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| SSKU 特定非営利活動法人 Japan Spinal Cord Foundation |
| 日本せきずい基金ニュース No. 14
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〔目次〕
〔再生医療〕 《脊髄再生促進市民セミナー》 ・脊髄再生研究の最前線(岡野栄之) ・再生研究の促進のために(S.イエスナー) ・再生研究のバックアップを ・幹細胞のモラリティ(W.ヤング) 〔リハビリ〕 ・日米リハビリ比較:討論の概要 ・リハビリ概念の変遷 〔在宅生活〕 ・自力で要介護5から4へ(中島 勤) 〔お知らせ〕 ・第2回脊髄再生促進市民セミナー ・刊行案内
◆ 脊髄再生促進市民セミナー報告〔概要〕
5月27日、東京・青山の「こどもの城」にて、第1回セミナーを開催し、当事者・家族、マスコミ関係など約100人が参加した。慶応大学の岡野教授の講演は、ヒトへの臨床応用が里程標に入っていることを感じさせるものであった。しかし、せきずい再生研究のバックアップ体制は大きく立ち遅れている。
日本では1年間に6千人近い人々が新たに脊髄損傷になっている。そのイニシャルコストは500〜600万円かかると言われ、介護などのロスを含めると、1人あたり年間約1,000万円のコストがかかっているという現状がある。6,000人となると、その年間の社会的損失は医療面に限っても600億円ということになる。
脊髄再生によって、急性期の脊髄損傷患者が治れば、本当に日本のこういったロスが少なくなるわけであり、年間500億円、1,000億円という研究費をかけても、社会的な意味がある。今年度の米国連邦予算では、ES細胞研究に1億ドル、体性幹細胞研究に2億ドルが予算化されている。
脊髄再生研究が当事者はもとより、社会的に見ても非常に大切な研究だということを多くの方々に理解していただき、再生研究の社会的バックアップ体制を築いていくことが求められている。
脊髄再生研究の最前線
慶応大学医学部教授 岡野 栄之
幹細胞 幹細胞とは、「多分化能」「自己複製能力」「修復能力」、の3つの共通した性質をもった細胞です。「多分化能」とは、臓器を構成する色々な細胞に分化する能力です。幹細胞はこの多分化能をもちながら、未分化の状態で増えることができる−−これが「自己複製能力」です。幹細胞は増やすことができるので、ごく少量の幹細胞を得ることで、非常に多くの人の治療に使うことができます。それから、こういった幹細胞の性質を使い、損傷した組織を修復する能力がある。
この幹細胞は、大人になっても、骨髄である造血系、肝臓、腸管、乳腺、精巣、骨格筋、神経系、さらに非常に再生能力の低いとされてきた中枢神経系にもあることがわかってきました。再生医療は、この幹細胞を使うことで、永続性のある治療とすることができます。
幹細胞移植の意義 成体になるまでに細胞はさまざまに分化していきますが、これらは実は胎児の時に作られる「組織幹細胞」に由来しています。例えば神経系の場合、「神経幹細胞」に由来し、血球は造血系の幹細胞に由来、消化管なら消化管の組織特異的な幹細胞というものが胎児期において作られています。
受精5日目くらいの胚胞期の「内部細胞塊」は、色々な細胞に分化できる能力を持っています。このような組織幹細胞が作られて、細胞の分化が進んでいくことによって、生命の誕生ということになります。この、初期胚に存在する多能性の細胞を試験管内で株化したものがES細胞です。現在では、いわゆる「余剰胚」からヒトのES細胞が樹立されるようになりました。
ES細胞は、試験管の中で非常に多くの細胞に分化できる能力があります。特に神経系の細胞にも分化できますので、これを使った再生医学が非常に注目されています。これは医薬品の開発にも使いますし、ES細胞を移植することによって、損傷した色々な臓器を修復することも可能になってきております。
幹細胞による再生医学 では、幹細胞システムを使った臓器再生には、一体どういった利点があるのか。
1つは、臓器移植では、あきらかにドナーが不足していることです。一方、幹細胞は多くの場合、試験管の中で未分化な状態で大量に増やすことができます。免疫学的拒絶反応に関しては、HLAという細胞表面に特異的な抗原分子が適合する場合は拒絶反応は起きない、適合しない場合は起きる、ということが知られています。HLAのタイプごとのプールを作ることで、また最近ではそのプールを作る以外の方法によっても、免疫学的拒絶反応は、克服されようとしています。
