|
【目次】
|
〔報告〕
若年性脊髄損傷者のトータルケア
第44回日本リハビリテーション医学会学術集会
シンポジウム
* 2007年6月6日~8日、神戸ポートピアの神戸国際会議場で第44回リハビリテーション学会が開催された(会長:住田幹男関西労災病院リハビリ科)。
2500人以上が参加する盛会であったが、脊髄損傷関係でも多くの報告がなされた。本号では青年期の脊損の問題に関するシンポジウムの概要を、抄録と要約筆記からまとめた。〔文:基金事務局〕
1979年のせき損センター開設以降2006年までに急性期(受傷後14日以内)から治療した脊損者は1962例。内、1235例(63%)が頚椎頚髄損傷。2006年度は48時間以内のヘリ搬送が41件と半数を占めた。また昨年度から福岡県内で脊髄損傷者の患者登録を開始した。
報告1. 若年者(11~29歳)脊髄損傷の急性期治療から社会復帰までの自験例 総合せき損センター 植田 尊善
2007年1月に10代、20代の頚椎頚髄損傷237例の聴き取り調査を行った。3例が死亡し生存例234例中、203例から回答が得られた(有効回答率86.8%)。
203例中、上位頸損が13例、中下位頚損が190例。
203例中、復学・復職は96例(47.3%)。
退院時にFrankel-A、B、Cの重度麻痺は104例で、それらの復学・復職は32例(30.8%)。
Frankel-DEでは99例中64例(64.6%)だった。
急性期から社会復帰を目指しての一貫した治療を行えば、頚椎頚髄損傷において10代、20代の症例の約半数が社会復帰を果たすことが明らかになった。
男性脊損者はEDと射精障害を高率に来たすだけでなく、精子運動率の低下を主とする精液所見の悪化により、挙児のために顕微受精などの高度生殖医療(ART)を要する場合が多い。
報告2. 性機能障害の実態と対策――性機能アンケート調査結果と勃起・射精障害への対策法 兵庫県立総合リハビリテーションセンター 泌尿器科 仙石 淳 ほか
女性脊損者は陰部感覚の低下などにより性行為における満足度が低下しており、妊娠・出産においては自律神経過反射(AD)や尿路管理などの問題、一般妊婦に比べ帝王切開の比率が高いこと、育児の問題があり、妊娠・出産に踏み切るハードルは低くないものと推察される。
これらについて、平成15年度のアンケート調査(N=158)を紹介した。性的勃起については「全くなし」が61名(39%)で「殆どなし」と合わせて60%だった。反射性勃起は「全くなし」「殆どなし」が40%で、損傷レベルが下がるほど低下する。受傷後に実子を得た者は7%だが、1/3が実子を希望。
EDにはバイアグラなどのPDE5阻害剤が、射精障害にはバイブレーター法や電気刺激射精法(EE:electroejaculation)が主に用いられている。
バイアグラは25mg錠は殆ど効果がなく、最近は50mgを投与している。これをよく使う人は25%で、78%がある程度有効であった。
脊損男性は陰嚢の温度が高く精子の状態も冬より夏のほうが悪い。放熱しやすいようにした下着もある。
精液を電気刺激射精法の反復施行によりドレナージ〔排液〕して、精液所見の改善効果を調べている。
男性脊損者への泌尿器科的管理は、1)下部尿路機能障害、2)性機能障害、が対象となる。
報告3. 挙児希望に対するアプローチの実際 星が丘厚生年金病院泌尿器科 百瀬 均
下部尿路機能障害は、腎機能障害を通して生命予後に影響するため多くの研究が行われ、現在では排尿管理法はある程度確立したものとなっている。性機能障害は生命予後に影響しないことから、あまり積極的に研究されてきていない。
しかし、急性期管理の成績向上と排尿管理を含めた慢性期管理法の発達を背景に、患者のQOLの向上が新たな課題と認識され始め、その重要な要素の1つである性機能に対する研究が活発に行われるようになった。
射精障害に対しては(PVS:バイブレーター法)が第1選択で、無効な場合に電気刺激射精法(EE)が行われる。共に保険適応ではなく、いくつかの施設でEEが自費診療として行われる。
脊損男性の性機能障害の治療は、性交か挙児か、目的を明確にすることが必要である。
電気刺激射精器(シーガータイプ)
バイブレーターによる順行性射精の誘発率は、頸損 :83%(5/6人)、胸損66%(2/3人)。その際に痙性を誘発することが多く血圧も上昇する。EEでは60%に順行性射精が誘発されるが、精子運動率が低く妊娠へ持って行くことが難しい。
ではEEの繰り返しで精子運動率はどのように変化するか。5回前後までは運動率が向上するが15回以上繰り返しても平衡状態になる。最近5年間で4人が挙児に成功したが、内1人は精子運動率が5%で、不妊クリニックで行った。
星が丘の泌尿器科だった先生が開設した枚方の山田クリニックと連携して行っているが、山田クリニックではこれまでに17人(うち1件は双生児)の挙児に成功している。2例はTESE(無精子症に対する精巣精子採取術)で、他はEEで行っている。二分脊椎の男性の挙児も1例ある。
1999年のSpinal Cord誌には「最も効果的な生殖技術がすべてのカップルにベストではない」とある。精子の採取は保険対象外で1回70万円ほどかかる。人工授精による女性の心身の負担も考慮しなければならない。制度が未整備な中で国内数ヶ所でこうしたことがかろうじて行われているのが現状である。
若年脊損者のトータルケアには、①分野(職種)や地域を越えた横断的な連携と、②時間の流れ(加齢)を含む縦断的なフォローアップ、の2つの側面がある。
報告4. 若年脊髄損傷のトータルケア――産業保健の観点から 産業医科大学リハビリテーション医学講座 和田 太
脊髄損傷治療の拠点病院の数は限られており、遠く離れたそれぞれの地域(コミュニティ)に戻った場合に、十分なトータルケアを望むことは実際にはかなり難しいのが現状。それぞれのコミュニティでケアに当る担当者にも残念ながら、脊髄損傷のケアに対する基本的な知識が十分浸透しているとは言いがたい面もある。
