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ワード圧縮
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特定非営利活動法人   Japan Spinal Cord Foundation
日本せきずい基金ニュース
No. 17

 〔目次〕

脊髄研究がリハビリを変える
  • 欧州での歩行リハビリ

  • 運動機能回復のための集中的訓練の成果(ワイズ・ヤング)

  • 対マヒ者のロボット装具によるトレッドミル訓練(コロンボら)

  • 幹細胞研究・海外の動向

  • 世界初、脊髄再生の臨床治験開始

  • 在宅高位脊髄損傷者のケアシステム調査報告から

  • 〔予定〕  第3回脊髄再生促進市民セミナー

  • 講演会「脊髄損傷者の在宅呼吸療法」



* 昨年11月に開催した第2回脊髄再生市民セミナーでのワイズ・ヤング教授の歩行リハビリに関する報告は、参加者の大きな関心を呼んだ。

 本号では、その推進者の1人であるスイスのコロンボらの原論文(2001)、およびヤング教授のこれに関するレビュー(2002)を掲載するとともに、J.of Clinical Rehabilitationの特集「脊髄損傷の歩行」(2002)から、その可能性をまとめた。


欧州での歩行リハビリ

 歩行訓練の意義

 わが国の多くの施設で脊髄損傷者の歩行訓練が行われなくなっているという。それは、使いやすい車いすが提供されるようになったこととともに、リハビリ報酬や入院期間の短縮化の問題があると見られる。

 しかし、欧米では実際に歩行の可能性を高めるだけでなく、車いすに座りきりでいることの弊害を予防するために歩行装具の意味が見直されている。

 伊藤倫之らは要旨次のような指摘を行っている。

 ベッド上や車椅子では、下肢には立位や歩行時にみられる体重全体が負荷される状況は見られない。垂直方向にかかる負荷が骨代謝に重要な役割を果たしている。立位による体重の負荷により、また歩行を行うと立位より10%ほど大きな力が下肢の骨にかかり、骨代謝を良好にさせると考えられる。

 また頚髄損傷者、高位胸損者は心臓が交感神経Th1−5の支配を受けること、また麻痺部の血管収縮反応も阻害されることから血圧の維持が困難である。また長期ベッド上で安静や車椅子上での生活のため、絶対的な血液量が減少していると考えられる。このため、立位および歩行は、循環器系にも大きな影響を与える。

 立位や歩行が骨代謝、血液循環に好影響を与える。特に若年時に受傷した中高年の脊損者には、生活習慣病などの罹患率が健常者と比較して高いという報告があり、このような循環器系の改善は、持久力向上だけでなく将来的な健康面でもよい結果をもたらすことが予想される。


 歩行リハビリの新思考 

 1990年代から、ドイツやスイスでは新たな歩行観によるリハビリが行われ大きな成果を挙げてきた。その状況を住田幹男は次のように要約している。

 交互性歩行の開発の過程で新しい知見が報告されている。「末梢の力学的センサーの神経細胞を励起し、この励起した神経信号を脊髄に求心性に送り込んで、麻痺した脊髄の脊髄運動神経細胞を興奮させ、あたかも通常歩行に見られるような一連の筋収縮をさせることができる」として、治療用装具の可能性を示唆する矢野英雄やWernig(1998)、Colombo(2001)らの提起がなされている。

 特に後者の見解は、積極的に残された脊髄機能を脊髄神経機構自体が交互性歩行の擬似歩行の機能訓練刺激によって変容・活性化させることを意味しており、さらに訓練を蓄積することでその機能がより向上することを示唆している。

 彼らのエビデンスからは当初、不全麻痺で効果が大きいとしていたが、さらに完全麻痺でも抗重力筋群への活性化も認めるとしている。


 トレッドミル訓練の成果

 この療法をDietzと共に行った中澤公孝らは、その要点を次のように述べている。


 文献)

1) オーバービュー「いま、なぜ脊髄損傷の歩行か」住田幹男(関西労災病院リハビリテーション科)

J. of Clinical Rehabilitation, 11 -3, 2002

2) 「脊髄損傷と歩行」、中澤公孝・赤居正(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院研究所・運動機能系障害研究部)、

J. of Clinical Rehabilitation, 11 -3, 2002

3) 「歩行のための訓練・体力づくり」、伊藤倫之ら(国立伊東重度障害者センター)、

J. of Clinical Rehabilitation, 11 -3, 2002





 運動機能回復のための集中的訓練の効果

ワイズ・ヤング、M.D.(米国ラトガーズ大学、2002)

【要約】

 集中的な訓練やエキササイズは、慢性脊髄損傷者の運動の再生や運動機能の回復をも向上させることができるであろう。これらの訓練の効果は運動機能の「学習された不使用」(learned non-use)*のメカニズムを逆転することによるものだろう。神経回路の遮断は、理論的にみれば運動システムの不使用の結果である。最近の研究データからは、受傷により脊椎の影響力が不在であるにも関わらず、脊髄が学習する能力を有していることを示している。

 トレッドミルによる「免荷式歩行訓練」は、慢性脊髄損傷者の地上での歩行動作の驚くべき回復をもたらす。研究データは、集中的な運動療法の最大限の利用が、とりわけ慢性脊髄損傷者の免荷式トレッドミル・トレーニングにおいて効果的であることの強力な論拠を明らかにする。

