会報15号 ページ2
在宅脊髄損傷者の介護体制の確立を!
−−2002年調査が示すもの−−
2002年6月に、社会福祉・医療事業団の助成を得て、「在宅高位脊髄損傷者介護システムモデル化事業」として、大規模郵送調査を実施した。1665人に調査票を送付し、666人の有効回答を得た。
ここでは、その速報値をまとめ、来春の支援費制度への移行を前にした現在、脊髄損傷者の固有の介護ニーズを明らかにし、提言として示す。
なお、その後の訪問調査を含めた最終報告は2003年3月に報告書としてまとめる予定である。
提言 1:支援費制度に関連して
(1) 必要に応じた時間数や時間帯でのサービスの提供
@ 最重度・重度
- 本調査の結果からは、機能障害の程度にかかわらず、ヘルパー派遣回数はほとんど変わりないことが示された。上限を撤廃し、必要な時間数を支給する必要がある。
介護体制やサービス利用に関する自由回答欄の記述でも、利用時間数への不満は多い方から2番目であった。
- 最重度・重度の単身者であっても、深夜の見守りとして公的ヘルパーを利用しているのは、半数のみであった。深夜など必要な時間帯にサービスを提供する必要がある。
A 中度・軽度
- 軽度では一般就労している者もあり、昼間よりむしろ早朝/夜間に利用希望がある場合が少なくない。しかし、現在のサービス供給体制はこのニーズに対応していない。
- 常時必要ではない中軽度の場合にも、排泄の失禁時などのような緊急サービスへの要望が、自由回答欄で多く述べられていた。
(2)サービス類型としての「参加介護」の設定
- 本調査で外出頻度や社会参加のレベルとの相関が見いだされたのは、ボランティアの利用であった。公的サービスでは身体介護や家事援助以外の生活への配慮は十分に行われず、機能障害の重い者の「参加の制約」は非常に大きい。
- 外出の際の「移動介護」以外に、居宅における余暇や社会的活動を保障する新たなサービス類型を設定する必要がある。公的サービスで居宅における「参加介護」を導入しない限り、参加は極めて貧弱なレベルに留まる。
(3)利用者負担の方式
- 現在の応能負担は、所得によるサービス利用量の差を作り出しておらず、望ましい方式と考えられる。
- 一方、本調査で自己負担額が大きい「有償ヘルパー」について分析を試みたところ、利用量は所得との相関関係が強くなっていた。このことは、利用量に従って定率で負担する応益負担の考え方が強まると、重度・低所得層では利用が抑制される可能性を示している。
提言 2:障害者プランに関連して
(1)ホームヘルプサービスにおける必要時間総量の算定
各自治体では地域の実状に即した「市町村障害者計画」が策定されるべきであるが、国の計画では数値目標の設定は重要な部分である。全国調査にもとづく本報告では、脊髄損傷者におけるホームヘルプサービスの必要時間総量の算定を行う。
@ 在宅脊髄損傷者数
まず、在宅の脊髄損傷者の人口推計をする必要があるが、厚生労働省の『身体障害児・者実態調査』(2001)では脊髄損傷は、@(対まひ)とAの(四肢まひ)の2種類に分けられている。しかし、ここではホームヘルプサービスの必要量を算定するため、やや細かく分類する。
表1に示すように本調査の対象は重度が多いため(@)、頸損計と脊損の構成比を厚労省調査(A)と一致させた上で、頸損の部位別の内訳については本調査構成比を按分して(B)、人口を推定した(C)。在宅者数を算定する際の在宅率(Dは、松井(1987)の調査結果を用いた。
| 本調査 分類 |
相当する 損傷部位 |
@本調査 構成比 |
A厚労省 構成比 |
B修正 構成比 |
C人口 | D在宅率 | C×D |
| 最重度 | 高位頸損 (C1〜C3) |
11.3% | − | 8% | 8000人 | 74% | 5920人 |