この幹細胞は試験管の中で増やすことができるので、ここに遺伝子を導入することで、遺伝子治療と幹細胞とを併用することも可能になってきました。このように、幹細胞が先端医療において非常にパワフルな手段として注目されてきています。
このような特性をもつ幹細胞を使った最初の再生医療は、造血系幹細胞を使った骨髄系の再建であります。この造血系幹細胞を含む細胞を移植することによって、いったん失われた造血能を回復させることが可能となりました。現在は「骨髄バンク」が作られ、白血病の方にも非常に成功率の高い治療法として、ここ約10年の間に普及してきました。
神経幹細胞の移植 ヒトの脳、あるいは脊髄を合わせて「中枢神経系」と言います。脳だけでも1,000億個のニューロンとその10倍の数の「グリア細胞」があり、その機能を考えますと、脳はまさに生命進化の最高傑作と言えます。
脳の中で中心的役割をしているのが「ニューロン」という細胞です。私たちが「ものを見て判断して行動に出る」といった一連の行動とは、ニューロンから次のニューロンへと電気的活動が伝わっているということです。これが神経系のポイントです。
この電気的活動は、軸索を通して末端まで行き、次のニューロンに受け継がれます。例えばある運動をしようとすると、大脳皮質の運動野のニューロンが興奮し、それは脊髄を通って脊髄の前核の運動ニューロンを興奮させます。その運動ニューロンが筋肉に投射して動くということが起こります。
「いったん傷ついた中枢神経系は再生しない」と昔は言われていました。しかし新しい世紀にもなり、私たちは何とかこのコンセプトにチャレンジしたいと考えております。「哺乳類の成人の中枢神経系がいったん損傷しても、なんらかのマニュピレーション〔操作〕によって再生することができる」と、これを書き換えたいと考えているわけです。
これまで神経生物学者は、いったん切れた神経軸索がもう一度伸びることを、もっぱら「再生」と言っていました。しかし、私たちは再生の概念として、「細胞自身が新しく生まれる」ことも再生の1つの概念として考え、さらに最終的に臨床に応用する意味で、やはり「機能再生も含めた概念」として中枢神経系の再生をできるようにしたい、と考えて研究しております。
中枢神経系の病気、いわゆる「神経変性疾患」としてアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などがあります。これらの病気の特徴としては、「ある特殊な種類の神経細胞、ニューロンが選択的に脱落していく」ことです。特殊な種類のニューロンを作るという意味ではES細胞は非常に優れており、こういった疾患の再生医学にはES細胞は不可欠の存在です。
脳梗塞や脊髄損傷などは、中枢神経系を構成する色々な細胞の障害によるものです。私たちは、こういった疾患に関しては、中枢神経系に存在する幹細胞が非常に大きな役割を果たすであろうと考えております。
問題は、実はパーキンソン病の患者さん1人の治療のために10体もの胎児脳が必要であると言われていることです。その数を揃えるには、人工中絶手術という非常に倫理的な問題が伴うわけです。結局のところ、このような胎児の脳を使わなくても安定して移植できる細胞、すなわち幹細胞を作る方法であり、その臨床応用を考えた基礎的研究に取り組んでいます。
神経幹細胞移植の可能性 この神経幹細胞が、一体どこに非常に豊富にあるかというと、ヒトでは受精後18日くらい経った時の胎児組織にあります。この神経幹細胞は胎生期、哺乳類では妊娠期間中の胎児だけに存在するものと、しばらく思われておりました。
しかしながら1998年、私たちはアメリカのコーネル大学のグループとの共同研究で、成人の脳にも神経幹細胞が存在することを見出しました。これは、側脳室といわれている脳室の本当に近傍に存在するわけです。こういった発見から、私たちも俄然、では「成人の中枢神経系もなんらかの事をすれば再生することができるのではないか」と思って研究を進めていったわけです。
大量増殖法の確立 この神経幹細胞を非常に未分化な状態で増やす技術が1992年、カルガリー大学のサミュエル・ワイスによって開発されました。神経幹細胞はある培養下で、そこにEGF〔上皮成長因子〕、あるいはFGF〔線維芽細胞成長因子〕という特殊な増殖因子が入っている状況下で、マリモのような細胞塊を作って増殖していきます。これが浮いてる状態から培養皿に強制的に付着させて、この増殖因子を除くと、1つの細胞に由来してニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトが分化してきます。またこの細胞をばらばらにしますと、1つひとつからまたニューロスペアがでできてきます。これを継代培養していくと、1つの神経幹細胞を大量に増やす経路が確立されたわけです。
