会報3号


 「ジャパン・タイムズ」

■▼ 1995年に設立された「日本せきずい基金」(現在は基金作りの途中で準備段階にある)は、いまや大きな前進をはじめた。同会では、クリストファー・リーブ氏が会長を務めるAPA(アメリカ障害者協会)と何ヶ月にもわたって連絡をとろうとしていた。リーブ氏はご存知のように、落馬事故により四肢麻痺となった俳優である。同会の国際関係コーディネーターである広瀬民男氏は・・電話、FAX、E-MAILなどあらゆる方法でAPAと連絡をとることを試み、やっと数日前に返事をもらう事ができた。・・と大田区池上での月例会で報告した。

  「我々の目的はAPAと同じで、せきずい損傷の人たちを支援し、せきずい損傷の研究に資金的な援助を行うことである。日本でも良く知られているリーブ氏を呼ぶことは、この運動の知名度をあげる上での大きな力となります。」


■ 日本航空のもとパイロットであった彼は、25年前にアラスカで交通事故に遭い下半身麻痺となった。

  せきずい基金によると、日本には10万人のせきずい損傷者がおり、毎年5千人のせきずい損傷が発生している(米国ではそれぞれ45万人、1万人)。このうち半分近くは交通事故によるものである。

  例えば、高橋秀昭氏の場合は、彼が20代のときバイク事故に遭い、その結果麻痺と同時に弱視の後遺症が残り、目の保護のために濃い色のサングラスを常にかけている。池上に単身で住む彼は、ヘルパーの介助を受けながら毎日を精一杯活動的に過ごそうと考えている。

  スポーツもまた、一瞬にして人の人生を変える。(基)

1999年4月8日付け アンジェラ・ジェフス記

  基金の代表である大濱眞氏は、若いころにラグビーの競技中にせきずいに怪我をした。彼は、特別製の車椅子にのり、本や書類のページを口にくわえたポインターでめくり、穏やかでユーモアにあふれた手腕で会を進行させた。


■ 後遺症はせきずいの臼の中を通る細い神経ケーブルの圧迫により起こる。麻痺の範囲は怪我の度合いや損傷部位により異なる。損傷の場所が脳に近ければ近いほど、麻痺は広範囲になる。

  つい最近まで、せきずいの怪我は治らないとされていた。日本では、せきずい損傷の患者が入院すると、打つ手はないし、リハビリも「時間の無駄である」と告げられる場合もある。床ずれは大きな問題となり、家族のもとに早期に返されることもある。

  退院後も家族の介護が必要なため、家族に大きな犠牲を強いることとなる。たとえ就職できたとしても、通勤や体調の自己管理が難しく、日本では医療、社会的な介助システムが遅れている。先進国では、呼吸補助装置をつけたせきずい損傷者が大学に通い、仕事をし、結婚していることも珍しくない。

  しかしながら状況は良くなってきている。2月には米国運輸省のマイケル ウインター氏が日本の交通機関へのアドバイスのため来日している。(APAとの連絡をとってくれたのは彼の秘書であった)

  基金の設立メンバーの1人で、全国脊髄損傷者連絡協議会の妻屋明氏は「全国の脊髄損傷者が団結すれば、影響力はより強く、効果的なものになると確信する」と語っている。 


■ 会員の関心は《せきずいの再生研究》に向けられている。先週、テキサス大学で新しい技術の発表があった。切断された神経がカルシュウムなどの化学的高粘度溶液に浸すことにより再生されたと報告している。(THE DAILY YOMIURI、別稿参照)

  科学者たちは、神経細胞の再生はないと考えてきたが、世界的な多くの実験結果は、その考え方は真実ではないことを証明している。このことは麻痺患者や神経に損傷を持つ人たちの大きな希望となっている。


■ 日本せきずい基金は、10月2日に「スタンドアップ'21」というスローガンを掲げ、正式に発足する。会のメンバーたちは日本中のせきずい損傷者の支援、激励、せきずい再生研究のための基金集めに奔走している。

  「我々は会報の送付のほかにも、6月6日に開かれるのせきずい損傷者の性に関するレクチャーのような活動しています。 しかしながら我々のエネルギーのほとんどは、21世紀に向かっての日本せきずい基金の設立に費やされています。計画は非常に大きく,広範囲に及ぶため、多くの支援が必要です。我々の多くは重度の障害を持つ者で、力を貸して欲しい」と広瀬民男氏は語っている。このグループはできるだけ多くの人や団体からの支援を必要としている。私達の生活は一瞬のうちに変わってしまうかもしれない。明日はわが身、スーパーマンにさえ起こることなのだから。


