| SSKU 特定非営利活動法人 Japan Spinal Cord Foundation |
| 日本せきずい基金 設立準備会 ニュース No. 3
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人工呼吸器使用者の交流会を開きませんか
在宅で呼吸器を使用して生活している方々は、社会的にも孤立し、ご家族の懸命の支えの中で日々を過ごしている状況にあり、当事者・家族の交流会の開催や在宅支援のノウハウの蓄積が大きな課題となっています。そこで基金では、人工呼吸器使用の頚髄損傷者ピアグループの結成を今年度のプロジェクトとして、取り組むことにいたしました。
当事者・家族だけでなく、医療関係者も交え、この夏までに交流会を開催したいと思います。たまの外出さえままならない状況とは存じますが、志のある方はぜひ事務局までご一報下さい。
基金では今秋、ベンチレータ使用の在宅プログラムの先進地、カナダのブリティッシュ・コロンビア州(バンクーバー)への視察団派遣を企画中ですが、グループホーム建設を呼びかけている北村淑子さん(神奈川県)から寄せられた提案の要旨を以下にご紹介します。
【提案趣旨】………………………………………
私は、医学の進歩が高位脊損の救命・延命を可能にしてきている一方で、その命が社会にもどるための準備が立ち遅れていることを下記の刊行物から多くの事例をもって知り、感銘を受けました(『われら市民 めざせ21世紀』(全脊連・九州ブロック連協編 1995、「自立へのチャレンジ:ピア大阪通信」第13号の特集《障害者のライフサイクル:頚髄の場合》1997)。
社会の高齢化と医療費負担増の問題から、これからは積極的治療期が終わると、医学的管理が必要な状態でありながら、退院を勧告されることが多くなると思われます。
1975年に採択された国連「障害者の権利宣言」では、障害者は「医学的・心理的及び機能的治療を受ける権利を有する」「自立を目標とした施策を受ける権利がある」とうたっています。でも現状は厳しく、特にC3以上の脊損者の自立は夢のような話といえます。
この時期に発行された日本のリハビリテーション指導書では、「C4以上の障害は予後不良」との記述があるのみです。実際に、人工呼吸器装着者のリハビリテーションは拒否されていました。ADL(日常生活動作)の自立度が低く、長期療養が見込まれるうえ、人工呼吸器装着などの医療管理を必要とする人は、病院はおろか療養病棟や施設にさえ対象外と拒まれています。現在の診療報酬制度では、こうした医療が不採算部門に入ることも影響しているのです。私は、重度障害者の"自立"を標榜している施設もいくつか見せてもらいましたが、人工呼吸器装着者の療養を可能にするにはほど遠いものがありました。残るは在宅療養です。"退院勧告"すなわち在宅療養の途しかないのです。いいえ、むしろ望むところです。
病院や施設では、自主的な生活感は薄く、自由がありません.人間としての尊厳さえも損なわれる場合もあるように聞いています。重度の障害を持っていても、人工呼吸器を装着していても、生命維持に不安がないならば、責任と権利を有する自由な在宅療養を望むのではないでしょうか。しかし、行政のシステムの中では、呼吸と生活のすべてを器械や人の援けによらなければならない障害に対して受けられるサービスには限りがあります。それを補うサポート集団の育成、継続努力も相当のエネルギーが必要ですし、その不安定さは否定できないでしょう。むかしの家族制度の意識が希薄になって、核家族化している現在、在宅療法ではサポートする家族も"健康で文化的"な生活から、たちまち遠くなってしまいます。それでは、幸せなはずの在宅療養の喜びも半減してしまいます。呼吸のトラブルは、3分〜5分以内に解除しなければ、脳に不可逆的な障害を残します。介護する家族のことを併せ思いやれば、24時間のサポート体制が何としても必要なのです。
人工呼吸器を装着しての在宅療養者の悲しい知らせを聞くことは、もう終わりにする時期です。「車イス生活者の戦後50年史」を見ると、社会全体も経過をおって、障害者を取り巻くすべての環境改善を図ってきたことがわかりました。ここにいたるまでの先人のご苦労がしのばれます。私たちもこれを引き継ぎ、国連「障害者の権利宣言」をまっとうすべく、重度身体障害者の在宅ケアのニーズを声を大にして伝えたいものです。