私たちは現在、尼崎の「ティッシュエンジニアリングセンター」と共同して、100日間でヒトの神経幹細胞を100万倍にする技術を開発しております。神経幹細胞のそもそもの由来は胎児を使わなければなりませんが、それをいったん細胞を培養しはじめれば、非常に多くの患者さんに応用させることができると思います。
脊髄再生の研究戦略 脊髄損傷というのは、実際の臨床では、5〜10%の神経軸索が損傷を免れるか、再生できれば、機能的にはかなりの改善が期待できます。脊髄の再生を促す治療法としては、脊髄の損傷部に神経幹細胞を移植することです。脊髄損傷に対する細胞移植に関しては、いくつか研究の流れがあります。
まず数年ほど前、バーバラ・ブレグマンという方は、ラットの脊髄損傷に対してラットの胎児の脊髄を移植することが有効であることを示しております。彼らのグループに先駆けて、京都大学の川口三郎先生たちも同じ結果を発表しております。
ところが、実際に非常に多くの患者さん対してこれを行うためには、大量のヒトの胎児脊髄が必要となります。ですから、臨床応用というのは不可能というか、倫理的にも非常に難しい。そこで、培養下で大量に増やせる神経幹細胞を使った研究を始めたわけです。
ラットの脊髄損傷モデルを使い、ラットの脊髄由来の神経幹細胞を移植する研究を行いました。これは、頚椎レベル、C4、C5と第4頚椎、第5頚椎において背中側の椎弓をはずし、その部分に錘を落とすことで受傷ラットを作ったわけです。受傷後数週間もしますと、背中側に大きな空洞が生じますが、空洞が大きくなる前に神経幹細胞を移植しました。
この研究に対する批判は、大人の脊髄にも存在する「内在性の神経幹細胞」の問題です。この内在性の神経幹細胞は、損傷によって反応性のアストログリアを作りますが、結局、電気的興奮をするニューロンや、その軸索を絶縁するオリゴデンドロサイトは決して作らないことがわかっていました。そこで、このような環境下において、外から神経幹細胞を移植しても結局は意味がないのではないのではないかということです。
移植のタイミング しかし私たちは、「移植された神経幹細胞の運命は、実はその損傷された脊髄の中の微小環境に非常に依存するであろう」という仮説を立てました。この微小環境というのは、実は時々刻々と変化するということがわかりました。
ラットの損傷直後、この変化は2、3日以内に起きました。出血、それから炎症性細胞の浸潤によって、急速に炎症反応がおきます。この時期出てきた色々な物質は、神経幹細胞がニューロンになるのを邪魔をしていて、そこではむしろ神経幹細胞がグリアになるのを積極的に促していました。受傷直後の時期というのは、神経幹細胞を移植するにはあまりふさわしい時期であるとはいえません。この時期に移植を試みてみましたが、もちろん炎症が激しいためですが、移植した細胞はほとんど生着しませんし、たとえ生着してもグリア細胞にしかならなかったというわけです。
移植のタイミングが遅くなると、空洞というものができ、さらにグリアが伸長するグリア性瘢痕ができます。このグリア性瘢痕は、ニューロンの軸索を邪魔する物質を積極的に出していることがわかりました。ですから、移植するためには、非常に短いタイム・ウインドウ〔最適期〕があること、それが大体損傷後9日目あたりだということがわかってきました。
ラットへの幹細胞移植 損傷を加えた9日目に神経幹細胞を移植するとき、小さな空洞ができていますが、ここに移植します。それから6〜8週間後に組織学的、解剖学的に回復したかどうかを検討したわけです。
結果を簡単にまとめますと、損傷直後はおそらくその時出てきた炎症性のサイトカインといった物質のために、内在性の幹細胞はグリア細胞に分化してしまい、結局ニューロンは作らないことがわかりました。
しかしこの状況は永続するわけではなく、損傷後9日目に神経幹細胞を移植することによって、アストロサイトに加え、ニューロンやオリゴデンドロサイトに分化することもわかりました。移植するタイミングが非常に大事だということは、私たちが提唱したデータでのコンセプトであります。
