会報10号 ページ6


2.類型U

(1)Dさん(35才男性)

E.医療上の問題と対応

  15才のときに頸髄3番を損傷した。人工呼吸器を就寝中に装着しており、受傷後20年が経過しているがずっと医療施設で生活してきた。在宅療養の目途は立っていない。痰の吸引を1日15回、夜間は5回程度する必要がある。


B.機能障害

  人工呼吸器をはずせる時間は5時間ぐらいで、1日に2回に分けてはずしている。気管切開をしているが、スピーキングバルブなどは利用しておらず、発声の障害が生じている。上肢は全く動かせない。


C.活動の制約

  離床は行われておらず、週7日とも終日、ベッド上の生活である。(但し、医療施設で生活している人は本調査では3人いるが、他の2人は車椅子を利用している)


D.参加の制限

  ベッド上の生活では制約が大きいが、テレビ・ラジオの視聴の他に、主体的な行動として読書や勉強が行われている。ヘルパーが読書のセッティングや勉強の相手などをしている。外出は月に1回程度で、買物、娯楽などの目的である。

  家族は在宅療養を希望しているが、Dさんは人工呼吸器事故への不安が強く、人工呼吸器使用者が入所可能な施設の建設を望んでいる。


F.介助者や社会的資源

  家族は母親のみで、病院から徒歩5分のところに住んでいる。母親は数年前まで入院中の医療施設で看護婦として働いていた。68才であるが有職で、病院に夜間泊まり込みをし、朝食後、自宅に戻ってから仕事に行く。その後再び病院で昼食の介助をするが、有償ヘルパーが午前と午後に入っている。病院の看護婦は排尿介助や痰の吸引などを行うこともあるが、介助時間は総介助時間617分中の35分でごく一部に過ぎない。

  母親が看護婦であるなどの好条件を持ちながら、在宅生活に移行できなかった。Dさんの場合は母親が女手ひとりですべてのことをしており、退院後の住宅の確保や介助者の雇用費などの経済的な保障を問題としてあげている。しかし、情報を得たり相談したりする人・機関として障害者団体以外に回答されておらず、今後の在宅生活への移行に関してカウンセラーや医療ソーシャルワーカー等の相談・援助は得られていない。

 

 

 

  

 

.健康と医療の問題と対応

・夜間の就寝中は人工呼吸器を装着。・痰の吸引が1日15回程度必要

・病院の看護婦の介助は殆ど受けていない

・受傷後20年が経過しているが、ずっと医療施設での生活を続けている。

                                                

 

 

 

 

.機能障害

・C3

・呼吸障害

・発声の障害

  

 

 

.活動の制約

・1日中

  寝たきり

   

 

.参加の制限

・ベッド上で読書・勉強

・外出は月1回で買物・娯楽

・人工呼吸器事故の不安が強く、

  在宅生活に消極的

                      

 

                                       

.個人的要因

 ・母と2人 

   家族   

 ・母は有職

   

 

 

 

 F.介助者や社会的資源

 ・介助者は母と有償ヘルパー

 ・退院後の住宅の確保や介助者の雇用費などの問題がある

 ・在宅生活への移行に関して相談・援助する機関がない


               図4−4 Dさんの障害の構造


(2)Eさん(36才男性)

E.健康と医療の問題と対応

  21才のときに交通事故により頸髄5・6番を損傷した。障害発生後の入院期間は2年と短いが、その理由は病院の看護婦がいやで自ら退院したためであるという。通院はしておらず、医療機関とのつながりはない。


B.機能障害

  上肢は調査対象者中ではかなり機能が良く、指先でスイッチを押すことができる。


F.介助者や社会的資源

  病院の看護婦による看護や介護を拒否した結果、家族による介助で生活をしている。家族は父(66才)と母(61才)である。父は定年後無職であり、両親がともに介助者となっている。ヘルパーなど家族外の人は介入しておらず、総介助時間は736分で、平均の883分よりかなり少ない。


C.活動の制約

  週7日とも終日、ベッド上の生活である。車椅子に乗るのは、春・秋などの季節に限られている。受傷経過年数は15年とかなり長いが、外出はほとんどしない。


D.参加の制限

  機能障害が比較的軽く、年齢も若いのであるが、家庭内に閉じた生活である。ベッド上でほぼ終日、読書をして過ごす。他に俳句を作ったり、ワープロなどをすることもある。ハンディキャブを所有しているが、社会的参加はない。

  現在のところ、障害者団体からの情報が唯一の外部とのつながりになっている。このような団体側からの情報を受信することにとどまらず、自分からメッセージを発信できるようになることが、次のステップへの契機となるのではないかと思われる。

 

 

  

 E.健康と医療の問題と対応

  ・病院の看護婦とうまくいかず退院した。

 ・通院などはしてはおらず、医療機関とのつながりはなし

 

.機能障害

・C5/6

・指先でスイッチ

  が押せる。

 

 

  

 

.活動の制約       

・総介助時間が平均よりも

 かなり少ない。  

・1日中寝たきり。

  

 

.参加の制限

・読書・俳句・ワープロなど、

  自宅での趣味的な行動

・外部とのつながりがない。

                                             

.個人的要因

・父と母の3人

  父は定年退職

  

 

   

.介助者や社会的資源

・両親が介助しており、外部の介助者を入れていない。

・ハンディキャブを所有しているが利用されていない。

    
                図4−5 Eさんの障害の構造


  DさんとEさんはともに、ベッド上では自分の取り組む趣味的な活動を見いだしている。しかし、受傷経過年数が長いにもかかわらず、家庭や施設外に生活が広がっていない。生活世界の広がりは、情報収集や交流によって生じる意識の変革から起こることが多い。Dさんは人工呼吸器利用者であり、Eさんは機能障害そのものは比較的軽いという違いがあるが、両者とも「F.介助者や社会的資源」の不足、特に情報収集や交流の不足が「D.参加の制限」につながり、類型Uにとどまり続けていると捉えられる。





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