〔訳注〕
「学習された不使用」:受傷により脊髄が運動神経を使用しないという学習を行なったことを指す。


■ 「学習された不使用」

 最近の研究は、脊髄損傷で対マヒになった人々が集中的トレーニングやエキササイズにより、運動機能の回復に有益な効果をあげていることを報告している。

 1993年にTaubらは、脊髄損傷や中枢神経系障害による慢性対マヒ者の機能回復のための「強制誘発」(constant-induce: CI)運動療法について述べている。良肢を強制的に運動させ、それが対マヒの患肢を無理に使用することになり、「学習された不使用」の機序を逆転させることができる。これはTaubら(1994)が提案したもので、行き過ぎた運動機能の不全は、中枢神経系の損傷後に生じると説明される。

 1997年、Liepert らは強制誘発運動療法は運動機能の回復を示すだけではなく、手の運動皮質の増大はヒトの脳の大規模な神経学的可塑性を暗示するものだと報告している。

 ドイツではKunkelら(1999)が、1日6時間、14日間の強制誘発運動療法により5人の慢性患者の腕の機能を十分に回復させた例を示している。Miltnerら(1999)は、米国の慢性患者15人に実施し同様の結果を得た。Taubら(1999)は、回復に共通する治療因子として、マヒした手足の集中反復使用による誘発をあげ、手足の使用による運動皮質の大量の再組織化を指摘している。


■ トレッドミル訓練

 おそらく、「学習された不使用」の逆転のもっともドラマチックな事実は、脊髄損傷者の訓練結果である。

  WerningとMullerは1992年、何人かの脊髄損傷者に対する免荷式トレッドミル(=ラウフバンド)による歩行訓練の結果を報告している。受傷後5ヶ月から20ヶ月の不全マヒ者に週5日、毎日30分〜60分の訓練を1ヵ月半から7ヶ月実施した。この訓練では、支えなしに平面を100〜200m歩行する能力を含め、有意な歩行能力の回復を果たした。

 このうち5人は、片足の運動機能・感覚機能を完全に失っていた。訓練の終了により体重の免荷は40%から0%に減少されたが、支持なし歩行では最初の第1週に0〜104mであったものが、訓練の最後の週には200〜410mと有意に増加した。歩行速度は同様に、毎分0〜10mが13〜23m/分へとなった。

 Werningら(1995)の次の実験では、89人の不全マヒ者の歩行訓練が行なわれ、従来の療法を受けた62人の患者と比較された。訓練プログラムはトレッドミルによる免荷式立位歩行訓練であり、脚の動きはセラピストが援助した。

 3〜20週の訓練を受けた44人のうち、33人は車イス依存(支えなしに立位や歩行ができない)で、6人のみが階段を上ることができた。訓練開始時には歩行ができない33人のうち25人(76%)は自立歩行の能力を獲得し、7人は運動能力を改善したが支えが必要であり、1人は改善できなかった。

 44人のうち6人(14%)だけが階段を上ることができたのだが、さらに44人のうち34人(77%)が階段を上れることができた。

 Werningら(1998)はこれら35人の患者を半年〜6年半追跡し、歩行能力は31人が維持し3人が改善、1人だけ減少したことを見出した。25人のうち20人は訓練により自立歩行が可能になるまで車イス依存であった。興味深いことに、これら多くの人々はわずかに随意筋活性の改善のみを示し、多くの歩行の改善は反射作用の改善、運動に協応した自律筋、筋群の活用や好ましい補完作用によるものであることを示唆している。この実験は一層の集中的訓練なしに訓練効果を維持できることを示唆している。歩行能力を維持したこの結果については筋電図の記録によって立証されている。

 このように支持運動訓練は、受傷後6年半経過しても大多数の人々の歩行機能を改善させることができることを示唆している。


 日常的歩行訓練の効果

 他の欧州の機関でもトレッドミルによる免荷式歩行訓練を取り入れ同様の結果を得ている。チューリッヒのバルガリスト・リハビリセンターのDietz(1998a)は、脊髄損傷者の臨床的・電気生理学的変化を調査し、完全マヒ者の脊髄の運動活性が自発的な改善をみせ、約5週間で最高域の平衡状態に達したことを示した。毎日の歩行訓練は、免荷した両下肢の能力を12週を超えるまで改善させた。しかしながらこれは、両下肢の随意運動のどのような改善とも相関するものではなかった(1998b)。

 Dietzら(2001)は、受傷後の運動機能の改善に貢献する2つの適応形態を挙げている。それはトレッドミル訓練による筋緊張と、脊髄の歩行中枢の活性化である。彼は、抗痙攣薬の服用が歩行訓練と関係するであろうことを指摘している(2000)。運動訓練は筋活性を十分に適切なレベルに向上させ、不適切な痙性を十分に減少させる。

 マイアミプロジェクトにおいてField-Fote(2001)はASIA-Cレベルで受傷後1年以上の19人の被験者に対して免荷式訓練と機能的電気刺激(FES)を結合させた実験を行った。被験者は1日90分、週3日、3ヶ月の訓練を行った。筋の電気刺激は片脚に行なわれた。訓練により平面での歩行速度を毎秒0.12メートルから0.21メートルへ向上させ、トレッドミルの速度を毎秒0.23mから0.49mへと速め、トレッドミルによる歩行距離を93mから243mへと向上させた。全ての被験者は、平面やトレッドミルで、また下肢の強度において有意な改善を示した。

 欧州のいくつかの機関では、受傷後すぐにトレッドミル訓練をはじめ、運動機能の「学習された不使用」を予防する研究を開始している。

 ハイデルベルグのAbelら(2002)の最近の報告では、受傷後すぐに訓練した7人の患者の結果を述べている。彼らは、患者からセラピストの支えなしに十分な安定した歩行ができ、歩行機器への十分な持久力が出来るようになるとすぐに歩行分析を行った。トレッドミル訓練は、25%の免荷(0〜35kg)、最高歩行速度0.28m/秒(0.15〜0.7m/秒)、最高歩行持続時間4.7分(3〜7分)で開始された。歩行速度は毎秒0.67m(0.23〜1.1m)に増加し、最高歩行持続時間は11分(8〜15分)に増加した。患者は歩行により整形外科的問題を持つことなく、有意の合併症を起こすことはなかった。