9日目に神経幹細胞を移植することによって、実は移植された脊髄の中で移植された神経幹細胞由来のニューロンが、分化して突起を伸ばすことがわかりました。実験では、移植された細胞ともともとのホストの脊髄を区別するために、マーカーとしてある遺伝子をいれ、移植された神経幹細胞がニューロンに分化すると、初めてそれが見えるようにしたのです。これにより、移植された神経幹細胞がニューロンに分化したことが明らかになったわけです。
実は移植されたニューロンを電子顕微鏡を使ってみると、ホストのニューロンとシナプスを作って機能的に連絡していることがわかってきました。入れたドナー細胞がシナプス前駆構造を作ったり、ドナー細胞がシナプス後の構造を作っておりました。これは、移植された神経幹細胞がニューロンに分化して、ホストの神経組織のニューロンネットワークの中にちゃんと組み込まれている、ということです。
機能回復の評価 次に、頚椎レベルの損傷ラットが前肢をいかにたくみに動かすことができるかを「フードペレット・レトリーバル・テスト」で確認しました。ラットが、単位時間にいくつのエサのペレットを食べることができるかを数量化することによって、機能回復レベルを評価できるわけです。それにより、神経幹細胞を移植したラットは、かなり正常に近いレベルまで機能が回復ことがわかりました。神経再生というコンセプトとして、軸索が再生したのみでなく、新しく神経細胞もできましたし、さらに機能的にも再生するといった経緯を作ることができたわけです。
今後の展開 研究戦略としては、まずはラットを使ってどれが一番効きそうか目安を得て、その中で一番効きそうな治療法に関してサルで見て、それがうまくいったものに関して、有効性、安全性が確認されたとき、なんとか臨床治験に持っていきたい。
慢性期の脊髄損傷に関しては、損傷周囲にできるグリア性瘢痕が最大の問題です。やはりグリア性瘢痕をなんとか切り出す、あるいは、その影響を弱めるといったことによって、もう一度移植に適した状況下に持っていって、そこに神経幹細胞を移植することが一番良いのではないかと思っています。この問題は今後、最も真剣に取り組んでいきたいと思います。
最終的に臨床治験に持っていくためには、私たちのような基礎医学の研究室単独ではどうしようもありません。そこで大事になるのが、「トランスレーショナル・リサーチ」です。臨床グレードのヒトの神経幹細胞の安定供給体制を作るために「ティッシュエンジニアリングセンター」のグループと共同研究を行っています。
申し上げるのを忘れましたが、確かに胎児の細胞を使った幹細胞治療を可能性として申し上げました。これを本当に可能にするために、厚生労働省が幹細胞を使った治療についてのガイドラインを作成せよということで、多くの人がこれを作成している段階です。
どういった基準でやればいいのか、危険性はないのか、どれだけ有効かという事に関するエビデンスを早く提出して、より早くこれを現実のものにしていきたいと考えています。着実に皆様のお役に立てるように、「スロー・バット・ステディ」をモットーに議論を重ね、このような方法をさらにブラッシュアップして、安全性と有効性を確認して、脊髄損傷の新しい治療法を確立したいと考えております。■
脊髄再生研究の促進のために
弁護士 S.イエスナー
* 1955年生まれ。1981年、International Spinal Trustを創設、
1994年にはAustralasian Spinal Research Trustを創設。
私が事故に遭ったのは、1974年のことです。ささいな事故が、永続的な、そして私の人生をめちゃめちゃにするようなことになるとは思いもしませんでした。
そして、弁護士になってから、こういった損傷に対してどういった望みがあるか、何かその望みがかなうような治療法があるのかと、一生懸命調査いたしました。
1980年頃、「collateral branch」(側副枝)*という言葉を見つけました。脊髄神経は成長するのだ、ということを知らされたのです。〔*軸索が有髄線維の場合は絞輪部で直角に側枝を出したもので、しばしば元の神経細胞体付近に戻り、フィードバックの機能を果たす〕
国際脊髄研究基金の設立
ほんのわずかな情報ですが、私はそれで、何か後押しをされた気持ちになりました。1981年、ちょうど国連の国際障害者年でしたが、ロンドンで「国際脊髄研究基金」〔International Spinal Trust〕を発足させました。
