある。覚醒時によろけて当たることがあり、1回目は全身打撲、2回目は延髄下部と脊髄の境目、3回目は昨年2月で全身打撲がある。

<対応> リウマチもあり再受診を勧める。


◆事例3 脊髄損傷者(C5)の担当看護婦からの相談

  患者の痛みやしびれがひどいが、どのような医学的アプローチがあるか。

<対応> 医学的問題は主治医に相談を。基金としては、同じ痛みをもつ人を紹介している。


◆事例4 70歳 女性

  交通事故により3級の障害者手帳交付。現在、75歳の夫と2人暮らし。先天的に頚部の痛みがあり、首の付け根が痛かった。交通事故後、両肩、左足、背中が痛む。医師から薬をもらっているが痛みがとれず、T共済病院の主治医にレントゲン撮影をしてもらったが、異常はないと言われた。痛みを収めるためどんな体位をとればよいか。

<対応> 後日、体位などについて連絡した。


◆事例5 71歳 女性 

  2年前に交通事故により胸椎の圧迫骨折(T11)。受傷時、外科で打撲と言われ1ヶ月間は点滴と飲み薬。痛みが止まらずリハビリに通うが効果が無く、背中の痛みが激しくなったため、半年後に千代田区の共済病院を受診した。「手術しなければ治らない」と言われたが、娘さんの大手術がうまくいかなかったので躊躇している。最近は足元もふらつき台所仕事にも不便を感じ始めた。
  娘さんが病気なので自分はこの時期に入院したくないが、痛みをなくす手術が必要か。放っておいたら悪くなるか。

<対応> 主治医とよく話し合うよう勧める。


◆事例6 76歳 女性 

  5年前に突然の胸椎圧迫骨折(T3?)で、背中の骨がでっぱってしまっている。接骨院で低周波治療を受けているが朝晩、痛むがどうしたらよいか。

<対応> 老化によるものと思われるので鎮痛剤の処方も含め整形外科への受診を勧める。


◆事例7 77歳 女性  

  1年前に転落事故により脊髄損傷(C3,4)。夫と2人暮らしで、近くに娘がいる。週4回訪問リハ、週3回ヘルパーと訪問看護を受けている。室内ではよつんばいで移動ができる。
  首にヘルニアがあり5月に国立病院で手術した。リハビリで歩けるようになったが、手術後しびれがひどく、灼熱痛がありMRIを撮った。市立病院に転院後退院した。痛みは大量の注射をしなければなくならず、主治医は他に異常がないという。ガスがよく溜まるが下剤が効かない。胸のつかえで食欲もない。死にたいほど痛いのに看護婦も娘も分かってくれない。

<対応> じっくりと共感的に話しを聞くことで、ある程度納得される。


◆事例8 61歳 女性 

  生後T年半で小児麻痺により左足に麻痺が残ったが杖歩行が可能。27歳時に左足の固定術。2年前に調整をした靴を履いて見たが両足の長さに4センチの差があるため、左肩から肩甲骨、背中や足まで痛みがあり、頭痛もしてやめてしまった。
  病院では、骨量を測定し、「この状態では歩いているのが不思議」と言われ、治療してもらえなかった。脊損用ベッドができた病院に問合せたが軽症なので入院は無理といわれた。痛みを緩和してくれるような病院はどこかないか。

<対応> 調査し後日、自宅に近い病院を紹介した。


◆事例9 36歳 男性 

  椎間板ヘルニアの手術の半年後、交通事故。事故当時は全身のしびれがあり、首の痛みはブロック注射しても効かなかった。2年後の現在、頭や舌、顔面までしびれがきて、首から背骨までの痛みが強い。C4−6の椎間板が圧迫、背骨自体のずれもあるようだが、厚生年金病院では手術しても痛みは取れないと言われた。
  地元の整形外科でも治療法がないと言われている。リハビリをすると首に痛みと発熱があり、リハビリをストップしている。痛みをとる方法は。

