| SSKU 特定非営利活動法人 Japan Spinal Cord Foundation |
| 日本せきずい基金 設立準備会 ニュース No. 1
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1998年9月第一号
【 目次 】
1.準備会の設立に当たって 運営役員一同
2.創刊号発行に当たって 山陰労災病院院長 新宮 彦助
3.「日本せきずい基金」の組織図
4.「日本せきずい基金」に対する「Q&A」
5.最新医学情報 「神経再建外科の進歩」
東京都済生会中央病院整形外科 仲尾 保志
6.1997年度決算報告書
1:「日本せきずい基金」設立にあたって………運営役員一同
1996年9月に「日本せきずい基金」設立準備会が設立されました。今までの様々な活動を通して、やっと、会報の発送の運びとなりました。今回の記念すべき創刊号においては、「日本せきずい基金」設立準備会の紹介に勤めました。
私たち運営役員一同は、「日本せきずい基金」設立準備会の大目標である3億円の資金を集めて、「日本せきずい基金」を設立する事を願っています。設立したあかつきには、せきずい損傷者に本当に役に立つ情報提供などをし、せきずい損傷者とその家族、および医師・看護婦・PT・OTなどの医療関係者のみならず、国民全体の財産と呼びうるようなものへと発展させていきます。2:「創刊号発行に当たって」
山陰労災病院院長 新宮 彦助
(日本パラプレジア医学会脊損予防委員会 委員長)
脊髄損傷の全国疫学調査を行ってみると、発生頻度は欧米とほぼ同程度で、人口百万人あたり年間40人程度であった。1年間に約5,000人の脊髄損傷者が新たに発生していることになる。
脊髄損傷の原因が交通事故、転落転倒、打撲下敷き、スポーツ事故などであり、なかでも交通事故が半数近くを占めているので、社会情勢がよほど安全にならないかぎり、発生頻度が減少することは難しいと考えられる。
医学界では損傷脊髄を少しでも生き返らせようと、薬剤、神経移植など国際的な研究を続けている。しかしまだまだ解決には遠いのが現状です。
脊髄損傷者は互いに励まし合いながら、涙ぐましい努力のリハビリテーションを行い、社会復帰を遂げている。
21世紀に向かって、傷害を持った方々が生き甲斐を持って、健常者と共に皆で幸せに暮らせるように、また脊髄損傷医学が更に進歩するように、社会全体での助け合い、励まし合いが大切であると思う。
「日本せきずい基金」の組織形態
運営委員会総会
運営委員長
運営役員会
事務局 プロジェクト部会
せきずい損傷者とその家族など 協力者・協力団体
関係機関・団体
4:『日本せきずい基金』の活動についてQ&A
Q1.現在、どうのような活動を中心的にしているのですか?
1. 街頭募金を一ヶ月に二日間、東京周辺地区で行っています。
【この募金活動を通じて】
- 「せきずい損傷」の怖さを啓発しています。特に下記の点を社会に理解してもらいたい。交通事故により「頚随」(首の中枢神経の束)がダメージを受けるケースが多く見られること。この部分にダメージを受けることにより人工呼吸器によって生活する人が増える傾向にあること。(注)米国ではクリスト・ファーりーブ(映画スーパーマン)が落馬で首にダメージを負い、人工呼吸器と電動車椅子で生活をしていることは、よく知られた事実です。
*資金集めをしています。
近い将来『日本せきずい基金』が設立され、『日本せきずい基金』としての活動が出来るように皆さんに協力してお願いしています。2. 調査研究の活動
- 泌尿器に関する当事者の生活実態を調査研究。
- 人工呼吸器レベルの当事者に関する調査研究。
3. 情報収集の活動
- せきずい損傷者が自立のため、社会復帰のためなどに役立つビデオの収集と無料貸出。(詳細はホームページか、事務局にお問い合わせください。)
- せきずい損傷者や障害者に関係した本のデータ(ホームページに掲載中)
4. 研究ドクターとの連携(「日本パラプレジア医学会」)5.相談(ピュアサポート)活動中、希望者はご連絡ください。
担当者がお伺いします。
Q2.既存の脊損関連団体との関係は?
『日本せきずい基金』は会員制による団体ではありません。基金を設立するための会であり、ボランティアによる運営委員(当事者と健常者)を中心に構成されています。基金設立までは設立を願っている関連他団体からも応援してもらっています。将来、基金が設立されたときは、基金は全国にある「せきずい」関係団体に情報提供などの応援を行い、互いの団体が協力しあって「せきずい損傷」に関する問題をより有機的に、効率的に解決できるような機関になりたいと願っています。
Q3.『せきずい基金』が設立されたらそこの役割は?
