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【目次】
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参加者募集 《第5回脊髄再生研究促進市民セミナー》 骨髄間葉系細胞を用いた神経・筋変性疾患への再生医療の展望
講 師:
出 澤 真 理 京都大学大学院医学研究科
助教授 機能微細形態学国府田 正雄 千葉大学医学部整形外科 日 時: 5月13日(日) 13:00開場 13:30~16:30 会 場: ヴィラ フォンティーヌ汐留 1F会議室
105-0021 東京都港区東新橋1-9-2/03(3569)2220主 催: NPO法人 日本せきずい基金 * 当事者・家族、医療福祉関係者、一般向け
定員100人(先着順)入場無料。参加希望者は
別紙申込書を事務局宛にFAX、または申込要領
の事項を明記しメールして下さい。
▼ セミナーのテーマ
ヒトの骨髄細胞を用いて、これまで治療法がないとされてきた脊髄損傷、パーキンソン病、脳梗塞、筋ジストロフィーなどの神経変性疾患の再生研究が大きく進展してきている。一部では臨床研究への移行も検討される段階にきている。
骨髄細胞は本人の細胞を増殖して用いることから、その安全性や倫理性における問題がなく、増殖も容易であることから、再生医療の有力なソースとして近年期待が高まってきている。
セミナーでは、長年、骨髄細胞からの分化・誘導を手がけてこられた出澤先生に、ヒト骨髄細胞から神経細胞や骨格筋細胞への分化誘導の実際と、今後の神経変性疾患治療の展望をうかがう。
さらに国府田正雄医師には、出澤先生が誘導したヒト骨髄間質細胞を脊髄損傷ラットへ移植し、有意な機能回復を見たという研究について報告していただく。
◆ 骨髄間葉系細胞とは
骨髄とは、骨の中心にある海綿状の造血組織で、白血球、赤血球、血小板が、ここで休むことなく造られている。骨髄には、これらの血球のもとになる骨髄幹細胞(造血幹細胞)が含まれている。以下に東京都臨床医学総合研究所のホームページの解説記事を要約して紹介する。
「・・・基礎研究の進展により骨髄には造血幹細胞以外に、間葉系幹細胞と血管内皮前駆細胞と呼ばれる細胞集団がいることがわかってきました。
間葉系幹細胞とは、取り出して培養すると培養皿の底に接着して増える紡錘上の細胞集団で、いろいろなホルモンやサイトカイン(小さな分泌性タンパク質)の添加によって、脂肪滴を作ったり、骨のかたまりへと分化します。
間葉系幹細胞を含む骨髄細胞集団を動物に移植すると、頻度は低いながら神経細胞や肝細胞へ分化誘導されたという研究報告もあります。
人間の骨髄間葉系幹細胞は実験室で培養して増やすことができるので、今後の移植医療のキープレーヤーになるだろうと予想しています。」
◆ 骨髄間葉系細胞の分化誘導モデル
骨髄間質細胞を患者本人から採取して増殖。これをシュワン細胞に分化誘導し脊髄損傷治療へ、神経誘導でパーキンソン病や虚血性疾患へ、骨格筋誘導で筋ジストロフィー治療へ用いる。自分の細胞を用いた「自己再生システム」の実現を最終目標としている。
(図:出澤研HP http://st7.anat2.med.kyoto-u.ac.jp/)
〔研究概要〕
骨髄間質細胞を用いた
細胞移植治療における問題点と展望
出澤 真理
京都大学大学院医学研究科助教授
▼ 以下は、文部科学省・特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会 人クローン胚研究利用作業部会の第4回議事録(H17年6月22日)の出澤先生の報告を要約したものである。
〔文責:基金事務局〕
骨髄間質細胞 これは接着性のある間葉系の細胞で、骨髄の中で造血系の細胞を支持する働きをしています。ヒトの細胞では、採取が容易で増殖力が旺盛であるという利点があります。
分化転換をめぐる論争 骨髄間質細胞がいろいろな細胞に分化転換することは30年ほど前から知られていました。そして1999年にビッテンガーたちが、ヒトの骨髄間質細胞からいろいろな系統の細胞に分化誘導できるという論文を発表しました。2002年にはバルファイリーたちが、骨髄間質細胞はES細胞なみの性質を有しているとの論文を発表しました。ところが2001年に骨髄間質細胞の分化転換は実際には細胞融合なのではないかと疑問を呈したのです。これらの論争を総括すると、おそらく骨髄間質細胞には多分化能ないしそれに相当する能力は本当にあるだろうと言えると思います。
研究の概要 我々は、パーキンソン病、脳梗塞、脊髄損傷などの神経変性や損傷疾患、それと同時に筋ジストロフィーなどの筋変性疾患――これら根本治療のない疾患に対する細胞移植治療を目的として、骨髄間質細胞から大量に短期間に、そして効率的に、目的とする細胞を選択的に誘導する系を開発してきました。
シュワン細胞の分化転換 シュワン細胞は末梢神経にあるグリア細胞で、末梢神経のミエリンを形成して神経の跳躍伝導を助けている細胞です。このシュワン細胞には、神経系全ての神経線維を再生させ再伸張させるという非常に大きな作用があります。実際にこの骨髄間質細胞からミエリン形成能を有する機能的なシュワン細胞を、95~96%という非常に高い効率で誘導する方法を最初に私たちは報告しております。
このシュワン細胞を用いて、実際に末梢神経、そして脊髄損傷に移植して、機能回復を認めています。ラットの坐骨神経を1.2~1.5mm切除し、シュワン細胞を入れた人工的移植片を移植して架橋すると、半年後には見事に神経線維が再生されてきました。胸髄の7番で切除した脊損ラットに同様の移植をすると、半年後には見事につながり、行動機能も有意に回復しました。
神経細胞の誘導 これは機能的な神経細胞に非常に95~96%という高い効率で分化誘導できます。この系は、グリア細胞が一切含まれないことが、神経幹細胞と大きく違っている特異的な点です。さらにひとたび神経細胞に誘導したものを、さらにGDNFというサイトカインを加えることによって、30%くらいの割合でドーパミンニューロンに分化できます。
