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特定非営利活動法人   Japan Spinal Cord Foundation
日本せきずい基金
設立準備会 ニュース

No. 6


▼ 日本とは大きく異なり、米国には、脊髄損傷者に対する急性期からリハビリ期、さらには社会復帰へ亘るまでの支援をささえるインフラ整備を目的とした広汎な運動の積み重ねがあった。

  その流れの中から、脊髄損傷の治癒に結びつく研究を支援するための「脊髄損傷研究条例」が米国各州において制定されるようになった。各州の条例については最近の研究条例を中心に、基金ニュース別冊「米国におけるせきずい損傷研究:関係資料集」に収録した。本号においてはその中から、米国各州の条例化の歩みについて紹介する。

  当基金は、わが国においても、脊髄損傷に対する総合的な医療とケアのシステム構築を目的とした、ひいては脊髄研究推進を視野に入れた「脊髄損傷法」制定の可能性を追求していきたい。


脊髄損傷とハイウェイ

交通違反に対する罰金は、脊髄損傷研究のための新たな道を開く

H.トーマス (パラプレジア・ニュース 1998年5月号) 

■ 米国では、毎年およそ1万名の新たな脊髄損傷者が発生している。そして全国の脊髄損傷の44%が交通事故によるものである。その多くは何らかの違反事故である。たとえばスピード違反、無謀運転、麻薬服用や飲酒運転等々。

  脊髄損傷者の初年度の医療コストはしばしば50万ドルを越える。自明のことながら、その額は損傷のレベルに応じて大きく異なる。費用の概算は以下の通りである。

1)初期入院費用      10〜12.5万ドル

2)初年度の医療費と生活費
上位頚損(損傷部位C1〜4) 45〜50万ドル
下位頚損(損傷部位C5〜8) 30〜35万ドル
対麻痺(全部位) 17.5〜20万ドル

3)平均住宅改造費  8千〜1万ドル

  さらに多くの脊髄損傷者は広範囲に及ぶリハビリテを必要とする。社会復帰のための職業訓練に加えて、初年度以降の継続的ケアが必要である。

誰がその費用を払うのか 

  脊髄損傷に伴う費用の多くは個人の医療保険によってカバーされている(全体の約55.5%)。もし各個人が保険に入っていない場合は、その負担を彼ら自身か(全額自己負担は全体の1.1%)、納税者(全体の43.4%)にかかってくる。従って、医療コストが増大するに伴い、保険割増金と税金による公的支払い(Medicare、労災補償、 Medicade、CHUMPUS、退役軍人省の諸制度等を通じての)も増大する。

  各種機関の脊髄損傷研究に関する支出総額は年7000万ドルを超えると推定される。その資金源はどこで、また誰がその担い手となっているのだろうか。

【国立衛生研究所(NIH)/退役軍人省(VA)/米国科学財団(NSF)】 これらの機関の資金は連邦予算から拠出される。

【マイアミ・プロジェクト】 この組織の資金源は個人及び企業からの助成金や寄付金からなる。個々の研究者はこのグループからの助成金を申請してもよいが、このグループ以外の他の組織機関への資金提供は行わない。

【脊髄研究財団(SCRF)】 この財団は、アメリカ退役軍人麻痺者協会(PVA、脊髄損傷研究の最大のスポンサー)からの助成金と個人及び企業からの助成金や寄付金を財源としている。

  同財団は、全米の大学と医療センターにおける研究に対して、5つの分野にわたって支援している。基礎研究、臨床研究、補助器具の設計と開発、会議やシンポジウム開催、アカデミックなあるいは臨床分野における科学者を養成するための奨学金支給、等々である。

【アメリカ麻痺協会(APA)及び その他民間機関】
資金源は個人及び企業からの助成金や寄付金である。

【エール大学神経科学再生研究センター】  アメリカ退役軍人麻痺者協会(PVA)、東部退役軍人麻痺者協会(EPVA)、退役軍人省(VA)、及び個人と企業からの助成金や寄付金によって資金提供が行われている。