脊髄損傷者の医学的管理が進歩し、脊髄損傷者特有の問題のリスクが徐々に減りつつある。しかし、活動量や食生活などのコントロールは健常人の基準とは若干異なってきているため、メタボリックシンドロームに代表される生活習慣病のリスクが高くなっている。
若年者では復職可能なケースが多いので、職域で過ごす時間も長く、産業保健のフィールドはトータルケアの一部を担う部分と考えられる。
就労脊損者の健康管理上の問題点 授産施設と福祉工場の機能を持つ障害者雇用施設の産業医をしているので、その観点から問題点を紹介したい。50名のうち8名が脊髄損傷で、レベルはC7~L3。4名が入所者。いずれも正規雇用でワープロやチラシの折込など座位作業が多く、年度末には残業もこなしている。
この8名の脊損者の健康状態を見てみると、関節可動域(ROM)では股関節・膝関節の拘縮はいないが、足関節では7名中5名に見られる。拘縮予防をしていないが3名、自主訓練が4名で、通所訓練は無理なため0名である。
褥瘡対策では、ベッド+敷布団が3名で、1名は褥瘡あり。クレーター(無圧)マットは2名で、1名のものは8年前に購入したものでかなり薄くなっている。他の2名は家庭用マットレスだった。褥瘡の知識はあるが、継続的に予防策ができない、あるいはやっていないことがわかる。
脊損者は脂肪と筋肉の組成が健常者と異なるので成人のBMI(体格指数)の標準は22.0だが、そのまま適用できない。高脂血症は2名おり、BMIは23.4と16.6で、BMIはそれほど高くない。
定期通院困難は7名中6名、表皮剥離程度では自己処置するものは7名全員であった。
就労脊損者の健康管理上の問題としては、一次予防として成人病を予防する生活習慣の形成と二次合併症予防の正しい知識・管理が必要である。二次予防(早期発見)としては、疾病・障害発生時の対応の遅れ、医療機関の受診頻度の減少が問題である。
若年脊損者のメタボリックシンドロームの予防 労災病院脊損データベース(1999-2000)で心疾患の罹患率は一般が0.20%に対し脊損者は4.2%である。米国での脊損者の死因は心疾患が肺・腎疾患よりも多く、糖尿病は20%と、一般市民の3倍に達している。
予防にはかかりつけ医と連携した個別アプローチが必要である。個別カウンセリングでは産業保健婦のインテーク面接(初回面接)による動機付けの支援とその後の看護師のチェック、実行支援では運動プログラムの作成、食生活のチェックと改善、ダイエットプログラムの作成、ダイエットグラフの活用が効果的。
生活習慣形成のアプローチとしては、全体的にはメタボリックシンドロームの啓蒙、社内に訓練・運動場の提供、定期受診しやすい環境を提供すること。
若年者の生活習慣の一次予防としては、行動変容が必要であり、認知科学に基づくテクニックとしてPro-chaskaのステージ理論*がある。
*: 行動の変化を、無関心期、関心期、準備期、実行期、 維持期の5つの段階に分類し、それぞれの段階に併せた保健指導の方法が提示されている。禁煙教育で知られる。
行動変容のための支援体制としては、基幹病院と地域病院の連携による地域のサポート、多職種による多面的サポートが挙げられる。こうした体制を誰が構築し、誰がコントロールするのかが課題である。
〔短信〕
美唄労災病院の統合問題
北海道地域の脊髄損傷医療の中核的役割をになってきた美唄労災病院の統廃合問題は、夕張市民病院との統合で決着した。
当事者団体は近隣の岩見沢労災病院への機能移転を求めたが、美唄市民病院に統合されることになった。
「新市民病院で脊髄損傷医療の継続が困難になった場合には道と労働者健康福祉機構がその存続を確実にする」との武見敬三厚生労働副大臣名の文書が、全脊連及び日本せきずい基金宛に6月15日付で示された。
ホンダラグビー部
より3度目の募金
(写真)6月22日目黒あいアイ館での贈呈式
6月22日、社会人ラグビー・ウエストリーグで活躍する、ホンダ・ラグビー部(鈴鹿市)から昨シーズン中に集めていただいた募金の贈呈を受けました。木原ディレクターから24万5552円の募金を受け取りました。
また、各大学の医学部のラグビー部のトーナメント大会=第一三共カップメディカルセブンズが5月に熊谷サッカースタジアム(埼玉県)で開催され、12万3570円が振り込まれました。昨年に引き続き2回目の募金をいただきました。
せきずい基金へのカンパにご協力ください
財源不足――ここ数年、私たちは『脊損ヘルスケア』やリハビリDVD『ステップ by ステップ』を制作、希望される皆様へ無償配布してきました。これらは、毎年400~500万円という多額の助成金を受けて初めてできる事業で、制作には多くの人手と時間を要しますが、助成金を人件費に使うことは認められておらず、役立つ資料を作ろうとするほど赤字にならざるを得ない現状があります。
役員はボランティア――役員の多くが当事者で、無報酬です。数人の事務局スタッフの待遇も最低限のものです。基金の活動にご賛同頂けましたなら、活動を続けられるよう、ぜひご支援をお願い致します。
◎ 「ヤフーインターネット募金」を開設しました。
http://volunteer.yahoo.co.jp/donation/
http://volunteer.yahoo.co.jp/donation/detail/1770001/index.html
〔会計報告〕
特定非営利活動法人 日本せきずい基金
平成18年度収支計算書
(平成18年4月1日~平成19年3月31日)
〔注記〕
*1 福祉医療機構548万円、損保協会300万円
森村豊明会200万円、身障者雇用助成192万円*2 個人600万円(約750件)、
団体350万円(内、ラグビー関係180万円)
ヤフーチャリティオークション45万円*3 障害者雇用助成金による借上げ社宅
及び通勤用駐車場代の年額200万円を含む◎ 単年度収支では、助成金の未執行分190万円がある
ため、実質160万円の赤字決算となる。