 脳脊髄の再組織化の推進

 いくつかの所見は、運動訓練が脊髄及び脳の再組織化を推進させることを強く支持している。第1に、運動神経の訓練効果は、トレーニングのパラメーターとして明確に示される。例えば、免荷運動は受傷後の運動能力の回復を促進するが、もっとも確実なことはトレッドミルをしばしば行うことである。

 Sullivanら(2002)は、24人の片マヒ者で実験を行なった。すべての被験者の歩行速度は正常値の50%以下であった。彼らはトレッドミル速度が「遅い」「速い」「不規則」のグループに分けられ、1セッション20分の歩行訓練を12セッション、4週間受けた。

 すべての被験者は平面の歩行速度で有意な改善を示し、訓練後3ヶ月にわたってその能力を維持した。しかしながら、顕著な改善を見せたのはトレッドミル速度を速くしたものだった。すべての被験者の訓練期間は同一であったことから、より速いトレッドミル速度はより効果的であることを示唆し、訓練効果は筋肉の変化にではなく仲介する神経にあることを見て取ることができる。

 第2に、訓練効果はある機能から他の機能へと一般化されるのではない。例えば、立位やステッピングの訓練の効果は、相互に一般化されるものではない。

 De Leon(1999b)は、ネコにおいて立位とステップの訓練を行った。損傷後に立位訓練を行なったネコはステップができず、ストリキニン(グリシン受容体遮断薬、強力な中枢神経刺激剤)の投与により、30〜45分間、全荷重をかけたステッピングを引き出した。

ところが、ステップ訓練したネコは好ましいステッピングをしたが、それはストリキニンの投与によって行ったのではなかった。立位とステッピング訓練は、ネコの神経と筋肉の異なった適応をもたらした。脊髄化(spinali-zation)は、筋量の減少と腓腹筋の活性化された緊張の最大化した結果である。立位訓練はこれらの変化を改善するが、ステッピング訓練はそうではない。

 同様に、機能的電気刺激はトレッドミル訓練がするような有効な運動を作り出すことができない。例えばKernら(1999)は、萎縮した筋群(過酷に使用され長期間刺激が持続している)の強直・収縮を活性化するために、足首の加重や他のエキササイズとともに機能的電気刺激を行なった。しかし患者には、免荷式トレッドミル訓練を受けた人のような、いくつかの運動能力の改善はみられなかった。

 第3に、訓練効果は、筋群および神経回路を含む訓練に明確であり、エキササイズがホルモン変化をもたらすような一般的メカニズムが仲介されることは起こりそうもない。例えば、歩行訓練の効果は四肢マヒ・対マヒ双方にあり、それゆえ対マヒにおいてカテコールアミン(神経伝達物質)の上昇がより際立って示されることや、他の筋群に作用する成長因子の増加はありそうもない。訓練は、機能の実行を最大限にするよう脳・脊髄の再組織化を推進するポテンシャルを持っている。


【結 論】

〔1〕 神経機能不全の新しい理論は、大きな注目を引いている。この理論は「学習された不使用」が中枢神経系の損傷による機能不全の主要な要因であると断定する。集中的・反復的な運動神経活性により「学習された不使用」の機序を逆転させることができ、強制誘発療法、あるいは「強制使用」(forced-use)療法と呼ばれる新たな手法をとることによってマヒした上下肢を含む活動を促進することを、多くの例証が示唆している。

 現在、いくつかの研究グループが報告しているが、強制使用療法はマヒして何年も経過した人々の機能を修復することが出来る。しかし、この療法には懐疑論もある。一部の人たちは、強制誘発療法にはエキササイズと運動神経活動をまさに増加させた兆候があると信じている。
    
〔2〕 集中的な運動訓練は、大多数の脊髄損傷者の機能を増大させることができる。過去10年にわたり欧米の多くのリハビリテーションセンターは、トレッドミルによる免荷式歩行訓練が慢性脊髄損傷者の歩行活動の増大をもたらしたことを報告している。

 運動機能の改善は、筋群の良好な随意筋活性化と協応していないが、反射の協応及び脊髄が歩行を学習することを促進しているように見える。現在いくつかのセンターでは「学習された不使用」を予防し運動能力を回復させるために、受傷後早期からの免荷式歩行訓練を始めている。

〔3〕 歩行訓練は完全マヒに対しても有益であろう。動物とヒトの双方の研究からは、脊髄が運動パターンの不特定の反応や薬理学的刺激に関係していることを示している。訓練は、脊椎のコントロールを必要とせず、歩行パターンを活発化ないし誘発する。例えば、動物実験では、横断損傷動物のトレッドミル訓練は、筋萎縮の回復や筋肉の他の変化と同様に、協調があり効率の良い後肢の歩行を増進させる。

〔4〕 運動神経訓練は、エキササイズや機能的電気刺激を単独で行うこと以上の効果として現れる。とりわけ、明確なトレーニングのパラメーターに依拠する運動神経の訓練効果は、ある機能から他の機能へと一般化されるのではなく、筋群と神経回路に明確な変化をもたらす。それはエキササイズによるホルモン変化や、エキササイズの一般的効果のような全般的メカニズムとして説明できるものではない。