その他各州レベルで様々な信託基金が設けられている。

信託基金について 

  これまで少なくとも10の州政府が「交通違反ドライバーは脊髄損傷や外傷性脳傷害によって生ずる膨大なコストを分担すべきである」という立場を取り、それを制度化している。さらに一つの州がその手続きに入っている。

  これらの州議会は交通事故によって脊髄損傷や脳傷害を被った人々のためのリハビリテーション、医療コスト、研究、損失利益の補填等を支援する基金を設立する法令を制定している。

  他の多くの州は、違反ドライバーに対して、追加罰金や割増課徴金等を課している。しかしこの資金は、被害者の権利保護や教育等、様々な他のプロジェクトに使用されている。州信託基金の概要は以下の通りである。

【アラバマ州】 1992年、脊髄損傷や脳損傷を負った州民が可能な限りの自立生活レベルを達成するのを支援するため「負傷ドライバー信託基金(Impaired Drivers Trust Fund)」を設立。翌年、飲酒や麻薬服用運転の罪を問われた者に100ドルの追加罰金を科す条例を制定。この罰金で集められた資金は「基金」へ振り向けられる。

【アリゾナ州】 1992年、「脊髄及び頭部損傷信託基金(Spinal and Head Injury Trust Fund)」を設立。脊髄損傷者、外傷性脳損傷者に対して、教育、訓練、各種サービスを提供。「基金」はその財源として、全てのスピード違反に対して課せられる2ドルの割増課徴金を受け取る。その総額は月平均10万ドルである。

【フロリダ州】 1988年、「負傷ドライバー信託基金(Impaired Drivers Speeders Trust Fund)」を設立。のちに「脳脊髄リハビリテーション信託基金(Brain and Spinal Cord Rehabili-tation Trust Fund)」と改名。この「基金」は、脊髄損傷、外傷性脳傷害を被った全ての有資格州民に対して、社会復帰する上で必要なサービスを提供し支援する。「基金」の財源としてあらゆる違反罰金の1%があてられる。さらに、交通違反の際、飲酒・麻薬服用の罪に問われたものは100ドルの追加罰金が課せられるがそのうち25ドルが「基金」に配分される。

【ケンタッキー州】 1994年、「ケンタッキー脊髄及び頭部損傷研究委員会(Kentucky Spinal Cord and Head Injury Research Board)」を創設し、同委員会が管理運営するものとして「脊髄研究信託基金(Spinal Cord Reseach Trust Fund)」を設立。スピード違反を犯した者に課せられる12.5ドルの罰金がこの「基金」に振り向けられる。この金は、ケンタッキー州立大学(レキシントン)とルイスヴィル大学で行われる州の脊髄脳損傷研究プログラム(総額200万ドル)のための資金となる。「委員会」の運営活動費は約5.5万ドル。

【ルイジアナ州】 1993年、「外傷性頭部及び脊髄損傷信託基金(Traumatic Head and Spinal Cord Injury Trust Fund)」を設立。事故で生き残ったものの、脊髄と脳に損傷を負った市民に対して、相応の機能回復と自立生活への復帰を支援するための、柔軟かつ個々の事情に合ったサービスを提供する。患者のための支出は1人当り12ヶ月で1.5万ドル、総額で5万ドルを越えないものとする。飲酒や麻薬服用運転の罪に問われた者は25ドル、スピード違反者は5ドルの追加課徴金を徴収されることになっており、これらの罰金は「基金」の財源に振り向けられる。

【マサチューセッツ州】 1991年、「頭部損傷信託基金(Head Injury Trust Fund)」を設立。頭部に損傷を受けた者の治療を支援。飲酒運転や違法麻薬服用下での運転の罪に問われた者は100ドルの特別追加罰金を支払わなければならない。これが「基金」の資金となる。

【ミシシッピ−州】 1996年、「脊髄及び頭部損傷信託基金(Spinal Cord and Head Injury Trust Fund)」を設立。州のリハビリテーション・サービス局を通じての脊髄損傷者や脳傷害者のための治療システムを制度化。「基金」からの資金によって幾つかの「予防的治療・リハビリテーションセンター」を設け、また生活における諸移動手段を提供している。交通違反を犯した者には4ドルの特別割増課徴金が課せられ、未必の故意の法規違反には25ドルの割増課徴金が課せられる。これらが「基金」の資金となる。

