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特定非営利活動法人   Japan Spinal Cord Foundation
日本せきずい基金ニュース
No. 7 2000年8月刊

今年度の取組み

1.「高位在宅頚髄損傷者の介護実態調査」

 社会福祉・医療事業団の助成(400万円)を得て、基金では今年度、全国の高位在宅頚髄損傷者への訪問調査を実施します。全国で30人のご家庭を同じ障害をかかえる当事者が訪問。介護の実態を聞き取り調査し、在宅生活を継続していく上でどのような問題を解決しなければならないか、その課題を報告書としてまとめます。

 人工呼吸器を使用して生活されている当事者やご家族がどのように日々の生活を過ごしておられるのか、社会的にどのようなサポートが必要なのかを明かにすることは、単に脊髄損傷者のみならず高齢化社会における介護の社会化の在り方を考える上で、大きな波及効果を持つものとなるでしょう。

 現在、学識経験者を交えた調査委員会で調査項目を検討しており、8月から訪問調査を実施する予定です。訪問調査へのご協力をお願い致します。また、この訪問調査にご協力いただけるお宅がありましたら事務局までご連絡下さい。
 

 2.「せきそん110番」<脊髄損傷電話相談>を実施!

日本財団の助成(100万円)を得て、せきずい損傷に関する電話相談を実施します。

★ 9月17日〜11月19日の毎週日曜日(10回)
   受付時間:12時−16時

 突然の受傷で今なにをすればよいのか、この先どうなるのか。リハビリ、介護、医療・福祉制度、排泄などの問題に、経験豊かな<当事者>が電話相談に当たります。また医療・リハビリに関する専門的問題についても、専門家のご協力を得て基金としてフォローしていきます。どなたでもお気軽に電話下さい。

   同封のポスターを 病院や公共施設に貼って下さい!


3.「超党派議員連盟」へ向けて

 日本せきずい基金では、せきずい損傷医療の急性期から在宅にいたる医療・リハビリ・介護の一貫した社会的システムの整備、および脊髄再生研究の進展を求め、国会議員の方々と話し合いや勉強会を行ってきました。

 これまでの話し合いを通じて、国としてせきずい損傷に対する個別の対策が必要であること、神経の幹細胞やES細胞(胚性幹細胞)によるせきずい再生研究が現実のものとなりつつあることについては認識を同じくすることができました。 

 すでに主要政党の方々からは参加の方向で同意を得て、今後、どのような政策目標を掲げるか、提言とするか、議員立法をめざすのか、について各党の国会議員の皆様と話し合いを進めていく予定です。



◆ 基金のリーフレットを活用して下さい!

新しく日本せきずい基金のリーフレットを作成しました(カラー、A4判横3折)
基金の基本理念、活動内容を分りやすくまとめておりますので、
広くご活用下さい。
なお、下記の皆様方に賛同者となって戴きました(敬称略、あいうえお順)

赤澤信次郎 東京新聞生活部記者
秋山 哲男 東京都立大学工学研究科講師
安藤 徳彦 横浜市立大学医学部教授
井形 高明 徳島大学医学部教授
岩坪 映二 総合脊損センター泌尿器科部長
牛山 武久 国立リハセンター病院診療部長
大熊由紀子 朝日新聞社論説委員
大谷 清 国立療養所村山病院元院長
川口 三郎 京都大学大学院医学部教授
新宮 彦助 山陰労災病院院長
田口 順子 日本理学療法士協会国際部長
竹光 義冶 総合脊損センター院長
藤村 祥一 慶應義塾大学医学部助教授
野村 歓 日本大学理工学部建築学科教授
松井 和子 浜松医科大学看護学科教授
矢島 鎗司 国士舘大学情報科学センター教授
山口 智 神奈川リハセンター病院元院長

*基金顧問 公認会計士:川鍋 直 弁護士:藤勝 辰博



◆ 基金の募金箱を設置して下さい!


 日本せきずい基金の募金箱を製作しました。これまでに、ゴルフ場のフロントや福祉関連施設、飲食店など10ヵ所に置いていただけることになりました。ご協力いただける企業・団体、店舗などの心当たりがありましたら、事務局までご連絡下さい。




さあ、歩くことを

「脊髄に歩くことを教える」へのコメント


日本理学療法士協会・国際部長  田口 順子


 この度、日本せきずい基金より発行された米国における脊髄再生に関する抄録集* を一気に読んだ。1995年から1999年にかけての脊髄再生研究に関する文献の集約は日頃、時間のない、またIT時代とはいえ文献の検索には難儀をし、さらに原文で理解するには難解な私にとって実にありがたい資料であった。的確な翻訳といい発行までに至る日本せきずい基金のご努力に心から感謝したい。

 私はクリストファ−・リ−ブが受傷しウエスト・バ−ジニア大学病院に運ばれてくるヘリコプタ−を、同じ病院の2階にある理学療法室から見あげていた。かなり高位レベルの損傷とは聞いていたが、何となく「ここはアメリカだ、生きのびるだろうな」と思ったことを覚えている。そのス−パ−マンが重度の障害を受けながらもこの数年間の内に300万ドル以上の資金を調達できる財団を創設し神経再生の研究に寄与している。新しい使命感と強い意志、組織力には感服の他はない。

 抄録を読んでの感想を少し述べてみたい。基礎科学研究者ではない私には神経再生を促す遺伝子組み替えや薬物、化学物質の変化やその作用機序といった実験的研究の成果についてとやかく考察を述べる資格はないが、脳の神経回路を通らずに脊髄の分節的な回路が独自の可塑性によって新しい運動を「学習」することが更に実証されれば、脊髄損傷の運動プログラムは一変するだろうと思う。

 M. Thallmair らは、脊髄の損傷の結果は受傷した年齢に大きく左右されると述べている。ヒトの脊髄はラットや牛のミエリンとかなり似たIN−1抗原を有しており、故に脊髄の可塑性と運動機能の回復は若年性ほど良好であるという。

 神経再生が100パ−セントではないにしてもあと4〜5年で解明されるであろうとしている。このことは今の若い脊髄損傷者は間違いなく、今よりましな運動プログラム、すなわち寝たままの関節の他動運動や寝返りのADL動作だけではなく「立つ」「歩く」というプログラムが主要なものとなってくるかもしれない。現にドイツのある施設ではハ−ネスをつけてトレッドミルでの歩行訓練がメインであるという。

 近未来の医療の恩恵を享受できる状態を維持しておく必要がある。せっかくの可能性を逃してしまう関節の変形や起立性低血圧、肺機能の低下など未然に防いでおかなければならない。独歩には程遠いとしても数歩歩くことができるようになるだけでも、その人の生活や価値観を劇的に変えることができるだろうし、非障害者が普段、運動を楽しむように一日一歩歩くことがせきずい損傷者の楽しい運動であってもよい。

「脊髄に歩くことを教える」が掲載された

I. Wickelgren の文中、最後に Sauer が述べている言葉を引用しよう。「人間の体は座るためにできているのではない。時々は歩くべきなのだ」

エジプト人が2500年も前から「脊髄損傷は治療ができない」と書いてきたこの障害、歩くことを人権として要求できる時代に、科学者もリハビリテ−ション従事者らもそれを真っ向から受け止める時代に早く届いてほしいものである。


*注 日本せきずい基金ニュース別冊2
    『米国におけるせきずい損傷研究・関連資料集』
    (2000年4月刊、無料、希望者は事務局まで) 




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