| 重度 | (C4〜C5) | 18.3% | − | 12% | 12000人 | 4% | 8880人 |
| 中度 | 下位頸損 (C6〜 ) |
33.6% | − | 22% | 22000人 | 84% | 18480人 |
| 小計 | 頸損計 (四肢まひ) |
63.2% | 42% | 42% | 42000人 | − | 33280人 |
| 軽度 | 脊損 (対まひ) |
36.8% | 58% | 58% | 58000人 | 93% | 53940人 |
| 総計 | . | 100.0% | 100% | 10% | 100000人 | − | 87220人 |
A ホームヘルプサービスの必要時間総量
- 家族形態別の在宅者数:ホームヘルプサービスの利用量は家族形態によって異なっているため、「同居」と「単身」とを分けた。本調査では全世帯のうち「単身」は1割程度であるが、障害の程度による差はなかった。そこで、表1の機能障害の程度別の在宅者数の1割が「単身」となるよう、按分した。
- 利用希望率の設定:なかには家族で介護したいと考える者もおり、サービスの利用は全員ではない。そのため、公的ヘルパーを利用しにくい理由において、「家族で介護したい」の選択率を用いた。利用希望率(100 −「家族で介護したい」 −「介助不要」)%は、障害の程度別・家族形態別に設定した。利用希望率が最も高いのは最重度・単身の100%、最も低いのは軽度・同居の50%である。
- 個人の必要時間数:
- 単身−日本せきずい基金で実施したタイムスタディ一次調査(2000年)から得られた必要介護時間を用いている。最重度27時間、重度24時間、中度14時間である。しかし、軽度についてはデータを欠いているため、家事援助サービス1時間、起床時及び就寝時の身体介護が各1時間で、計3時間とした。
- 同居−家族介護と外部サービスの両方が利用されるが、外部サービスをどの程度利用することが望まれているかに関する客観的データはない。そのため、介護保険における訪問型モデルを暫定的に用いている。ここでは、介護保険における要介護2(=軽度)〜要介護5(=最重度)に対応するものとした。
表2は1,2,3の考え方にもとづいて算定した結果である。1日あたりの必要時間総量は、10万9683時間である。本報告では家族との同居者のサービス必要時間を介護保険と同水準にするなど、かなり控えめな数値を用いている。
そのため、現在実施中のタイムスタディ二次調査のデータにもとづいて、最終の報告書では必要時間総量の上方修正を行う予定である。
@ 障害者プランにおける必要ヘルパー数
- 必要時間を常勤ヘルパー数に換算にした。10万9683時間を1日8時間労働とすると、1万6908人が必要となる。また、ローテーションによって、稼動しているヘルパーを全体の3分の2とすると、2万565人が必要である。
- 脊髄損傷における必要ヘルパー数は約2万人で、「障害者プラン」全体の4万5000人の4割強となる。他の障害についても同様の推計をして積み上げを行うとすれば、新たな障害者プランでは相当数のヘルパー増員が必要になる。
- 「障害者プラン」では1・2級の重度障害者120万6000人を分母とすると、ヘルパー数4万5000人はその3.6%である。一方、要援護高齢者280万人に対して17万人のヘルパーを整備する「新ゴールプラン」では6.1%である。障害者介護は高齢者介護に比べてもともとの数値目標がかなり低く設定されていたといわざるを得ない。
| . | @ 在宅者数 |
A 利用希望率 |
@×A 利用者数 |
B 利用時間/日 |
@×A×B 総時間数 |
| 最重度 同居 | 5328人 | 75% | 3996人 | 1.9時間 | 7421時間 |
| 単身 | 592人 | 100% | 592人 | 27時間 | 15984時間 |