【ペンシルバニア州】 1989年、「高額損失利益補償信託基金(Ca-tastrophic Loss Trust Fund/Catastrophic Loss Benefits Continuation Fund)」を設立。10万ドルを越える医療費やリハビリテーション費用の破滅的高額負担を余儀なくされたものに対し、この基金から給付金を支給する。

  交通違反を犯したものは30〜300ドルの割増課徴金を支払わねばならないが、これが「基金」に供託される。この「基金」への有資格申請者に支給される給付金の上限は、年に5万ドル、生涯総額で100万ドルである。

【テネシー州】 1993年、「外傷性脳損傷基金(Traumatic Brain Injury Fund)」設立を州議会で議決、条例化。この「基金」から、脳損傷者とその家族の必要に対応して郡や市の行政府、NPO団体が行う在宅(コミュニティ)ベースのサービスプログラムに対して助成金を拠出する。交通違反を犯した者が支払う2ドル〜25ドルの追加罰金が本「基金」に供託される。

【テキサス州】 1991年、「総合的リハビリテーションサービス基金(Comprehensive Re-habilitataion Service Fund)」を設立。家族やコミュニティの中にあって可動性と自己管理及び出来る限り自立的に機能しうる能力を確保するという観点から、脊髄損傷者や脳損傷者のQOLを向上させることを目的とする。

  「基金」のプログラムを通じて、患者の初期入院期の総合的医療リハビリテーションと退院後の急性期以降に必要とされるサービスに対して支払いが行われる。交通違反を犯したドライバーはどこであれ、5ドル〜25ドルの法廷科料を課せられるが、これが「基金」に供託される。

【ウェストバージニア州】 1998年1月、州知事が「脊髄及び脳損傷信託基金(Spinal Cord and Brain Injury Trust Fund)」を創設するための条例議案を提出。この法案は知事の予算案と一括して採択されることになろう。

  この条例は、被害者とその家族に対し、治療や補助器具、家族によるサービス、家屋を使いやすくする装置等に補助金を給付して支援することを目的とする。23名からなる委員会がこの「基金」を管理運営する。また、「基金」の財源としてスピード違反や無謀運転の罪を犯した者は10ドル、飲酒や麻薬服用下での運転の罪を犯した者は15ドルの追加罰金を支払わねばならない。知事はこの条例によって、年に73万ドル以上の資金を調達出来るであろうと考えている。

脊髄損傷研究への資金供給をいかに確保すべきか

  交通違反に課される罰金は、脊髄損傷や脳損傷に関する研究に資金を提供する上でたすけとはなろう。しかし、資金が脊髄損傷研究に向けられるよう特定されているのは、ケンタッキー州の信託基金だけである。

  近年、何人かの脊髄損傷者となった有名人が、研究の重要性を主張する運動に全米的注目を呼び込んできた。俳優のクリストファー・リーブや幾人かのプロのアスリートたちが「脊髄損傷(SCI)」という言葉を身近なものとするのに貢献してきた。

  いかにして、他の39州に研究信託基金プログラムを設けさせることが出来るだろうか。また、既存基金が、脊髄損傷や研究への資金援助もその目的に含むように修正を図ることは可能だろうか。医学研究の分野で、脊髄損傷の治癒が実現可能とみられるところまで研鑚が積まれてきたことから、研究資金を確保することの重要性は以前よりいっそう高まっている。問題はもはや、科学者たちが脊髄損傷治癒の方法を発見するかどうかという点にではなく、いつ実現するかという点にある。

