会報4号
歯の健康管理 ある歯科医より
せきずい損傷者の歯の手入れ
- 口腔内の細菌を減らすこと――自分で磨くことができない場合は、いつでもいいですから、洗口剤で口腔内を濯ぐ。 洗口剤がない場合は、お茶等を飲むときブクブクしながら飲みます。
- 口腔内をブラッシングする場合、歯と歯肉に別けて磨くこと―― 歯は磨きすぎると歯茎のところが磨耗して水等に知覚過敏を起こしてきます。それから痛みを伴ってきます。歯肉は少し強く磨いても大丈夫です。歯肉は少し退縮が起きるかもしれませんが、磨いているうちに出血したら止まるまで弱く長く磨きます。そのときにブラッシングで傷ができないようにします。
- 予防方法
【虫歯】 フッ素塗布を行う。日本ではフッ素による副作用が問題となり、あまり力を入れていませんでしたが、これは効果があります。家にいてもフッ素の洗液を使うことができます。
私の診療室で子供の初期の虫歯にサラホイドを塗布することがありますが、経過をみますと虫歯の進行が抑制できることがあります。しかしこれは、歯の象牙質が黒色になるため、黒色になるのがいやな人には使いません。歯科に通院が難しい患者さんには特に臼歯部において有効だと思います。
【歯周病】 若いときからのブラッシングにより予防できます。歯周病になってしまった人にも、ブラッシングである程度まで歯周病の進行を押さえたり、改善することができます。ブラッシングの方法は、弱い力で長く行い、歯ブラシと歯間ブラシとデンタルフロスを使います。少し面倒かもしれませんが、実行できるとよい結果がえられます。
通院ができれば、年一回のスケーリング(歯石を取 る)ルートプレーニング(歯根を歯石がつかないように滑沢にする)をするといいと思います。
【智歯周囲炎】 (親知らずが腫れる)
20歳頃に起こります。下顎か上顎がはれて口が開きづらくなり、痛みを伴います。予防はできませんが、わかっていれば、受診することなく口腔洗浄と抗生物質で、一時的に直ります。
* 歯に関するご質問等がありましたら、「日本せきずい基金」事務局を通して、専門の歯科医がお答え致します。
★ 読者プレゼント
笹井 裕子 著 あの子の笑顔は永遠に
体操少年 笹井健二・19歳の生命の証
■ 本書を無料でプレゼントします!。
希望者は事務局までメール・葉書で、住所・氏名・電話番号を明記の上、お申し込み下さい。
* 呼吸器を利用しているせきずい損傷者の生活が克明に記録された本です。自立への努力、院内感染、隔離。自宅療養への決断から準備へ。そのさなかの母親自身の発病、緊急入院と手術。協力者との出会い。スピーキングバルブをつけての発声練習。周囲の人々の「人間らしさ」。母親による24時間介護の在宅生活……その4年目のベンチレータの故障による死。体育クラブ側の原因隠し、裁判闘争。心臓マッサージと救命に対する応急手当を身につける必要性、等々。
【投稿】 再生医学の講演を聞いて
川原むつお(北海道)
7月21日、札幌市教育文化会館で行われた京都大学再生医科学研究所名誉教授・筏義人氏の講演会「人のからだはどこまで再生できる?」に参加しました。
講演では50枚以上のスライドを使い、再生医学の歩みから現状、未来への展望などについて語られました。
中枢神経については言及されませんでしたが、ほんの数ヶ月前に米国の研究者が手指の関節の再生に成功したとの紹介があり、再生は単一の器官ごとでという漠然とした認識しか持ち合わせていなかった私には、複数の器官によって構成される関節が再生されたことは大きな驚きでした。
教授は、この分野における進歩は確かに目覚ましいものがあり、この先どうなっていくのか予測は難しいが、基礎的な研究の成果が臨床応用に直結するわけではなく、再生医学に対する過度の期待は禁物であると強調されていました。
我々もクールに注目していきましょう。
■ 報告
障害への社会的理解をドール元米国共和党院内総務との懇談会
1999年6月25日 、ホテルオークラ(東京)において米国連邦議会の有力政治家であったボブ・ドール氏と患者・障害者団体との懇談が行なわれ、日本側からは3団体が参加した。
・日本せきずい基金(大濱理事長)
・全国脊髄損傷者連合会(妻屋会長)
・日本オストミー協会(阿部副会長)
▼ドール氏 私は第2次世界大戦中にイタリア戦線で脛骨の一部を損傷し、完全な麻痺状態に陥りました。その後、徐々に歩けるようになりましたが、今でも右手は完全に麻痺し、左手の感覚も完全には戻っていません。
私は米国議会では、障害を持つようになった人が社会の中心で再び活動できるようにと、障害者関連の法案を通過させてきました。
アメリカでは、脊髄損傷に関して、政府からの研究資金の調達、また、民間のいろいろな方面からの援助が得り、脊髄損傷やオストミー関係でもかなり状況が改善されました。