私がこのささやかな基金を発足させたのは、ロンドンの小さな一室でした。これを助けてくれたのは私の母、当時バミューダの英国大使の奥様、何人かの脊髄損傷者やその家族の方々、床磨きの清掃人などでした。こうした方々が、実際に床に座って、請願書を作っては封筒に入れて送るという仕事から始めました。
このような本当に小さなところからスタートいたしまして、力が力を呼ぶという形でチャリティーが拡大してまいりました〔基金累計は2億6500万円以上〕。それをこの研究のためにあてることができております。
そして、脊髄再生研究にかなり進展が見られたことから、1994年に私はもう1つの基金、「オーストラレイシアン脊髄研究基金」を発足させました。
このような活動をはじめて以来、世界中のこのような分野で活躍する科学者と知り合いました。科学者たちは、決してそれで十分な手当てをもらっているわけではありません。本当に献身的にこの研究のために、そしてその神経系のキュア〔治癒〕のために時間とエネルギーを使ってくださっている方々です。
私たちにとっては、この科学者こそがヒーローです。そして、こういったヒーローである科学者の献身、ご協力、ご努力を通じて、必ず今のような苦しみから救ってくださる、その方法が見つかると私は思います。
脊髄損傷に関しては、研究資金を提供すること、そしてそれを維持し続けることによって、新たな世界を得る事ができるわけであります。これは単に希望の次元に終わるわけではなく、脊髄損傷や麻痺に関して、必ずそこに展望があると言えるわけです。
これから私どもが本当に目指さなければいけないことは、革新的な医学によってこれが完璧に治療できるということです。脊髄再生研究、あるいは幹細胞を使っての研究への支援を考えていかなくてはなりません。
希望の光が見えてきた
そして、この脊髄損傷に対しては、そういった状況の中から大きな第一歩を踏み出しているのであります。例えば神経成長因子であるとか、胎児幹細胞を使う、あるいはES細胞を使うということに関しましても、ゲイム博士や京都大学の川口三郎先生など、非常にすばらしい研究をしていらっしゃいます。川口先生の研究では、脊髄を完全に切断し片麻痺になったラットが、その後に完全に歩行が可能になりました。
最近、特にここ20年間の研究結果をみてみますと、遺伝子工学や分子生物学において、本当に大きな発展がみられているわけであります。例えば細胞の操作をする、培養をする、その増殖法、そしてそれを脊髄の中に移植するという研究には、非常に大きな進展が見られます。
幹細胞とは、細胞が成熟する前の前駆細胞ですが、これは非常にエキサイティングな研究テーマであります。幹細胞は、非常にすばらしい再生能力を持っているだけでなく、科学者たちの言葉を借りますと「自分がどこにいけばどのような使われ方をするか幹細胞自身が知っている」と説明しています。こういった移植が行われて、そして成功するということが最大の望みです。
最近の京都大学での研究結果では、胎盤由来の幹細胞を使うということです。また、岡野先生の本日のお話の中からも、すばらしいエビデンスをうかがいました。
ヒトへの臨床応用へのトライアル、これが今後1年半の間に8〜12件あると私は聞いております。例えその半分であっても、これはすばらしいことだと思います。これは1990年や1995年頃には全く想像もしなかったことだと思います。
当事者としてできること
脊髄損傷治療の研究のためには、多額な資金が必要となります。人類にとって未来とは、今どのくらい投資をするのかということで決まります。アメリカ政府では、この重要な点を十分認識し、脊髄損傷の研究のために何億ドルという資金を拠出しています。そしてまた、こういった研究への献金を税額控除することで、研究環境をよりよくする行動に出ています。
皆様方もこういった基金を集めるための働きに協力をしていただきたいと思います。中枢神経の疾病の治療のために、色々な働きかけをしていただきたい。ある時にはロビーイストになって、そしてある時には他の形で、協力をしていただくことがたくさんございます。
1人ひとりの働きが大きなものであるということの1例を申し上げます。国際脊髄研究基金の個々のメンバーの方たちが集めた額は、企業からの寄付の4倍に上ります。ですから多くの皆様方に、幹細胞移植を実現するためのトライアルに参加をされることを、私はお勧めいたします。
ということで、中枢神経系の再生研究をいかにサポートをするかといいますのは、会社であったり、個人であったり、企業であったり、政府であったりしますので、我々1人ひとりのサポートが必要であり、それによって初めて脊髄再生が可能になるのです。■
再生研究のバックアップを!