<対応> 口の中や舌のしびれは脊損では考えにくいこと。痛みがあっても日常生活を送れるようであれば、手術をしないこともあること。痛みには他の要因も考えられるので、脳神経系を含めた総合的診断を受けるよう助言。




【2】治療法に関して……………………………

▼コメント:電話相談において、主治医以上の判断をすることは一般的に困難である。手術による副作用が疑われる場合は、他の医療機関を受診してみるしか手立てがない。病状の変化や見とおしに関しては当事者の経験が意味をなすが、C型肝炎に有効とされるインターフェロン療法の副作用や腫瘍マーカーの値などについては医療機関への相談を勧めることが基本となる。

  脊髄小脳変性症は神経路の変性を主体とする原因不明の変性疾患の総称であり、完治できる治療法や病気の進行を止める方法はなく、タイプにより治療法も異なるため専門医療機関での治療が基本となる。

◆事例10 63歳 男性     

  4年前に転倒し首を打って手術。それ以来、足のもつれがあり、腕もやっと右手を広げられる程度で、左手の小指側3本は感覚がない。手術をしたので進行しないといわれたが、しだいに悪化して、今は起きあがるのも辛くなってきた。大学病院の医師からは「手術をしたければする」と言われているが、手術にも体力がなく不安だが、しないのも不安。杖を使うのにも抵抗があり身体障害者手帳の申請をしていない。リハビリもしていない。

<対応> 医師を前にすると言い出しにくくなってしまうようだが、まず主治医とよく話し合うように助言した。


◆事例11 62歳 男性

  10年前に脊髄小脳変性症と診断され都立病院神経内科に通院。その6年前に胃潰瘍で入院した際の大量輸血でと思われるが、C型肝炎になった。その治療の為にインターフェロンで治療するので入院するように言われている。インターフェロン療法が脊髄小脳変性症に影響することはないか。

<対応> 相談をする中で、主治医によく相談するということで納得された。


◆事例12 62歳 男性

  2年前に交通事故により、頚椎と脊髄を損傷した。その後、頚椎は治ったが脊髄がうまく治らないので良い方法はないか。

<対応> 当事者が自分の経験を伝えた。


◆事例13 加害者側の母親

  息子が2年前に相手を負傷させた。被害者は21歳で、T4。車椅子で、手が動かず、被害者の母が介護している。痙攣が止まらないのだが何か方法はないか。

<対応> 痙攣を止める方法はなく、投薬により緩和するしかない、と伝える。


◆事例14 64歳、男性

  食道ガンの手術の半年後に放射線治療で下半身麻痺になった(胸椎部)。抗がん剤投与後、脊髄が見る間に悪化したが、市立大学病院の医師は、数年前にも同じ症例があったと言う。治るかどうか、体験者の話を聞きたい。

<対応> 上咽頭腫瘍で放射線治療を受けたことのある方に、電話するよう依頼した。


◆事例15 男性  

  前立腺ガンの腫瘍マーカーPSAの値が0.3から徐々に上昇し0.7になって昨年の11月に手術し、その2ヶ月後には0.1以下になていた。今年9月頃から再びPSAが0.4に上昇し、今後が心配。

<対応> 一般の医療相談と思って電話してきたようだが、関係機関の医療相談窓口を後日連絡した。




【3】リハビリに関して…………………………

▼コメント:相談事例はいずれも急性期以降のリハビリ施設の確保の問題であった。リハビリテーション科を標榜する医療施設は数多いが、人手がかかる、リハビリの効果が見込めないとして脊髄損傷者を受け入れるリハビリ施設は数少ない。予約して半年になるという事例17の病院はその地域における数少ない専門的医療機関の一つであった。