このヒトから誘導したドーパミンニューロンをラットのパーキンソンモデルに移植すると、対象群、即ちコントロール群に比べて、有意に異常回転運動が減少して、症状が改善されたことが認められます。
ラットの脳虚血モデルに移植すると、脳内に幅広く移植細胞は分布し、同時に海馬にも入ってきて、記憶改善などの認知行動における改善も確認しています。
骨格筋の誘導 我々の開発した誘導系からできてくる最終産物は、3つの構成要素からできています。
1つ目は、成熟した「骨格筋細胞」で、長い多核の骨格筋細胞です。それと、これらの単核の細胞で「筋芽細胞」と「筋衛星細胞」の2種類です。筋衛星細胞は骨格筋の幹細胞と考えられている性質のもので、それと同等の性質のものも出来てきます。この3者がある一定の割合で誘導されてくるというシステムです。
これは筋ジストロフィーなどの変性疾患に適用するときに非常に大きなメリットがあります。
自己細胞移植医療の実現 患者さん本人から骨髄間質細胞をとってきて、神経細胞、シュワン細胞、骨格筋細胞などに誘導して、各種の変性疾患にそれぞれ戻してやるという、自分の細胞を使った自分の治療ということが可能になるだろうと我々は考えています。
また、特に筋ジストロフィーなどの遺伝性疾患では、自分の細胞が使えません。そこで、HLAを合わせた骨髄バンク、自己細胞バンクあるいは汎用性の高い移植治療用のバンクを確立して、患者さんに供給することも、この技術を用いれば可能だと考えております。
今後の課題 課題は安全性、腫瘍性の有無、それから細胞の管理です。また、効率のよい分化誘導系の開発、基礎研究を推進することは、この骨髄間質細胞の安定供給につながるだろうと思います。
そのことも含め、大型の哺乳類を用いた安全性、有効性の検討は、ぜひにも必要であろうと思います。また、分化誘導機構の解明が必要であると思います。特に、ES細胞、それから体性の幹細胞における分化誘導の研究は、非常に大きく役立つものと思われます。
再生医学の多くは、欧米がリードしている状況でありますが、骨髄間質細胞の分化誘導に関しましては日本が進んでおります。日本の研究者が世界に先駆けて発表していっている論文は実に多いということです。
この領域の研究を早急に発展させれば、世界に先駆けた独自の再生医療技術が確立できて、この分野を日本がリードできる可能性があると思います。それは我が国の国際貢献であって、また、国益にかなうことであろうと考えております。■
〔臨床試験〕
『脊髄損傷の実験的治療』
《要約版》
臨床試験への参加を考慮している場合に
知っておくべき事項
脊髄損傷治療のための国際キャンペーン
(ICCP)編著
〔はじめに〕 日本せきずい基金をはじめ、脊髄再生研究の促進をめざす各国の当事者団体からなるICCP(脊髄損傷治療のための国際キャンペーン)では、2006年12月に脊髄損傷の臨床試験に関するガイドラインをまとめた(基金HP参照:www.jscf.org)。
同委員会ではさらに2007年1月に、当事者・家族・一般向けに、脊髄損傷の臨床試験を受けようと思う人はどのような点を考慮すべきかを解説した「脊髄損傷の実験的治療」〔Experimental treatments for spinal cord injury〕を作成した。
本号ではその要約版から、チェックリスト「臨床試験への参加に同意する前に質問するべき事項」に対する専門委員会の見解を紹介する。ただし、「脊髄損傷者が態度を決定する上で、潜在的危険性と潜在的効果を考慮するのは自分自身である」とも記している。この手引きは、例えば対照群を設定しない研究の妥当性をいかに検証しうるか、など研究者サイドにも検討を求めたものでもある。
なお、要約版(邦文10頁)の全文は基金HPに掲載してある。また英文40頁の完訳版は、2007年10月に当基金より刊行予定である。翻訳はともに赤十字語学奉仕団の皆様にお願いした。・・・・・・・・ 〔事務局〕
◆ 1.安全性
■ 臨床試験を前にして被験者が考慮すべき事項
a. 今回の実験的治療によって、危険なことが起こる可能性はあるか。 答: 可能性があると答えるべきだ。100%安全であるとは誰も保証できない。しかし、前臨床試験や臨床試験の早期の相の試験から、危険性に関する情報が得られるべきである。 b. 今回の実験的治療を受けた後に、症状が悪化したり、健康を害する可能性はあるか。 答: これもイエスであるべきである。もしリスクはほとんど無いまたは皆無という答えなら、慎重になるべきである。 c. 上記aやbの危険がある場合、今回の実験的治療に関連する潜在的リスクを説明してもらえるか。 答: 治験責任者は、このヒト臨床試験に伴う潜在リスクについて詳細に説明できるはずである。
◆ 2.潜在的有益性
a. 今回の実験的治療で具体的にどのような利益を受けるか説明してもらえるか。 答: 治験責任者は、潜在的な有益性として、機能改善のとても軽微のものから穏やかなものに至るまで説明するべきである。 b. 今回の実験的治療によって期待できる最大の治療効果について説明してもらえるか。 答: ほぼ100%機能が戻るような劇的な回復が期待できると答えるようであれば、敬遠するべきだ。いかなる治療でもそのような素晴らしい結果をもたらしたという証拠はない。動物を用いた前臨床試験でも証拠が得られていない。 c. 潜在的な治療効果は、どのようにして評価するか説明してもらえるのか。 答: 治験責任者は、治療後の回復の評価で使用する多くの測定方法を説明できるはずである。 d. 結果の測定方法は、評価手段として、正確かつ高感度か。 答: 治験責任者は、評価の手順の長所や限界を説明できるはずだ。再度言うが、完璧なものは存在しない。
◆ 3.前臨床試験での証拠