不幸にして「せきずい損傷」になったり、すでに「せきずい損傷」になっている人たちが、どうやって社会で自立できるのかと、暗闇に迷うことがないように、「せきずい損傷者の灯台/ナビゲーター/情報バンク」=『日本せきずい基金』となることが願いです。同時に、脊髄損傷に関連する医学会の研究を本格的に応援したいと願っています。
Q4.どうすれば準備会に参加し活動できるのですか?
『日本せきずい基金』設立準備会は会員制ではありませんので、設立準備会の趣旨に賛同し、かつ何らかの活動に参加することを希望する人であれば、障害者、健常者を問わず参加することができます。役員についても同様で障害者、健常者ともに役員として参加できます。
Q5.具体的にどの様なことをすればよいのですか?
(K大生よりの質問)
知力、体力、資力の中で最も得意とする分野でお手伝い願いたい。具体的には例えば下記のような事項。
- 募金活動のチラシ配布等の手伝い
- パソコンでのデータ入力
- HPの作成やパソボラとしての手伝い
- その他、介助等のボランティア活動
- 資金的な援助、寄付行為
無料貸し出しビデオテープのリスト例(内容を言ってくだされば、当方で探します。ビデオテープの提供も求めています。)
泌尿器の管理 妻屋明/高橋英明氏の生活/向坊弘道の巡礼記/車いすアメリカ留学記/ホーキング博士の講演/生きる勇気/車いす生活/内山幸久氏の生活の工夫/瀬出井弘美のバイスキーと登山仲間/映画(ウオーターダンス)/麩沢孝氏の生活/NHKサイエンスQ/呼吸器使用者のリハビリの撮影/可山優零の生活
5:最新医学情報
神経再建外科の進歩
東京都済生会中央病院整形外科 仲尾 保志
神経は、脳からの信号を四肢に伝達してそれを機能させるほか、手指が感じた触覚や温度、痛みなどを逆に脳に伝える役目も担っています。これが、何らかの傷害で切断されると、信号の伝達経路が絶たれるため、重度の機能障害が生じます。しかしながら、一度傷害された神経も、近年のマイクロサージャリーの技術や神経生理学の進歩によって、再建が可能になりつつあります。手足の末梢神経に限れば、再度その切断された神経端を縫合すれば、かなりの機能回復が可能なまでに臨床医学は進んでいます。
いっぽう、医学の進歩が、未だ解決できない神経損傷も残されています。一つは、長い距離の末梢神経が損傷されて縫合できない場合、もう一つは脊髄損傷や視神経損傷に代表される中枢神経損傷の場合です。私は、その中で前者の末梢神経の再建を目指して、過去10年間研究を行ってきました。最初に行ったのは、人工神経の開発で、縫合できないほど距離が開いてしまった抹消神経の切断端を、シリコンでできたチューブで架橋しました。当然、ただのチューブでは神経がつながるはずがありませんが、私はこのチューブの中にさまざまな神経成長物質を付加することを試みました。
私がこの研究を始めた10年前は、ちょうど細胞接着分子が生理学の分野で注目され始めた頃で(今では、多くの本が出ていますが)、特に神経成長作用を持つとラミニンという細胞接着分子をチューブ内にコーティングすることを考えました。多くの失敗の末、ようやくある程度の欠損長なら、ラミニンを入れた人工神経で架橋して再生神経を誘導することができるようになりました。このとき感じたのは、神経には信じられないほどの再生、成長能力があり、良好な環境を与えれば、再び延びて機能の回復が期待できるということでした。
私は、1992年からカナダのトロント大学に留学しました。そこには、北米でNo1と言われる抹消神経再建外科の権威、Susan E.Mackinnon教授がいたからです。私は、彼とともに、今度は人口神経とは違い、全く新しい再建方法を模索することになります。それは、神経移植による再建でした。私が、日本で作っていた人工神経は、短い神経の欠損は架橋できるのですが、長い欠損を越えての再生神経を誘導すること不可能でした。どうしても神経組織でつなぐことが必要だったのです。Mackinnon教授は、北米で最初に死体から採取した神経で、子供の大腿全長にわたる神経欠損を再建し、機能を回復させたことで知られていました。
私は、このころ、同時に移植免疫学の権威であるHay教授の研究室で、さまざまな移植免疫に関する基礎的実験を行う機会にも恵まれました。やがて私は、Mackinnon教授とともに、米国のWashington大学に移り、新しいモノクローナル抗体を用いた免疫抑制下での同種神経移植に、動物実験で成功しました。これは、従来の心臓移植などで用いられてきた強い副作用を持つ免疫抑制剤を使わない組織移植で、現在は欧米を中心に臨床応用が始まろうとしています。