早期実現のためにどのように取り組んだらよいのだろうか。以下、若干の提言である。

PVA支部レベルで、あるいは個人として当事者の連合を組織する。
あなたの地域におけるトップクラスの脊髄損傷の研究者を探し、彼らからの支援や彼らの専門知識を得るようにする。
退役軍人省のSCIセンターに話をして、あなたの地域の脊髄損傷に関する統計を入手する。損傷初年次とその後のケアに伴うコストの概算を得る。脊髄損傷者の典型例をあげる。その場合の就職に向けての再訓練、医療費、リハビリテーション等の費用がどれだけになるか試算する。
同様のことを民間のSCIセンターとも話しあってみる。そして、もし脊髄損傷が治癒されるとすれば、費用をどれだけ削減できるか、利得をどれだけ計上できるか、について彼らの意見も聞いてみる。
州議会議員と接触し、手元の事実を提示し、法的措置の実現の方法を提言する。
 
  もし50州の全てが、交通事故違反罰金への追加罰金を元に、脊髄損傷研究のための資金拠出プログラムを設けた場合、仮に各違反についてたった2ドルの徴収だとして、どれだけの資金が調達可能だろうか。それだけでも、年に1億ドルを越える資金を得ることが出来るであろう。

  今こそ、議員たちに対して、脊髄損傷研究のための価値ある資金拠出プログラム策定に取りかかるよう働きかける時である。各州はそれぞれ異なった州法を定めているので、このタイプの立法化の働きかけは州レベルではじめるべきであろう。(さらに詳しい情報がほしい人は、筆者宛に連絡を。

:PVA 801 18th St. NW Washington DC 20006-3517.)

訳者註

(1) 筆者ハーレイ・トーマスは米国退役軍人麻痺者協会(ParalyzedVeterans of America,PVA.)の法律担当次席理事。本文中引用統計数値の典拠は「脊髄損傷の経済的帰結」(PVA)及び「アラバマ州立大学SCIインフォメーション」(URLwww.spinalcord.uab.edu.)

(2) 本文掲載時(1998年5月)以降も、アメリカでは多くの州で「脊髄損傷条例」制定へ向けての動きが進展した。1999年末現在で、新たにニューヨーク州(1999年1月施行)とニュージャージー州(1999年12月施行)で「脊髄損傷研究条例」が成立した。またカリフォルニア州でも「脊髄損傷研究条例」案が州議会で審議、可決されて、付随手続きが完了次第条例の成立、施行が確実の見込みとなった(1999年6月)。

  その他の数州において「脊髄損傷条例」案あるいは「脊髄損傷研究条例」案が州議会に上程され審議中である。(阿部由紀 訳)


【解説】
米国各州の脊髄損傷研究条例をめぐる動向について
             阿部 由紀 

条例化の進展

  米国では1980年代末頃から、脊髄損傷者の自立努力やその介護を支援する条例を州レベルで制定する動きが活発化した。特に1990年代半ば以降、脳脊髄中枢神経に関する研究の著しい前進を背景に、脊髄損傷そのものの完全治癒を目指す研究を推進し助成するための運動が、官民両面で積極的に展開されるようになった。最近では、研究助成に重点を置いた条例制定が各州で進められている。

  既に施行されている脊髄損傷関連州条例の中で、充当される資金の用途が明確に研究向けに特定されているのは、ケンタッキー州(1994年制定、1996年改訂)、とニューヨーク州(1999年施行)、ニュージャージー州(1999年施行)である。

  3州とも「研究委員会」と同委員会が管理運営する「信託基金」を設立し、その「信託基金」から脊髄損傷研究に対して助成金を拠出する事を定めている。

  「信託基金」の原資を構成する主要財源は、寄付金と交通違反に対して課される追加罰金である。関連法令(運輸・交通法など)が定める現行追加罰金額は、ケンタッキー州では12.5ドル、ニューヨーク州では5ドル、ニュージャージー州では1ドルである。

  助成金の拠出先については、ケンタッキー州の場合ケンタッキー大学とルイスヴィル大学の研究者に限定されているが、ニューヨーク州の場合は特定されていない。ニュージャジー州の場合は、3大学、2研究所及び「委員会」が認定する研究機関となっている。