a. 今回の実験治療が有益であることを実証する(脊髄損傷動物モデルでの)前臨床試験から得た証拠について説明可能か。 答: 治験責任者は、その治療法の長所や限界などを証拠を含めて概要を示すことができるはずだ。 b. これらの結果は、第三者によって別個に再現されているか。 答: 再現されたか否かは、いずれもあり得る。しかし他の複数の研究者が、この治療標的やこの治療方法の研究から類似の結果を得ているという証拠があるべきである。 c. もし再現されているなら、私の機能評価結果を改善する方法として、研究者間で、今回の治療は、有効な治療標的を取り扱っているものであるという意見の一致が得られているか。 答: コンセンサスについてはいずれもあり得る。しかし、あなたが検討している実験的治療が脊髄損傷後の機能回復のために効果的であることを示唆する議論(例えばレビューなど)が発表されているべきである。 d. 異論はあるか。それらの議論には、この治療を受けないほうが良いとするなんらかの正当性があるか。 答: 治験責任者は、この治療法についての賛否両論の要約を説明できるはずである。もし説明できず、治療の限界はないと主張する場合は警戒しなければならない。通常、科学者はお互いに批判的である。インターネットを使い、検討中の治療法について最近の発表を見つけて調べていただきたい(世界中の主な医学論文約900万編を検索できる無料英文サイトwww.pubmed.govで調べてみると良い)。もしわからない生物学用語や医学用語があったら、医療介護関係者に聞いてみてほしい。
◆ 4.臨床試験のプロトコル
a. 今回のヒトでの臨床試験は、認定された然るべき規制当局により臨床試験として登録されているか。 答: イエスであるべきで、治験責任者は、即座に詳細について説明できるはずである。この質問に対する答えが曖昧なら、注意しなければならない。 b. この臨床試験は、第何相試験にあてはまるか。 答: 即座に、あなたが望むだけ詳しい情報が提供されるべきである。 c. この試験に対照群は設定されているか。 答: イエスであるべきだ。イエス以外の答の場合、その試験は、第Ⅰ相試験(安全性のみの試験)の非盲検試験のはずである。さらに、もし、第Ⅰ相試験でない場合は、このヒトでの試験は、臨床試験ではない可能性があるので警戒するべきである。 d. 私は対照群に無作為に割りあてられる可能性があるか。 答: 第Ⅲ相試験の場合、イエスである。もし、イエスでなかったら、有効な臨床試験ではない可能性がある。 e. どれくらいの期間にわたり、結果の変化について評価されるか。 答: 治療の後、最低6ヶ月から1年ぐらいのはずである。最初の数週間は拘束される可能性があり、このため入院を伴うことがある。それ以降何ヶ月間かは評価を受けるために指定された時期に通院が要求されるであろう。
いったん治験の参加に同意をしたなら、たとえ利益がないと感じても、進んで臨床試験のすべての処置を完了するべきである。中止する参加者は、迅速な臨床試験の完了の障害となってしまう。f. 私が治療群と対照群のどちらに割りあてられたか知らされないことになっているか。 答: 身体的に可能なら、知らされないはずである。もし知らされた場合は、第Ⅰ相試験のはずである。さらに、もし第Ⅰ相試験でないのなら、有効な臨床試験ではないので慎重になるべきである。時にやむをえずどちらの群に入っているか知ってしまう場合があるが、データ解析が完了するまで、治療群と対照群のいずれに入っているかについて、検査担当者に明かさないことが求められるはずである。 g. 治験責任者と検査担当者は、私がどちらの治療を受けているか知ることがないか。 答: 第Ⅰ相試験でない限り、答えは、はっきりイエスでなければならない。もしイエスでなかったら、有効な臨床試験とは言えないので、慎重になるべきである。
◆ 5.他の臨床試験への参加
a. 今回の臨床試験への参加によって、脊髄損傷患者を対象とした他の臨床試験への参加が制限されるか。 答: 制限されるべきだ。治験責任者は、将来どのような臨床試験に参加できないか概略を示すことができるはずである。 b. もし今回私が対照群に割りあてられ、今回の実験的治療が私の脊髄損傷症例に有効な治療法であるということが後に明らかになった場合、この治療を将来受けることは可能か。 答: イエスであるべきである。ただし、あなたの脊髄損傷の状態が変わらない場合に限られる。または、現時点ですでに損傷後治療のその後の期間に制限がない場合である。一般的に、監督官庁によって、ある実験的治療法が臨床のものとして認可された後、あなたはその治療を受けることが可能となる。
◆ 6.費用負担
a. この治験を受けるのにお金の支払いは必要か。 答: 支払いは不要である。もし必要だとしたら、有効な臨床試験ではないので、慎重になるべきである。 b. この研究参加によって他に生じる費用はあるか。 答: 臨床試験のプログラム関連の費用を負担する必要はない。しかし、現在の標準的な治療については、あなた自身または健康保険が負担しなければならない場合がある。 c. 今回の研究参加のために生じる出費(例えば追跡検査のための病院への交通費)は、支払われるか。 答: イエスである。
◆ 7.治療法および治験責任者に対する第三者機関による評価
a. 今回の治療法と貴機関の評価に関して第三者のアドバイスを受けるため、(今回の臨床試験に関与していない)数名の研究者と臨床医の名前を教えてもらえるか。 答: 可能なはずである。インターネットで今回の研究や治験責任者の資格を簡単に確認することができるだろう。
〔リハビリビデオ〕
『ステップ by ステップ』
――脊損在宅リハガイド――
■ 日本せきずい基金では、在宅での日常的なリハビリテーションの欠かせない脊髄損傷者のためのリハビリビデオ(DVD)『ステップbyステップ』を本年2月に作製した。その概要を紹介する。
福祉医療機構(高齢者・障害者福祉基金)
のH18年度助成事業。
収録時間95分/6,000枚作成/無償配布
* このDVDは個人利用に限りコピーフリーです。
ビデオの構成
* なぜリハビリは必要か
廃用症候群とは/拘縮(コウシュク)/筋力の低下/床ずれ〔褥瘡 ジョクソウ〕/痙縮(ケイシュク)/メタボリックシンドローム <次ページ参照>* 単身生活をしている高位頸損者(C4-5完全)
足の関節可動域訓練(ROM)/仰向けで足がつっぱる時には/腕の運動(スケートボード)/腕を吊って動きをおぎなう/自分で行なう指のストレッチ/電動車いすに乗る/自助具を使う
C4-5完全頸損で、自宅で一人暮らしをしている方。セラピストが、下肢の痙性をやわらげるための方法、拘縮を防ぐ方法、上肢の機能を維持、向上するための方法等を実践する。