〔受傷後の生活〕〕
これも私の人生
C6B2! 頚椎損傷半田 敏明(40歳)
約9年前(1998年)の31歳の夏、湘南の海で遊んでいて頭から飛び込み、頚椎損傷となる。大船の病院に救急車で運ばれ、手術を受けて入院。
最初の1ヶ月ほどは身体がまったく動かず、ベットで身体を起こすことも出来ず、個室でひっそりと寝ながらの生活が続いた。その後、大部屋に移った頃は肩が少しだけ動くようになっていた。ベットも20度くらい起こせるようになった。そして、毎日少しずつだが回復していった。しかし、脊髄を損傷しているので回復といっても腕が上がる程度でしかない。指先はまったく動かない。まず最初にやりたかったことは、自分で食事をすることだった。
頚椎損傷になって 泣くことはなかった。こんな身体になり親に申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。
自分も確かに辛いのだが、親兄弟、親戚、友人に心配をかけて申し訳ないと思った。そんな自分が出来ることは、その人達に世話を掛けずに自立していくことだと思いリハビリに励むことだった。
しかし、身体が動かなくなったら落ち込むのが当たり前だと思う。自殺をしたくなる気持も解かる。でも、自分はそうではなかった。まず、中途半端にしている仕事の処理をどうしたら良いかと悩み指示を出した。まったく動かない身体がどこまで回復するのかを考え、この先の生活をどうしたら良いかを考えた。命が助かったのだから楽しく生きて行きたいと思い、長い間クヨクヨして落ち込んで無駄な時間を過ごすより、今の時点で頭を切り替えて、楽しい人生を少しでも多く過ごしたほうがハッピーだからだ。ハッピーに生きるために、焦らず1つひとつの事をやれるようにしていった。
3ヶ月がたった頃、本格的にリハビリをするために神奈川県総合リハビリテーションセンター〔神奈リハ〕に移った。そこには同じ障害を負った人達やさまざまな障害を抱えた人達が大勢いてびっくりした。こんなにも多くの人達がと。
移った頃は自走用の車椅子に乗ることが出来なかったが、そこはやはりリハビリの専門病院。しばらくすると自分にあった車椅子を貸してくれて、病棟からリハビリ室まで自走していくように言われた。それまでリハビリ室まで車椅子を押してくれていた天使のような看護師さんが、鬼に思えた(笑)。
最初の病院でリハビリが始まった頃は背もたれの高い車椅子に乗せられていて看護師さんに押してもらって移動していた。リハビリ室で起立台に乗り、ゆるい角度から徐々に起き上がるようにしたり、腕を動かすことをしていた。リハビリを終えて病棟に戻っても何もすることがないので、廊下を自走するようにその車椅子のハンドリムにゴムを巻いてもらい滑らないようにしてもらって自主トレを始めた。もともと自走用ではないので、重いし、腕の力は無いし、すごく走りづらかったが頑張った。しかし、その後熱を出して3日寝込んでいた。そんな繰り返しだった。まだ自分の身体を解っていなかった。
このように、まともに自走したことが無いような私に自走でリハビリ室に行けと。リハビリ室が果てしなく遠くに思えた。もうリハビリの時間が始まっているのにぜんぜん進まない。遠~い。鬼!。押してもらえば数分で着くのに果てしなく遠~い。そんな最初の遠征は、数百メートルを20分から30分かけて自走した記憶がある。思えばそれもリハビリだったのだ。鬼になってくれた天使の看護師さんに感謝している。
リハビリをするようになり色々な人と話しをするようになってから、「頑張って」という言葉が無責任な言葉に聞こえてきた。俺は頑張っているのだから頑張っていない人にその言葉を掛けろと思った。「頑張って」と声を掛けられると、「お前が頑張れ」と返すようにした。だが、頑張っている人に言われると素直に「はい」と答えていた。「頑張る」という言葉は人に言われるものではなく、自分に言い聞かせるものだと思うようになりました。
入院生活が終わる頃、何1つ自分では出来なかった。その後リハビリを続けるために更正ホームという施設にお世話になることにした。車椅子からベットや車への乗り移り。自分1人での入浴や着替えなどを身につけた。自分の身の周りのことは自分で出来るようになった。長い年月が過ぎていた。
身の回りのことが出来るようになった頃から仕事をすることを考え始めた。健常の頃は石屋を営む父と一緒に働いていた。そんな私はコンピュータとは無縁だったが、覚えなくてはと思い職業能力開発校へ入校して、2年間コンピュータを勉強し、今は某大学の事務で働いている。
今の楽しみはウィルチェアーラグビーとツインバスケットというスポーツです。水泳やチェアスキー、ビームライフル、スカイダイビングなどもした事があります。
頚椎損傷になってはや9年。今振り返って思うことは、色々な人に支えてもらい自分は生きているということです。車椅子の生活は決して楽しいわけではありません。なので、これ以上脊髄損傷者や他の障害・怪我などをする人達が1人でも減ってくれることを願っています。
最後に、頚椎損傷者になっても、これが私の人生です。楽しく生きて行けるように頑張ります。
| 〔セミナー報告〕 | |||
|
|||
![]() |
|||
▼ 2007年5月13日、東京のヴィラフォンティーヌ汐留にて、「骨髄間葉系細胞を用いた神経・筋変性疾患への再生医療の展望」をテーマに第5回再生セミナーを開催した〔参加者80名〕。
冒頭、出澤真理京都大学准教授が骨髄間葉系細胞からシュワン細胞、神経細胞、骨格筋細胞を作り出していく分化誘導モデルについて報告(概要は基金ニュース第32号参照)。次いで國府田正雄医師(千葉県立東金病院整形外科部長)が出澤先生の誘導したシュワン細胞と神経前駆細胞のラットやマウスの脊損モデルへの移植研究を報告した。本号では、国府田報告と討論の要点を紹介する。〔文:基金事務局〕
シュワン細胞の可能性と限界 脊髄では邪魔する物質が沢山あって、損傷されたあとに突起が伸びることができない。これに対して末梢神経系では損傷された軸索が再生できる。
