会報10号 ページ7
3.類型V
(1)Fさん(43才男性)
E.医療上の問題と対応
33才のときに病気が原因で頸髄2番を損傷した。呼吸障害により、人工呼吸器を24時間装着している。痰の吸引は1日10回、夜間は2回程度行う必要がある。
障害発生から退院に至る医療施設の対応は、調査対象者中では最も良好であった。インフォームドコンセントが確立されており、カウンセラーや医療ソーシャルワーカーなどの相談・援助も受けた。週に3回程度リハビリに出かける他、薬を取りに行くなど、医療機関との関わりは多い。
B.機能障害
人工呼吸器をはずせる時間は5分程度である。気管切開をしているが、発声装置を利用している。このような音声の障害の解消は、Fさんが医療機関との関わりが多く、また支援体制が整っていたことが関係していると思われる。上肢は全く動かせない。
C.活動の制約
複数の介助者を確保しているため、日曜を除く週6回の全身浴が可能になっている。但し、離床はリハビリに行く週3日であり、在宅の日は終日ベッド上である。
D.参加の制限
週のうち3日、リハビリに行き、ついでに買物などもする。残りの4日は自宅でパソコンなどを用いて、趣味や外部への情報発信などをしている。現在の人工呼吸器利用者の中では、参加のレベルが最も高い。
F.介助者と社会的資源
家族は妻(41才)と子供3人(末子は11才)、母親(67才)の6人家族である。妻は有職であるため、母と2人で介助を行っている。また公的ヘルパー、有償ヘルパー、訪問看護婦、ボランティアが関与している。このような複数介助者による体制は、1つには人工呼吸器の利用者であってもコミュニケーションが取れることで、可能になっていると思われる。
タイムスタディ調査によれば総介助時間は1221分で、平均時間の882分を大幅に上回っている。しかしながら、家族の介助時間は523分と比較的少なく、Fさんの活動性の高さは複数の介助者を確保する形で実現されている。但し、介護保険の上限が低すぎて公的には1日3時間しか保障されていないなど、制度的に改善されるべき点も少なくない。
|
E.健康と医療の問題と対応 ・人工呼吸器を24時間装着。 ・痰の吸引を1日10回程度必要とする ・通院はリハビリを中心に週3回で、医療機関とのかかわりは多い。 |
↓↑
↓
|
B.機能障害 ・C2 ・呼吸障害 ・音声発生装置 により、発声 の障害を解消 |
→ |
C.活動の制約 ・リハビリに行く週3日を 離床の日としている。 ・複数の介助者を確保して おり、日曜を除く週6日 の全身浴が可能 |
→ |
D.参加の制限 ・週3日の外出の際に買物 などをする。 ・週4日は、自宅でパソコン などを用いて、趣味の活動 や情報発信をする。 |
↑ ↓ ↑
|
A.個人的要因 ・妻と子供3人、 実母の6人家族 ・妻は有職 |
→ |
F.介助者や社会的資源 ・家族介助者は妻と母 ・家族介助者以外に、公的ヘルパー、有償ヘルパー、 訪問看護婦、ボランティアが関与している。 |
(2)Gさん(31才女性)
E.医療上の問題と対応
26才のときに交通事故により頸髄5・6番を損傷した。障害経過年数は5年になるが、褥瘡や泌尿器系などの合併症はない。医療機関とのつながりは月2回の往診である。
B.機能障害
上肢は指先でスイッチが押せ、調査対象者の中では比較的機能がよい。
C.活動の制約
終日ベッドにいるのが週2日、離床は5日である。
D.参加の制限
週1回のリハビリを含め週に2日、外出している。外出は買物や娯楽の他に、交際や会合などの社会的活動も含んでいる。自宅では、読書や趣味の活動をしている。
F.介助者や社会的資源
家族は父(63才)と母(57才)との3人家族で、介助者は母である。公的ヘルパーを24時間利用することを希望しているが、実際に介入しているのは午前9時〜午後1時(週1回は午後2時)の時間帯である。
タイムスタディ調査によれば、Gさんの総介助時間は1214分で平均よりもかなり多い。それはQOL向上のための介助時間が全体平均の206分に対して、557分と突出して高いことによっている。この生活を支えている母親の介助時間は919分と限界に近い。したがって、Gさんの場合には家族に過重負担をかける形で、現在の活動レベルが達成されている。そのため、このままの体制を維持したままで類型Wに移行することは、難しいといえる。
|
|
E.健康と医療の問題と対応 ・障害経過年数は5年になるが、褥瘡や泌尿器系などの合併症も特にない。 |
|
B.機能障害 ・C5/6 ・指先で スイッチが 押せる。 |
|
C.活動の制約 ・終日ベッドにいる日 は週2日、離床は 5日である。 |
→ |
D.参加の制限 ・週1回のリハビリを含め、週2日 外出をしている。 ・外出には交際や会合などの社会的 活動が含まれている。 |
|
|
||||
↑
↑
|
|
.個人的要因 父と母との 三人家族 |
→ |
F.介助者や社会的資源 ・主な介助者は母であるが、母親の介助は限界に近い。 ・公的ヘルパーを24時間利用することを希望しているが 実際に介入しているのは日中の4〜5時間である。 |
|
|
|||
FさんとGさんにおいては定期的な外出が行われているが、それは平均よりもかなり多い介助時間が確保されることによって可能になっている。「D.参加の制限」を克服するためには、初期の段階では情報収集や交流による意識変革が必要と考えられるが、次の段階では実際に多くの介助時間が確保できるかどうかが大きく影響するといえる。
NEXT ページ8 全24ページ
各ページに移動します。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24