| 重度 同居 | 7992人 | 70% | 5594人 | 1.2時間 | 6793時間 |
| 単身 | 888人 | 86% | 764人 | 24時間 | 18328時間 |
| 中度 同居 | 16632人 | 68% | 11310人 | 1.1時間 | 12118時間 |
| 単身 | 1848人 | 85% | 1571人 | 14時間 | 21991時間 |
| 軽度 同居 | 48546人 | 50% | 24273人 | 0.7時間 | 17338時間 |
| 単身 | 5394人 | 60% | 3236人 | 3時間 | 9709時間 |
| 計 | 87220人 | − | 51336人 | − | 109683時間 |
(2)サービス供給体制の改善
−本調査の自由回答欄で要望の強かったもの
@ チーム運営方式から専従方式へ
「ヘルパーを固定して欲しい」という要望は第1位で、突出して多くなっていた。現在の高齢者介護ではチーム運営方式が取られているが、重度障害者では特に介護の特殊性から専従方式が望まれている。
A 人工呼吸器や排泄介護など医療に関わる行為
現在、看護婦が行うものとしてヘルパーには認められていない行為についても、一定の研修を受けたヘルパーに認めるなどの早急の解決を求める声が多い。
B ヘルパーの質の向上
ヘルパーについては質的な面での不安を感じている者が多い。これまでのホームヘルパーは高齢者介護を想定して養成が行われており、障害者介護には不適切といえる。
(集計・分析担当者:駿河台大学経済学部 渡辺裕子)
■ 「介護」に寄せる当事者の声
現在の介護体制やサービスについて、介護調査票に寄せられた自由回答から、アトランダムに紹介します。
* 母が24時間介護している。母が介護できなくなった時の方法が決まっていない。受け入れてくれる所 −−グループホームや24時間介護できる人材の確保等の方法があるとよいのだが。
〔30代女性、C1、神奈川県〕
* 学校でのトイレ介助や行事等に対する補助教員的なボランィアが必要。
〔小学生、C2、北海道〕
* 頚椎症性脊髄症で4ヶ月入院し、脊髄症の専門医が大変少ないと痛感した。
〔60代女性、C3、東京〕
* 脊髄に対するヘルパーの知識が少なすぎサービスを依頼する状況ではない。
〔50代男性、C3、宮崎県〕
* 重度障害の場合、巡回型など多数の人が援助に入ることは効果がない。専門性は薄い上に関係性も深められないとなると訪問するだけに終わる。関係性を深めるためには自薦性が良いと考える。吸引、体位交換(体位が悪いと自発呼吸を維持できない)、コミュニケ(ささやき語などの不慣れでは聞き取れない)の3点を考えても、毎日ヘルパーが変わるのでは、疲れるだけで役に立たない。巡回型は30分サービスというが、移動時間を取られるので実質20分である。
〔30代男性、C3、神奈川県〕
* 訪問医療による医者の派遣を得ていますが、現在の医者はチャランポランで、患者の身になって診察してくれないので困っています。他の病院の医者と代えたいのですが、その病院の訪問リハビリも受けているので、しぶしぶその病院の医者の診察を受けているのが現状です。
〔60代女性、C3、大阪府〕
* 気に入ったヘルパーさんに介助してほしい。
〔40代、C4、栃木県〕
* 入浴の回数を多くしたい(現在週2回)ので、自己負担の少なくいちばん良い方法を思案中。
〔50代男性、C2-5、神奈川県〕
* 一人暮らしに移行したいのですが、ヘルパーの24時間派遣には条件が厳しく、利用できない状態です。
〔40代男性、C4、親と同居、愛媛県〕
* 来年度の支援費制度でどう変わるか、非常に不安です。
〔30代男性、C4独居、東京都〕
* 市営・県営・公営住宅のバリアフリーや障害者の枠が少ない。手当てが少なく完全独立できない。
〔27歳男性、C4、愛知県〕
