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| SSKU 特定非営利活動法人 Japan Spinal Cord Foundation |
| 日本せきずい基金ニュース No. 12
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〔目次〕
講演会報告「脊髄損傷者のセクシュアリティ」
再生研究1「可能性が出てきた脊髄再生」(川口三郎京大教授)
再生研究2「メリッサの小さな奇跡」 <人間への臨床応用始まる>
告知板:せきずい基金活動予定 2001〜2002
電話相談を行います<毎週金曜日午後>
在宅人工呼吸療法患者が増加
![]() *写真 質問に応えるデュシャーム博士 |
「セクシュアリティ とは人生の重要な一部である」
【講演会「脊髄損傷者のセクシュアリティ」を開催】
ボストン大学医学部・性と障害トレーニングセンターの スタンレー・デュシャーム博士をお迎えし、7月21日に東京、7月28日に福岡で講演会を開催した。開催に当たっては、厚生労働省、東京都、全国脊髄損傷者連合会の後援、及びファイザーヘルスリサーチ振興財団の助成を得た。
◆ 東京会場(麹町・弘済会館)
7月21日の講演会には約150人が参加。当事者ばかりでなく、パートナーと一緒に参加された方、医師、看護婦の方々も多数参加された。
デュシャーム博士は、米国における取り組みが1980年代以降、脊損センターでの社会復帰プログラムとして行われてきたことに触れた後、要旨次のように述べられた。
心理的な問題
脊髄損傷は若者に多いが、退院後に「男性性」「女性性」ということが大きな問題になる。性的に自信がないことが、自己を何事に対してもネガティブにしてしまいやすい。ボディ・イメージも変化し、鏡を見ることすら苦痛となる。
性的存在として自信を持てるようになるには、男性も女性も長い時間がかかる。
脊損男性のもっとも大きな問題は、彼女が去っていくことからくる孤独感、寂しさである。男性が誤解していることは、パートナーとのセクシュアリティというと、性交渉である、と考えていることである。
女性の場合は、自分の体に性的魅力があると思えなくなり、孤独になり引きこもってしまう。
セクシュアリティは人生の重要な一部であるが、それは性交のみを意味するものではなく、もっと大きなものと捉えてほしい。性的に活動的な人は、人生においてもいろいろなことができる。
肉体的な問題
男性の場合、勃起できない・勃起を持続できない。女性はヴァギナが濡れてこない。脊損者の勃起は反射性勃起であり、手やバイブレーターで刺激することで、勃起を持続させることができる。
受傷前には、性というとペニスとヴァギナを考えるわけだが、こうした見方を変えなければならない。勃起不全であることで、自分が性的に興奮できないのではないか、と思ってしまう。ここで、性的感覚は全身で起きる現象であるということを理解しなければならない。受傷後には、性交渉ということばかりでなく、違った方法を考えるべきであろう。
しかし、バイアグラの登場は、脊損男性のEDの問題を大きく変えるものとなった。一部の禁忌を除けば、その安全性は問題なく、大きな効果が得られる。
女性の性機能障害についてはジェリーを使うことで代用できるが、もっと大事なことは男性をセックス・パートナーとして信頼することであろう。女性用のバイアグラの開発も現在進められている。
パートナーの理解を得ること
排泄の問題では、男性は事前に導尿をして膀胱を空にしておくことが重要である。導尿しても洩れてくることがあるので、タオルを用意しておくこと。
それ以上に大きな問題は排便であるが、排便についても、数時間前から何を食べるかを注意しておかなければならない。しかし、アクシデントの可能性をゼロにはできないので、パートナーに前もってよく話して理解してもらうことが重要である。
体位についても、車いすの上でしたり、ベッドで側臥位になるなど、よい体位を試行錯誤して二人で見つけていくこと。
不全麻痺の場合、なんらかの感覚が残っているが、それは受傷前とは違う感覚である。首や耳、顔の部分は受傷前より性的に感じやすくなっているので、自分やパートナーが触ってみてそのポイントを知ること。
射精は勃起より困難な問題である。射精してもそれが膀胱のほうにいってしまうことが非常に多い。かつては脊損では子どもを持てなかったが、現在ではバイブレーターを使って、多くの人が子どもを持てるようになった。脊損の場合、車いすに座っているままでいるので、精嚢が高温になって精子によくないと言われてきたが、それは本当ではなく、結構よい精子が得られる。
皆さんの持っている不安−−パートナーを満足させられないのではないかという不安、自分に興味を持ってもらえず拒否されるのではないかという不安。受傷後は男女の役割も変わって、男性がしていたことを女性にしてもらうようになる。それを心理的に克服するには時間がかかるし、相手の理解が必要であるし、何よりも勇気のいることである。
