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| SSKU 特定非営利活動法人 Japan Spinal Cord Foundation |
| 日本せきずい基金ニュース No. 13
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〔目次〕
〔脊損医療〕外傷性脊髄損傷の続発性損傷
制圧に向けてのチャレンジ(井形高明)
脊髄損傷急性期の保存療法と手術療法(加藤真介)
脊髄損傷:その発生件数と経済的インパクト(ICCP)
〔リハビリ〕理想のリハビリを求めて(鮎沢徹・啓子)
第2回在宅リハビリ研修会のお知らせ
〔再生研究〕5年以内に臨床応用か
〔再生研究〕神経細胞で五輪マーク
〔募金活動〕支援の輪、拡がる
(K-1、神戸製鋼ラグビー部、クローバーの集い)
〔調査事業〕在宅ケアの向上のために
・在宅高位脊損者のケアシステムモデル化事業
・高位脊損者のケアリスクマネジメント事業
〔お知らせ〕読者アンケートのお願
看護学雑誌:ベンチレーターと生きる人々
電子浴治療器について
ロボット療法士
外傷性脊髄損傷の続発性損傷
制圧に向けてのチャレンジ
国際脊髄学会 理事長 井 形 高 明
脊髄損傷医療は、20世紀後半に長足の進歩を遂げ、損傷者の社会復帰を大きく実現している。しかし、損傷された脊髄本体に対する有効な治療手段の開発はなく、重症麻痺では、受傷原因の如何によらず機能回復はほとんど叶えられず、受傷レベル以下の運動と知覚の障害を抱えての日常生活を余儀なくされている。
ところが、1990年、米国で行ったステロイド剤であるメチルプレドニゾロン(MP)の大量を脊髄損傷後8時間以内に投与する治療法により、運動・知覚機能の有意な改善がもたらされたとの臨床治験報告がなされた。
わが国においても、1992年に受傷後8時間以内の脊髄損傷例(158例)を対象として、同様のプロトコールによるMP大量投与の臨床治験が行われ、有効性及び有用性とも有意な効果との評価が下されている。
総じて、MPの治療効果は大きいとは言い難いが、患者にとっては生活の質の向上がもたらされ、研究者にとっても、続発性損傷病態をヒトの脊髄損傷において立証し得た意義は大きいと言える。
今後、外傷性脊髄損傷治療の二次予防として、この続発性損傷の処置法を位置付け、研究開発し、根本的治療法の創造にも役立てなければならない。
続発性損傷とは
続発性損傷は、自己崩壊反応ともいわれ、機械的損傷の第2波として、損傷脊髄に数多くのメカニズムを生じ、相互に作用し合って脊髄の損傷を拡大してしまう。
脊髄は、中央部の脊髄固有の神経細胞が密集している蝶状の灰白質と周辺部の運動、知覚などのシグナルを伝える軸索を配した白質から出来ている。最初の損傷外力は脆弱な灰白質を襲い血管破壊による出血や浮腫を来たし、受傷後数分以内に栄養や酸素不足による神経細胞の餓死を招く。引き続いて傷ついたニューロンや軸索などから興奮性アミノ酸の一種であるグルタミン酸の異常な流出が生じる。これに伴ってニューロンへの大量のCa++ 等イオンが流入し、自己崩壊反応の一連のプロセスが引き起こされ、ニューロン、諸種の細胞や軸索の壊死・崩壊を巻き込んでの続発性ダメージが募る。代表的な活性酵素、フリーラジカル*1もその一環として発生する。
動物実験での損傷脊髄に発現している脂質過酸化や不飽和脂肪酸の過酸化をみると、両者とも損傷後の極めて早期にピークの反応を示し、神経細胞、血管などの細胞膜や構成体を襲い、死にいたらしめている。他方、フリーラジカルの一つでもある活性化好中球の浸潤に係わった脊髄のダメージは、損傷後8〜24時間に、顕著な進展をみる。さらに、一酸化窒素、とくに強力な神経毒性を有する誘導型一酸化窒素合成酵素や血管の関門破綻やグリオーシス*2を起こす炎症性サイトカインの発現は、損傷後20時間前後の時点でピーク値となった後漸減し、長時間にわたって脊髄をアタックすることも見出されている。
注1:フリーラジカル――遊離基。強い酸化作用を有する。
注2:グリオーシス ――星状膠細胞が反応性に肥大し病変部が細線維(突起)の豊かな組織に置き換わる状態。グリア瘢痕。
現時点での制圧法
究明された続発性損傷メカニズムの制圧に向けての化学物質、薬剤、新薬物等の有効性ならびにその機序についての研究成果の蓄積も進んでいる。ヒトの初期脊髄損傷の治療薬として認められているMPはこうした研究の貴重な成果と言える。この薬剤は、動物実験で確認された続発性損傷メカニズムのうち、主に、興奮性アミノ酸の放出及びフリーラジカルの蓄積の制圧による効果が期待できるとされていた。