〔5〕 エキササイズは複合的効果を持つが、その機序はまだよく知られていない。多くの研究は、エキササイズが筋萎縮を回復させ、筋量やその強さ、その他の性質を向上させることを示している。それらのエキササイズの効果のいくつかに中には、今後同定されるであろう脳下垂体成長因子が含まれる。それは低閾値の速筋知覚シグナルの活性化として現れる。とはいえ、エキササイズは骨塩密度、ブドウ糖負荷、脂肪の遊離などのような他の特質の改善は注目される。いくつかの研究では、頸髄損傷者はこのような反応を示さないことを示唆している。


* 本稿は、Effect of intensive training on motor recovery
http://carecure.Rutgers.edu/spinewire
より抜粋した要旨である。全訳はせきずい基金ホームページを参照のこと。

 原文には35ページのレファレンスが付され、ヤング教授の上記ホームページからさらに個々の研究論文の抄録にアクセス可能である。



 
 対マヒ者のロボット装具によるトレッドミル訓練

Gery Colombo MS, Matthias Joerg MS, Reinhard Schreier BME, Volker Dietz MD
(チューリッヒ、バルグリスト大学病院対マヒセンター ParaCare及びスタエファ、
 Hocoma医学工学社)

抄 録
 近年の研究により一定のトレッドミル訓練は不全脊髄損傷の被験者の歩行能力を改善させる可能性があることが確認された。患者の歩行訓練の初期段階において、トレッドミル上の歩行訓練中は理学療法士の介助が必要である。理学療法士の体力と経験を要するため、トレッドミル訓練には限界がある。駆動式歩行補助装具(driven gait orthosis:DGO)が開発されたことにより、トレッドミル上で生理的歩行が可能となった。

 使用する装具は患者のサイズによって調節できる。膝・股関節にあわせる駆動部分はポジション・コントローラーによって制御される。DGOの使用により、麻痺レベルや痙性の程度が異なるそれぞれの患者は、30分以上のトレーニングを行うことおよび生理的歩行パターンを得ることができる。


緒 言
 慢性脊髄損傷のネコにおいて、トレッドミル訓練中に体重の負荷を部分的に軽減し、足の筋肉活性化を適切に行うと、歩行運動を誘発することが可能である。運動能力にとって、トレッドミル訓練は有効であることを記載しているものがある。ネコにおける効果と同様に、不全マヒ者においても、トレッドミル上で体重の一部を免荷することにより、歩行運動を誘発するトレーニングをすることができる。

 実際に不全マヒ者に関する近年の研究では、筋電図(EMG)により訓練中に足の伸筋で活動が著しく増加することを認め、運動機能の改善に結びつく効果があることを示している。完全マヒ者においては、運動能力の改善は見られなかったが、トレッドミル訓練中に歩行パターンを誘発し、EMGが足の伸筋の活動増加を示したため、トレッドミル訓練は、完全マヒ者にも有効であることが実証されている。また、不全マヒ者および片マヒ者において、歩行訓練をした実験群は、歩行訓練をしない対照群に比べ、可動性の改善度が高く、歩行訓練の有効性が十分に確認されている。

 患者が自力で足を動かせない場合、受傷後、4〜6週間でトレッドミル訓練を始めるのが通常である。患者はトレッドミル訓練の際、体重の負荷を部分的に軽減するためにハーネスで固定される。現在、トレーニングの最初の段階では、患者の両側に理学療法士が1名ずつ座り、生理学的な方法で患者のリハビリ訓練を介助する必要がある。この方法により、患者はトレッドミル上で歩行が可能になる。このような運動は足の筋肉の活動パターンと関連づけられる。この活動パターンは最適求心性入力(appropriate afferent input)により活性化された脊髄の運動中枢によって引き起こされると思われる。




図1.トレッドミルによる免荷式歩行訓練(Hocoma社)


 トレッドミル上で歩行を介助することはきわめて重要と思われる。再現性があり、リズミカルで、生理学的な方法で歩行訓練を行ってこそ、脊髄に対する最適求心性インプットは達成される。最適求心性インプットは、脊髄の運動中枢を刺激し、随意的に動かせない足の筋肉を活性化するために必要である。

 理学療法士にとってトレッドミル訓練の患者を歩行させる作業は人間工学的に見て好ましくなく、骨の折れることである。そのため訓練の期間は比較的短く、患者に過度の痙性をみとめる場合は訓練を行うことができない。他の問題としては、理学療法士はそれぞれの患者に応じて異なるリハビリのやり方をしなければならず、また、同じ療法士でも日によってやり方が違ってくる。したがって、徒手による介助では、運動中枢に対する最適求心性入力を再現性のある方法で提供できず、患者は最良の成果を得ることができない。

 患者に対してはトレッドミル訓練法を改善する目的で、理学療法士に対しては作業負担を軽減する目的で、私たちは歩行駆動装具(DGO)を開発した。DGOを使うことにより、歩行が不可能な患者は機械による歩行訓練を行うことができる。

 この機械による訓練は今までの徒手による訓練と比べて、多くの利点がある。ひとつには、DGOは理学療法士の肉体的能力より力があるため、患者は受傷後の早い段階からリハビリが始められる。また、DGOによって長時間の訓練ができるようになる。つまり作業負担を軽減されたため、理学療法士はより長い時間の指導を行うことが可能になり、それぞれの患者の必要性に応じて、より適した歩行パターンを個別に提供することができる。

 したがって、より生理学的で再現性のある方法が得られる。また、DGOは研究目的の点で利点がある。異なる歩行パラメータおよびリハビリ運動の介助の度合いを測定するのが可能である(例、調節強度)。したがって、訓練効果という点においてパラメータの影響を研究することができる。また、治療に要する理学療法士は1名でよいため、DGOを使用することによって訓練費用を削減することができる。