さて、このように末梢神経再建の分野でも、一般の患者さんが知らないところで、膨大な先端的研究が積み重ねられ、それらはまさに臨床応用されようとしています。では、脊髄損傷などの中枢神経はどうなのでしょうか?今でも、ほとんどの臨床医が、脊髄損傷は、絶対に回復しないと信じているでしょう。脊髄は私の専門とする研究分野から離れますが、実は、この分野においても、さまざまな研究が優れた成果を上げているのです。脊髄は、末梢神経と違って、縫合できても簡単に再生しません。その違いは何処にあるのでしょうか?抹消神経では、軸索という一本の神経単位が、それぞれシュワン細胞という神経の成長に欠かせない細胞に取り囲まれ、さらにその周りが基底膜という管腔構造で覆われています。
この基底膜にも、切れた軸索を成長させるラミニンという物質がたくさん含まれていることが知られています。いっぽう中枢神経では、オリゴデンドロサイトという細胞が複数の軸策を取り囲み、これらはさらにアストロサイトの突起で覆われ、そして複数の軸策が基底膜で囲まれることになります。軸策の再生には、末梢神経のように、たくさんの基底膜の筒が存在し、さらに神経成長物質などを分泌するシュワン細胞が存在していることが必要で、これらの条件が満たされない中枢神経は、環境が不利なのです。
また、人間など哺乳類では再生しないといわれていても、魚や両生類では、中枢神経を損傷しても再生することが知られています。これはアストロサイトが索条に配列して、末梢神経のように再生の手がかりとなるような構造をとっているためと考えられています。
さらに最近の知見では、哺乳動物の中枢神経には、軸索の再生や成長を阻害するような物質が含まれていることも解ってきました。この分子を抗体でブロックすることで、切断された中枢神経を再生させた報告があります。また、切断した中枢神経が再生する魚では、この阻害物質が中枢神経に含まれていないことも明らかにされています。このような知見から、人の中枢神経の再建においても、神経成長阻害物質をブロックしたり、神経が再生しやすい構造を構築することで、再生させることが可能ではないかと考えられるようになりました。
1994年にNatureという科学雑誌に、衝撃的な論文が掲載されました。それは、日本の京都大学の川口三郎博士らのグループによるもので(Nature vol.367,13,167-170,1994)、ラットの切断した脊髄を胎児の末梢神経で架橋し、脊髄の再生に成功したとするものでした。その論文には、脊髄が支配する末梢神経での筋電図と、ラットが再び金網をよじ登る写真も掲載されていました。私は、いくつかの学会でこの川口三郎博士とご一緒する機会があり、また厚生省の研究班でも一緒に仕事をしましたので、この脊髄を再建したラットのビデオを見る機会がありました。そして、手術したラットがするすると金網をよじ登るさまを見て、日本でこのような中枢神経再建に関する先進的な研究が行われていることに驚きました。
私のこれまでの研究は、主に末梢神経の再建に関するもので、その成果が、日本経済新聞の1998年3月28日および4月27日に掲載されました。それをきっかけに、この文章を書く依頼をいただいたのですが、専門外とはいえ、中枢神経の研究の様子についてもお話しました。中枢神経の再建が臨床応用されるには、まだ多くのハードルを越える必要があると思いますが、この文章で、現在、脊髄損傷を受けながらもがんばっておられる方々が、新たな希望の光を感じ取っていただければ幸せです。
6:1997年度決算報告書
「日本せきずい基金」 1998年3月31日(単位:円)
収入の部 繰越金 − 募金・寄付金 ¥1、684、193 助成金 ¥950、000 雑収入 ¥13、050 合計 ¥2、647、243/ / 支出の部 事務費 ¥416、550 活動費 ¥559、840 雑費 ¥13、372 小計 ¥989、481 時期繰越金 ¥1、657、481 合計 ¥2、647、243上記の報告書は、監査の結果適正であることを認めます。
1998年6月30日
会計監査 公認会計士・川鍋直則
妻屋 明
編集後記
これから読者のみなさんと共に考えながら、役に立つ情報提供に努めていきます。読者のみなさんの要望に即した会報にもしていきたいと思います。様々な情報をホームページ上でも公開していますので、ご覧いただき、活用していただければ幸いです。ご意見・ご感想など、事務局までお寄せください。活動に反映させていきます。
☆下記の口座に募金を☆
◆ 郵便局からは...
00140-2-63307 日本せきずい基金
◆ 銀行からは...
みずほ銀行 多摩桜ヶ丘支店 普通口座 No.1702639
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住所を事務局にご連絡頂ければ、各種資料等をお送りいたします。