  またニュージャージー州の条例は、「研究委員会」に病気によらない脊髄損傷に関するデータベースを作成することを義務づけ、同時に脊髄損傷者には同「委員会」へ情報提供する事を義務づけている点で特徴的である。

  一方、州議会で承認されたカリフォルニア州の条例案(1999年)は、「研究基金」を直接州立カリフォルニア大学内に設置し、カリフォルニア大学の評議員会にその管理運営を委任するものとなっている。助成金もカリフォルニア大学の研究プロジェクトに使用される。この場合も、交通違反に対して新たに課される5ドルの追加罰金が「研究基金」の原資を構成する。但し、カリフォルニア大学の評議員会が本条例の諸条項を同大学に適用しうると決議しない限り、本条例を同大学に適用しないとしている。

  またイリノイ州も脊髄損傷研究促進のため州法の改訂を行っている(1999年)。同州は州財政法、頭部及び脊髄損傷条例、巡回法廷法の3法令を改訂、「脊髄損傷麻痺研究基金」の創設をとりきめた。同州では既に「頭部及び脊髄損傷条例」を施行済みであったが、同条例には研究関連条項がなかったため、新たに「研究基金」の設立を定めたのである。同「基金」は州民サービス省の諮問委員会によって管理運営される。交通違反に関する巡回法廷費用に新たに2ドルの割増課徴金が追加されることになったが、この分が同「基金」の財源となる。助成対象はイリノイ州内の諸研究機関を対象とする。

  以上が現在既に施行済みか州議会で承認された条例のケースであるが、その他オレゴン州、ミズーリ州、コネチカット州などで条例案あるいは既存法令の改訂案が提案されている。

  オレゴン州の条例案(1999年)の場合も「研究委員会」と同委員会が管理運営する「研究基金」を設立することになっているが、「基金」の財源には2年毎の州予算措置で計上される州資金が充当される。助成対象は特定されていない。

  ミズーリ州の場合は州法における州立ミズーリ大学の関する条項を改訂し、同大学評議員会主導のもとに研究助成を行う、という法案が提出されている(1999年)。同州のシステムは他の州とは少し異なる。ミズーリ大学評議員会が任命する委員で構成される諮問委員会が助成対象プロジェクトを選定し、同評議員会が助成金授与を決定する。これに関わる資金については、同評議員会が州に請求し州の予算措置によって充当される。助成対象はミズーリ州内であれば特に限定されていない。

  その他の州の法案も以上で紹介した既存条例や条例案のいずれかと類似したものとなっている。

条例(案)の比較

こうした条例や条例案について相違点を整理してみよう。

(1)「研究委員会」について
  いずれの州においても、助成金原資を管理運営し助成先を審査・選定するための「委員会」(Research Boardあるいは Advisory Council あるいは Commission)が設立されている。その「委員会」は直接州知事や州行政府、あるいは州議会の管轄下におかれる場合と州立大学の評議員会に委任される場合とがある。

  「委員会」の構成員については脊髄神経関連の専門的な研究者(臨床も含む)や医師を主体とする場合と損傷当事者やボランティア団体まで含む場合もあり様々である。また「委員会」の任務としてデータベースの作成・管理を義務づけている州もある。委員に報酬を払う州と無報酬の州とがある。

(2)助成金の原資について
  助成金の原資確保に当たっては、一般財源から区別される特別の「信託基金」ないしは「基金」を設立する場合と、そうした「基金」(Research Trust Fund あるいは Research Fund、以下「基金」)は設けずに直接予算措置で対応する場合とがある。

  「基金」に関しては、州資金のみならず公共や民間の諸機関及び個人からの寄付・贈与を受け入れるものと全額州資金に依拠するものとがある。

「基金」のあり方についても、州当局の監督下におかれるという点ではかわりはないにせよ
(i) 組織的に独立している
(ii) 州行政組織内に設置
(iii) 特定の大学内に設置、
といった3ケースがある。

  投入される州資金については、交通違反の際の罰則への追加罰金ないしは法廷費用の追加徴収として州庫に納められた金額を「基金」に振り替える形をとるものと、罰金歳入に関わりなく予算措置によって一定の金額を「基金」に配分する方式とがある。