また生活の質を高めるために一人暮らしをしているうえでの工夫を紹介する。* 痙性を落とすコツ(C6完全マヒ)
強い痙性に対しての考え方/仰向け時の強い痙性への対応/痙性が強い患者の車いす移乗/車いす座位の痙性対応
痙性が非常に強く、自分で制御できないことがある例。セラピストによる痙性を落とすコツを紹介する。 * 生活自体がリハビリ(C7完全マヒ)
生活の中に溶け込んだリハビリ/家屋の改修/行動範囲が広がる自動車運転
C7完全頸損で一人暮らしをしている。手動スタンドアップ車椅子を生活に取り入れた場合のメリット、住宅の改修、自動車への乗り移り映像等を紹介。 * 完全対マヒ者の歩行リハビリ(完全胸損)
股関節伸展のストレッチ/腹筋の運動(腹がそらないようにするために)/腰と背中のストレッチ/プライムウォークの装着/プライムウォークを装着しての歩行
最近プライムウオークという下肢装具を使って自主的に歩行練習を始めた例を紹介する。
股間節が十分に伸ばせず、歩行訓練に支障がでる可能性があるため、それを伸ばすための方法、また腰が反りやすいため、それをやわらげる方法等を紹介する。
次に実際にプライムウオークを装着する様子と、プライムウオークを装着して実際に歩行訓練を行う様子を紹介。〕* 立つためのリハビリ(不全頸損)
体を緩めるためのアプローチ/電動ベッドとプールの活用/ベッド上でのリハビリ/立ち上がりから学ぶ立位介護/機械を利用した在宅リハビリ/電動スタンドアップ車いす/自動車運転シミュレーター
不全頸損で普段電動スタンドアップ車椅子を使用している例の紹介。体の緊張が強いために起きる問題点を解説しながら、それをやわらげるための方法、身の回りの道具を利用した体の柔軟性を維持するための方法、プールでのリハビリの効用、立ち上がりの際の介護の方法等を紹介する。 * 不全頸損者の歩行リハビリ(不全頸損)
杖歩行/体の柔軟性を出す運動/肩の運動と股関節のストレッチ/股関節をうしろに下げる運動/床からの起き上がりと立ち上がり/腕と指のストレッチ/机でできる運動
不全頸損でからだに柔軟性が少ないため、歩行は歩幅が狭く、緊張が強いため左肘が曲がってくる例。からだの柔軟性を維持、向上させるための方法を紹介する。
編集協力
里宇 明元 (慶応大学リハビリ科教授/監修) 田中 尚文 (国立病院機構・村山医療センターリハビリテーション科医長) 玉垣 努 (神奈川リハビリテーション病院OT科)
村山医療センター・リハビリテーション科
◎ DVDの追加頒布について
残部が少しあります。ご希望の方は基金事務局宛に、住所・氏名・障害レベル/または職業を明記して申込んでください。〔無償配布〕
〔リハビリビデオから〕 〔以下は、DVDの里宇先生の映像「なぜリハビリは必要か」を
■ なぜリハビリは必要か 慶応大学教授 里宇 明元〔リウ メイゲン〕
事務局にてテキスト化したものである〕
▼ はじめに このDVDは、地域で生活されている脊髄損傷者の方々が、少しでも身体の機能を維持、向上させていくためのヒントを提供することを目的として制作されました。
脊髄損傷の方々の多くは、生活の中で身体を動かす機会が少なくなっていると思われます。あまり身体を動かさなくなると、いわゆる「廃用症候群」と呼ばれる状態が起こりやすくなります。その結果として、不活発な生活に伴って発症する生活習慣病、メタボリックシンドロームという病気が起こりやすくなってしまいます。
このようなマイナスの出来事を予防するためには、毎日の生活を出来るだけ活発に送り、身体を動かす機会を少しでも多くすることが必要です。ただし、ただ身体を動かせばいいというのではなく、身体の状態に合せて正しいやり方で行うことが大切です。
廃用症候群は、身体を使わないことによって心身におこるマイナスの変化を総称していう言葉です。
具体的には、「拘縮」「筋力が弱くなる」「体力が低下する」「床ずれ」、さらに「骨粗しょう症」――これらが廃用症候群の症状です。このような問題点は、普段の生活の中でもちょっと油断をすると起こってしまいます。廃用症候群をよく理解して、毎日の生活を出来るだけ活発にしてその予防に努めることが重要です。
拘縮は、関節が硬くなることです。関節を動かさないでいると、健康な方でも数日間のうちに関節が硬くなってしまい、いわゆる「拘縮」という状態になってきます。一度、拘縮になってしまうと、もとにもどすためには非常に長い期 間を要します。だからこそ、最初から拘縮、関節が硬くなることが起こらないように予防していくことが大切になります。
筋力の低下というのは、例えば健康な人でも動かない状態でずっとベッドに寝ているということを続けていると、筋力は1週間に20%づつ低下します。
筋力の低下を防ぐためには、日常生活を活動的におくることがポイントです。そのようなヒントはこのDVDのなかでもいくつか示されています。
床ずれ(褥瘡 ジョクソウ)は、皮膚の持続的な圧迫により発生するもので、上を向いて寝ているときに圧迫が加わりやすい部分が褥瘡の起こりやすい部分です。
特に脊髄損傷の方は、排尿、排泄の問題で皮膚が汚れてしまう方がおられると思いますが、汚れた状態を放っておくと、褥瘡が起こりやすくなってきます。
褥瘡を予防する主なポイントは5つあります。
1番目は、 定期的に皮膚を観察するということ。 2番目は、 定期的な体位変換。 3番目が、 クッションなどの工夫によって皮膚の圧迫を軽くすること。 4番目が、 プッシュアップの励行。 5番目は、 移動のときにお尻をすらないように注意をする。
ということです。
次に痙縮についてお話いたします。これは、筋肉の緊張が亢進し、突っ張った状態を表すものです。筋肉の緊張が強くなりすぎると、日常生活を送るうえで妨げとなります。
痙縮の治療法としてはいくつかのポイントがあります。まずは痙縮を強めるような因子を予防、取り除くことです。2番目は、手術をしない保存的治療を行うものです。さらに、状態によっては手術を考慮する場合もあります。その方に よって どのような治療法が適切かは違いますので、ドクターと良く相談をされると良いと思います。