  脊髄損傷は適切な時期に適切なリハビリをうけることにより障害レベルを軽減する可能性があるが、その機会さえ奪われているのが現状である。

  またリハビリは青年期では顕著な効果をあげる場合が多いが、高齢期ではその効果は限定的であり、長期間を要するのが一般的である。

◆事例16 27歳 女性

  2ヶ月前に転落事故でC4、5損傷。杖歩行で右手麻痺、左手しか使えない。受傷後に搬送されたある都立病院は脊損専門医もおりリハビリにも力をいれている病院らしいが、誤診されたのではないかと思っている。外来のリハビリも予約がなかなか取れず、検査結果も半月後でないと聞けないと言われ、生活上の注意事項も分からず困っている。事故からまだ2ヶ月なので希望を捨てず、良い病院、良い先生を探したい。

<対応> リハビリが重要な時期であり、この時期の注意点について伝え、いくつかの病院やリハビリテーションセンターに当ってみるよう勧める。


◆事例17 当事者の息子からの相談  

  父が胆石手術後に脊髄虚血となり歩行できなくなった。リハビリを早く受けさせたいが、大学病院のリハビリテーションを予約中だがすでに半年待っている。他の病院を探したほうがよいか。病院では「運が悪かった」と言っている。症状は安定しているが、病院では車椅子にも乗っておらず、器械で足首を動かす訓練をしている。自宅近くにリハビリを専門に扱える病院がないか。

<対応> リハビリを受けていないと筋肉の拘縮の問題があり、リハ専門病院を調べて連絡した。疾患から見て高度医療機関でかつ一定のリハもできる病院ということでは、現在予約中の病院が最適であると思われること。治療が終わってリハのみ必要な段階にあれば別のリハ専門病院に当ってみるよう勧めた。


◆事例18 16歳 高校生の父からの相談 

  息子が6月に交通事故に合い脊髄損傷(C5)で、労災病院に入院中でリハを受けている。リハビリ専門病院を探すように言われ市の総合リハビリセンターでは3ヵ月まで入院できるので行ってみる予定。現在は片腕の肩から二の腕が動くが指先は動かない。座位保持や固定したワープロを打つ訓練、電動車椅子のボタンを押す訓練を受けている。24時間夫婦で介護することはできないので在宅は難しい。長期にリハビリを受けられる施設はないか。

<対応> リハを受けられる施設をMSWにも探してもらうこと。リハで症状が軽減できたり、福祉機器を活用しての在宅も不可能ではないとも思えるので、症状が安定したら基金に相談するよう助言した。




【4】急性期に関して……………………………

▼コメント:外傷性脊髄損傷では、患者は救命・救急センターに搬送され、頚部の固定や牽引、頭部外傷の処置などを受ける。それは治療の終わりでなく、2次障害としての脊髄ショックとの闘いの始まりでもある。

  家族にとっては予後が予測できないだけに、混乱したまま、医師を信頼し治療を見守るしかない辛い時期である。家族へのサポートが最も必要な時期であるがそれを行いうる体制はほとんどないのが現状である。

◆事例19 当事者の娘からの相談

  5日前に父が仕事中に転落、脊髄損傷(C5)。現在、点滴で腫れをとる処置を受けている。今日は足先が痙攣しているが、医師が休みで看護婦も説明してくれない。なぜ痙攣が起きるか、症状が良いのか悪いのか。また、自宅近くの病院に転院させたいが、どんな視点から病院を選べばよいか。

<対応> 急性期の脊髄ショックの時期にあり、脊髄反射が回復するまでにさまざまな身体症状が現われるため、現在は動かせない。安定期に入ればリハビリ機能をもつ専門病院に転院するよう助言。


◆事例20 当事者の母親からの相談

  26歳の息子が1ヶ月前にバイク事故で脊髄損傷となり都内の大学病院に入院中。呼吸器をはずし集中治療室を出たたばかりだが、家族としてどうすべきか、不安でしょうがない。どう受け止めればよいか。

<対応> 家族としてまだ質問も具体的に想いつかないということなので、段階ごとに事務局に相談してもらうようにした。




【5】排泄に関して………………………………

▼コメント:脊髄損傷は運動機能、感覚機能障害だけでなく、直腸膀胱機能障害をもたらす。損傷部位に関わらず排尿に関する(神経)伝導路傷害の起きる確立が高い。

  「急性期尿路管理の優劣が尿路予後を決める」と専門医は指摘するが、患者や家族に対して社会生活を見据えた治療法のインフォームド・コンセントがどれだけおこなわれているのだろうか。排尿法の選択は当事者には大きな問題である。尿失禁のない排尿こそが、当事者の社会復帰に大きな意味を持っている。