91年に、私は前立腺癌になりました。アメリカでは、一般的に男性は前立腺癌のことを話したがりません。恐らく日本では、もっとそうでしょう。しかし、最近になってアメリカでは状況が少し変わってきました。フォード大統領の奥様のベティー・フォード女史がご自身の乳癌をオープンに話したあたりから、「健康について色々と話してもいいのではないか」といった風潮ができてきました。プロゴルファーのアーノルド・パーマー氏や、湾岸戦争で指揮を執ったシュワルツコフ氏などの著名人が、自分たちが前立腺癌になり、手術を受けたことをオープンに話しました。彼らの活動によって認識が変わってきました。
日本と違うのは、脊髄損傷でも前立腺癌でも、最近アメリカの政府が、それらの医療の研究に積極的に資金を出すようになってきたことです。これは、とりもなおさず政治家の方たちの認識が高まったことです。
脊髄損傷、前立腺癌のみならず、後遺症の頻尿、ED(勃起不全)などといった問題もオープンに話されるようになり、特にEDに関してはアメリカの泌尿器科関連の協会が積極的なプロモーションを始めています
日本の国会でこれらの問題が取り上げられるためには、やはりメディアの力を使うのが最も有効だと思います。アメリカの場合、困っている人にサポートを与えることに義務と責任を感じて報道するメディアがあります。日本においても、そういったメディアの協力を仰ぐことが重要ではないでしょうか。
皆様の声が国会に取り上げられることが一番重要です。そのためには、皆様がどういった問題で悩んでいるのかを世の中に知ってもらう必要があります。それは大変なこととは思いますが、同じ障害を持つ方々のために、そうした活動をする義務があると思います。メディアに取り上げてもらう活動をぜひ積極的にやって頂きたいと考えます。
皆様のゴールについて、私も心の中でわかっているつもりです。そのゴールが達成されるよう心からお祈り致します。
▼日本オストミー協会 私たちの会員は、直腸癌、膀胱癌などの手術によって人工肛門、人工膀胱を持っています。30年前に設立され現在会員数が1万2000名です。日本におけるオストメイトは推定20〜30万人です。
表面化しやすいオストメイトの問題は、排便、排尿が主なものです。性機能の問題はなかなか表面に出てきません。日本ではタブー化され、オープンになることが非常に少ない。
1989年頃から協会として性機能の問題を取り上げようと、全国的なキャンペーンを行ないました。当時は、医師の指導により、男性の性機能障害の治療として塩酸パパベリン注射とプロステーシスを紹介しました。最近は陰圧式補助具がはやってきています。
バイアグラについては、各自の病状によって使えない場合もあるといった問題を抱えているため、協会としては今のところ積極的ではありません。
性機能障害について不満なり苦情を持っているのは会員の50〜60%と推定しています。最近は、「女性の性機能障害の問題も考えてもらいたい」という要望が女性オストメイトから出されています。
▼全国脊髄損傷者連合会 1959年に神奈川県で発足し、まず医療問題ではリハビリ、脊髄の治療、蓐瘡の治療、泌尿器では尿失禁や便失禁の問題についてずっと追究してきました。
性の問題はごく最近になってようやく少し騒がれ出したところですが、最も深刻なのは、若い脊髄損傷者が結婚して子どもが欲しい場合です。どの医療機関でどういった治療をするのかかも良くは知られておらず、大きな悩みとなっています。最近は脊髄損傷者でも一部は子どもが生めるような時代を迎えました。しかし大きなハンディを持っていることは明白なのに、この領域の医療費はすべて自己負担です。
EDの治療薬であるバイアグラも、根本治療にならないという理由で厚生省は保険を適用しませんでした。またわれわれは新たな課題を背負ったと思っています。
▼日本せきずい基金 私たちは全国脊髄損傷者連合会のバックアップで3年程前に立ちあがりました。性や脊髄再生といった医学的な問題を積極的に取り上げるなど、世の中に問題提起していく活動を中心に据えています。
【質疑応答】
▼日本オストミー協会 性機能障害の問題が解決されれば、過半数の仲間が再び昔の生活に戻れるという重要な問題です。しかし、皆が黙っているため、なかなか話題になりません。
▼ドール氏 日米間で性の文化が大きく違うとは思いません。誰かが声高に言っているかどうかが違いを生んでいるいるのです。聞く耳を持っている人を探すこと、政府に働きかけることが一番有効だと思っています。
これまでも世界に大きな変化があったとき、常にその変化の最初は1人か2人によってはじめられました。それが200、2000、20万、200万と増えていき、最終的に皆が同じ問題を抱えていたことに気付くのです。誰かが一番初めにやらなければならないのです。
ところで、例えば東京で脊髄損傷者の会があるときに、そこには新聞やテレビの方たちが来て、ちゃんと記事にしてもらっているのですか?