《1人でもできること》
「脊髄損傷に関しては、研究資金を提供すること、そしてそれを維持し続けることによって、新たな世界を得る事ができる」とイエスナー氏は述べられた。
■ 競馬関係者に 本年7月の「マイアミ・プロジェクトEニュース」は、募金活動をする1人の背損女性の活動を伝えている。1996年7月、ロビン(Robin Cleary)さんは、コールダー競馬場での落馬事故により四肢マヒとなった。
1998年1月、彼女は「マヒ治療のためのマイアミ・プロジェクト」の存在を知り、その募金活動を自らの使命と受け止めた。彼女は競馬場や厩舎を廻り、その年、2万6000ドルの募金を集めた。
1999年には3万6000ドル、2000年には6万ドルを集めたため、マイアミ・プロジェクトは彼女の名を冠した「ロビン・マヒ研究基金」を創設した。
2001年は16万ドル、2002年は現在までに12万ドルの募金を集めている。彼女の集めた募金総額は5年間で40万ドル以上(約5000万円)に達し、草の根キャンペーンとしては前例のないものとなった。
「私が集めた募金はすべて競馬関係者からのものです。調教師、馬主、騎手、競走馬の搬送会社、馬丁、試乗者、ホットウォーカー〔レース後に手綱をとる人〕まで、競馬にかかわる方々が驚くほど協力してくれました」。
「私は体が続く限り、そしてみんなが車イスから立ち上がるまで募金活動を続けます」と彼女は言う。
いくつかの競馬場では「ロビン基金」のための特別レースが行なわれるようになった。
マイアミ・プロジェクトでは、こうした個人からの募金が有効な元金(seed money)となっているという。予算ではカバーできない研究立上げ時の資金や、新しいアイデアによる実験を行なうために使われている。
■ チャリティ・オークションで せきずい基金がヤフーのチャリティ・オークションに出品している殆どのものは、福岡在住の当事者であるI氏の自発的な活動によるものである。
I氏は何年にも渡って、芸能界やスポーツ界の著名人の方々に手紙や電話で、せきずい基金の趣旨を説明しオークションへの出品を依頼してきた。
昨年1年間では75万円の売上げが寄せられ、せきずい基金の貴重な収入源となっている。
■ 神戸製鋼ラグビー部から 昨年の10月から今年6月のファン感謝デーまで、神戸製鋼ラグビー部ではファンの方々にせきずい基金への募金を呼びかけた。その総額は168万4553円にも達し、7月4日に、上京したキャプテンの苑田右二選手からせきずい基金に贈呈された。
■ 国に要望書を提出 3月19日、せきずい基金の役員が文部科学省を訪問、 脊髄再生研究の促進のために、「基礎と臨床の連携した脊髄再生研究のナショナル・センターの設置」、及び「臨床応用レベルに達した脊髄再生研究への重点的支援」を求める要望書を提出した。
(以下の、3月20日付け公明新聞を参照)
せき髄再生研究促進に重点支援を
◇ NPOと太田幹事長代行が文科省に要請◇
池坊政務官−−社会復帰へ“希望の光”広げる
「公明党の太田昭宏幹事長代行は19日午前、脊髄損傷者の社会復帰をめざすNPO(特定非営利活動法人)「日本せきずい基金」の大濱眞理事長らとともに文部科学省を訪れ、池坊保子大臣政務官(公明党)に脊髄再生研究の促進に関する要望書を手渡した。
大濱理事長らは、昨年12月に岡野栄之・慶応義塾大学教授(生理学)らが、脊髄が傷ついたサルに死亡したヒト胎児の神経幹細胞を移植して運動機能を回復させることに成功したことを紹介。「霊長類での脊髄再生の成功例は日本だけ。日本には10万人の脊髄損傷患者がいるが、医学の進歩で治療に使える可能性も出てきた」と述べ、基礎と臨床の連携した脊髄再生研究センターの設置と同研究へのさらなる重点支援を要請した。これに対し、池坊政務官は「角膜も含め、脊髄の再生医療への技術開発には力を注いでいる」と述べた上で、「治療法として確立すれば、患者の社会復帰の道も開ける。岡野教授の研究で“希望の光”が見えてきたところであり、しっかり支援したい」と強調。技術開発支援などの予算確保にも努力する考えを示した。」
基金の活動はカンパで支えられています
▼振込先(口座名は「日本せきずい基金」)
郵便振替 No.00140−2−63307
銀行振込 みずほ銀行 多摩桜ヶ丘支店
普通口座 No.1702639
* 同封の振替用紙は、カンパやこの機関紙購読料の支払いを求めるものではありません。
また、郵便振替の番号を「請求額」と誤認される方もおられますが、カンパはあくまで任意のものですので、ご了解のほど、お願い致します。