★ 住宅プランの概要
そこで私は、次のようなことを計画致しました。どうぞご意見をお寄せ下さい。目標:重度身体障害者が、人間としての尊厳をたもち、自由と権利を主張し、責任を全うできる生活空間を確保すること。
内容:
1) 入居対象者
重度身体障害者
療養期の医療管理を必要とする人
(人工呼吸器装着者、各種のライン設定者、
RAクラス3〜4の人、在宅酸素療法中の人)
2) 規模・設備
鉄筋3階建て
6世帯(6〜13名、単身または家族同居)
エレベーター 外スロープ階段
医療ガス配管(プレッシャーエアー、酸素)
バキューム 発電機
3) 併 設
訪問看護室 在宅ケア支援センター
4) スタッフ
看護婦 3〜5名 ヘルパー 5〜7名
ケースワーカー 1名 事務 1名
■ C3以上の脊損では、24時間の介護のみならず看護が必要ですが、このレベルでは在宅療法以外、選択肢がありません。しかし家族の負担は重く、"健康で文化的生活"など望むべくもありません。
既設の病院や施設には欠けていると思われる"お世話される人主導のサービス"を提供できる、要求できる、そのような24時間看護つき住宅を共に考えてみませんか。
"もの"を造るためには、意志とお金が必要です。とりあえず意志が集まれば、ものごとは何とか進むと思っています。さまざまなご意見をお待ち致しております。
(1999年4月)
京大・清水研究室を訪問
3月25日、基金の代表及び担当理事が、京都大学・再生医科学研究所を訪れ、清水慶彦教授らに、せきずい再生研究の現状と展望をうかがいました。以下に、その要旨を紹介します。
Q まず、脊髄については。
A 頭部の大脳・小脳・脳幹部から脊髄が繋がり、そこから末梢神経に分れて行きます.この脳から脊髄にかけては脳硬膜が包んでいます。それで体の中でも脳・脊髄外の世界と内の世界では、血管細胞がぎっしり詰まっている血液関門という組織が脊髄などを外敵から護っているのです。
Q 「ネーチャーメディスン」に発表された実験は何が画期的なのですか?(内容は前号で紹介)
A 通常、脊髄内には普段いないマクロファージという物質をパーコール法(比重により特定の物質を注出する方法)により選別、その後そのマクロファージと自分の末梢神経とを一緒に暮らさせた物(ここがこの実験でのキーポイント)を脊髄内に抽入する事により脊髄の再生を試みたのです。
この事により、脊髄の中にいる細胞に対して「増えなさい」という刺激や信号が出されたのだと思います。
神経幹細胞もただ在るだけでは何の働きもしないのです。何かの信号により傷を治したり、脊髄に変化したりするのです。
Q この実験を人間にすぐ応用する可能性は?
A これはあくまでマウスでの実験で、人間への応用にはまだまだ越えなければならない課題が多いと思います。マウスの実験段階で約50%の成功率ですから、もう少し確率の向上が必要だと思いますが、いずれ可能になる事と思います。
Q 末梢神経の段階での神経再生状況は?
A 末梢部分においては殆ど再生は可能です。実験では、神経を伸ばす時に使う人工の足場に神経細胞が取り付いて神経として機能し、現在8ぐらいまでは1ケ月でつながって、3ケ月もすると歩ける様になる事が確認されています。これなどはすでにヒトに使える段階です。また、この薄い紙状の物は脳硬膜に使う事が可能なのです。
Q 世界的に見た脊髄神経再生研究の現状は?
A 現在、まだ動物実験の段階ですが、脊髄再生では次の点が証明されています。
まず第1に、切れたばかりの脊髄の断面をきっちりと合わせる事により繋がったという事。
第2は、生まれたばかりのマウスの脊髄神経を切って隙間がある状態の物に対して、幼児期のマウスの脊髄を入れてやる事により繋がった事。
第3には、末梢神経で繋ぐ事により、運動神経など一部分の機能回復ができたという事。そして第4に、離れた脊髄神経に対して各種物質を注入して、脊髄自体が自力によって再生する方法まで進んでいます。 ただ、あくまでもまだ動物実験のレベルです。
Q 損傷後の時間的経過と再生の適応は?
A 現在の研究は、損傷したばかりの新鮮な骨髄細胞を再生している段階で、数年を経たものを元どおりにできるかは、今後の大きなテーマです。
Q 脊髄再生が叶った時まで、なるべく良い状態で体を維持するにはどうしたら良いでしょうか?