報告: 報告:神経系に誘導した骨髄間葉系細胞を用いた脊髄損傷治療 国府田 正雄
そこで、80年代からまず末梢神経を細かく切って脊髄の損傷部に移植することやシュワン細胞を移植することが行われ、いずれもそれなりの効果が得られた。
ところが実際に移植するには末梢神経を一部切り取らなければならないが、それによる痺れや知覚の低下という合併症の可能性が否定できないこと。また幼若動物から採ったシュワン細胞はよく増えるが、成体動物からでは増え方はかなり悪い。細胞の必要量が得られない可能性が問題として浮かんでくる。
骨髄間質細胞の利点 骨髄間質細胞は骨髄の穿刺液からでも容易に培養でき、自分の細胞を培養して使う自己移植が可能で、増殖能力も高い。脊髄損傷への治験が 関西医大やチェコで実施され、脊髄損傷への細胞治療の1つの有望な候補とされている。しかし骨髄間質細胞をそのまま脊髄に入れても、何故か細胞があまり生き残らない。
骨髄間質細胞は必ずしも均一な細胞ではない。それをただ脊髄に入れると、移植後にどの方向に細胞がいくのか、そのコントロールが極めて困難である。また、そののまま脊髄内に入れて、神経系になっているかどうか、見解が分かれてる。実際に我々がやっても、どうも神経系にはいかない。そこで、神経である脊髄内に神経ではない細胞をいれ、しかも違うまま生き残っても大丈夫か、という懸念が出てくる。そこで間質細胞を神経系にあらかじめ変えておくことがいいのではないか、と考えて我々は検討を進めている。
骨髄間質細胞由来シュワン細胞 末梢神経から採ったシュワン細胞と、骨髄間質細胞を出澤方式でシュワン細胞に変えたものでは、形のうえではほとんど区別がつかない。それから骨髄間質細胞由来シュワン細胞には、シュワン細胞に特異的なタンパク質を発現していて、これは骨髄間質細胞にはないものである。
骨髄間質細胞由来シュワン細胞はシュワン細胞と骨髄間質細胞両方のメリットを兼ね備えていると考えられる。採ってくるのも培養も簡単、増殖能力は非常に高い。事前に神経系にしているので、脊髄に入れたときに細胞の生き残りが良いのではないか。あるいは事前にほとんど100%近くシュワン細胞様に変わっているので、骨などの違う細胞になることは考えにくい。
最初の実験は、ラットの脊髄完全切断モデルに対してこの骨髄間質細胞由来シュワン細胞を橋渡しするように移植した。移植6週後に脊髄を取り出して見てみると、かなりの率で、移植したものが太い組織で連続して架橋され、両方の切れた脊髄がつながっていた。
移植後に、実際脊髄のなかで本当に誘導したシュワン細胞のままかどうかを確認した。その結果、骨髄間質細胞由来シュワン細胞は、脊髄へ移植後もそのままシュワン細胞の性質を保持していた。すなわち、入れたシュワン細胞が違う方向に行ったり元の細胞に戻った現象は確認されなかった。移植後の行動評価では、後肢の動きがはっきりしている。しかも後ろ足で体重を支えられるぐらいにまで回復したものも見られた。
回復後に入れたチューブをもう一度切るとその直後からまったく回復しない。これは移植したチューブ内の細胞によって神経が回復したことを示唆する。ビデオでは足の裏を接地しているのがわかる。非常に特徴的なことは、後肢だけで壁にもたれて立つという、かなり足の力がでてこないと出来ない動作が見られる。
ラット圧挫損傷モデル 次に、本来の脊髄損傷に近いモデル、すなわち脊髄を圧挫したようなモデルでの効果を検討した。損傷1週間後に、細い針で損傷部に直接細胞とゲルを移植した。骨髄間質細胞由来シュワン細胞を入れると空洞がかなり縮小した。組織を何か保護する作用がありそうだった。また誘導することによって生き残る細胞の数が増えた。
骨髄間質細胞のままの神経系ではない細胞はなかなか生き残らない。それがシュワン細胞に誘導することで生き残りが図れた。完全切断モデルと同じように、脊髄の中の神経の線維を数えてみた。骨髄間質細胞由来シュワン細胞を移植したラットでは、損傷部より、より足に近い(尻尾に近い)側でセロトニンという運動に関与する線維が多かった。
ヒト骨髄間質細胞の脊損ラットへの移植 千葉大整形外科で手術する時に、倫理委員会を経て患者さんの承認を得て骨を一部削って採取した。その骨から間質細胞を培養し間質細胞由来シュワン細胞に誘導し、これをラットの脊髄損傷モデルに移植した。
ヒトの細胞をラットに入れるので、免疫抑制剤を使用しても拒絶反応が起こる。そのため細胞は非常に生き残りが悪かったが、ある程度神経線維が伸び足も動くようになって、シュワン細胞もそのままでいてくれ、人由来の細胞でも効果あることが確認できた。
骨髄間質細胞由来シュワン細胞は、ラットの脊髄の圧挫損傷モデルで空洞を縮小し、神経線維を伸ばし、足を動くようにした。他の細胞になったり、骨髄間質細胞に先祖がえりしたりすることは基本的にはなく、シュワン細胞のままだった。
神経前駆細胞の脊損マウスへの移植 神経前駆細胞は、Notch〔ノッチ〕という遺伝子を入れて神経細胞にする前段階にするもの。脊髄では脳とは違い神経細胞自体を入れても行動の回復にはあまり関与しないため、その一歩手前の神経前駆細胞を入れた。
出澤方式で誘導する細胞は、米国のサンバイオ社で製造段階に入っている。我々は同社との共同研究で細胞を頂き、マウスの脊損モデルに入れた。約1週後に細胞を移植して経過をみた。するとヒト骨髄間質細胞由来神経前駆細胞は、脊髄内の辺縁部の白質に生着していた。これがなんの細胞に分化したかは検討中。
細胞を移植されたマウスでやはり神経線維の数が明らかに増え、伸びていた。行動面でも明らかに回復が見られた。すなわち骨髄間質細胞由来神経前駆細胞をマウスの脊髄の圧挫損傷モデルに移植したら、神経線維の伸びを促進し、足の動きを回復させた。
サンバイオ社では脳梗塞に対する移植治療についてFDAへの申請を進めているが、彼らは我々のこのデータをもとに、脊髄損傷に対しても米国での移植療法についてFDAへの申請の準備を開始した。