* C4の重度でも、気軽に衣服の着替え、車椅子やベッドへの移動、とても気軽に玄関の段差を乗り越えての外出、リフト付きタクシーなどよりも電車やバスの交通機関を当たり前に利用し、不慣れな駅員などに指導し、どこでも遊びにいける。そんな介助者を多く育て、世の中に出て行くこと。そのための苦労は惜しまない。
〔30代男性、C4独居、東京都〕
* 公的ガイドヘルパーを利用したい。留守番ボランティアを。
〔30代男性、C4,神奈川県〕
* 夜間のヘルパーを探したい。〔50代、C3-4、神奈川県〕
* 全国にまた地方に脊損の患者を処理できる設備があるところがなく、脊損専門の病院がなく、脊損の者の受け入れ病院を多く造って欲しい。介護保険が出来ても、脊損者が入所(ショートステイ)したいのですが、施設がないのが悩みです。
〔70代男性、C4、長野県〕
* デイサービスを利用したいが、今のところ制度がない。
〔40代男性、C4、奈良県〕
* 派遣ヘルパーの固定化が必要。時間により担当ヘルパーが代わると頼みにくい。
〔60代男性、C4不全、神奈川県〕
* 介護券が送迎にしか使えないので改善して欲しい。
〔40代男性、C4、神奈川県〕
* 公的、全身性ヘルパーとも、支援費制度の導入により、費用負担やサービスの低下に不安を感じている。
〔40代女性、C4-5、神奈川県〕
* 現在自立を目標にがんばっていますが、両方カベだらけです。中央と地方の差がなくなることを衷心より望んでいます。
〔40代女性、C5、福島県〕
* いちばん困っていることは、母がいないときや、夜間の導尿を母に代わってやっていただくことができればと思っています。
〔40代女性、C5、大阪府〕
* 毎日の食事が給食の方がよい。公的にもこのほうがコストが安い。在宅の賄い支度は贅沢すぎるし、私の要求事項ではない。(1週間21食×500円=10,500円、時給3,000円×3時間派遣=10,500円)
〔50代男性、C5独居、東京都〕
* 両親が高齢で年々介護疲れが目立つようになってきたので、有償ヘルパーを交えても、できるだけ多くの時間、家族以外の方の介護を受けるようにしていきたい。しかし次のような事情で実現は難しい。
@ 間欠式導尿は医療行為であるからという理由で、ヘルパーには依頼できない。⇒適正な指導を受けたヘルパーが行なうことができるよう、早急な改善を熱望している。
A 病院と関係のある在宅介護支援センターから派遣されるヘルパーは、1ヶ月20名ぐらいの人が訪問してくるので、利用者の実態に即した適切な介護が期待しにくい。
〔40代女性、C4-5、京都府〕
* もっと本人の意志で選べるようなサービスになって欲しいと思います。体制というよりあまりにもヘルパーの質の低下がこの2、3年激しすぎるので、もっと厳しい姿勢で臨んで欲しいと思います。
〔30代男性、C4-5、大阪府〕
* 公的ヘルパーの派遣時間をもっと増やしてほしい。
〔40代女性、C4-5、石川県〕
* 受傷して13年、父母・姉に介護してもらっていたが、姉は結婚し、父母は高齢になり、先が不安でいっぱいです。県内に県委託の重度心身障害者の民間施設が2つありますが、介護士の数が少ないため排便等が十分にしていただけないので、一度体験入所してみたが、我慢できなかった。それと殆ど脳性まひの方たちなので、うまく会話が出来ないのでストレスがたまり、閉じこもりがちになった。
〔30代女性、C4-6、奈良県〕
* 介護を受ける事態になったら、病院付有料老人ホームに入り世話を受けたい。
〔60代男性、C4-5、栃木県〕
* 現在就職して9時〜5時は会社です。仕事をしている障害者の介護時間帯は早朝、夜が必要で、その時間帯の介護は家族に頼るしかなく、就職者の介護体制を整えてほしい。
〔20代男性、C4-5、神奈川県〕
* 主に介護に当っている母親の負担が大きいので、簡単に利用できるショートスティの施設や制度があるとありがたい。
〔40代女性、C5-6、東京都〕