覚えておいてほしいこと
性的関係では、いかに相手と親密な関係を築いていくかが非常に重要である。
セックスというものは、「男らしさ」を見せるものではなく、相手との愉しみ、相手との貴重な時間を共有するということである。
体に自信を持ち満足するには時間がかかる。性に関して語ることは恥ずかしいことかもしれないが、受傷後は性というものは非常に重要な問題である。脊損であっても性的能力、セクシュアリティを失うわけではない。
セクシュアリティが好ましいものになるには時間がかかるが、医師や患者仲間に聞いてみることがその近道となる。本当に分かるには、この問題を克服してきた患者の仲間に、パートナーとの関係などを聞いてみることが一番簡単なことである。恥ずかしがらずに聞いてみることをお勧めしたい。
▼ パネルディスカッション
討論と質疑は、坂上博記者(読売新聞社・医療情報部)の司会の下で、牛山武久医師(国立身体障害者リハビリテーションセンター副院長)、当事者として今崎牧生医師(心療内科)がパネラーとなって進められた。
当事者からは次のような発言があった。
「脊髄損傷者の性を語ることが、まだまだ好奇の目で見られている」。「こうした問題を医師や看護婦に聞くこと自体がはばかられるような雰囲気がある」。「病院ではまったく性の問題について話がなく、自分の体がどうなっているのか知ることができない」。「在宅生活になると、こうした問題について聞くところがない」。「女性の場合は男性以上に聞くことが困難な状況に置かれている」。「同性間のセクシュアリティについても、もっと理解してほしい」。
討論では、病院の社会復帰プログラムの問題とバイアグラの保険適応が論点となった。
当事者からは、在宅では相談する場がないので、退院前の病院で社会復帰プログラムにセクシュアリティの問題を扱ってほしいとの要望があった。医療側からは、米国とは性文化の相違もあり、医療側からそこまで踏み込むことが現実には困難な問題が多いこと、患者さん自身が声を挙げていただくことで医療側も個々に対応できるようになるのではないかと語られた。
バイアグラについては、保険適応されてないため全額自己負担であり、またその値段も医療機関によって異なることが指摘された。医療側からは、その効果と安全性はすでに示されており、専門医の多くが脊損者への保険適応を求めていること、パラプレジア医学会や脊髄損傷者連合会もその実現を厚生労働省に働きかけている現状が述べられた。
* 講演会終了後、当事者とパートナーを対象とするワークショップが行われ、約30人が参加した。こうした試みが殆ど行われてこなかったために戸惑いも多く、「性について語り合うことの困難さ」が、改めて明らかになった。
翌日には目黒区身障センターで、デュシャーム博士との個人カウンセリングが実施された。
◆ 福岡会場(飯塚市・総合せき損センター)
7月28日、労働福祉事業団・総合せき損センターで、日本せきずい基金が主催したデュシャーム博士の講演会が開催され、当事者や患者、医師・ナースなど70人が参加した。
最初に、木元康介博士(同センター泌尿器科副部長)が「勃起のメカニズムと性障害」と題して講演。インポテンスという用語が差別的であるとして1994年の国際会議でEDという用語に統一されたこと。EDは94年のボストン大学グループの調査により、40代で約40%、50代で50%と年代に比例して増加すること。日本では、780万人から970万人と推定されていることを述べられた後、バイアグラの生理的メカニズムや適応について報告された。
ついで岩坪瑛二博士(同、泌尿器科部長)が「日本における脊損者の性障害と治療の現状」と題して講演された。スライドを用い、性障害の様々な治療法、補助器具、妊娠出産の問題について分かりやすく解説された。
デュシャーム博士の講演後、参加者との活発な討論が行われた。また前日には、同センターで開催された「神経泌尿器科セミナー」において講演が行われた。
福岡での開催に際してご協力いただきました岩坪瑛二博士、木元康介博士、総合せき損センターの皆様方に深く御礼申し上げます。
◆ 会場アンケートから(東京・福岡)
- 非常に大きな問題がこれまで不問に付されてきた。障害者仲間によく伝えていきたい。
- 女性障害者のセクシュアリティなどの相談窓口がほしい。
- 子どもを作るためだけ・性交するためだけの性文化でなく、夫婦のよりよい関係性を築いていける教育が必要だと思う。
- 看護婦として受け止める器を持ちたい。性の問題をオープンにできるよう働きかけを。
- 思っていたとおりのショッキングなリアリティのある講演で、鳥肌が立ちました。
◆ 東京・福岡での講演会の詳細は、
今年度中に報告集として刊行します