我々が、最近行ったMPのもつ作用機序の実験的検討では、MPには抗酸化作用や炎症性サイトカイン抑制はもとより、誘導型一酸化窒素合成酵素抑制、活性化好中球の浸潤抑制にも際立った効果のあることが再確認された。しかし、さらに注目しなければならないMPの効果は損傷脊髄に増加している神経栄養因子の一つであるニュートロフィン‐3(NT‐3)の発現を抑制する逆効果である。抑制度合いは損傷後24時間がもっとも著しく、30%を越えている。
最善の制圧法に向けて
二次予防の役割は続発性損傷の制圧により脊髄のダメージを軽減するだけでなく、脊髄再生を促し支える髄内環境の醸成をも果たさなければならない。脊髄再生に係わる神経栄養因子に対してのMPのもつ負の作用は軽視すべきでなかろう。
我々は水島 裕教授が開発された修飾活性酸素消去酵素、PC‐SODのNT‐3発現効果をMPと同じ実験法で検索し、特異的と言える効果を得た。すなわち、対照例の損傷後脊髄に発現されるNT‐3は漸増し、24〜48時間後の間にピークに達した後に漸減するが、PC‐SOD投与例の場合はNT‐3発現が増強され、ピーク値が対照例の約50%高く、しかも相似したNT‐3発現パターンを呈していた。
抗酸化作用や炎症性サイトカイン抑制効果はMPに劣るも、運動機能回復のパターンはスムーズで、3週間後の最終評価ではMPの運動機能回復を上回っていた。PC‐SODのこの優位性はNT‐3発現効果によるものと示唆された。
ともかく、続発性損傷の制圧策には、その後の神経再生にも適う多面性が求められていると言える。こうした最善策の開発が遅れているなか、神経栄養因子と呼ばれる物質の発見は後を絶たず、NT‐3については脊髄損傷患者を対象とした臨床試験実施が準備段階にあると聞こえてくる。その一方にあって細胞移植や遺伝子療法による脊髄再生の研究も加速されている。
だからこそ、今、続発性損傷の制圧に資する二次予防策の開発、推進を究極的課題として、地球規模での専門家ならびに関係施設の協調の下、英知を挙って取り組む必要がある。
結 び
従来の脊髄損傷治療は残っている脊髄機能を引き出して役立てる姑息的療法を中心として採用してきた。傷んだ脊髄を治療、修復し、失われた脊髄機能を回復、復興しうる根治的療法の開発普及が新しい時代の責務である。最近の飛躍的進歩を遂げているバイオテクノロジーの組み入れ、さらに脊髄再生医療の確立を視野に入れた研究の環も広まり、根本治療法の実現に向け、着実な前進をみている。
改めて、続発性損傷や予防処置の確立・普及こそが根本治療法開発への登竜門であることを再確認し、ゴールを目指さなければなるまい。
第2回在宅リハビリ研修会のお知らせ
【横浜会場】
主催:在宅リハビリサポートの会・「レッツ」
後援:日本せきずい基金
会場:「ウィリング横浜」 定員:各12名
(京浜急行・上大岡駅前 電話:045-847-6666
横浜市港南区上大岡西1-6-1 ゆめおおおかオフィスタワー)
頚損セミナー
4月26日(金)11時〜:オリエンテーション、セミナー@
18時〜:レセプション(自由参加、夕食代@3,000円)
4月27日(土)9時〜:セミナーA、B
16時〜:質疑応答 18時〜:オリエンテーション。
脊損セミナー(胸髄・腰髄損傷が対象です)
4月28日(日)11時〜:セミナー@、A
18時〜:レセプション(自由参加、夕食代@3,000円)
4月29日(月)9時〜:セミナーB、質疑応答
13時半〜17時:日米リハビリ比較パネルディスカッション
◎日本せきずい基金主催、参加費無料。
《参加申し込み》
⇒白井由美子さんまで ファックス:045-845-9013
Eメール:shiymk5@attglobal.net
*締切りは、リハビリ:4月5日、見学:4月20日
見学は各コースとも1人3000円。
【大阪会場】
主催:(社)大阪脊髄損傷者協会
定員:各12名
会場:国際障害者交流センター「ビッグアイ」
(堺市茶山台1-8-1 電話:072-290-0962
泉北高速鉄道「泉ヶ丘」駅下車)
頚損コース
5月3日(金)13時〜17時:セミナー@
5月4日(土) 9時〜17時:セミナーA、B
脊損コース(胸髄・腰髄損傷が対象です)
5月5日(日)9時〜17時:セミナー@、A
5月6日(月)9時〜12時:セミナーB
13時〜17時:勉強会 定員50名、参加費1000円。
脊損リハビリについてのレクチャー及び質疑応答。
対象は、リハビリ・介護関係者、当事者・家族等。
《参加申し込み》
⇒瀬戸正代さんまで п蒜ax:072-266-6817
Eメール:masayo-n@f4.dion.ne.jp
*締切りは、セミナー:3月31日、勉強会:4月30日。