【まとめ】 神経系に誘導した骨髄間質細胞、すなわち骨髄間質細胞由来シュワン細胞や骨髄間質細胞由来神経前駆細胞の利点は、骨髄細胞なので採取も培養が簡単でどんどん増える。そのため自分の細胞を使って移植治療ができるのではないか。これらを移植前に神経系に分化誘導していることで、分化がしっかりコントロールされていることにある。
問題点は、分化誘導に時間がかかること。ラットでは脊髄損傷1、2週後に細胞移植するのが適切と現在考えられている。その後の慢性期では、瘢痕が出来てしまい、細胞を入れてもあまり効かないと言われている。移植時期に本当に間に合うかどうかも含めて解決すべき問題である。
また長期の経過観察が必要である。入れて1ヶ月半だったら良かったが1年置いても本当に元の細胞に戻らないのか、そこまでは実はまだ検討できていない。
またNotchを遺伝子導入する際にプラスミド〔遺伝子の運び屋〕という安全なものを使っているが、そういう不自然な操作により本当にガン化しないかをもちろん検討しなくてはいけない。サンバイオ社では、免疫不全マウスの脳に入れて1年ぐらい観察してる。
損傷脊髄に何か細胞を入れて良くなったというとき、それはなぜか。細胞が良かったのか、細胞が出している物質が良かったのか、それは世界中の研究者が今頭を悩ませている。そこをブラックボックスのままでどんどん進めていくのもどうか。機能回復のメカニズムに関しても解明したいと思い色々と検討してる。
■ 質疑応答
―― 参加者から質問紙を回収し、出澤先生と
国府田先生にまとめてお答えいただいた。
国府田:【リエントリー】移植により移植部分のシュワン細胞のところで軸索再生が見られる。しかしそこからまた脊髄側に軸索が入っていくこと(リエントリー)がなく、そこでストップする。移植したシュワン細胞を軸索が通り抜けて末梢までいくことがもちろん理想です。しかし残念ながらそれは確認出来なかった。神経栄養因子を足すことによって、上からの神経線維がシュワンを越えて下までいったという報告。あるいは接続部にできてくる瘢痕を酵素で溶かしてやったら伸びたという報告もある。
もう1つの見方は、必ずしも脳から来る長い線維が全部再生しなくても、脊髄のなかで損傷された後に新たな回路が出来上がることによって、かなり機能が回復する。これを可塑性というが、最近ではそういったものがかなり効果があるといわれている。
【慢性期】 慢性期にただ細胞を入れても、損傷部にはグリア瘢痕や神経を伸ばさない阻害物質がたくさんあり、なかなか難しい。瘢痕のなかの物質を溶かすような酵素を入れたら良かったとかいろいろな報告がある。コンドロイチナーゼABCという物質の効果は、米国のACORDA社で臨床試験が進められた。ただ慢性期になると、例えば細胞、栄養因子、酵素などの何か単一の方法で機能再生出来るほど簡単ではないことを、実際にやっていて思う。もちろん瘢痕を取り除くような方法もいろいろ考えているが、慢性期に関しては本当に申し訳ないが準備中といった段階である。
【移植時期】 急性期と慢性期のどちらが細胞移植に適しているか。ラットでは約1、2週後とされているが人間ではいつごろになるかは、はっきりとした数字はない。ラットと比べてヒトは、瘢痕ができて慢性期になる時期がだいぶ遅いようだ。すごく大雑把に3倍ぐらいという人もいるが、これは定かではない。
ただ、急性期、損傷直後に細胞を移植することは逆に難しい面が多い。1つは移植細胞を急性期にすぐに準備できるのかという問題。また、関西医大の治験のときにもかなり論議されたが、損傷を受けた直後の本人も家族も動揺している段階で本当の意味での同意が得られるか、という倫理的な側面もあると思う。
また急性期は脊髄内の炎症が強く、この時期に細胞を入れても生着しづらい。急性期には、すでに安全性が確立された薬で効きそうなものを使うことが、副作用も心配せずに使える可能性が大きい。急性期の細胞治療は、個人的な見解としては基本的にあまり考えていない。実は我々千葉大では、ステロイドに代わる可能性がある薬の研究もしてる。
慢性期は、細胞移植も必須の1つだとは思うが、単独では多分難しいだろう。それはもう少し待って頂いて、瘢痕をなんらかで制御する方法、あるいは空洞を充填するような、化学的・生物学的な物や神経栄養因子などの組み合わせが必須だと思う。
【臨床応用】 ヒトへの応用は、正直なところ千葉大ですぐにヒトに出来る段階ではない。サンバイオ社ではまず、脳梗塞には出澤先生の開発された神経細胞の治験を検討している。脊髄損傷への神経前駆細胞の移植もFDAへの申請準備中ということで、それには少し時間が掛かるだろう。
あともう1つ。1回体外に取り出して、例えば遺伝子導入や、いろいろなファクターを加えて、細胞に加工した場合の安全性の評価では、ただ細胞を入れるのと比べるとハードルがもう一段高い。
受傷後の経過年数が経ちすぎていると回復効果に影響があるか――やはり筋肉なども当然落ちてきて拘縮も出てくる。損傷部以下の神経は生きているので回復がまったく見込めないということは無いが、条件としては悪くなる可能性は否定できないだろう。
出澤:【筋ジストロフィー】 筋ジスの方への移植を考えた場合、筋衛星細胞の移植は各筋肉1つひとつに必要になるか――変性して炎症を起こし組織が壊れている場合に、静脈から移植細胞を入れると、損傷部には比較的選択的に細胞が入っていってくれる。なにも加えていない正常な筋肉組織では、血流などを通してもほとんど入らない。筋ジスの患者さんの場合に組織破壊があって、比較的初期であった場合には血管などの投与方法でも細胞が十分に移植可能ではないか。そうでない場合には、筋肉1つひとつに筋肉注射で細胞を移植投与しなくてはいけない可能性がある。
【呼吸器依存者の場合】 筋肉に関するご質問で人工呼吸器をつけている患者さんにも治療は可能ですか――恐らく非常に進行すると、筋肉組織そのものが非常に硬くて、繊維性の組織に置き換わってしまう。その状態では、細胞だけを移植しても、非常に厳しい可能性がある。そこであまり瘢痕化してしまう前のほうが、効果は期待できるのと考えている。