最後にメタボリックシンドロームについてお話します。これは今マスコミ等でも話題になっていますが、運動不足に伴って起こるいろいろな問題点で、脊髄損傷の方はどうしても運動を行いにくいためにこういう問題が起こりやすいと考えられます。
運動不足は、インスリン感受性の低下をもたらして、これによって血糖などがあがりやすい状況が生じてきます。そういう状態を放っておくとメタボリックシンドロームと呼ばれる、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満などの問題が起こってきます。
こういう状態が起こると、脳卒中、心筋梗塞など、動脈硬化に伴って起こる病気が発症しやすくなります。つまり脊髄損傷の方はメタボリックシンドロームを起こして脳卒中あるいは心筋梗塞を起こすリスクが、健康な人より高い可能性があります。当然、命に関わることもあり、また障害も、もともとの脊髄損傷と加わって余計重くなるという状態が生じます。
脊髄損傷の方は、どうしても日常生活の活動性が低下します。それが廃用症候群を一層悪くして、さらに活動性が低下するという悪循環が起こってきます。この悪循環を断ち切ることが、メタボリックシンドロームの予防には重要です。
このDVDでは、経験の豊富な理学療法士や作業療法士により、日々の生活に取り入れることが可能なリハビリテーションの具体的な方法が紹介されています。もちろん、一人ひとり身体の状態は異なりますので、どのような運動をどのように行うのが適切かは、個別にきめ細かく決めていく必要があります。
可能であればリハビリテーションの専門家のアドバイスを受けながら、生活の場で続けられるリハビリテーションを進めてください■
〔臨床試験計画〕 東京での公開説明会報告
阪大の嗅粘膜移植臨床試験
2007年3月10日(土)、東京・恵比寿の日仏会館ホールで、大阪大学脳神経外科による「嗅粘膜移植による損傷脊髄再生法」に関する第2回の公開説明会が開催された。説明会には150人以上の方々の参加希望があったが、会場の関係で100人が参加することとなった。この臨床試験計画の詳細に関しては、基金ホームページ及び基金ニュース第30号、31号の参照を。
それらとの重複を避けながら、説明会での新たな論点を中心に以下に紹介する。
〔文責:基金事務局〕
プログラム
司会はサイエンスジャーナリストの東嶋和子さん。阪大脳神経外科の吉峰俊樹教授が損傷脊髄の再生について概説し、岩月幸一助手が自家嗅粘膜移植法の実際を紹介。術後リハビリテーションの実際を大阪府立身体障害者福祉センターの鈴木恒彦先生、未来医療センターでの取り組みを臨床コーディネーターの原口千秋先生が報告し、最後にリハビリ研究者の立場から国立身体障害者リハビリテーションセンターの赤居正美先生がコメントを述べられた。休憩後に1時間ほどの質疑応答がなされた。
臨床試験であること
今回の臨床試験は治療でなく、あくまでも治療法の研究であり、そのために国際的な急粘膜移植の実施基準に適合する希望者のみに実施することを改めて確認してほしいこと。この実施基準に合った患者への移植によって初めて医学的な効果検証が可能となること。
治療成績に関して
2006年9月イタリアのフィレンツェにて、嗅粘膜移植法の専門家による国際会議が開催された。その時点でこれまでに実施した127例の経過報告がなされた。
その治療成績は、殆どの患者に運動機能の改善が認められたとしている。ただし、下肢装具で自力歩行可能になった方は1名のみ。重大な副作用例は現在まで報告されていない。
術後に1例に神経因性疼痛が生じたが次第に軽減という報告がある。術後リハビリで筋性疼痛が発生する場合、これ自体は知覚の回復によると考えられる。
これらから脊髄損傷者への嗅粘膜移植では、不十分だが運動機能だけでなく、感覚・自律神経系の改善も若干見られること。しかし、自立歩行を期待するのはまだ難しく、現在のところ機能回復は僅かであると結論付けている。
試験計画の流れ
術後6ヶ月以上経過した慢性脊髄損傷者で、対象者の要件の全てを満たし臨床試験への参加を希望する方は、大阪大学脳神経外科へ連絡を取る。
* この移植法に適応する被験者であるかどうか、2週間の検査入院が必要である(すでに5人が終了した)。研究グループ以外の学外の専門家による「嗅粘膜移植適応検討委員会」で移植患者の選択を行なう。 * 最初の手術は本年12月頃、この手術経験を積んでいるポルトガルの医師チームが来日して、大阪大学病院で実施する予定。 * 患者は2年間のリハビリテーションプログラムを受けること。術後半年~1年は大阪労災病院か大阪府立総合医療センター(2007年4月より府立身体障害者福祉センターを統合)に入院してリハビリテーションを受ける。その後、地元にこの臨床研究に協力してくれる病院があれば、そちらでリハビリを受けることも可能。
術後のリハビリテーション 医療保険では、1日3時間/9単位、週5日のリハビリを行うと、PT1人で18単位=2名の患者の対応が出来る(1単位は20分)。
しかし回復期リハビリ病棟と急性期リハビリ以外では1日2時間のリハビリが限界であり、脊髄移植に対応できる日本独自のリハビリシステムの構築が必要とされている。2年という期間は、その間にどのようなことが生じるのか、やってみないと分からない。
コメント:赤居正美先生
* 再生医療により「点対点投射」のような精密な神経機能を再生させることは極めて困難であると思われる。機能再建には損傷部以下での神経機能の再編成が不可避であり、神経修復と脊髄の可塑性を結びつけた治療訓練が必要とされる。
国リハでは、細胞工学的手法(基礎的アプローチ)と神経生理学的手法(臨床的アプローチ)の2本立てで研究を進めている。
後者では、脳からの信号を受ける損傷レベル以下の機能の把握が必要であり、脊髄の再組織化の手法を考えなければならない。* 脊髄には独自の歩行中枢(CPG)の存在が推定されており、他動的歩行様運動により筋活動が高まる。歩行中枢の活性化には、末梢からの刺激入力による歩行様活動を引き出すこと、加重情報と股関節を後ろに伸ばす体性感覚入力が重要である。
歩行トレーニングによって皮質脊髄路の変化を捉えていくが、中枢との関連が高い前脛骨筋〔ゼンケイコツキン 膝と足との間/スネの前側の筋〕の反応に注目していく。