* ヘルパーの自薦登録方式を実現すべく、障害当事者が運営するヘルパー派遣事業を実現したい。
〔30代男性、C5、静岡県〕
* ヘルパー派遣等の利用者負担を本人所得のみに。(家族は関係ない)
〔40代男性、C5-6、静岡県〕
* 施設を希望しているが受け入れてくれる所がありません。
〔50代、C5-6、新潟県〕
* 介護の質を上げてほしい。バラツキ、教育に欠けている。
〔50代男性、C6独居、東京都〕
* 都市部と地方の格差をなくしたい。障害者向けデリバリーヘルスを。
〔40代男性、C5-6、佐賀県〕
* 現在、入浴介助を利用している。健常者と同じような入浴時間帯(夜間)にヘルパーを派遣してもらいたいが、現在は夜間の入浴介助を実施しているところがない。ガイドヘルプサービスを利用しているが、派遣時間帯に制限があり、休日や祝祭日(年末年始も含め)に派遣してもらえない。外出先でも訪問看護サービスを受けたい。自薦ヘルパー制度希望。
〔50代男性、C6-7、大阪府〕
* 以前はヘルパーさんが2人組みできてくれたので、短時間でもいろいろなことがお願いできたが、今は1人なので、あまり頼めなくなりました。ベテランのヘルパーさんが新人のヘルパーさんに教えることも大事だと思うので(手抜きも防げるし)、2人体制へ戻してほしい。家事援助なのに、できない家事があるのも問題だと思います。
〔30代女性、C6-7、山形県〕
* 24時間介護体制が必要という切迫感を行政が理解していない。もちろん行政サービス(公的給付)に頼りきりで、社会に出て活動する意欲がないのは考え物だが、そもそも社会に出て働きなり活動するなりしたいという欲求をかなえるにも、公的援助が必要である。社会に出る意欲がある人には積極的に援助するシステムが整えられるべきと言える。
〔20代男性、C5-6、東京都〕
* 自宅で腹膜透析しているが、家族の負担が多いので、公的サービスで対応してほしい。
〔40代男性、C6、栃木県〕
* 高齢者施設にも年齢等があてはまれば障害者も利用しやすくしてもらいたい。今後のマンション等の建築の際には必ず、24時間対応介護サービス付きの施設が入っていることが望ましい。家族が一緒に入れる施設もあればよい。地域ケアプラザ、障害者活動ホームは通所のみでなくショートステイや1年間24時間の利用が出来ればよい。ホームヘルパーさんにも一定の医療行為を認めてほしい(摘便・下剤・浣腸)。
〔30代男性、C5-6、神奈川県〕
* 私の利用しているヘルパー・訪問看護は土日が休みなので不自由しています。土日が利用できると、今よりもっと充実した生活が出来ると思います。
〔50代男性、C6-7、栃木県〕
* ヘルパーがあまりに杓子定規で臨機応変ができない(物の移動、買い物、清掃など)。
〔70代男性、頚損・独居、東京都〕
* 気軽に買い物の介助をしてもらいたい。〔40代男性、C5、三重県〕
* ベッドを汚した時とか買い物など特別な時に有料でもいいのでヘルパーを利用できたらと思います。
〔50代女性、C6-7独居、長崎県〕
* 生活全般でなく日曜大工・蛍光灯取替えなど部分的支援ボランティア制度、体制作りを強く要求します。
〔50代男性、C6-7、東京都〕
* ヘルパーでも誰が来てくれるか分からないという不安と、本当に困っていることを親身になって思ってくれるか、信頼関係が大変心配です。また小さな町なので、どの程度プライバシーを守っていただけるのか疑問に思うことがあります。
それと時間の問題はいつも気になります。本当に来て欲しい時(失禁時など)に、すぐ来てくれるのか、時間内でどれだけのことをしてくれるかが問題です(早朝・夜間など)。 〔30代女性、C7、大阪府〕
* ゴミ出しがいちばん困る。親にもって帰ってもらう生活が続いているが、ゴミ出しの巡回サービスがあれば助かる。
〔30代女性、C7-8、山口県〕