【薬物療法】 筋ジスの原因には特殊なタンパク質が関係し、その薬が出来る可能性があると最近新聞記事にあった。先生の研究と薬の効果が重なるような研究システムは?――我々は細胞で試みている。筋ジスに対して遺伝子治療とか、筋肉の破壊を免疫システムを操作することで抑えようとする試みなどたくさんある。細胞には細胞の良さがあり、その他の薬剤なども十分に可能性がある。こうした利点を組み合わせた治療法を将来的に考えることも1つの解決かもしれない。
【ALS】 筋萎縮性側索硬化症には、この神経再生はもう1つ高度なのか――世界中の研究者、患者さん、患者団体から私に問い合わせがある。ALSは研究者の観点からは非常に難易度が高い。それは、運動ニューロンが選択的にやられていくが、それ自身は非常に高度なものだから。我々は最初にパーキンソン病への移植を考えている。
パーキンソン病の場合、ドーパミンという神経伝達物質が不足して起きると言われている。 細胞を脳の線条体という特定の部位に入れ、そこにドーパミンがあれば比較的症状が回復する。
ところがALSの場合は運動ニューロンの問題で、脊髄にあって、手足の末梢神経に軸索があって、筋肉を動かしている。この回路網を全部再建してやらないと本当にもとに戻るわけではない。そうなると再生しなければいけない距離も長く、第一、神経細胞の中でも運動ニューロンは非常に誘導する難易度が高い。現在我々も運動ニューロンの誘導法の開発を始めている。
【人工材料の活用】 骨髄由来神経細胞とシュワン細胞をシートなどのスカフォールド〔細胞の足場〕となるものを組織として移植できないか――まったく同感である。脳梗塞では、物凄く大きな範囲が脳が空洞化する。そこに細胞を一生懸命いれても移植した細胞がザーと流れていってしまう。こういう疾患の場合、組織そのものを再構築してやらないと移植しても意味がない。そうなると、細胞の足場とか、再生のための血管がどうしても必要である。栄養がないと組織は生きていけない。これらに総合的にアプローチする移植システムの確立も現在検討している最中である。
国府田:【神経線維はつながるか】 切れた末梢神経を我々も縫い合わせることがあるが、ずれて違う線維同士がくっついてしまう現象がある。再生脊髄がどうつながっていくかまでは残念ながら検討出来ていない。損傷部の下流を下降する線維は「ワーラー変性」により神経線維がダメになってしまう。この問題は次のハードルの段階として、研究が始まっている。
【注入は繰り返せるか】 たぶん物理的には可能。自己移植なので基本的には拒絶反応はない。ただし、現在のところ脊髄に直接注入せざるを得ないので、脊髄に何度も刺していいのかという問題は残る。
【痛み・痙性の可能性】 ラットに移植をして痛みがひどくなったという報告が出たので、痛みの評価も行っている。ただの骨髄間質細胞をいれたときにはひどい痛みが出たりはしていないようだが、まだ完全な結果は出ていない。移植治療などによって痙性が増すことはあるかもしれない。髄腔内バクロフェン注入法が最近保険を通り、それがかなり有効だと言われている。痙性がもし少し悪くなっても、バクロフェンで十分コントロールが効くのではないか。
【細胞の注入量】 ラットでは10の5乗、10万個の桁で入れている。単純な体重換算では、人は100~200倍となる。培養した細胞の濃度があまりにも濃いと、注入しずらい。その濃度の限界や入れる量にはっきりした決まりはない。わからないというのが正直な答えである。米国のGeron社が計画している第1相試験では最初は細胞数を少なめに何例かに入れて、その後10の7乗ぐらいまで細胞数を増やすといわれており、その辺が将来的には参考になってくると思う。
基金:出澤先生のような研究は、世界的にも研究されているのでしょうか。
出澤:骨髄間葉系をいろいろな変性疾患に応用しようという研究はたくさんある。骨髄間葉系細胞に関しては、とにかく操作しないで身体に入れれば、そこで神経なら神経、心臓なら心臓になるという方向で研究されてきた。趨勢としては、それはちょっとどうかなと思う。細胞はそれなりの方向性にきちんと分化させてやらないと、生体にはまず生着して機能していかないということから、本当の意味での細胞を置き換える移植治療にはつながらないのではないかというのが私の個人的な考えである。
いずれ何かしらの細胞が使えると決まったら、次にはどうやって失われた機能を取り戻すか、組織を再建するかということになる。血管を誘導する、組織をもう一回作り直すなど、研究が次の段階になると思う。それを考えると、再生医療の研究はまだまだ原始的ではないか、もっと進歩すべきだろうと思っている。
基金:大阪大学で、グリア瘢痕を除去し鼻の粘膜組織の移植を計画している。瘢痕を完全除去しシュワン細胞を入れた場合、生着するでしょうか。
国府田:慢性期の瘢痕に関して唯一それを溶かすコンドロイチナーゼABCが治験にいきそうです。瘢痕の切除を本当にどこまでできるのか、というのが僕らの感想です。何か瘢痕を可視化できる方法などがあるが、ただ本当にまだ始まったばかりのレベルである。
基金:骨髄細胞からの分化誘導には相当な技術がいると聞いています。その再現性はいかがでしょうか。
出澤:【分化誘導技術】 再現性には、経験だけでなく、一番大きいのは血清である。細胞そのものを培養するときの血清の種類の選択を我々はものすごく厳選してやっている。それから培養の際の細胞密度。特定の細胞密度で培養すると、特定のものに分化転換しやすい。これはおそらく細胞のもつ普遍的な性質に近いと思っている。この密度のコントロールが非常に重要。ただ非常に難易度は高いことは事実である。
もう1つ、培養には通常子牛の血清を使う。BSEの問題があり、ヒト血清を使えないか検討している。
またドナーによる細胞のポテンシャルの違いがあるがその原因はわからない。一般にウシの血清よりもヒトの血清のほうが非常に誘導がきれいにいく。上手くいった場合には、全部自前でできる可能性があるのではないかと希望を持っている。