では、どのくらいの神経が繋がればよいのか。ポリオでは脊髄前角細胞の10%が残っていれば外見的症状が見られないことから、脊髄損傷においても10%の神経が繋がればよいと考えられている。* リハビリ医として再生医療に期待することは、完全マヒを不全マヒにすること。「もっと多くの不全マヒを!」だ。そこに、「歩く」ということを目標とする新たなリハビリ体系を築いていきたい。
当事者の皆さんに要望したいことは、再生医療が今努力することの代替物としてある、ということではないということだ。現在でもそれなりの回復の可能性がある人が、青い鳥を追いかけてそれを無にすることがないようにお願いしたい。再生医療とは、あくまでもプラスアルファーの世界だと受け止めて頂きたい。
質疑から
* 臨床試験する人数と期間は
→5年間で40例の実施を計画している。* なぜ慢性期の患者を対象とするのか
→受傷直後の急性期は炎症反応が強く、移植細胞が生着できない。* 受傷後何年くらい経過した患者が移植に最適か
→被験者の受傷後期間に基準はない。個々人の慢性期の生活様式やマヒ側をうごかしていたかどうかの相違が大きい。* 受傷後何年くらい経過した患者が移植に最適か
→被験者の受傷後期間に基準はない。個々人の慢性期の生活様式やマヒ側をうごかしていたかどうかの相違が大きい。* いつから実施できるのか
→治験に入るかどうかの適応検討委員会の判断はこの春になる。実際の手術は12月頃になる見込み。* 両下肢が少しでも動いたら被験者になれないか
→今回は国際基準に合わせて実施するので、対象者は完全マヒに限られる。適応基準を狭くすることによって医学的評価を可能とした。このため呼吸器使用者も今回は対象外となる。アレルギー性鼻炎の人は阪大の耳鼻科医が判断する。* 術後の痛みは薬で鎮静できる程度のものか
→術後に1例に神経因性疼痛が生じたが次第に軽減という報告がある。術後リハビリで筋性疼痛が発生する場合、これ自体は知覚の回復によると考えられる。* ラットの運動機能回復を示すBBBスコアの成績は
→BBBスコアは21点が満点(正常)で、移植した脊損ラットは3~4点という、後肢の2関節がわずかに動く程度の回復である。ただし、ラットは完全離断モデルという極めて厳しいモデルである。* 在宅リハビリプログラムはないのか
→国際会議で定めているプロトコル(実施基準)に従って行いたい。訪問リハビリには介護保険・支援費制度・医療保険の3種を使い分ける必要がある。
重度の頚髄損傷では外来リハビリと訪問看護・訪問リハビリが可能だが、毎月医師のチェックが必要となる。* リハビリ単価はいくらか
→リハビリは1単位は20分で医療保険では2500円になる。6単位までは保健で認められているが、それ以上は全額自己負担の特定療養費の扱いになる。
私のセンターでは2500円だが、施設によってかなり違う。* 実際にどの程度の回復をゴールと考えるか
→吉峰: 研究目標としては装具歩行がゴールに。 鈴木: 個々人のマヒや筋肉の状態に左右されるので、目標は段階的なものになる。 赤居: 移植で上肢機能の回復は難しいだろう。
中程度の損傷の完全マヒの方が、外からの介入と本人の努力で歩行機能をどこまで回復できるか、ということではないか。
私たちは、身体の不自由な方へ 介助・介護 を行います。
私たちは、障害者が地域で自立した生活を営んでいくため、またご家族の介護負
担を軽減するため、ホームヘルパーの派遣を行い、介護や家事などの日常生活の
サービスを提供しています。(居宅介護自立支援法事業)
利用ご希望の方、話を聞いてみたい方ご連絡下さい。
担当者がご説明にお伺いします。(都内及び近郊)
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〒152-0031
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介護保険:1371002336
〔海外短信〕
カリフォルニア大学 リーブ・アーヴィン研究所から
設立資金提供者のアーヴィンさんと運営協力者のクリストファー・リーブ氏の名を冠したこの研究所の使命は、脊髄損傷の新しい治療法を見出すことにある。
同研究所のニュースレター「Spinal Connections」(2006年秋季/第11号)から最近の2つのトピックスを紹介する。
〔事務局〕
実験室からベッドサイドへ
――リーブ・アーヴィン研究センター初の臨床試験
免疫学者のトム・レーン博士は、多発性硬化症の損傷の原因となる免疫系細胞が、ケモカイン(免疫反応を起動させ誘導するタンパク質)の1種の特異的タンパク質である「IP‐10」が傷害部位に補充されていくことを発見した。さらに彼はウイルスに誘発された脱髄疾患マウスの、新たな多発性硬化症の病変部の形成を予防することができた。
同研究センターのケアステッド準教授(Dr. Hans Keirstead)は、多発性硬化症の病変部でニューロンの絶縁材を破壊する悪玉タンパク質が、脊髄の損傷に引き続いて作用する悪玉タンパク質であるかもしれないとすぐに認識した。損傷直後のマウスにレーン博士のIP‐10抗体を与えると、同レベルの損傷のマウスと比較して歩行に関し良い回復を見せた。
同研究センターで初の臨床試験がケアステッド準教授(Dr. Hans Keirstead)により、脊髄損傷より患者数の多く症状のシンプルな「潰瘍性大腸炎」治療のために行なわれる。この安全性試験がパスすれば脊髄損傷での臨床試験が可能となるという。
幹細胞移植の安全性の検証
脊髄損傷ための臨床試験の次の段階は、受傷1、2週間後に損傷脊髄にヒト胚性幹細胞(hESC)由来の細胞を注入する細胞移植治療である可能性が非常に高い。『Regenerative Medicine』誌7月号(2006)において、ケアステッド博士らは、ヒト胚性幹細胞に由来するオリゴデンドロサイトを移植された軽度または重篤な脊髄損傷のラットが、処置の結果、目に見えるような損傷や病的影響のないことを見出した。