 過去にいくつかの研究グループがDGOの開発を行ってきた。1972年、Hughesが空気圧式の駆動外骨格(driven exoskeleton) の計画を作成した。後に、SeiregとGrundman、Miyamotoらが水圧移動システムを発表した。Rabischongら、Ruthenbergらは直流モーターを使った最初の装具を開発した。

 これらすべての動力装具は、平衡介助をすることなく、傾斜バランスをとるための介助なしに平面で患者を動かせるように開発された。これらの装具は体のバランスをとることができないため、松葉つえや平行棒のサポートが必要である。


方 法
 過去3年の間に、チューリッヒのバルグリスト大学病院パラケアParaCareリハビリセンターで、対マヒ者の歩行訓練に用いるDGOが開発された。患者には、この装具をストラップで胸、腰および脚の周りに締めて装着することができる(図1および図2参照)。

個々の患者に対するDGOの調節
 DGOは、個々の患者の訓練に応じて個別に適用されなければならない。したがって、DGOは各被験者の身体構造に合うよう調節可能なものでなければならず、個別の患者に対する装具の最適装着を可能とするよう、いくつかのパラメーターは変更できるようにしなければならない(図3)。

バランス・コントロール
患者の中には体幹(胴体)の安定しない人もいるので、上体は訓練中、垂直方向に安定していなければならない。この安定は、回転パラレログラムによりDGOをトレッドミルの手すりに接続することで得られる(図2)。

 この方法によって、DGOは垂直方向にのみ動き、片側に傾くことが防止される。また、パラレログラムはDGOをトレッドミルの上方の一定の位置に維持し、トレッドミルのベルトの動きにより生じる後退運動が起きないようにする。それでも、この仕組みは歩行中に生じる身体の上方および下方への動きを可能にする。

 パラレログラムの仕組みには長所がいくつかある。先ず、両脚の動きは矢状面でコントロールするだけでいいので、DGOのコントロールが簡単になる。またこの仕組みでは、患者は自分で垂直に上体を維持する必要がないので理学療法士が四肢マヒ者の訓練を行うことを可能とする。

 さらに、パラレログラムにはガススプリングが取り付けられ、パラレログラムを支え上げることにより装具の全体重量の補償を行う。このようにして、患者は装具の重量(21kg)に耐える要がなく、装具がずり落ちるのを少なくすることができる。




図2 免荷式トレッドミルの構造


駆動力
 脊髄に対する最適求心性入力を生成するために、DGOを使っての歩行運動はできる限り平常の歩行と同じでなければならない。そのように患者の両脚を動かすことできるためには、膝関節と股関節の駆動装具は痙性の筋肉過緊張があっても両脚を動かすほど強力でなければならない。同時に、装具は取り扱い易いものでなければならず、したがって駆動装置は大きすぎても重すぎてもいけない。

 装置のレイアウトは、最高時速3kmの歩行速度(90拍/カダンス)で、モーターの勧奨速度特性から最適の利益を得るように設計されている。DGOに使用した駆動装置は大部分の患者に適した歩行パターンを生むのに足りるほど強力であるように設計された。


結 果
 現在までに、DGOは数名の患者にしか用いられていない。しかし、その結果は望ましいものであった。患者は徒手による訓練とDGOによる訓練とを交互に受けた。療法士による徒手による訓練は10分から15分だけで終了するのに対し、DGOによる訓練は60分まで延長することができた。訓練の持続を断念した要素は、徒手による訓練の場合は理学療法士の疲労であったのに対し、DGOによる訓練の場合は患者の疲労であった。

 訓練を受けた患者は四肢マヒ(不全C4)で、体幹が不安定であるため、徒手での訓練が困難であった。徒手訓練の間、トレッドミルの速度は、約1.5km/時であった。患者を全介助しなければならないため、理学療法士は、それ以上速い速度には耐えることが出来なかった。DGOにより、最初から速度を2km/時に上げることが容易にできた。操作により3km/時の速度さえも可能と思われる。DGOの細部は多少の改善が依然として必要であり、最大の問題は装具への患者の固定である。


考 察
 一部免荷による徒手でのトレッドミル訓練は、歩行不能な患者を訓練するためのリハビリにおいて広く受け入れられたアプローチであり、標準的理学療法に比べていくつかの利点があることが説明されている。そしてまた、片マヒ者にとって、このアプローチはますます利用されている。体重の部分的免荷により(通例50%迄)、患者は訓練時に、平衡を保つ必要がなく下肢動作に集中することができる。これは通常の平面で歩行することに比べ、より速い速度で患者が歩行することを可能にする。トレッドミルを用いた補助訓練と体重支持の組み合わせにより、歩行能力が十分でないために通常の歩行訓練を行うことができない患者も訓練が可能になる。

 不全脊髄損傷の患者の割合は増加してきており、歩行能力の一部を回復する潜在性のある患者数も増加傾向にある。DGOが開発されるまで、歩行訓練の長時間持続が困難であった要素の1つは理学療法士の能力であった




図3 個人のニーズに合わせたDGOの調節


1 腰幅、2 背後パッドの垂直位置、3 背後パッドの水平位置、
4 腿の長さ、5 脛の長さ、6 脚装具の中央・側面位置、
7 脚装具の前後位置、8 脚装具の大きさ

 なぜならば痙性マヒ者における下肢動作の補助は大変体力を消耗することがあり、それにより実施時間を制限せざるをえない。このために、徒手による訓練では、長時間の歩行訓練を行うことが困難であり、最良の結果を得ることができない。新しく開発されたDGOにより、トレッドミル訓練の効果を更に上げることが可能になった。また、理学療法士の作業負担を減らすことができるであろう。無理な体勢で仕事をしなければならないために訓練後に背部の痛みに悩まされる理学療法士が多い。また、DGOを使用しない場合、歩行訓練を行うには、通常、2名の理学療法士が必要となる。

