2004年1月、韓国において「生命倫理及び安全に関する法律」が制定された(施行:2005年1月)。ヒト胚に関しては難病治療のための研究を容認している。2004年末までには、ヒト胚を離床した研究を許可する難病として、脳卒中、アルツハイマー病、脊髄麻痺などを定めた施行規則を決定すると報じられている。
以下に、国立国会図書館編「外国の立法」2005年2月号から、その概要を紹介する。
■ 第1章 総則
【目的】 生命科学技術に関する生命倫理及び安全を確保し、生命科学技術を疾病治療等のために利用するための条件整備により、健康と生活の質を高めることを目的とする(第1条)。
【定義】 「生命科学技術」「体細胞核移植行為」「クローン胚」「遺伝子検査」等の用語の定義を定める(第2条)。
■ 第2章 国家生命倫理審議委員会及び、機関生命倫理審議委員会
【国家生命倫理審議委員会】 今回新設される委員会の機能、構成及び運営について定める。同委員会は、余剰胚を利用できる研究や体細胞核移植(クローン)を行うことができる研究の種類、対象、範囲等について審議するもので、研究許可の実質的な権限を有する(第6条)。
委員会は正副委員長各1名を含む16名以上21名以下の委貝によリ構成され、科学技術省長官、保健福祉省長官を含む開僚6名、生命科学研究界若しくは産業界を代表する7名以内の者、宗教、哲学、倫理、杜会科学、法曹、市民団体等を代表する7名以内の者で構成される(第7条)。
【機関生命倫理審議委員会】 ヒト胚等研究機関、遺伝子銀行、遺伝子治療機関等は、委員会を当該機関内に設置し、研究計画の倫理的科学的妥当性などを審議する〔第9条)。
機関委員会は5名以上9名以下の委員で構成し、該当機関に従事しない者1名が含まれなければならない(第10条)。
■ 第3章 胚芽等の生成及ぴ研究
第1節 クローン人間等の禁止
人クローン胚を子宮に着床させ、又は出産する行為及びその誘引又は斡旋を禁じる(第11条)。
ヒト胚を動物の子宮に着床させ、又は動物の胚を人間の子宮に着床させる等の行為を禁じる (第12条)。
第2節 人工授精胚芽
【胚芽の生成】 妊娠以外の目的での胚芽の生成を禁止する。妊娠を目的とする場合であっても、特定性の選択を目的とし、又は死亡した者若しくは未成年者を対象とする場合は、禁止する。精子又は卵子を売買の目的で提供する行為は、禁止する(第13条)。
【胚芽生成医療機関】 人工授精を行おうとする医療機関は、胚芽生成医療機関として指定を受け、省令に定める施設及び人材を備えなければならない(第14条)。
【胚芽の生成等に関する同意】 胚芽の保存期間及び廃棄、余剰胚を妊娠以外の日的で使用すること等については、精子及び卵子提供者の書面による同意を必要とする(第15条)。
【胚芽の保存期間及ぴ廃棄】 胚芽の保存期問は5年以内とする。廃棄に関する事項は記録し、保管しなければならない(第16条)。
【余剰胚の研究】 余剰胚は、発生学的に原始線が現れる時〔受精後約14日〕までに限り、不妊治療若しくは避妊技術の開発、筋萎縮症その他大統領令が定める難病治療のための研究に利用することが可能である。ただし利用については、改めて同意権者の同意を受けなければならない(第17条)。
余剰胚を研究しようとする機関は、予め「胚芽研究機関」として登録しなければならない(第18条)。
第17条の規定に基づき研究を行おうとする胚芽研究機関は、研究計画書を提出し承認を得なければならない(第19条)。
胚芽生成医療機関が研究のため胚芽研究機関に対して提供する余剰胚は、無償とする。両機関は、余剰胚の保管及び提供等に関する事項について、保健福祉省長官に報告しなければならない(第20条)。