A 動かない部位は自分でどんなに動かそうとしても、残念ながら動きません。それでも、その動かない筋肉を直接刺激することにより、筋肉の退化は防げます。
ここが一番重要な事なのですが、神経から筋肉へと結ぶ連結部があります。これを使わないと退化してしまいます。この連結部はシナプスと呼ばれますが、神経を刺激してその連結部(シナプス)を刺激して筋肉を収縮させて動かす。これは大変重要なことなのです。
神経を刺激する事は、シナプスの退化も防げるし、筋肉の退化も防げる。市販の電気マッサージ器などで刺激を与えることは、筋肉の退化のみならず、神経やシナプスの退化を防ぐために、大変重要なことなのです。
ただ神経に対して強い電気刺激を与えると、それに伴って運動神経以外の痛覚なども刺激することになりますので、ある程度の範囲内で行わなければなりません。しかし、すべての場で刺激は必要で、特に運動系神経を刺激することは大変重要なことです。
例えば、筋肉を引っ張ってやると、筋肉の長さを感知する感覚神経が興奮して、その信号を脊髄に向かって伝えます。それにより脊髄の神経細胞を興奮させて、その刺激が脊髄神経からまた戻ってきて、筋肉の神経細胞を刺激するのです。
よく「痙性」(痙性麻痺)とも呼ばれますが、これも筋肉と神経細胞を衰えさせないためには重要な事なのです。ですから、筋肉を刺激して反射を誘発させて、筋肉や神経を刺激させることは、退化を防止するために必要なのです。とにかく動かしてやるという事は、退化防止と言う意味において、十分効果のある方法だと思います。
Q 今の時点で治らないからと言って、何もしないという事より、とにかく筋肉や神経を刺激しておくという事は大変重要なことなのですね。
A そうです。神経と筋肉との関係は、動かしているという事が非常に重要な要素なのです。ですから寝たきりの人でも、やはり他の人が手や足を触ったり動かしたりしてあげるということは、体の衰えを防ぐことのみならず、神経の衰えも防ぐことになるのです。
Q 少し話は飛躍しますが、電気刺激などによって筋肉が動くようであれば、仮に電気刺激などによって排尿排便などのコントロールなどは可能なのでしょうか。
A 排便や排尿は、大脳皮質からその運動の指令が起こり、末梢神経に伝えるという形になりますが、司令はすべて大脳から順に脊髄を通って伝わって行きます。その途中が切れているということは、切れているところから仙髄に対して電気的に伝導路を作り伝える方法が一つ。この方法は欧米でも研究されているようですが、結果については詳しい事は存じ上げません。
もう一つは、「反射」を使うという方法です。これは膀胱の括約筋の収縮を誘発して排尿するという方法ですが、動きがすべて制御できるわけではないので実際は現実的ではないと思います。
Q これは全く素人の究極的質問なのですが、仮に私の損傷した脊髄部分に対して、清水教室で開発した人工神経の足場を埋める事により、脊髄神経の再生は可能なのでしょうか?
A 多分これ(人工神経)が絶対良いとは言い切れませんけれども、あるしゅ治そうとする時にはそういう方法になるかもしれません。
折角ここまで実験が進んでいるのですから。しかしそれをするには、まだまだ多くの動物実験をして成果を積み上げて行かなければなりません。
ですから、今すぐにヒトに行う事は時期尚早だと思います。
Q 次の研究テーマにはぜひ、「半分繋がっている脊髄神経(不全)、しかもしばらく期間の経過した脊髄の再生」も加えて頂けませんでしょうか。
A はい、現在もいろいろな角度から実験を行っています。例えば、半分だけ脊髄を削いだものに対する再生や、運動をつかさどる神経部分を切った後の再生等です。
どちらにしましても、現実を踏まえた研究を進めて参ろうと思います。何事にも言える事ですが、研究もギブアップした時が研究の失敗した時で、ギブアップしない限り成功は有ると信じて行っております。
* 当日は午後1時から4時半まで、再生医科学研究所の清水教授をはじめ、中村達雄助教授、助手の方々、京大・高所医学研究会の遠藤克昭博士との面談、および研究所の見学をさせていただきました。
ここに改めて御礼申し上げます。また清水教授には、10月2日の発会イベントでのご講演をお願いしました。
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