(3)助成金の拠出先について
  いずれの州の場合も助成金授与に際しては、「研究委員会」への助成金申請→受理→審査→認可→助成金授与の手順を踏むことになっているが、その対象となる有資格者は州によって異なる。助成金の拠出先を一定の大学に限定している場合と各種研究機関及びそれに所属する研究者としている場合、さらには個人や各種団体(ボランティア団体も含む)まで含む場合もある。

  また当初から本格的な成果を求める立場で研究助成を行うものと、より本格的な長期の助成金獲得へステップアップしていくためのつなぎの研究資金援助という位置付けのものもある。

  このように各州の条例(案)は様々な面で異なっているが、各州それぞれの事情に合った研究助成制度への模索が行われているといえよう。

  例えば助成金及び管理運営費として使用可能な年間資金総額の上限はニューヨーク州では850万ドル(約9億円)であるのに対し、ミズーリ州の場合は22万ドル(約2300万円)にすぎない。多くの州は資金規模について特に定めていない。そこには州の事情の相異が反映されていると考えられる。他の福祉政策や研究助成政策とのバランス等考慮さるべき問題も多く、おのずから助成金の運営方式も異なっていかざるをえないであろう。
 
  年の傾向として、交通違反に対して違反罰則への追加罰金または法廷費用の追加徴収を課しそれを脊髄損傷研究助成金の原資とするという内容の法的措置を講じる州が増えつつある。その背景には脊髄損傷発生原因にしめる交通事故の割合がもっとも大きく且つ増大しつつあるという現実がある。

基本的視点

こうした立法化へ向けての動きを支える基本的考え方は次の5点に集約される。

(1) 交通違反者は、交通事故を原因とした脊髄損傷によって発生する膨大な社会的費用に対して何らかの責任を負うべきである。

(2) 従来あり得ないと考えられてきた損傷脊髄神経細胞の修復・再生の可能性を展望できる研究成果が生まれてきている。もし損傷脊髄神経細胞の修復・再生が実現した場合、脊髄損傷者自身やその家族の労苦のみならず、付随する膨大な社会的費用を大幅に削減できると予想される。

(3) 研究支援目的の罰金増額によって、資金の集まりにくい地味な研究のための資金調達を行い、同時に脊髄損傷研究の重要性を広く周知させる。

(4) 交通違反への罰則を強化する事によって、交通事故及びその結果としての脊髄損傷の発生を抑制する。

(5) これによって脊髄損傷に関する治療法や最先端の医学情報についての情報開示が進む。

  以上のように、「脊髄損傷研究条例」は、脊髄損傷の治癒に結びつく研究のための資金調達を目的として制定された法律である。ヒトの中枢神経の再生という先端的な研究分野への不足しがちな資金供給を、州行政レベルで当事者の意向を反映させながら補完する制度である。

  米国には、脊損者のための生活支援、医療・リハビリテーションの充実、社会復帰支援のインフラ整備を目的とした運動の広汎な積み重ねがあった。この過程で各州においていわゆる SCI/TBI Act(脊髄/脳損傷条例)が制定されていった。その主な目的は急性期の巨額の医療費補助や急性期後の医療・リハビリテーション、生活支援である。多くの州がその財源に交通違反金に加算する何らかの「追加罰金」をあててきた。近年になって、このSCI条例に研究の助成も盛り込まれるようになり、更には脊髄研究助成のみに絞った条例も制定されるようになったのである。この流れからは、単なる補助金給付から、生活支援の社会化、医療・リハビリテーションの充実、研究の推進へといった脊髄損傷に対する基本的考え方の拡充・発展をみてとることが出来る。障害者の自立を支える体制を整備しながら最終的には障害を治癒させるという積極的な方向性が明示されているといえよう。

  脊髄神経細胞の修復・再生の実現を安易に期待することはできないにせよ、このような米国の動きについては、我が国にとっても一考の余地は大いにあると考えられる。

  我が国でも脊髄損傷者は年々ハイペースで増加しており、その主因は交通事故である。一方脊髄専門の研究者や医療者(臨床医、PT等)は決定的に不足している。研究体制も脊損者に対する臨床的対応も決定的に遅れている。このような状況を突破していく上で、米国の動きは何らかの形で参考になると考えられる。