* 現在までの自治体が障害者に派遣している公的介護者は、専門職としての技量はゼロであると言って間違いない。その理由は大本の福祉事務所が、介護は一人ひとりの障害に合わせて個人差があるものであること、介護技術についてもその実技指導を行なっていないこと、更にその技術の向上についても無関心であるを見れば一目瞭然。話を聞くだけに等しいホームヘルパー資格取得で、技術向上がはかれると妄想しているのではないか。
誇り低き介護行政−−障害者や高齢者にとって障害が重いほど介護者を頼りにしている。「介護はいのち」という重度者の期待に応えてほしい。心を高く…
〔50代男性、T3,神奈川県〕
* 一人で外出時、タクシー(リフトカー)使用時の費用が大きく、予約も時間制限や運転手さんのスキルの個人差が大きく、不安を伴うことが多い。
〔54歳女性、T4、兵庫県〕
* 介護体制も重要ですが、国を挙げての「再生医療」の推進を期待します。少なくとも10年後には自分の足で立ち、歩きたい。
〔60代男性、T7-8、静岡県〕
* 排尿・排便にいちばん苦労している。今は主人にしてもらっているが、老人ですぐに熱を出して倒れるので代わりをどうしてよいか分からない。看護婦を頼むのだがしっかりと便を出してくれないので、あとで失便を何回もしてしまう。やはり他人(看護婦)だと時間に制約があるので本当に困る。時間外の失便はどうしようもなく困り果てる…。排尿はバルーンにするので、カテーテルのすれるところが傷になってしまう。
〔70代女性、T8、神奈川県〕
* 痛みに対して今後の研究では私たちの時代には分からないと思いますので、後輩のためにも一日も早く究明されることを、心より願っております(悔しいです。先生から「一生痛い」と言われている)。
〔60代男性、T12、神奈川県〕
〔リハビリ〕
歩行リハビリ
以下は本年5月にバンクーバーで開催された国際医学会総会の抄録から「歩行」に関する3本の発表を事務局で試訳したものである。
■ FESによる歩行訓練
−−韓国・国立リハビリ病院の2年間の経験
Bum Suk Lee MDほか (ソウル・国立リハビリ病院)
【方法】 169人の脊損入院患者がFES(機能的電気刺激)による歩行訓練の対象となった。
試行テストのあと、61人はこの訓練を受けることができなかった。このうち19人は痛みが強すぎるため、42人はFESに筋肉の収縮反応が見られなかったからである。
そこで、108人が2ヶ月のFES訓練プログラムを受けた(週に6回、1回20分)。
FES訓練は6チャンネルのシステム(保護ステップ)で行なわれ、電極は両側の臀筋(最大のもの)及び四頭筋・前脛骨筋につけられた。
平均年齢は31歳(16歳〜67歳)、受傷後の平均経過月数は9ヶ月(2ヶ月〜295ヶ月)、損傷レベルはC7からL1。
FES歩行プログラムは、座位が取れるよう両側の臀筋の強化訓練から始まる、立位・歩行訓練へと進められる。
【結果】 108人のうち13人(12%)は痙性の増加、相対的に水準以下、及び筋緊張の亢進のため脱落した。
52人(48%)は、2ヶ月のFES訓練後、立位が可能になり、その平均立位時間は11.5〜10.6分で、最高時間は50分であった。23人(21%)は2ヶ月のFES訓練後に歩行可能となり、歩行距離の平均は20.4m〜25.8mで、最大距離は96mであった。
【結論】 2ヶ月のFES訓練により48%の患者が立位可能となり、21%が歩行可能となった。しかし、家庭で実施するには機器が高価であり、歩行距離が短いことから、その使用は限定される。
■ 不全マヒ者の筋肉強化と歩行成績の関連
Maura W. Whittaker, BSR, PT
(G.F.Strong Rehb Center, Vanvouver,Canada)
【目的】 歩行機能に関する筋群を特定することは、不全マヒ者の歩行能力を引き出す介入を焦点とする上で有益である。この研究は、不全マヒ者の両側の下位末端の筋力と歩行成績の考察のために着手された。