  また尿路感染や膀胱結石など、退院後も医療のフォローアップすべき点が少なくない。

  退院前のセルフケア教育だけでなく、当事者同士の経験交流も有用であり、特に女性については悩みを同性で話し合える場が必要である。

  なお脊髄空洞症は、小脳の一部が脊柱管に落ち込んだり(キアリ奇形)、脊髄疾患に伴い脊髄内に空洞を形成する慢性進行性の疾患である。初期診断が難しいが、早期の手術療法が唯一の治療法となる。

◆事例21 男性 65歳以上 

  要介護度1、1人暮し。排泄方法に関する相談

<対応> 当事者が相談に当る。


◆事例22 若い女性 ファックス送信

  3年前に脊髄空洞症となり車椅子生活。排泄では失禁することがあり悩んでいる。同じ年代の友達がいたら紹介してほしい。

<対応> 女性スタッフが電話して話を聞いた。


◆事例23 男性  

  C6損傷。外出先での自己導尿の要領について知りたい。自宅ではベッドをギャッジアップして自己導尿を行っている。外出時はセルフ・カテーテルや集尿の処理に人手がいるため一人で外出できない。ズボンのファスナーの工夫も必要だと思うが。

<対応> ズボンのファスナーの工夫、尿の処理方法、器具の収納場所のセッティングの工夫により自己導尿可能であると思われたので、同様の方法で行っている方に聞いて、その方法を後日連絡した。


◆事例24 41歳 女性 

  3年前にT12損傷(自殺未遂と思われる).事故後は車椅子使用。排泄関係では、常時オムツ使用しオムツかぶれになっているが、大きな蓄尿袋はつけたくない様子。何をする気にもなれず、カラオケも痛みがあってする気にもならず、外にもいけない状態にある。

<対応> 生活意欲が低下して何をする気にもなれないと言うが、こうして電話をしてくることに、自分をどうにか変えていきたいという意思がうかがえた。

  生理の時だけオムツにして、ふだんはカテーテルという方法もあること。ウリナールの500ccのような、小さな蓄尿袋であれば服の中に入れられること。そして当事者でもある相談員の生活を話し、助言した。


◆事例25 31歳 女性    

  7年前に受傷したが歩行可能で障害はそう重くない。同じ障害をもつ人と話す機会が少ない。自分も勉強したいし何かの役にもたちたい。排尿などをどうしているかが分からない。

<対応> 排尿は女性の場合はデリケートな問題で、軽い場合ほど言いづらいし実際どうしているのかが分かりづらい。コンチネンスは大切なので、周囲の理解をえていくことが大切である、と助言。今後も何かあれば事務局まで連絡をするように話す。


◆事例26 20代 女性

  二分脊椎だが、装具使用で歩行可能。排泄に自信がもてないと職場復帰できないので、入院して訓練を受けたい。これまでは手圧排尿だが残尿が多く膀胱炎になり自己導尿にした。排便もお腹が痛くなったら出しているが、うまくコントロールできていない。

<対応> 女性当事者の相談員が話しを聞いているうちに、前向きに対処する自信を持ち始めた。




【6】人間関係・生きがいに関して…………

▼自殺未遂によるものが3件、いずれも女性。障害を受容し前向きに生きていくには長期の時間が必要であり、本来、継続的なフォローアップが必要である。

  10年間外出していない男性にはその契機を与える社会的サポートが求められている。

◆事例27 41歳 女性  

  3年前、飛び降り自殺の未遂で背骨を折った(T12)。足が動かず現在も入院中。夫と、高校生、中学生の子どもがいる。死にたい、夢も希望もない、歩けるようになるのか。

<対応> 脊髄再生研究が進んできているが、まずなによりも、家族にとってあなたが大切な人であることに気付いてほしいと伝える。


◆事例28 60歳 女性  

  4歳時に小児麻痺に罹り下半身麻痺のため松葉杖を使用。12年前に肩を脱臼してからスズキの電動三輪車椅子を使用。夫は過労のため25年前に死亡し現在は息子夫婦と同居している。生活はヘルパーの力を借りて自立している。