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【コンテンツ見本】
刊年;巻頁 論 文 名 著者 所属
1999;12 16-19 胸・腰髄損傷者の
装具による歩行再建
才藤栄一 藤田保健
衛生大学リハ 
1999;12 20-21 神経因性膀胱の
病態と診断
野々村克也 北海道大学泌尿器科
1999;12 22-23 横断性脊髄障害の
病因と病態
森若文雄ほか 北海道大学神経内科
1999;12 24-25 急性横断性脊髄障害
をめぐって… 
深沢俊行ほか 北祐会神経内科病院 
1999;12 26-27 急性横断性脊髄障害:
薬物療法…
加藤真介 徳島大学整形外科
1999;12 28-29 急性横断性脊髄障害
をめぐって…
植田尊善ほか 総合せき損センター

                               

キーワード 1 キーワード 2 キーワード 3
対麻痺歩行 装具 内側単股継手
神経因性膀胱 尿水力学検査 外尿道括約筋部径…
急性横断性脊髄障害 病因考察 急性横断性脊髄症
急性横断性脊髄症 多発性硬化症 .
脊髄損傷 薬物療法 .
手術療法 麻痺の予後 急性脊髄麻痺
脊髄損傷 神経因性膀胱 尿水力学検査

              

【文献の検索について】

単に「脊髄損傷に間するもの」という漠然とした請求では、検索の絞り込みが出来ません。

「急性横断性脊髄症」の「薬物療法」など、診断名といくつかのキーワードで、あるいは主治医から勧められた手術の術式とその効果や予後、などで事務局に請求することが効果的です。 

霧島連峰でせきずい基金キャンペーン
宮崎県の山之内俊夫さんら 

■ 日本せきずい基金への募金を呼びかける為、3月26日、山之内俊夫(31歳・損傷レベルC2、不全)、福田孝一(42歳・頚損四肢麻痺)、田中智恵美(12歳・脳性麻痺)の3名で宮崎、鹿児島、両県に連なる霧島連山の最高峰、「韓国岳」(カラクニダケ 1700m)に挑んだ。  

  登山を手伝ってくれるボランティアには、宮崎山岳会を中心とした山男達が約30名、宮崎北高校の生徒・先生合わせて約75名が参加し、総勢が100名を超える大パーティーとなった。また、小学校3年生の子供達、約30名も飛び入り参加して、このキャンペーンを盛り上げてくれた。

  登山にあたってはまず、全員を約8名の班に分け、10分程担いで疲れたら次の班に交代するという方法をとることにして、山頂を目指した。

  当日の天気は快晴。しかし、この時期の南九州では運悪く、冷たい北風が吹くコンディションとなり、雨よりも寒さの方が心配となった。容赦なく寒風が吹き付け、高山植物に樹氷が付く中、体を動かして温まることの出来ない障害者は、ただひたすら、寒さに耐えた。登山口から出発して3時間余り。山男の経験と底力、高校生の若いパワーに支えられ、ようやく山頂に到着。山頂からの風景を眺め、感慨にふけっていたが、あまりの寒さのため、昼食もそこそこに下山した。

  今回の韓国岳登山、全員怪我もなく、大自然の中で有意義な時間を過ごすことが出来て、大成功であった。参加者の高校生に感想を聞いた所、「疲れたけど、楽しかった。車椅子でも、何処にでも行けますね」と照れながら答えてくれた。こういう企画を通して一人でも多くの人が、支えあう喜びを知ることを願ってやまない。