「我々はヒトの臨床試験が実験であることを常に念頭に置かなくてはならない、そして私達は出来る限りその処置が苦痛を生じさせないことを保証出来なくてはならない。本研究はその方向における重要なステップである」と彼は述べる。
重度の脊損動物では、その傷害の重度のゆえにヒトES細胞由来細胞を注入してもその副作用が隠されてしまう恐れがある。ケアステッド博士はバイオベンチャーであるジェロン社と、急性脊髄損傷者に対する第Ⅰ相(安全性試験)の臨床試験計画を進めているが、これを実施するまでにさらに腫瘍化の避ける研究を並行させる必要がある、としている。
ヨーロッパ脊髄損傷連盟の結成
2006年3月、EU域内の17の当事者団体によりヨーロッパ脊髄損傷連盟(European Spinal Cord Federation:ESCIF)が結成された。これらの団体はいずれも、脊髄損傷の予防と脊髄損傷者の利益の向上を目的とした各国の脊髄損傷者の自立サポート団体で、1カ国で最大規模の1団体のみがESCIFのメンバーとなることが原則とされている。事務局はスイス脊損協会(Schweizer Paraplegiker-Vereinigung)におかれている。HP:www.escif.org
ESCIFの目的:
* 個々の脊髄損傷組織間の親密な関係の構築 * 社会への統合という課題への協同行動 * 会合、双方向のPCプラットフォームなどを通した情報交換 * 国内外の脊髄損傷を牽引する意見交換の構成 * 関心ある他の団体やEU圏内の全国的な脊髄損傷組織機関の権利擁護
ESCIFのコンセプト ヨーロッパ全体を通して適切になお一層の専門知識と経験をヨーロッパ全域で脊髄損傷者のための連合が必要とされていた。スイスのノットウィルで2005年に基本的な構想が計画され、ESCIFは知識と経験を同等に全てのメンバー国に分配する。ESCIFはそれぞれの組織の総意以上のものを目指しています。つまり、意見や研究、意識をそれぞれの組織の能力を超えたものに到達することである。
調査プロジェクト:「急性期ケアとリハビリテーション」
各国においてヘルスケアと医療サービスに相違が存在することから、外傷性・非外傷性脊髄損傷の双方の患者の初期治療にこれらの相違が反映していると思われる。
そのためESCIFでは最初の情報収集プロジェクトして、加盟各国脊髄損傷者が受ける急性期ケアと初期リハビリテーションの情報を共有することとなった。
2006年12月に全てのメンバーにアンケートを送付し、4月にハイデルベルクでその集約会議を開催することになっている。その報告書と討論の結論は2007年5月に連盟のホームページに掲載される予定である。
(なお欧州のICCPメンバーからの参加団体はない)
〔文科省プロジェクト〕
幹細胞を使った治療開発の現況 岡野 栄之
慶應義塾大学医学部生理学教室教授
文部科学省の「再生医療の実現化プロジェクト」の第3回成果発表会が2007年3月10日午後、東京の砂防会館で開催された。ここでは、この幹細胞治療開発領域リーダーである岡野先生の報告を、脊髄損傷を中心に要約して紹介する。
〔文責:基金事務局〕
▼ 幹細胞治療開発領域において、ここ4年間でどのような活動をしてきたか紹介したい。われわれのグループは、難病、なかでも神経疾患であるパーキンソン病や脊髄損傷などを研究している。
幹細胞治療の目的は難治性疾患の根治治療にある
パーキンソン病における移植治療としては、1987年にスウェーデンで胎児脳組織移植による臨床研究が行われた。そのプロトコールに則ってカナダでも臨床試験が行なわれた。移植を受けた患者の症状を映像で見ると、治療前はパーキンソン病特有の「すくみ足」の症状が見られる。小刻みな歩き方で、方向転換も小刻みだったが、術後には歩行と方向転換が著明に改善したことが示されている。
しかし、胎児脳組織移植は、1人の患者に数体の胎児脳組織が必要になるという胎児細胞の量的制約の問題、移植する細胞の標準化・規格化の難しさ、さらには倫理的問題がある。現在まで世界で200例が実施されているが、今後この方法が普及するのは上記の問題から困難である。
脊髄再生への挑戦
実際の臨床では、5~10%の軸索が損傷を免れるか再生できれば、ある程度の機能回復が可能となる。
脊髄の損傷後の状態を見ると、受傷直後の一次損傷では、軸索の断裂、アストログリアやオリゴデンドログリアの死滅、血管系が破綻が生じる。それに引き続く二次損傷では、損傷範囲が広がっていく。炎症細胞の浸潤や、損傷部のグリア瘢痕化や空洞形成、脱髄症状が進行し、これらの治療は現在のところ不可能である。急性症状の進行を抑制するとされる副腎皮質ステロイドの大量投与には、効果や安全性に疑問がある。
このように、脊髄損傷には時期に応じた適切な治療法の開発が重要である。
急性期:炎症因子であるインターロイキン-6の活動の阻害作用を持つ抗IL‐6受容体抗体の急性期の投与により、ラットの運動機能を評価するBBBスコアの回復が示されている。急性期においては、微小環境の整備が大切である。また、抗IL‐6受容体抗体は慢性関節リウマチで第Ⅲ相試験が終了しており、近い将来、脊髄損傷の急性期を対象とした臨床試験を実施したいと考えている。
亜急性期:受傷後9日を経過したこの時期は、脊髄損傷の場合、移植に最適な時期である。マウスでの効果を確認の後、ヒト幹細胞をサルへ移植して効果を確認している。医薬品の製造・品質管理基準であるGMPレベルでの細胞の培養にも成功している。
慢性期:大日本住友製薬との共同開発しているセマフォリンの選択阻害剤「SM216289」を脊髄再生に応用。マウスでは顕著な効果を挙げたので、今後は神経幹細胞移植などと組み合わせてさらなる効果を期待している。さらに効果をあげるためには、グリア瘢痕の分解剤などの併用、リハビリなどの併用も必要。
幹細胞治療における臨床研究開始における到達度(案)
基礎研究から臨床研究に移行するためには、以下の諸点をクリアしていることが必要であろう。
注意点 臨床研究の評価に当っては、患者の「治りたい」という熱望もたらすプラシーボ効果についても留意する必要がある。また治療効果を自然治癒によるものと区別することが必要であるが、日本せきずい基金もメンバーであるICCPの専門委員会が、脊髄損傷の臨床研究ガイドラインを作成している。〔3頁も参照〕