【データおよび方法】 18人の不全マヒ者(ASIAスケールでC・Dランク)が自立歩行可能(生理学的範囲から街の歩行者レベルへ)となったことがアクセスされた。歩行成績は、歩行者が常に補助器具をつけて参加している間、測定された(自分で選択した8m以上の歩行速度と6分間の歩行距離)。
下位末端の筋力(MMT:徒手筋力テスト)と歩行成績の相関性はジョージ・ピアソンセンター式の相関性モーメント(r:比率)を使用して判定された。
【結果】 どちらの歩行テストでもいくつかの筋群は、低位から中位の相関性であった(r=0.47〜0.67)
障害が少ない側の筋群は、傷害された側より有意な相関性を示した。最も高い相関性を示したのは障害のない臀部屈筋、臀部外転筋、及び膝の屈筋であった(r=0.58〜0.67)。
【結果】 障害の少ない下位末端の筋肉の成績、さらにはより傷害された側は、不全マヒ者の歩行機能の重要な要因である。
■ 歩行のための制御可能なハイブリッド
矯正器具(CWRU式)とFESの植込み
Eenest Byron Marsolais, MD,PhD.
(米国 CWRU: Case Western University)
【目的】 脊髄損傷者の歩行のための、植込みFESとTHKAFO(体幹・臀部・膝・足首・脚の矯正器具)による制御可能な関節を統合したハイブリッドシステムの開発。
【方法】 完全マヒの2人の男性の体幹・臀部・膝・足首・脚の支配筋に対し、経皮的に筋肉内に電極を植え込んだ。FESシステムが立位や歩行のための十分な力を伝える間、姿勢を安定させるために介助者が援助した。
制御可能なTHKAFOのハイブリッド矯正器具とFESが統合された2つのモデルは、持久力と筋緊張の安定をもたらす成果を挙げるよう設定された。
第一のスプリング・クラッチによるハイブリッド・システムは、臀部と足首に用いられた。第二の、マルチ・ディスクブレーキを使ったハイブリッド・システムは、臀部の関節と対になった基本的交互性を持つ足首の関節に用いられた。
双方のモデルとなった関節は自由に伸展させる間、屈曲しないように固定された。関節の屈曲は、刺激機器に制御されたソレノイド(筒型の電気コイル)の活動によって与えられた。
【結果】 座位から立位への手立ては、関節を固定している間に刺激することによって行なわれた。安定した立位は、2つのモデル共に、関節を固定し刺激を停止して成し遂げられた。
第一のハイブリッド・モデルではFESの26チャンネルを使用し、毎秒60cmに上った歩行の間、良好な関節可動性をもたらした(しかしこのシステムの結果についてはより多く今後の研究にかかっている)。
第二のハイブリッドモデルは良好な起立姿勢をもたらしたが、限られた歩幅は当然のことに遅い歩行速度となり、それは交互的メカニズムに起因するものである。
【結論】 ハイブリッドモデルは今後の研究を待たず、支障のない関節運動ができるようにデザインされた。
〔再生研究〕
■ 臨床指針へのヒアリングを要望
国の厚生科学審議会「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会」において、本年1月から、臨床応用のための指針作りの審議が進んでいる。
日本せきずい基金では、この指針が公正な手続きを定めることにより臨床研究を一層促進するものとなるよう、中畑龍俊委員長に当事者からのヒアリングの実施を求める要望書を9月に提出した。審議状況によっては10月31日の審議会で陳述できる可能性もある。
今後は、ES細胞に関する審議をしている内閣府・総合科学技術会議の「生命倫理専門調査会」にも他団体とともに当事者ヒアリングの実施を求めていきたい。
■ 人工チューブで末梢神経を再生