基金:骨髄間質細胞を入れて臓器や肝臓にも分化転換したという報告があるということでした。この可能性については、いかがでしょうか。
出澤:頻度の高い現象ではないが、ゼロではないと思う。ただし、私自身が何年もこの現象を見ていて、おそらくそれはものすごく少ない現象だろうと。
基金:最後に一点、分化誘導の際に残りの3%位がもとの細胞で残っているようなのですが、それが何か悪さをする可能性はいかがでしょうか。
出澤:間葉系細胞を半年か1年長期培養していると、培養装置のなかで変な細胞が出てきたという報告はある。これは自然発生的には当然のことで、普通の皮膚から取った繊維芽細胞であっても、半年とか1年の間におそろしい数の細胞分裂を繰り返す中で、突然変異を起こしてガン化や腫瘍化する細胞が出てくる。
問題は、長期培養した場合にはそういう腫瘍化が非常に心配になってくる、ただゼロではないというのが一点。比較的早いうちに分化誘導をかけて入れるという場合のは、我々は腫瘍化をほとんど見ていない。
もう一点、ただ入れた細胞は残らないということが今言われています。残らないということは、おそらく間葉系細胞のままか、食べらてしまうのだと思う。そうすると、どうも残ったからすぐガンになる、とはつながらないのではという感触がある。ただそれは検証が必要であり、慎重に考えたい。
会場から:今の研究の進捗状況からして、希望する再生医療がスタートするのはどんなものなんだろう、というのが一つ。それから、神経が基本的には全部つながってほしい、中枢神経全体としてつながることを私は期待しているわけですが、現実的に期待できるのかどうか、可能性はどうなのでしょうか。
国府田:まず二つ目の質問から。もちろん、切れたものが全部つながればそれは最高だが、実際上はそれが難しいということが一つ。軸索が全部生き残らなくても機能はかなり回復するということは言われている。約10%くらいでも軸索がつながっていれば、例えば足をぐっと踏ん張るというような粗大な動きであれば充分可能であろうと言われいる。つまり、ごくわずかでもつながるだけでも、粗大な機能は少なくとも回復する可能性はある、とお考え頂いて良いと思う。
次に、実際臨床にいく可能性に関して。慢性期は、単独では効果が期待しにくいというのが現実。やはり移植の足場になるような物質など、いろいろ組み合わせが必要。しかし、人間に実際治療として使う治験をするときに、いきなり効果のわからないものをいくつも組み合わせてボンとやるということは残念ながらありえない。1つひとつ、ある程度効果の確立されたもの、安全性の確立されたものを組み合わせていくから、慢性期はやはりちょっと先になるだろう。
日本でも細胞移植を行なう場合、あくまでも、まず第一段階は亜急性期だと思ってほしい。それに対する治験は数年内に、具体的に申請を始めるとか、そういったレベルには行けるのではないか。
まず亜急性期、先ほどのラットでいうと(損傷後)1~2週し落ち着いた一番良いところで入れていく。その細胞単独の移植でいけそうなところを、まずは最初はしっかり確認してからでないと次には進めないと思う。
◆ 日米をつなぐバイオベンチャー
サンバイオ社は2001年2月に、米国シリコンバレーに設立された バオベンチャーである。森敬太氏と川西徹氏を共同代表とする同社は、30億円以上の資本金を集め、中枢神経細胞治療を柱に、注目すべき事業展開をしている。
神経再生医療においては、ヒト神経幹細胞技術を技術的基盤として、脳梗塞、脊髄損傷、パーキンソン病、多発性硬化症、視疾患、アルツハイマー病医療をターゲットとしている。
第5回神経再生セミナーの報告にもあるように、同社は出澤真理京都大学准教授によるヒト骨髄間質細胞の分化誘導法の技術移転を完了し、そのGMP製造段階に入っている。
最初の臨床試験のターゲットとしては脳梗塞治療を考え、FDAと折衝している。がん細胞から神経細胞を誘導し脳梗塞患者に世界で初めて移植したことで知られる、脳神経移植の第一人者であるピッツバーグ大学のKondzioka教授と開発中である。
次のターゲットとしては、脊髄損傷を考えている。すでに千葉大・國府田先生にSanBio社から細胞を提供しており、ラットレベルの研究でよいデータが出た段階にある。脳梗塞で骨髄間質由来細胞の移植がうまくいけば、製品化した細胞がそのまま使え、安全性試験などのデータも一部使える。
顧問としては、日本から出澤先生のほか、岡野栄之慶応大学教授、鍋島陽一京大教授が名を連ねている。
10月8日に開催する『Walk Again2007』では、同社co-COEの森氏に臨床試験へ向けた次のステップについてご報告いただけるのではないかと思う。
〔旅〕
車椅子での一泊ツーリング
北区身体障害者自動車会(東京)
会長 大久保 次雄
私たちの会では毎年一泊ツーリング旅行に行っています。昨年の5月20日21日の2日間で、福島県双葉郡浪江町の「いこいの村なみえ」(雇用促進事業団の宿泊研修施設)(財)日本チャリティ協会の施設利用券*を使って行ったときの事をご紹介します。
当日、朝7時、6台の車に分乗し東京都障害者スポーツセンター(北区王子)を出発、首都高速・王子北入路から常磐道へ。守谷サービスエリアで町田から来る人と待ち合わせ及びトイレ休憩30分。その後、中郷サービスエリアでトイレ休憩30分。再びドライブし富岡インター出口から国道6号線に出て宿泊する「いこいの村なみえ」に到着。ここで昼食にエビフライ定食を食べたのですがここのエビフライがまた、ボリュームたっぷりで25センチくらいあり大変美味しかったです。
* 同会の契約施設では障害者割引が受けられる。
1泊・助成額障害者/大人6,490円・子供5,770円、
付添人3,250円(http://www.charitykyokai.or.jp/)
