会報10号 ページ22


◆ 総合せき損センター

【概 要】 

  労災で脊損となった人の社会復帰が欧米に比べ著しく立ち遅れていた反省から、1979年(S54)、福岡県飯塚市に開設されたわが国唯一の総合的脊損治療専門施設である。総合せき損センター(竹光義治院長、略称:SIC)は、外傷性脊髄損傷者の早期入院・早期治療を基本とする。

  ベッド数は150床、調査時の脊損患者数100名(外傷性以外を含む)(頚損50名、胸・腰髄損傷15名、呼吸器使用15名)。


・ 医療部門――西日本一円の救急患者受け入れのためのヘリポートを設置。脊髄損傷の集約的医療を行う。

  ヘルニア・脊椎症・側弯症を扱う脊椎外科部門、脊髄麻痺のリハビリテーション部門、神経因性膀胱・尿失禁・インポテンス、不妊を扱う泌尿器科部門、呼吸・循環障害・自律神経障害分野を専門とする内科部門からなる。

・ 医用工学研究室――重度障害者の支援機器、住宅環境を研究開発する。

・ 職業センター――障害者の職場復帰を支援する    (日本障害者雇用促進協会)。

* 遠方からの入院希望者のための「受診者宿泊施設」も併設されている。


【医療部門】

  総合脊損センター(SIC)は臨床研究でも知られているが、急性期・リハビリ期の最近(2000年度)の研究での一端を紹介してみよう――

・「高位頚髄損傷者:急性期からのマネージメント」
                (整形・植田尊善医師)

  急性期高位頚髄損傷は頚損900例中の約15%。横隔麻痺のため人工呼吸管理を必要とする例が多く、麻痺範囲が広いため種々の合併症の頻度も高い。しかし急性期に適切な治療を行えば、麻痺高位の改善と共に人工呼吸から離脱可能となる例も稀ではない。

C5A:上腕二頭筋3以下⇒顎操作での電動車椅子へ 
C4:三角筋以下⇒電動車椅子
C3:横隔膜麻痺⇒覚醒時は頚部筋で自発的呼吸、睡眠時は人工呼吸
C1-2:頚部筋も0⇒24時間人工呼吸

  殆どの高位頚損において気管切開が必要となるが、合併症予防のためにはカラー程度の簡単な外固定で直後から体位交換、起座、リハビリを開始することが重要である。

・「脊髄損傷の初期治療に関する多施設、前向き研究」(整形・加治浩三医師、竹光院長)

  初期治療とその予後について多施設の345例を調査(男性294名、女性51例、平均年齢52歳)。頚損は244例で、骨傷なし133例・骨傷あり111例。骨傷なし133例中100例が保存的治療。骨傷あり111例中85例が手術を選択。

  起座開始まで平均10日。リハビリ開始は保存的治療は平均4.4日、手術例では5.5日。

  胸・腰髄損傷では、起座開始まで保存的治療で25.3日、手術例で14.7日。リハビリは72%が3日以内に開始した。


  SICの泌尿器科(岩坪暎二部長)では、「インポテンス・脊損性機能不妊症及び尿失禁」の特殊外来が毎週月曜日に行われている(予約制)。また岩坪先生がまとめられた「脊髄損傷と排尿障害」はインターネットで公開されている。これは排尿障害、各段階の尿路管理法を分かりやすく記載し、セルフコントロールのための格好のマニュアルとなっている(A4版で10頁)。

アクセスは⇒ http://www. hama-med.ac.jp./uro/abstract/PART1 
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                    リンク不明

【医用工学研究室】

  脊髄損傷者、重度身体障害者のADL向上のための自立器具や生活環境の改善のための機器の開発研究のほか、機器や住宅改造の相談や指導などの情報サービスを行っている。

  開発研究としては、ECS、排泄管理機器、電子デバイス、入浴・移動機器、うつ熱防止機器、スポーツ・レクレーション機器、在宅就労コア、職域拡大のための機器具、褥瘡予防機器、リハ訓練機など、自立支援のための広範な領域にわたっている。

  昨年のパラプレジア学会では医用工学研究室の松尾清美氏(車椅子使用)が、治療に当たる医師の方々がさまざまな生活支援器具があることをもっと知って、患者の社期復帰能力を高めるために活用していただきたいと述べていたことが印象に残る。


<写真 胸腰髄損傷者用の立位歩行器(手動)






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