 DGOの最初の試みは、対マヒ者に対し機械による歩行訓練が行えることを示している。誘発された歩行パターンは、いくつかの観点において健常被験者と同様のものが得られた。患者が歩行運動経験を得るために訓練が必要であることを考えると、DGOによる訓練は成功を約束しているようである。


将来的指針
 トレッドミル訓練の主要な目的は、再び歩くことを患者に「教える」ことである。DGOは患者自身(随意的、すなわち脊髄パターン発生器)によって生み出された弱い動作を促進するよう援助すべきである。このため、DGOの適応コントローラーが開発中である。訓練中、患者によって生み出された歩行動作を認識する目的で、DGOと患肢との間に生じる力を測定するための、力センサーがDGOに組み込まれる予定である。

 この測定値により、患者によって生み出された動作に対し、ある程度まで、指定の歩行パターンを適合させることが可能になる。生理的歩行パターンは、個人や患者の実際のニーズに応じて、訓練中に調節されるようになる。

 様々な患者のグループに対し長時間安全に訓練が行えるように、DGOの機械部分をすべて改善する計画である。DGOの特許申請中であり、また、このシステムを商品化する計画も進められている(スイス、 Hocoma GmbH, Medical Engineering)。


結 論
 DGOにより、トレッドミル上で、生理学的歩行範囲内の歩行パターンを発生させ、対マヒ者の下肢の運動を訓練することができる。したがって、機械による訓練により生成された求心性入力は、徒手による訓練時と少なくとも同程度の有効性を期待できる。機械による訓練の主な利点は明確である。第一に、運動の再現性であり、訓練プログラムを最適化するために異なる歩行パラメーター(速度、歩幅、振幅)の影響をテストすることは可能であろう。

 いったん各歩行パラメーターの最適な曲線が見つかれば、DGOは常にそれらを再現することができる。一方、理学療法士は、最適な訓練を行うことができるまで、DGO操作法について通常、比較的長い時間の練習が必要である。

 しかし機器による訓練中でも理学療法士は、歩行経過を監視して訓練の有効性を確保し、かつ訓練を管理するために引き続き必要とされる。第2に、DGOにより、歩行訓練時間を延長することができ、歩行速度を速めることができる。

 対マヒ者への更なる集中的な訓練を行うことで、徒手による訓練に比べ、歩行能力の結果と成果の向上が可能であることが期待される。また、理学療法士は、比較的長時間、歩行訓練という単調な仕事を規定どおり行っているのだが、このような作業をしている理学療法士に代わり機械で訓練を行うのは理にかなっていると思われる。これは、本来、機械がすべき仕事であり、特に、理学療法士の仕事として考えた場合、魅力的でも人間工学的でもないのである。

 歩行はかなり複雑な動作であり、DGOの現在のバージョンでは完全な生理的歩行を再現することができない。しかし、今後、技術が進歩し、徒手介助よりも優れた最適なアプローチを得ることが可能となるであろう。


*本稿は、Tredmill training of paraplegic patients using a robotic orthosis” Journal of Rehabilitation Research and Development 2000年11月/12月号、Vol.37 No.6 の要約である。全訳はせきずい基金ホームページを参照のこと。

〔翻訳:赤十字語学奉仕団・新谷進、関根孝江、渡辺華織〕



*免荷装置にはさまざまなものがある。日本では下記の装置が酒井医療(株)より販売されている。

 可動式免荷装置「アンウェイシステム」BDX-UW アンウェイシステムによる部分荷重訓練は、脳卒中、脊髄損傷によって歩行困難となった場合や、関節置換、腰痛、肥満、関節炎等、関節への負担を軽減させなければならない場合に、特に効果をを発揮する。

 歩幅・歩行周期表示機能付 歩行訓練装置「ゲイトトレーニングシステム」BDX-GTMとの併用訓練にも応用できる。




 〔再生医療〕

   幹細胞研究・海外の動向
 
 ■ イギリスが世界初の幹細胞バンク設立へ

 英国医学研究協議会が、ヒトの胚ならびに胎児や成人の生体組織から作り出された幹細胞株を集めて配布するための、新たな幹細胞バンクを設立する契約を結んだ。これにより、英国が幹細胞の研究分野で他国をリードする可能性がある。英国では新たなヒト胚幹細胞株の作成に政府資金を利用することが認められている。


(Scinece、2002年9月13日号)




 ■ オーストラリアが胚性幹細胞研究を承認

 オーストリア上院が胚性幹細胞研究を条件付きで認める法案を可決した(下院は可決済み)。これにより研究者は試験管内の体外受精で作られたヒトの余剰胚(surplus human embryos)を研究のために利用することが可能となり、具体的には02年4月5日以前に作製されて冷凍保存されている約7万個のヒトの胚を利用して新しい幹細胞株作りに取り組むことができるようになった(生殖目的のヒトクローニングは既に禁止)。

(Nature、2002年12月12日号)




 ■ カリフォルニア州が「幹細胞研究促進法」を制定へ

 カリフォルニア州のデービス知事がヒト胚幹細胞株を作製することや研究および治療目的でクローン胚を作製することをアメリカで初めて認めた州法、いわゆる核移植法(the nuclear transfer bill)に2002年9月22日に署名した。

 「ヒト胚幹細胞、ヒト胚生殖細胞、成体幹細胞の作製および利用を伴う研究を特別の公共審査委員会による規制の下で認める」というもので、付随的に「不妊治療医に対して患者に胚を研究目的に提供することができることを伝える」こと求めている。

 これによる間接的効果として、研究目的に提供される胚が増えることが期待されている。「生殖クローン研究」はカリフォルニア州では暫定的に禁止されていたが、デービス知事は今回、これを永久に禁止する別の法律にも署名した。

