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| SSKU 特定非営利活動法人 Japan Spinal Cord Foundation |
| 日本せきずい基金ニュース No. 10
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【調査報告特集号】
2000年度、日本せきずい基金では脊髄損傷者の実情を広く明らかにするために、その治療と在宅介護に関する2つの調査事業を実施した。
(1) 「在宅高位頚髄損傷者の介護に関する実態調査」(社会福祉・医療事業団助成事業)では、当事者と介護者等がペアを組み、北海道から九州まで、50事例の訪問調査を実施した。
この詳細な介護調査から1日に必要な介助時間は、呼吸器利用者で27時間、C4以上の損傷で24時間、C5以下で14時間必要であることが明らかにされた。これは国の今後の障害者施策を立案する上での貴重な基礎資料とされてしかるべきものである。
(2) 「脊髄損傷者の受け入れに関する全国主要病院調査」(たばこ産業弘済会・日本フィランソロピー協会「がんばれNPO!」助成事業)では全国250医療施設に郵送アンケートを実施し、106施設からの回答をもとに脊髄損傷医療の問題点を明らかにした。
すなわち、全国11の医療機関に調査時の患者総数の3分の2が在院しているという治療施設の極端な偏り、その他の医療機関では「受け入れない」か「急性期のみ対応する」という問題性。これはリハビリ施設においても同様である状況。言い換えれば、年間約5000人発症する脊髄損傷者を治療からリハビリまで一貫して対応できる医療システムが決定的に不足しているのである。
そのためには医療保険制度を脊髄損傷治療を可能とするレベルに引き上げること、治療からリハビリまでを担う「脊損センター」を全国に設置することが必要であることをここに明らかにした。
私たちはこれを単なる実態調査にとどめることなく、その改善を国や自治体、医学会、医療関係者に働きかけていきたいと考えています。皆様のご意見・ご感想をお聞かせ下さい。
【目次】
<第I部>
「在宅高位頚髄損傷者の介護に関する実態調査」事業報告書
はじめに
第1章 調査の概要
第2章 機能障害・活動の制約・参加の制限の状況:統計的把握
第3章 タイムスタディ調査による介助時間の分析
第4章 障害の構造:参加の類型別事例の検討
おわりに:介護の標準化モデルをめざして
付録:調査票 (略)
調査対象者リスト (略)
<第II部>
脊髄損傷者の受け入れに関する全国主要病院調査」事業報告書
第1章 病院アンケート報告書 II-1
第2章 労災病院リポート II-19
第3章 救急医療の充実を II-24
* リハビリトピックス ICチップが歩行を可能にする II-27
在宅高位頸髄損傷者の介護に関する調査報告書
平成12年度社会福祉・医療事業団助成事業
2001年3月
日本せきずい基金
−目次− ページ
はじめに
第1章 調査の概要
1.調査の分析枠組と目的2
2.調査の方法
3.調査対象者の基本的属性
第2章 機能障害・活動の制約・参加の制限の状況:統計的把握
1.機能障害
(1)機能障害と医療の問題
(2)生命維持レベルの動作における機能障害
(3)人工呼吸器使用者における機能障害
2.活動の制約
(1)生命維持レベルの活動における制約
(2)基本的生活レベルの活動における制約
3.参加の制限
(1)参加の質の評価と4類型
(2)参加の質を制限する要因
(3)参加の質を向上させる要因
第3章 タイムスタディ調査による介護時間の分析
1.各介護動作の所要時間
2.総介助時間と介助の体制
3.介助時間や介助の内容を規定する要因
第4章 障害の構造:参加の事例的検討
1.参加の質の類型T
2.参加の質の類型U
3.参加の質の類型V
4.参加の質の類型W
おわりに:介護の標準サービスモデルをめざして
付録T.「高位頚髄損傷者の介護に関する調査」調査票
U.タイムスタディ調査記入用紙
V.調査対象者リスト
<はじめに>