- ヒト幹細胞を用いた検討を行っているか
- 細胞の調整法、ソースを最適化しているか
- 移植時期を最適化しているか
- 疾患モデルにおける機能回復に成功しているか
- 上記の機能回復のメカニズムが十分解析たか
- 導入された細胞の分布をin vivoイメージング*で検討しているか
*:生体内での細胞などのリアルタイムな観察。- 移植した細胞の安全性(長期にわたる腫瘍発生等)の検討を行っているか
- 工学的手法と併用し、移植の効果の増強の検討を行っているか
- GMPレベルでのセル・プロセッシングセンターでの細胞調整は可能か
わが国において再生医療の実現に欠けているもの
日本では、ES細胞や胎児由来組織の研究利用に関しては生命倫理学的にデリケートな問題であるために、議論が白熱してそこから先に進まない。
米国の臨床試験の規制機関であるFDA〔食品医薬品局〕の基本的考え方としては、多民族国家という文化的背景やキリスト教宗派間の対立も含め宗教的な多様性という背景から、生命倫理観の合意を判断基準とせず、臨床試験の安全性の確認を判断基準としている。
このような臨床試験での判断基準の相違がわが国での臨床試験の遅れを招き、国内での基礎研究の成果を下に海外で臨床試験をする動向が見受けられる。
幹細胞を用いた臨床研究の現状 米国では、代謝性疾患であるバッテン病患者に対してヒト胎児由来幹細胞移植がステムセル社により実施(2006.11)された。
またカリフォルニア大学(Dr. Hans Keirstead)やジェロン社が共同で、脊髄損傷患者へのヒトES細胞由来の細胞(グリア前駆細胞)移植をFDAに申請中であり、2007年中には実施の予定となっている。■
福祉医療機構が『脊損ヘルスケア』を
<特に優れた事業>に選定
独立行政法人・福祉医療機構は、平成17年度に日本せきずい基金が実施した「脊髄損傷者の自己管理マニュアル(『脊損ヘルスケア』)刊行事業を、「特に優れた事業」の1つに選定しました。
同機構は長寿・子育て・障害者基金から平成17年度は770事業に助成を行いましたが、それらから20件ほどの事業を「特に優れた事業」として、本年3月に選定したものです。
『脊損ヘルスケア』は前村山医療センター院長の柴崎啓一先生を編集長とする編集委員会を組織し、多くの医療・福祉関係者・当事者のご協力の下に、平成16年度には「基礎編」を、平成17年度には「Q&A編」を刊行したものです。今回の選定はこの2ヵ年の事業を視野に納めて選定されたもので、両書の刊行にご協力いただいたすべての方々に改めて御礼申し上げます。
「基礎編」は平成16年度助成(508万円)で、1万2000部を無償配布し、1000部を増刷(品切)。「Q&A編」は平成17年度助成(475万円)で、1万3000部を無償配布し、1000部増刷(在庫僅少)。
両書とも、せきずい基金のホームページ〔刊行物欄〕にPDFファイルとして公開しております。どなたでも無償でダウンロードできますので、今後とも多くの方々にご利用していただければ幸いです。
ホームページ自己導尿教室
読売新聞の長期連載企画「医療ルネッサンス」の2月9日号(第4039回)では、聖路加国際病院(東京都中央区)の排尿障害の専門外来(火・金)の活動を紹介していた。
記事では、排尿機能コーディネーターの田中純子さんが、椎間板ヘルニア手術で神経因性膀胱となり、自己導尿することになった若い女性に、3分でできる自己導尿の方法を教えている。
脊髄損傷をはじめとして、自己導尿を行う人は全国で約1万7000人いるという。自己導尿は、膀胱が過度に伸びきるのを防ぎ、膀胱内を低圧に保って腎機能障害の予防にもなる。しかし仕事や生活に合わせた自己導尿方法や、排尿のスケジュールまで患者が指導されることは殆どないのが実情である、という。
2006年12月、田中さんは専門医たちと清潔間欠導尿を行っている患者や医療従事者向けにホームページ「自己導尿教室」(http://www.dounyou.net/)を立ち上げた。せきずい基金のHPからもリンクしている。
このHPでは自己導尿に関して、男女それぞれの方法やトラブル解決法、Q&Aなどが詳しく紹介され、さらに「排尿日記」や「初めて導尿を始める人向けパンフレット(男性用・女性用)」をダウンロードすることができる。
◆ 在宅リハビリサポートの会「レッツ」第14回勉強会 脊髄損傷者のためのメンタルヘルスケアと加圧リハビリ (仮)
講 師:
雪下 岳彦 千葉在住の精神科医 村上 裕二 NPO法人伊丹アスリートクラブ湘南支部理事代表
加圧筋力トレーニング厚木支部統括指導者中野 裕子 NPO法人伊丹アスリートクラブ湘南支部鍼灸師 日 時: 平成19年5月12日(土) 開催時間未定 会 場: トヨタハートフルプラザ横浜 (045)662-9691
みなとみらい線「元町・中華街駅」徒歩0分参加費: 3,000円 35名 申込み: 4月28日までにレッツ事務局まで
Eメール:yukiko_kk@hotmail.com
FAX:045-934-4560* 詳細が決まり次第、せきずい基金HPにて掲載
加圧トレーニングについては、
http://www.kaatsu.com/home/index.htmlを参照。
基金の活動はカンパで支えられています
▼振込先(口座名は「日本せきずい基金」)
郵便振替 No.00140-2-63307
銀行振込 みずほ銀行 多摩支店
普通口座 No.1197435
インターネット イーバンク銀行サンバ支店
普通口座No.7001247 ニホンセキズイキキン
★ 同封の振替用紙は、カンパやこの機関紙購読料の支払
いを求めるものではありません。
発行人 障害者団体定期刊行物協会
東京都世田谷区砧6-26-21編集人 特定非営利活動法人 日本せきずい基金・事務局
〒183-0034 東京都府中市住吉町4-17-16
TEL 042-366-5153 FAX 042-314-2753
E-mail jscf@jscf.org
URL http://www.jscf.org/jscf/* この会報はせきずい基金のホームページからも
ダウンロードできます。 頒価 100円