 法案作成に関与したワイスマン教授は、幹細胞研究促進法の発効により「州の予算を幹細胞研究に振り向け、研究者をカリフォルニア州に呼び寄せる点で"非常に大きな効果が期待できる"」(ワイスマン教授は、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの顧問でもある)と述べている。

(Science、9月27日号)




 ■ スタンフォード大学が幹細胞研究所設立

 スタンフォード大学が、篤志家から約15億円の匿名寄付が寄せられたのを受けて、癌・幹細胞生物医学研究所を新設すると12月10日に発表した。初代所長には著名な幹細胞学者であるアービン・ワイスマン(Irving Weissman)教授が就任予定。

 ノーベル医学賞を受けた同大のポール・ベルグ(Paul Berg)教授は、「目標は1億ドル(130億円)の研究資金を集めて、癌、パーキンソン病、心臓疾患などの遺伝治療の研究を促進することである」と述べている。また、体細胞の核移植による再生医療目的のクローニングによって新しい胚幹細胞株を作製することも「十分に考えられる」とも述べている。

 なお、カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校やメリーランド州のジョンズホプキンズ大学は、既に幹細胞研究のための研究所を昨年に開設している。

(Nature、2002年12月26日号等)




 ■ アメリカ連邦議会・下院、ヒトクローン全面禁止法案を可決

 米下院は、生殖および医療目的でのヒトクローン研究と、他国でそうした研究に基づいて作られた治療薬の輸入を禁止する法案を承認した。医療目的のクローニングは、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病といった疾患の治療につながると多くの研究者が考えているが、このような研究もクローン人間の誕生につながる危険性があるという主張が支持された形だ。法案が上院で承 認されるかどうかが注目される。

 生殖目的だけでなく医療目的でのクローニングによる治療薬までまでも禁止されたことが論議を呼んでいる。この法律が施行された場合、違反者には最高で10年の禁固刑と100万ドルの罰金が科される。

(WIRED NEWS  2003/03/03)



 連邦政府が政府補助金による研究の間接規制を行なうことには、さまざまな患者支援団体やレーガン元大統領の夫人ナンシー・レーガンさんや、クリストファー・リーブさんが、上院議員に対して今以上の規制強化に反対し、幹細胞研究を含めた再生医学研究を国が全面的に支援するように働きかけている。

 下院で成立した法案は、他国で医療目的のクローニングを用いて開発した治療薬の輸入も禁止していることもあり、上院を通過するかどうかは見通しが立っていない。

*なお国連では研究を容認するフランスらとアメリカらが対立し成案の見通しが立っていない。




 〔再生研究〕

  世界初、脊髄再生の臨床治験開始

  オーストラリアで嗅覚細胞(OEG)による第1相臨床治験 

(AFP配信 2003年3月7日より翻訳)

▼ 2003年3月6日、ブリズベーンの医師たちが、世界初の脊髄再生臨床治験を開始したことを発表した。これは脊髄損傷者の鼻の細胞を使用し、損傷した脊髄を修復する試みである。

 最初の再生移植は鼻の嗅覚細胞を脊髄に入れるもので、2月にブリズベーンのプリンセス・アレキサンドラ病院の外科チームによって実施された。臨床治験は、ブリズベーンのグリフィス大学や世界各国において、脊髄を切断したラットに、OEG(olfactory ensheathing cells)と呼ばれる鼻の嗅覚細胞を移植すると、数週間後に両脚を動かすことができたという実験結果に基づく。

 鼻の上皮細胞は脳を介して嗅覚をもたらすが、この細胞は多くの神経細胞とは異なり、おそらく感染によって破壊されるために進化した特性を持ち、一生の間再生し続ける。臨床治験で細胞が十分得られないという障害を、グリフィス大学のリーダーAlan Mackay-Simは、局所麻酔下の患者の鼻の細胞を採取する方法を開発することと、培地で大量に増殖することで解決した。

 試験的に、外科医が1400万単位の嗅覚細胞を志願者の切断され損傷された部位に注入した。これにより、移植された細胞が損傷された部位を越えて成長し脊髄神経に架橋することが期待される。研究の詳細は3月8日に、British journal New Scientistに投稿された。

 プリンセス・アレキサンドラ病院院長のGary Evansは、「8時間の手術は際立った成功を収めた」、「6〜8髄節の神経が活性化され、それらは切断されたものであると同定することができ、移植された細胞は直接損傷部位に置かれた」と述べる。

 治験を受けた個々の患者には、状態がどのように改善したかを見るために一連の試験が実施された。しかしながら、クイーンズランド脊髄再生プロジェクトのメンバーは、治験がまだ第一段階にあること、外科的手法の安全性確保の予備試験の側面を持つことに注意を喚起する。プリンセス・アレキサンドラの脊髄損傷ユニット長のTim Geraghtyは、「我々は過大な期待をもたない」「これは、どのような悪影響ももたらさないようにする実験であり、それこそが第1相治験の全ての目的である」と彼は言う。

 「公正に見て、両脚の感覚が回復したり、身体をコントロールする機能の改善のような我々が何らかの前向きな見通しを得られるならよい。脊髄損傷者の臀部や両脚のいくつかの感覚が回復できれば、褥創予防に大きな希望が持てる。さらに進めば排泄や性的機能の改善をもたらすだろう。」

