〔新薬開発〕 新薬の研究開発について
ファイザー・医療制度勉強会報告
ファイザー鰍フヘルスケア団体を対象とする医療制度勉強会が6月23日、同社会議室で開催された。
第1回は「薬の研究開発・承認・薬価収載」をテーマに、日本大学薬学部薬事管理学研究室の白神誠教授が講演された。その概要を参加した基金スタッフが紹介する。
薬の承認について
例「コンビニで薬を売ることをどう考えるか」
行政の考え:すべての消費者が医薬品を安全かつ有効に使用するには専門家の関与が必要。
規制緩和を求める人の主張:
- 実際には専門家から消費者へ説明がなされるケースは稀である。
- 普通の消費者なら(説明書きを読む等して)自分で判断できる。
* 行政の言う「すべての消費者」と規制緩和を求める人の言う「普通の消費者」という認識の対立から意見が噛み合わない。
新薬を提供するには厚生労働大臣の許可が必要となる。
〇 一般の人には製薬企業のいう有効性や安全性の真偽を判断できない。 〇 使ってみても良し悪しがわからない。(一般的な有効率は50%位と言われる) 〇 人によって薬の効き方や危険性が違う(効果や副作用)
審査する側(厚生労働省)に求められることは:
〇 公平・公正であること → 倫理規定の遵守 〇 高い専門性を持っていること
→ 専門的知識を持った者によるチーム審査
→ 第一線の専門家のアドバイス
新薬を提供するには3つの許可が必要である:
新薬の有効性や安全性を確認するには
- 製造販売承認:その薬の有効性・安全性の確認
- 製造許可:常に一定品質の製品を製造できることの確認
- 製造販売許可:市販後の安全な使用を確保するための体制があることの確認
有望な新薬の種が見つかった(理論的な研究やモデル動物で確認できた)場合、その毒性を調べ、吸収・分布・代謝・排泄を調べる。
さらに、人間で有効性・安全性を確認し、剤形を工夫していく。
新薬の審査:製薬企業から提出された資料の書類審査で行う
提出資料の信頼性をどう担保するか
↓
治験を実施する基準を定めて、それが守られてい るかどうかを査察する。
その基準は――
データの信頼性の確保
- GLP(Good Laboratory Practice:動物を用いた毒性実験の基準)
- GCP(Good Clinical Practice:臨床試験の基準)
- 信頼性の基準
提出された資料は生データを正確に反映していること
都合の悪い資料を隠していないこと
生データを保存していること(3〜5年)(失敗データも保存義務有り)- 治験審査委員会の設置
- 文書によるインフォームド・コンセント
- 医療機関への治験協力者の配置
- 毒性試験などが終了していること
- 治験の有効性・安全性に関する情報の提供
- 治験薬による副作用の厚生労働大臣への報告
- 被験者に生じた健康被害の補償のための手立て
治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board)
- モニタリングの実施
- 監査の実施
- 各種手順書や試験計画書の作成とその遵守
- 記録の保存
インフォームド・コンセント
- 原則として治験を行う各医療機関に設置
- 治験実施や継続の適否を判断
- 説明文書の吟味
- 治験審査委員会の構成
5人以上で構成。1人は専門家以外の人物。またその1人は医療機関と利害関係のない者
文書による説明と文書による同意
説明文書はできるだけやさしい表現
※ 説明文書に書かなければならない主な内容
※ 治験は実施前に厚生労働大臣への届け出が必要
- 予測される治験薬の効果や被験者に対する不利益
- 他の治療法に関すること
- 治験の参加をいつでも取りやめることができること
- 治験に参加しないことや参加を取りやめることにより、被験者が不利な取り扱いを受けることはないこと
- 被験者の秘密が保全されることを条件に、モニターや治験審査委員会にカルテなどを見せること
- 健康被害の補償に関すること
※ 正しい評価をするための臨床試験の進め方
- 同じ薬でも試験ごとに何度も提出
- 治験届けには、毒性試験などの資料と治験の実施計画書や患者への説明文書の案を添付
- 初めての提出の時は30日待ってから治験を開始(その間に厚生労働省で治験実施の適否を判断)
動物実験の結果が人で反映されるかどうかの確認
↓
その薬の位置付けの確認
- 健康な成人で血中濃度や代謝物を調べて動物と比較(第T相臨床試験)
- 少数の患者で有効性の確認(前期第U相臨床試験)
- 多数の患者で最適な投与量の決定(後期第U相臨床試験)
↓
※ 新薬開発に要する期間
- 多数の患者で標準的な治療薬やプラセボ効果との比較(第V相臨床試験)
注)プラセボ効果:薬を使用したという思い込みから効果が出てしまうこと。
合成(抽出) 2〜3年
前臨床試験開始 3〜5年
臨床試験開始 3〜7年
承認申請 1〜2年 → 承認取得
というプロセスを踏むので、トータルでは15〜17年かかる。
その期間にはさらなる技術進歩は充分に考えられるし、ロジックも相応に変化することも考えられるはずであるが、依然として上記のような期間がかかってしまう。
現在「新薬」とされるモノは、10年以上前の発案の薬と言える。
※ 医療保険での新薬の使用
※ 薬価格基準に収載されるには
- 薬価基準に収載されていない医薬品は使用できない
- 1つでも薬価基準に収載されていない医薬品を使用すると――
診察代を含めて全てが自費(混合診察禁止の原則)- 薬価基準に収載されていないと販売できない(国民皆保険)
- 薬価基準に収載される医薬品の価格は厚生労働大臣が決める
※ 新薬の薬価の決め方
- 薬事法により「医療用薬品」の承認を受けていること
- 承認取得者の希望により収載
- 予防薬、生活改善薬は収載されない
- 価格が折り合わず申請者が収載を希望しないこともある
※ 薬価の決め方
- すでに薬価基準に収載されている医薬品の中から最も類似しているものを選ぶ
- 1日の薬剤費がその類似薬と同じになるように薬価を決める
- 類似薬に比べて優れた点があれば加算する
- 外国で同じものが売られてる時は、その価格と比較して大きく離れてる場合には調整する
新規収載品の1日薬価=比較薬の1日薬価
同じ効果を出すのに、薬によって用いる数や量が異なる場合が多いので、1錠や1包で価格設定するのではなく、1日トータルでの使用分で価格で設定する。
健康食品と医薬品を比較:
【略語解説】
GCP:Good Clinical Practice 医薬品の臨床試験の実施基準。被験者の人権と安全性の確保、臨床試験のデータの信頼性の確保をはかり、適正な臨床試験が実施されること。すなわち臨床試験が、「倫理的」な配慮のもとに「科学的」に実施されることを目的として定められた。
GLP:Good Laboratory Practice 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準。非臨床試験の動物における安全性試験データの質の信頼性を確保するため、動物実験などの作業の標準化、記録、監査体制、機械、施設などを規定したもの。
GMP:Good Manufacturing Practice 医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準。医薬品の製造工程の各段階で品質管理を確保し、各種の汚染を防いで良質な医薬品を製造するために、医薬品の製造業者が遵守するべき規則。
<治験ナビより>