今春の統一地方選挙では……  

  静岡市議に進行性筋萎縮症肢帯型「渡辺正直君」が3000票を集めて、当選した。

  彼は4月1日生まれで、親が心配して「正直」と名づけた。そのまま正直に生きて、遂に、議員になった。クヨクヨしない性格の障害者であった。

  議員、落語家、コメディアン、タレント等、障害者の職種が豊富になっていくことと、社会の障害者への理解は平行しているような気がした。              
        



【引用記事】…………………………………

ある化学薬品が神経を繋ぐ

  THE DAILY YOMIURI April 2 1999
   ワシントン発    
…………………………………………………  
  粘度の高い、ある種の薬品とカルシュウム溶液に浸す方法を使った新しい技術は、切れた神経を繋ぎ合わせる働きがあると認められた。これは、麻痺患者や神経を損なった人々の大きな希望となろう。この技術はザリガニからテンジクウサギまでと動物実験の範囲を出ないが、すぐに人間に応用可能だろうと、この技術の研究者は話している。

  この新しいアプローチは、人間の切断あるいはつぶされた軸索突起(axon-神経細胞の一部で,その部分を通じて細胞情報が伝達される)の復活(rejoin)に急速に使われることはほぼ間違いないと、Austin に在るテキサス大学の George Bittner 博士(この研究のリーダー)は、発表している。

  この技術は、切断あるいはつぶれた中枢・周辺神経の細胞の両端を結合させ、結合してから数秒から数分で再び電気的シグナルを伝達し始めると、同博士は続けた。

 「ニュウロサイエンス (Neuroscience)」誌の中で Bittner 博士と共同研究者は次のように述べている。

 「ポリエチレングリコール(PEG)の高粘度溶液を、切断された神経の軸索突起の端に1、2分塗っておく。PEGはしばしば薬として使われ、傷んだ神経の保持に使われる。

  その後この高粘度溶液を洗い流し、体液と良く似たカルシュウム塩溶液に浸し、沁み込ませると両端は結合し、数分以内にシグナルを発信し始めた。」

  科学者たちは近年まで、傷ついた神経細胞は2度と再生しないと考えていたが、最近の多くの実験はこれが事実ではないことを証明している。

  ひとつの実験で使われた化合物、GM-1、ガングリオサイド(ganglioside)―細胞膜の通常部分―は損傷後に続く細胞の成長、発展及び治癒のコントロールを助ける。

  この化合物は医薬品として使われれば、切断された神経の両端を成長させることができると推測されている。…………………………………………



   「基金」の活動を各紙誌が報道! 


   「ジャパン・タイムズ」「週刊読売」 

■「週刊読売」
               1999年5月10日発売号 巻末「Pin Spot」頁

「日本せきずい基金」誕生へ


「スーパーマン」でなかったスーパーマン

▼ 藤木さんは17年前に交通事故で、大濱さんは20年前にラグビーで、「スーパーマン」の役者クリストファー・リーブは落馬で、それぞれ脊髄を損傷し、以来、車椅子生活である。

  交通事故、スポーツ事故、転落、落下物と、脊髄損傷の要因はあなたの周りにごろごろしている。損傷者は活動的な青壮年層に多く、全国に約10万人いる。さらに毎年5000人が病院のベッドで手足の動かない我が身に気付き愕然とするのだ。

  ところが、現代医療では脊髄損傷の治療は難しい。しかも日本では、研究者も専門病院や治療施設も非常に少ない。患者は重度障害者のための施設の片隅で、介護者に気を遣いながら、あるいは在宅のベッドで過ごすしかないのだ。

  「このまま死んでなるものか!」と、重度の脊髄損傷者たちが「日本せきずい基金」設立を目指して、3年前から準備を始めた。治癒への希望となる脊髄再生に挑む研究者の尻を叩き、閉じこもり勝ちな脊損仲間を叱咤し、「明日は我が身ですよ」と健常者を啓発しようというのである。300万円の資金備蓄もできたし、年間500万円の予算で医療の情報提供やイベントや講演などの活動も続けてきた。6月からは「準備会」の枠を外し、健常者も含め会員約2000人の「日本せきずい基金」(大濱眞理事長)を発足させる。
  あなたもスーパーマンではない。
          <文:平田伊都子>

この記事は、役員の写真とともにホームページに
収めてありますので、ご覧下さい。





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