「MediMedia Australia」のホームページでは、さらに次のように紹介している。

 クイーンズランド脊髄再生プロジェクトは、プリンセス・アレキサンドラ病院(PAH)の医師とグリフィス大学の研究者との共同研究であり、PAH基金から20万ドルの助成を得ている。この臨床治験は、8人の志願した患者により、この先駆的手法の安全性を確定すること、及び新たな脊髄損傷者
の潜在的可能性を見出すことを目的とする。Francois Feron医師及びAlan Mackay-Sim博士(グリフィス大学生科学・生物医学学部)は、鼻のグリア細胞である特殊な細胞、OEG細胞を採取し培養する先駆的手法を持っている。


OEG細胞とは何か:脳にはニューロンとグリア細胞(グリア)とがある。ニューロンが破壊されたとき、それを代替することはない。対照的にグリアは分割し増殖することができる。OEC細胞(嗅覚被覆細胞:Olfactory ensheathing cells)はグリアの一種である。これらの独特のグリア細胞は一生持続的に嗅覚粘膜から再生し続ける。嗅覚神経を覆う細胞は鼻から脳に繋がる神経の成長を助け、グリア細胞のみが遠心性及び求心性中枢神経の双方に存在する。

グリフィス大学の研究者たちは世界ではじめて、脊髄損傷に移植するグリアの供給を脳ではなく、この鼻の細胞に焦点を当てた。第2相の研究は、この3年間にわたる第1相治験の結果によって決定されるだろう。



脊髄への特製の注入器具のセットアップ

患者から採った細胞を注入器具に充填

 ←患者の脊髄への細胞の移植




 〔催事予定〕

 ◆ 第3回脊髄再生促進市民セミナー

 日時:6月9日(月)午前10時半〜12時
 会場:かながわ県民ホール・2F大会議室(横浜駅西口より徒歩5分、三越裏)
 講師:岡野栄之先生(慶応大学医学部教授)
 主催:(社)全国脊髄損傷者連合会(特)日本せきずい基金

* 2002年 12月 23日の新聞報道では、岡野先生らが中枢神経の成長を促すタンパク質を動物実験によって突き止めたことを報じている。これは中枢神経の再生医療の実現に繋がるものとして期待されている。岡野先生にはこうした成果も含め、最新の脊髄神経の再生研究について講演していただく予定である。

 今回は連合会の総会に併せ、両団体の共催として開催する。参加希望者はせきずい基金事務局まで申込を(障害レベル・車イス使用の有無の併記を)。


 ◆講演会「脊髄損傷者の在宅呼吸療法」

 日時:11月16日(日)午後1時〜5時
 会場:オリンピック記念青少年センター 国際交流棟・第1セミナー室(渋谷区代々木)
 講師:ジョン・バック先生(米国ニュージャージー医科歯科大学教授)
 主催:(特)日本せきずい基金

* バック先生はクリストファー・リーブを担当したことでも知られる呼吸療法の第一人者であり、「非侵襲的呼吸療法」(NIPPV)の提唱者である。NIPPVは、気管内挿管や気管切開を行なわない陽圧換気法で、QOLを大きく高めるものである。

 その効果としては、気管内挿管頻度の減少、在宅での死亡事故の減少、pH・CO2の改善、動脈血の酸素分圧・酸素飽和度の改善、横隔膜の仕事量の軽減が挙げられている。

 どのようにこの方式に移行できるかなど、当事者・家族との交流を重視した催しとしたい。また、同時期に関西での交流会の開催を検討中。(通訳あり、みずほ福祉助成財団助成事業)


 ◆在宅高位脊髄損傷者のケアシステム調査報告から

 社会福祉・医療事業団の助成を得て、在宅高位脊髄損傷者にどのようなケアシステムが必要であるかを提言するため、2002年6月〜10月に調査を実施した。これは1665人への郵送調査(有効回答675通、回収率40%)と全国50人への訪問調査による5分間タイムスタデイである。その結果は調査報告書として3月末に刊行するが、配布数に限りがあるため、提言のポイントをここに報告する。
<配布希望者は事務局まで>


支援費の公平な配分:
 「公的ヘルパーを利用しにくい理由」として、最重度の43%が「派遣時間数や時間帯の制限」を挙げている。厚生労働省はサービス利用時間の基準を発表したが、それは市町村の障害者数に比例して配分するというものである。しかし障害種別が多様である以上、この方式は現実のニーズを反映するものではない。障害種別ごとにどの程度の介護サービス時間が必要になるかまず厚生労働省は把握すべきである。


個人のサービス必要時間:
 1人1日当たりの必要サービス時間数は、以下のように算定された。

 最重度:(同居) 11.3時間 (単身)  28.3時間
 重  度:(同居)  9.0時間 (単身)  19.5時間
 中  度:(同居)  4.0時間 (単身)  10.0時間
 軽  度:(同居)  1.0時間 (単身)   3.0時間


必要ヘルパー数:
 わが国の在宅脊髄損傷者数は8万7620人、ケアサービス利用者は5万1259人と推計される。これに上記のサービス必要時間数を当てると、脊髄損傷者全体の1日のサービス必要時間は19万4666時間となる。

 これは1日8時間労働のヘルパーが2万4333人必要であることを意味する。また、ローテーションを考慮し1日に稼動するヘルパーを全体の3分の2とすると3万7000人のヘルパーが必要となる。

 新障害者プランでは5年後の整備目標が6万人とされているが、脊髄損傷だけで実にその6割を占める。そもそも6万人という数字は、介護保険のように市町村の必要サービス量を積み上げたものでなく、何の根拠もないまま打ち出されたものである。国として障害種別によるサービス必要量を調査し、介護の現実に即した整備目標を策定すべきことは明らかであろう。
 



基金の活動はカンパで支えられています

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* 同封の振替用紙は、カンパやこの機関紙購読料の支払いを求めるものではありません。

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対マヒ者における駆動式歩行補助装具を用いたトレッドミルトレーニング

運動機能回復のための集中的トレーニングの効果