末梢神経は、縫合等により再生することが知られている。しかし外傷性の場合は修復が不可能なことが多く、自己神経の再移植が行われていたが、サイズが適合しずらく、繋がっても機能しないことが多かった。
今回、京都大学再生医学研究所の清水慶彦教授らが開発した人工チューブを用いた臨床研究に成功した。この人工チューブは生体内吸収性をもつ縫合糸を編んだもので、神経再生に必要な毛細血管がチューブ内に入り込むことができる。
犬を使った実験で神経を8cm伸ばすことに成功。本年2月には京都府立医大(萩原明於助教授)が、60歳の女性の腫瘍手術の際、左太ももの運動神経を2.5cm切除後に人工チューブを使用し神経修復を図った。神経は順調に再生し、3月には退院し歩けるまでに回復した。
また奈良県立医大救急医学教室(稲田有史講師ら)では、1年前に人差し指と中指を切断した男性に、この4月と5月にそれぞれ2cmと1.3cmのチューブを移植し、6月には人差し指の神経が完全につながった。受傷時に指の再接着は受けていたが、神経はつなげることが出来ず、冬場には激烈な痛みに悩まされてきたが、神経再生によりこの痛みからも解放されることになった。
〔共同通信メディカルニュースより要約〕
〔脊損医療〕
■ 急性期のマクロファージ療法
2002年7月15日、イスラエルのバイオ製薬企業「プロニューロン・バイオテクノロジー社」の副社長バレンタイン・フルガ医師(Valentin Furuga)らが来日、日本せきずい基金との面会を求めてきた。
同社はイスラエルのWeizman研究所のM. Schwartz博士のアイデアを医薬品として商品化するために設立された企業であり、またSchwartz博士は世界的に著名な神経学者である。要望は、同社が開発中の脊髄損傷完全マヒ患者への活性自己マクロファージ療法の治験者を日本でも募集したい、というものであった。2000年から開始されたこの研究では、すでに8人(米国3名、欧州3名、イスラエル2名)に実施され、半数ほどの患者に著明な機能的・神経学的回復をみているという(会報第12号「メッリサの小さな奇跡」参照)。
この治験対象者は、@「脊髄損傷完全マヒ」と確定診断されたC5〜T11の患者、A受傷後14日以内にイスラエル国内でこの治療法を受けられる患者、B16歳以上65歳以下、CMRI画像及び主治医所見をEメールで送信、Dイスラエルに3ヶ月滞在できること、E渡航費・滞在費は同社負担、というものである。
同社の治験情報などの詳細は基金ホームページに掲載中。なお本年6月から米国デンバーのCraig病院でも同社と提携しこの治験が開始された。Craig病院はこれまでに2万3000人以上の脊損治療を行なっている米国の代表的な脊損センターである。
■ 重症の痙縮へ新たな治療法
多くの脊髄損傷者が重症の痙縮に悩まされてきたが、両下肢の比較的広範な痙縮には有効な治療法がなかった。その治療法として現在わが国で治験が進行中なのが「バクロフェン髄腔内投与療法」である。
これは10年前(!)、1992年米国のメトドロニック社が開発したもので、現在では世界19ヶ国で5000人以上の使用実績がある。メトドロニック社は心臓ペースペーカーでも知られた企業である。 腹部に小型ポンプを植え込み、脊髄の髄腔に直接・持続的にバクロフェンを投与するもので、バクロフェンの経口投与に比べ100分の1の投与量で10倍の髄腔内濃度が得られることから、副作用も少ない。薬量を個人ごとに調整でき、ポンプはいつでも除去でき、欧米では既に重症の痙縮の確立した治療法とされている。
国内の患者数は、脊髄損傷・脳血管障害・頭部外傷・脳性まひなど2万7000人と推定されている。 現在、第一製薬が3、4年後の承認を目指して臨床治験を実施中である。この治験は首都圏では東京女子医科大学病院・脳神経外科で行なっている。 この治験に関心のある方は基金事務局までご連絡ください。詳細な治験情報をお知らせいたします。