在宅高位頚髄損傷者の家族による介護は限界状態にあるといわれている。実際、頚髄損傷者の介護はどうなっているのだろうか。このまま家族介護に依存することは妥当であるのか。また、これからどのような介護が必要であるのか。福祉の分野でQOL(生活の質)が重要視されて久しいが、QOLといっても人それぞれ多様であって、未だに一概に測ることはできない。しかし少なくとも介護は、QOLに深くかかわっている。大雑把であっても、これらについて考えていく必要性があると思われる。
そこで私たちは、頚髄損傷当事者とその介護者等で北海道から九州までの在宅高位頚損者宅を訪問し、生活・介護の実態調査を行った。この調査報告書がQOLの評価のひとつとして、またこれからのQOL向上のための礎となることを切に願うものである。
報告書作成を御引き受け下さった駿河台大学の渡邊裕子先生に深く感謝する。また、この介護調査のアンケートにお答え下さった皆さんと、訪問を受け入れ聞き取り調査にお答え下さった皆さんにも感謝を表したい。最後に今回の調査で、医療や福祉の諸矛盾を抱えながらも、これを個人のドラマとして日常を送る人々と出会えた事を幸いに思う。
2001年3月10 日本せきずい基金
第1章 調査の概要
1.調査の分析枠組みと目的
本報告では特に介助体制や社会的資源の面から、在宅高位頸髄損傷者がQOLの向上を図るための方策を検討している。そして問題を分析する際には、WHO国際障害分類(第2版)の障害構造のモデルに若干の修正を加えたものを用いている。そこで始めに、このモデルについて簡単に示すことにしたい。
(1)障害の構造的把握
私たちが障害(disablement)と呼んでいるものには、実際には3つのレベルが含まれている。例えば、「上肢に障害がある」といった場合の障害は、上肢に麻痺があるなど生物体レベルでの障害を意味している。また、「字を書くことに障害がある」といった場合の障害は、字を書くという動作ができないという個人レベルでの障害を意味している。さらに、「授業を受けるのに障害がある」といった場合の障害は、社会生活レベルでの障害を意味している。
そして、これら3つのレベルの障害をWHO国際障害分類(第2版)では、「機能障害(impairment)」「活動の制約(limitation of activity)」「参加の制限(restriction of participation)」と呼んでいる。これらの区別は図1-1に示すように、上肢に障害があるため、字を書くことができず、授業を受けるのに不利が生じるなど、機能障害が活動の制約を招き、参加の制限を作り出す、といった障害発生のメカニズム(障害の構造)を理解することを可能にする。そこで本報告でも、高位頸髄損傷において生じる障害を、このように3つのレベルで捉えることにしたい。
機能障害 活動の制約 参加の制限 上肢に障害がある − 字を書くことに障害がある − 授業を受けるのに障害がある <生物体レベル> <個人レベル> <社会生活レベル> 図1−1 障害の3つのレベル
(2)障害構造の修正モデル
図1-1の表現は誤解を生じやすいのであるが、障害は必ずしも機能障害を起点として形成されるのではない。機能障害・活動の制約・参加の制限の3つのレベルの障害は、相互に作用しあっている。また、周囲の人や健康や医療の問題、社会・制度などからの影響を受け、障害は増幅されたり軽減されたりする。
このように考えると図1-2のように、「B.機能障害」には「A.障害発生時の対応」や現在の「E.健康や医療」の問題と対応が影響を及ぼしている。「C.活動の制約」は機能障害と関連するとともに、一方で健康や医療の、もう一方で「F.介助者や社会的資源の状況」の影響を受ける。「D.参加の制限」は、機能障害や活動の制約と関連するとともに、介助者や社会的資源の状況の影響を受ける。さらに、これらA〜Fの障害や障害発生と関連する変数は、年齢などの「G.個人的属性」や地域差などの「H.社会的背景・要因」に規定される面がある。
但し、本報告ではA〜Hの変数すべてを詳細に分析することができないため、障害の3つのレベルのうちでは「D.参加の制限」を中心に捉えることにしたい。そして、「B.機能障害」−「C.活動の制約」−「D.参加の制限」という障害の発生メカニズムを捉えることを基本としながら、これらと特に「F.介助者と社会的資源の状況」との関連を明らかにする。
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