  息子や嫁が冷たく、話し相手がいないのが淋しい。月に1回の車椅子ダンスのお友達が救いだが、体力も弱り体が動かなくなり、外出が困難になってきた。友達をつくりたいが。

<対応> 外出をサポートするボランティアを紹介した。


◆事例29 30代 女性(独身)      

  1年半前に交通事故(3度目の自殺未遂)により脳挫傷。視覚障害と嗅覚障害で視覚の方は半分残り、嗅覚は神経の切断によるもので回復は不可能。生きていても楽しくなく、事故でそのまましんでしまえばよいと思っている。せきずい基金の方は色々つらい人生を歩んできたのでしょうから、1度会っていろいろな話をしたい。

<対応> 電話により、彼女の現在の想いを語りあった。


◆事例30 30歳 男性

  10年前に交通事故により胸髄を損傷。事故後は人目を気にして外出していない。どうしたら良いか。

<対応> 車椅子の仲間を作るために集まりに出席するなど、まず外出せざるをえない状況にしていくことを勧める。メール交換から同年代の友人を作れるよう援助していく。


◆事例31 女性

  3年前にケガをして施設に入所中で、寝たきりのことが多い。夫とも離婚しなければならない、死にたい、と暗く語り、「治りませんか」と尋ねる。公衆電話が切れたため、話しを途中まで聞いただけに終わった。




【7】その他…………………………………

▼コメント:高齢化の問題、性的問題、交通事故賠償と脊髄疾患の問題など、相談事例は多岐にわたる。全般的に言えることは当事者の社会的孤立であり、経験交流の場がないということからくる問題であろう。脊髄損傷にまつわるこうした広汎な相談に当事者が応えられる電話相談の定期化、常設化が今後の課題であることを相談事例は示している。

◆事例32 58歳 男性

  1年半前に労災事故でC3,4損傷となり、車椅子使用。手が冷たく、しびれる。貧血がある。車椅子でも入浴できる施設はないか。

<対応> 当事者の経験、対処法、社会資源の利用法を助言。


◆事例33 50歳 男性  

  5月にあぐらをかいて大腿骨骨折し入院中。車椅子使用だが、片側の松葉杖歩行も。びっこをひく感じで、背骨が痛く、足を失うのではないかと心配で、セールスマンのため仕事は諦めた。生活が不安で、医師にも不満がある。自宅近くにリハビリセンターがないか。

<対応> 事故の影響でさまざまなことに心理的な不安が募っている状況であるのでよく話をきいた。自分で他の病院を探してみると言う。


◆事例34 71歳 女性

  脊髄小脳変性症の姉に関する相談。

  姉が脊髄小脳変性症という進行性難病を1年8ヶ月前に発病。進行が早く、車椅子を使用し腕や手指の動きにも障害が出てきた。良い病院に出合って、ボランティアの力も借りて、日常生活もできる限り自分で何とかしようとしているが、義兄は重症の者にそんなことをやらせる事はないという考え方で困っている。家族が前向きの考え方を持ってほしいが。

<対応> 病気に対する正しい考え方を家族が共有するよう働きかけること。残存機能を活かしてできるだけ自分の力でできるようにするとともに、日常の生活をできるだけ続けていくためにはリハビリやボランティアの参加などが大切になってくることを伝える。


◆事例35 64歳 男性      

  5年前に労災事故で胸椎を損傷(T11)。身体障害者手帳1級だが、運転免許を取り車を運転している。夫婦2人暮らし。週に1度は市民病院でリハビリを受けている。最近体がしびれてきたが、介護保険は受けられるか。