  このキャンペーンは、地元の朝日新聞等に取り上げられ、せきずい損傷の問題を多くの人々に知ってもらうことが出来た。<写真、略>

■毎日新聞 2000年 3月21日朝刊

せき髄損傷の治療薬に「レシチン化SOD」有効
徳島大教授 米で発表へ
   

  スポーツ事故や交通事故で損傷したせき髄の治療に活性酸素消去薬「レシチン化SOD」が有効であることが、井形高明・徳島大医学部教授らの研究でわかった。米国・オークランドで12日に開かれる米国整形外科基礎学術学会で発表される。せき髄損傷には、長時間使用できる治療薬がなかったことから、実用化が期待されている。

  井形教授らは、損傷部分から出る毒性物質の活性酸素に注目。ネズミを使った実験で、活性酸素の消去薬「レシチン化SOD」で抑えることにより、神経細胞が回復するのが確認されたという。

  医療の現場では、ステロイド剤の一種である「メチルプレドニゾロン」が使われているが、損傷後8時間以上使用すると、逆に回復を妨げるとされている。同消去薬は、活性酸素が発生する少なくとも2日間は有効だという。

水島裕・聖マリアンナ医大名誉教授の話:

  「交通事故などでせき髄損傷患者が増えているが、これまで十分効果のある治療法はなかった。レシチン化SODは(治療効果が)最も優れている可能性があり、一日も早い臨床試験の実施が望まれる。]

映画【ボーン・コレクター】

自殺願望を抱いた不機嫌男

     リンカーン・ライム

  雑誌のインタビューの中で、「主人公リンカーン・ライムはどのような着想から生まれたのか」という質問に対し、『ボーン・コレクター』著者ジェフリー・ディーヴァーは、次のように答えています。「銃を撃ちまくったり、悪党を追い回したりせず、頭脳だけで事件を解決できる主人公がほしかった」

  障害を持った人を主要な登場人物に据えた従来の文芸作品の基準から言えば、何やらひどく"不純"な動機で脊髄損傷者を取り上げたようにも受け取れます。しかし、そのような境遇に置かれた人々の現状や日常を綿密に取材し、そのデータを随所にちりばめながらも、あくまでもエンターテイメントに徹してこの作品を書き上げたことによって、数多くの読者を獲得し、結果として大勢の目を脊髄損傷者の存在や窮状に目を向けさせる力を持ったのではないかと私は思っています。

  嬉しいことに、著者は今後もライム・シリーズを書き続けると明言してくれていますし、シリーズ第二作の邦訳も近々刊行される予定です。一流の頭脳だけを頼りに悪党どもと戦うライムの活躍を、これからも応援して下されば幸いです。

『ボーン・コレクター』訳者 池田 真紀子
 
ボーン・コレクター

  4月15日に全国公開される映画「ボーン・コレクター」。デンゼル・ワシントンが演じる刑事役の主人公リンカーン・ライムはある日、事故で四肢麻痺になります。彼は、自由のきかない身体、ベット上での日々に生きる気力なくし安楽死を望みます。ですが彼は幸運でした。仕組まれた偶然、しかしその偶然から彼は猟奇犯罪者に立ち向かうことで、生きる原動力を取り戻します。ラストシーンでは、明るく明日へ向かって生きる意志を見せてくれました。

  せきずい損傷者のほとんどは彼のように、事故のショックから一度は死を考えてしまいます。仕事を失った苦しみ、発作による苦しみ、家族の負担となってしまう苦しみ。乗り越えなければいけない壁がたくさんあるのです。

  この映画の試写を見て、主人公が、恵まれた偶然の環境で立ち直るという設定ですが、この立ち直るきっけはともかくとして、私たちせきずい損傷者に共通した、問題点がいくつか浮き彫りとなっています。

  彼が重度の頸髄損傷(四肢麻痺)という設定にも係わらず、指が一本だけ動いたり、首から上が自由に動きすぎるという不可思議な仮想の世界はともかくとして、一瞬の不幸で世の中が変わる。今までに自分が存在しなくなる。このせきずい損傷の怖さ。「明日が我が身」。そんな啓発をこの映画を通して多くの人に伝えることが出来ればと・・・・・・ 

*「ボーン・コレクター」の配給元[ソニーピクチャーズ」さんのご協力により全国の映画館で約10万枚の基金チラシが配付されます。<写真、略>


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