▼日本せきずい基金 6月6日に大宮で、脊髄損傷者の性の問題を取り上げました。その中で、バイアグラも講演会の演題として含めました。全国から約 200人が集まったこの講演会については、共同通信社などが協力してくれて、国内各地の新聞に取り上げられました。
▼ドール氏 メディアの方たちにその問題を積極的に取り上げてもらうことが必要と思います。声高に訴えていかなければなりません。 これからは、皆さんが率先して、EDをオープンに話せる社会環境を醸成することが大切です。
事態が変化しない理由は、実はメディアや政治家といった人たちが問題を知らないことによる場合が多いのだと考えます。だから、まず知ってもらうことが第一の課題だと思います。
携帯できる手動運転装置について
(PHC)
ご存知かと思いますが、この装置はほとんどのオートマチック車に取り付け可能です。重量も軽く、持ち運びも楽です。
この装置があれば、レンタルする自動車がないという事態は解消されます。取り付けは、慣れれば5分くらいでできます。
安価ではありませんが(94,395円 税込)、ご興味のある方は事務局までお問い合わせください。
日本せきずい基金
発 会 式
1999年10月2日(土)
江戸川区総合文化センター・ホール
(12時開場 13時開演 17時半より交流会)
【構成】 …………………………………………………………………
- 「日本せきずい基金」設立にあたって
日本せきずい基金理事長 大濱 眞
- 「せきずい再生は21世紀に可能か」
京都大学再生医科学研究所 清水慶彦教授
- パネルディスカッション
「21世紀に望む――医療と福祉」呼吸器使用者、
重度障害者からの報告と討論
(コーディネーター)浜松医科大学看護学科 松井和子教授
- 「民話とおしゃべり」 (車イス女優) 萩生田千津子さん
- 交流会 (別室にて 〜19時半)
* 会場は、都営地下鉄・新宿線で、新宿駅より約30分、
船堀駅前です(有料駐車場あり)* 参加希望者は別紙にてお申し込み下さい。
(車椅子・介助者・宿泊・送迎など応相談)* 入場無料 (交流会参加費 1000円/予定)
ぜひご参加下さい!
【編集後記】
梅雨明けの7月24日、渋谷駅南口周辺で「基金」の定例活動である街頭募金・周知啓蒙活動を行った。無料で、せきずい損傷関係者に様々な情報を送りたいという信念から、この活動を行っている。
真冬の2月頃は、使い捨てカイロを手・足・肩などに6個くらい貼りつけて、寒さをしのいで活動してきた。この日は、ボトル1本のミネラルウォーターを頭のてっぺんからを掛け、Tシャツも短パンもびしょびしょに濡らして体温を下げた。そのくらいの対応では、頭の芯がぼ〜っとしてきて倒れるのではないかとの不安でいっぱいだったが、声をおなかの底から出すように訴え続けていると、時間の経過と共に気分は爽快になり、満足感・充実感のようなものが得られてきた。
全員が一生懸命になることで連帯意識が生まれ、身体を気遣ってくれる皆の配慮の中にぬくもりを感じて、体は疲労困憊ではあるが、そこには「何ものかが生まれている」ことを実感させられるひとときだ。
ビラを受け取ってくれた人の中には毎回、「住所を教えてほしい」「会報を送って下さい」「せきずい損傷で苦しんでいる知人がいます。ぜひ頑張って下さい」などの言葉を掛けてくれる人々がいる。
手・足がまったく動かない高位頸髄損傷者は、暑い時には暑いところで、寒い時には寒いところで活動をしていると、肉体的にも精神的にも丈夫になることが実証できた。温室ばかりにいると、温室にしか居られなくなってしまう。
この街頭募金・啓蒙活動に「日本せきずい基金」の心身の活力源があるような気がする。 <K>
以上 99-8-25