<対応> 介護保険は65歳以上で要介護認定をすれば受けられる。介護保険より労災保険が優先適応になるので、病院で医療相談をしてみるよう助言。


◆事例36 52歳の脊髄小脳変性症者の母

  10年前に発症、歩行が困難になりつつあり大学病院に入院していたが原因がわからず退院。現在は都立病院の脳神経外科に通っている。ダイビングが原因ではないかと思う(?)。現在仕事をしているが収入が下がり、今後退職してさらに収入が減ることが心配だ。

<対応> 難病の医療扶助は受けているものと思われるが、加入している年金の種類などについて、再度電話してもらうことにする。


◆事例37 30歳 男性 

  10年前に交通事故で車椅子使用(C4)、指は動かず腕もあまり動かない。無年金、既婚。通院経路のアクセス、コンピュータの入手法、車の運転、性の問題、生きがいなどについて。

<対応> 脊髄損傷者が直面する問題全般に関する相談であり、当事者である相談員が自らの経験を踏まえ助言した。


◆事例38 30歳 男性     

  15年前に交通事故により脊髄損傷(C5)。全介助で家族と同居。今年の夏に風俗店に行ったが、勃起はしても射精ができなかったのが辛い。<電話が中断のため、対応できず>


◆事例39 61歳 男性

  週1回の夫婦生活は多いか。体を悪くするとか、呆けとの関係はあるか。

<対応> 本人同士が納得していればよい問題。高血圧や心肺機能障害がなければぼけとか短命とかは関係ない。ある場合には体調に配慮することが必要。


◆事例40 30歳 男性の母親から

  息子が事故により腰椎損傷で入院中。車椅子使用だが手は使える。退院後の就職を心配。

<対応> 脊損事例の多い県立リハビリセンターのソーシャルワーカーを紹介。


◆事例41 30代 男性 

  脊髄損傷(C4、5)で入院中。CADかパソコンコースのある障害者職業訓練所がないか。

<対応> K県の障害者職業訓練校及び所沢の国立中央障害者職業訓練校にCADコースがあり、紹介した。選考があること、通所、入所とも身辺自立が条件であることを説明した。


◆事例42 70歳 男性

  30年前にT6損傷。介護保険を受けているが将来が不安であり、入所施設を探している。 <対応> 自治体の福祉課への相談を助言。


◆事例43 18歳 女性の母親     

  1999年3月1日にトラックに轢かれて胸椎破裂(T12)。3月16日に手術。3月末に医師から、4〜6番に悪性腫瘍を発見した、これは交通事故とは全く関係ないと断言された。4月6日に手術したところ腫瘍は悪性ではなかったと言われたが手の麻痺は治らず、これは手術ミスだったのか誤診なのか。事故後は首が痛く膝下の感覚が麻痺。その後、麻痺が胸部、手まで上がってきている。家族としては、4〜6番の腫瘍も交通事故に起因すると思っている。「交通事故被害者の会」にも連絡をとっているが、よい弁護士を紹介してほしい。

<対応> 被害者の会で同じような事例がないか、交通事故を扱いなれた弁護士がいないか、さらに相談するよう助言。


◆事例44 70歳 女性の雇用主     

  3年前、店にスピード違反の車が突っ込み従業員の女性が重傷を負った。相手の保険会社側は、被害者に脊柱管狭窄症があったため自賠責を下回る金額しか提示してこない。既往症減額50%として、当時月給25万だった被害者の女性に、月額165,000円を7年間支払うというもので納得できない。今後どう交渉をすすめたらよいか。簡易裁判所で調停に入っているが、調停員も保険会社側に立っているようで納得できない。

<対応> 損害保険会社の弁護士との交渉の段階にきており、法的解決しか道はないのではないかと助言。電話相談だけでは係争点を明らかにすることができないため、基金の顧問弁護士に事情聴取を依頼した。後日、弁護士が電話相談したあと1回面談して終わった。


     * 同種の相談事例は割愛した。■





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