昼食後、チェックインまでには間があるので「南相馬市博物館」に行く事に。午後1時に出発し、35分くらいで着きました。相馬市史の映写を見て館内見学。いつものことですが「車から降りるのがしんどい」と言って車の中にいる人もいました。
1時間くらいの見学で博物館をあとにして、大堀相馬焼の里(「陶芸の杜おおぼり」)に寄り見学。お土産の買い物して1時間くらいで出発し午後4時30分に「いこいの村なみえ」に戻ってチェックイン。
温泉に入ったりしてくつろいだあと、6時から食事となり、宴会はカラオケで盛り上がりました。
お風呂は部屋のお風呂に入るしかありませんが、大浴場に入れる人であれば「一般の入浴時間が終わったあとに」と言って、フロントに頼み貸し切りで入浴可能です。トイレは障害者用の部屋と1階に1ヶ所ずつあります。
翌朝、21日の午前9時、「いこいの村なみえ」を出発。同じ浪江町の請戸(ウケド)港に回って、お土産に魚の買い物。みんな沢山買い込み、車の中は荷物で一杯に。海岸線の国道35号線を南下し阿武隈山地を越える国道288号線を使って、船引三春インターから磐越道に入った。郡山インターから東北道に出て那須インターで高速道を降り那須高原のホテルへ向かった。「ハーブケア・プチホテルビバーラ那須」で昼食。有機無農薬野菜を使った和食を堪能しましたが、高麗人参の鍋を初体験の人もいて珍しがっていました。ここは障害者対応設備もあり、エステティックサロンもあります。
(http://www.vibarla.com/meal.html)
前日宿泊した「いこいの村なみえ」の良いところは、料理のおいしさと静かな環境です。周りには湖と散策路・テニスコートぐらいしかなく、本当にゆっくりと出来ます。
それと融通の利くところでしょうか。ベットの高さが低くて車椅子から移りにくいと言うと、高さを調節してくれたり、当日朝のキャンセルもキャンセル料を取らなかったりと、とても良心的です。
ここは日本TVで放送中の「鉄腕ダッシュ村」がさほど離れていないところにあります(見ることは出来ませんが)。
私たち自動車会のツーリングでは、各車両に無線機を積み、無線で連絡を取り合い迷わないようにしながら、毎年楽しいツーリングを行っています。
皆さんも「車椅子だから」と躊躇せずに、気のおけない仲間との旅を、ぜひ楽しんで下さい。
〔告知・参加者募集〕 第3回脊髄損傷者支援イベント
神経再生研究に関する
国際シンポジウム
主催: NPO法人日本せきずい基金 協賛: (社)日本損害保険協会 <自賠責運用益助成事業>
米国ではベンチャー企業とも提携して、神経難病に対する治療研究が人を対象に開始されようとしている。研究対象は脊髄損傷にとどまらず脳梗塞、多発性硬化症、パーキンソン病、ALSなど、神経難病全般にわたっている。
潰瘍性大腸炎や脊髄損傷へのES由来細胞の臨床研究、バッテン病への胎児由来細胞の移植、そして日本の研究者による米国のバイオベンチャーによる臨床研究、と研究の枠組みも大きく広がってきている。
日本と世界の神経再生研究の現段階とその展望をここに明らかにする。
2007年10月8日(月/祝) 12時開場 13時開演―18時終演 <予定>
東京国際交流館・国際会議場 東京都江東区青梅2-79 ℡:03-5520-6001
ゆりかもめ「船の科学館」駅下車5分 P有料
入場無料(懇親会費1000円)
定員 400名(先着順)、同時通訳あり◎ 参加申込み受付中/メールか Fax で事務局まで 1) 〒、住所、氏名、TEL 2) 当事者家族、医療福祉関係、研究者、学生、一般の別 3) 車イスの有無・介助者人数、
懇親会(~18:30、軽食1000円)参加の有無を明記
* チケット及び案内状は9月下旬発送予定。
懇親会費は当日徴収します。
◇ 講師 <順不同、予定> Hans Keirstead (カリフォルニア大学准教授)
-ヒトES細胞由来の神経細胞の移植を計画中内田 伸子 (Stem Cell Inc./米国、副社長)
-小児神経難病への神経幹細胞移植へ中村 雅也 (慶応大学医学部常勤講師)
-神経再生への多面的アプローチ、その可能性国府田正雄 (千葉県立東金病院整形外科部長)
-骨髄間質細胞由来の神経幹細胞を脊損ラットへ森 敬太 (SanBio Inc./米国、CEO)
-骨髄間質細胞の製造段階へ、臨床試験へ<ほか> ◇ 司会 岡野 栄之(慶応大学医学部生理学教授)
私たちは、身体の不自由な方へ 介助・介護 を行います。
私たちは、障害者が地域で自立した生活を営んでいくため、またご家族の介護負
担を軽減するため、ホームヘルパーの派遣を行い、介護や家事などの日常生活の
サービスを提供しています。(居宅介護自立支援法事業)
利用ご希望の方、話を聞いてみたい方ご連絡下さい。
担当者がご説明にお伺いします。(都内及び近郊)
NPO ピッケルニ
〒152-0031
東京都目黒区中根2-13-14 1F
Tel.03(3725)8836
Fax.03(3725)8837
E-mail:piekernie@kjd.biglobe.ne.jp
居宅介護支援事業所番号
居宅介護:1311000564
介護保険:1371002336
基金の活動はカンパで支えられています
▼振込先(口座名は「日本せきずい基金」)
郵便振替 No.00140-2-63307
銀行振込 みずほ銀行 多摩支店
普通口座 No.1197435
インターネット イーバンク銀行サンバ支店
普通口座No.7001247 ニホンセキズイキキン
★ 同封の振替用紙は、カンパやこの機関紙購読料の支払
いを求めるものではありません。
発行人 障害者団体定期刊行物協会
東京都世田谷区砧6-26-21編集人 特定非営利活動法人 日本せきずい基金・事務局
〒183-0034 東京都府中市住吉町4-17-16
TEL 042-366-5153 FAX 042-314-2753
E-mail jscf@jscf.org
URL http://www.jscf.org/jscf/* この会報はせきずい基金のホームページからも
ダウンロードできます。 頒価 100円