胚芽生成医療機関及び胚芽研究機関は、余剰胚の保管、取扱い及び廃棄等の管理を徹底しなければならない(第21条)。
第3節 クローン胚
【体細胞核移植】 体細胞核移植によるクローン胚の生成を禁ずる。ただし、余剰胚研究の場合と同様、例外的に第17条に定める難病治療のための研究においてのみ、生成を認める。体細胞核移植を行うことのできる研究の種類、対象及び範囲は、国家生命倫理審議委員会の審議を経て大統領令で定める(第22条)。
クローン胚を生成し、研究を行おうとする機関は予め登録しなけれはならない。体細胞核移柚に関しては、第19条から第21条までの規定か準用される。この場合、「余剰胚」を「クローン胚」とみなす(第23条)。
■ 第4章 遺伝子検査 (第24条から第30条)
遺伝子検査機関及びその遵守事項、遺伝子検査の制限及ぴ同意、検査対象物の提供及び廃棄について定める。
遺伝子検査を行い、又は面接検査対象物を採取し、遺伝子に関する研究を行おうとする者は、子め保健福祉省長官に届け出た上で登録しなければならない(第24条)。
科学的立証が不確実な身体的概観や性格に関する遺伝子検査は、禁止される。胚芽又は胎児を対象とする遺伝子検査は、筋萎縮症その他の遺伝疾患を診断するための目的以外には行ってはならない(第25条)。
遺伝子検査を行う場合には、検査対象者から同意を得なくてはならない(第26条)。
■ 第5章 遺伝情報等の保護及ぴ利用(第31条〜第35条)
遺伝情報をもとに教育、雇用、昇進等において人を差別すること、遺伝子検査の強制や検査結果の提出を強制することは禁じられる(第31条)。
遺伝子銀行を設立するものは、保健福祉省長官の許可を受けなければならない。施設、設備基準等については大統領令で定める(第32条)。
遺伝子銀行の遺伝情報を利用しようとする者は、遺伝子銀行の長に利用計画書を提出しなければならない。遺伝子銀行の長は、機関生命倫理審議委員会の審議を経て遺伝情報の提供の可否を決定し、その結果については保健福祉省長官にも報告する(第33条)。
提供する遺伝情報には個人情報を含めてはならない。その提供は、保健福祉省が定める必要経費を除き、無償とする(第34条)。
遺伝子銀行の長又は従事者は、職務上知り得た遺伝情報等を正当な理由なく他人に提供してはならない(第35条)。
■ 第6章 遺伝子治療(第36条及び第37条)
遺伝子治療は、遺伝疾患、癌、後天性免疫欠乏症その他生命に深刻な障害を招く疾病で現在利用可能な治療法かなく、又は遺伝子冶療の効果か顕著であるものに限られる。ただし、精子、卵子、胚芽又は胎児に対し、遺伝子冶療を行ってはならない(第36条)。
遺伝子治療機関は予め登録しなくてはならず、治療の目的や副作用等について予め患者に説明し、同意を得なくてはならない(第37条)。
■ 第7章 監 督(第38条から第44条)
胚芽生成医療機関、胚芽研究機関、遺伝子検査機関、遺伝子銀行及び遺伝子治療機関に対し保健福祉省か有する監督権限について定める。具体的には、報告又は資料の提出、胚芽や遺伝子検査のための採収物等の廃棄命令、改善命令、許可の取消や業務の停止等について定めている。
■ 第8章 補 則(第45条から第48条)
国家による生体幹細胞研究の支援、研究事業等に対する国庫補助、秘密漏洩の禁止等を定める。
■ 第9章 罰 則(第49条から第55条)
人クローン胚を子宮に着床させ出産させた者は、10年以下の懲役に処する(第49条)。
法人又は個人の業務に関して従事者が違反行為をしたときは、法人又は個人に対しても罰金刑を科する(第54条)。
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