「キラッと生きてる 障害あるがまま」
| ★書名 「キラッと生きてる 障害あるがまま」 (吉村章ほか著・NHK厚生文化事業団編、集英社、1999年、1300円) ★書評 (中島) これは障害者やその関係者を対象に毎年募集されている「NHK障害福祉賞」の、 最近五年間の入選作の中からすぐれたもの15篇を集めたアンソロジーである。冒頭 に、その審査員をつとめているノンフィクション作家柳田邦男氏の「序」がある。そこで 氏は次のようにエールを送っている。 「可能性ー障害者の生きる歩みの物語に触れるときほど、この言葉のリアリティ (現実感 )を感じることはない」 収録されているのは頸髄損傷の吉村章氏の「僕が愛した人、愛をくれた人」など。 吉村氏は昭和34年、岡山県生まれ、福祉施設の事務職員、第33回の入選者。氏は もともと暴走族で傷害事件を起こし警察の厄介になったりしていた。昭和54年、20歳 のときダンプを運転していて、前夜の夜遊びがたたって居眠りから事故を起こし、頸髄 損傷となる。そこからは他の闘病記と同じように悪戦苦闘がくりひろげられるが、恋人 や友人の 「人の目がなんぼのもんなァ、そんなもんほっとけェ・・・・・・自分は自分でェ・・・・・」 というような乱暴な励ましで、しだいに事実を受け入れてゆく。恋人は親の反対で 去るが、コンピューターの技術を習得して、施設の職員として働くようになり、そこで 知り合った女性と平成9年に結婚する。 まあ、典型的な「お涙ちょうだい」式から「どっこい生きてる」式へと至る手記では あるが、岡山弁のぶっきらぼうな語感が何よりも利いている。闘病記の多くは標準語 で書かれるからともすれば均一になりがちだが、このように個々の更正場面では それぞれの地域での方言が縦横に威力を発揮していることであろう。それでこそ生き ている実感を感じられるというものだ。 ところで岡山県の別の頸髄損傷者から聞いたところによると、 岡山弁は乱暴でわかりづらいから、岡山県人はコンプレックスを持っている人も 少なくない。それをあえて本の中で使うというのは挑戦的な意味合いも あるのかなと思う、という意見もあった。 その他の収録作品は以下の通りである。 「筋ジス母さんのドキ・メロ日記」(嶋崎とし子、筋ジストロフィー) 「光はイングとともに」(池田純、視覚障害) 「障害に学び、明日に向かって生きる」(高梨憲司、視覚障害) 「心の眼をたよりに」(石丸幸男、視覚障害) 「おはしとフォーク」(玉城敦子、夫が頸髄損傷) 「あなたと一緒に歌いたい」(山田光子、息子がダウン症) 「私たち夫婦の普通の家庭」(浦上誠、娘が筋ジストロフィー) 「整形外科病棟にて」(平島智子、兄が脳性小児麻痺) 「子育て記」(船岡英子、娘が脳性小児麻痺、息子が水頭症) 「言葉を求めて」(原田末子、息子が聴覚障害) 「お星がひかる日」(後藤節子、生徒が自閉症) 「夢を見つめて」(村田春江、生徒がウエルドニッヒホフマン病) 「けい子の笑顔」(今村鎮夫、入所者が視覚障害) 「M君とともに生きる日々」(小川恒雄、入所者が知的障害) さまざまな障害者たちのかけがえのない各論が語られている。障害者本人の書 いたものと、親や教師や施設職員の書いたものとは、微妙に温度差があるのも興味 深い。それからタイトルがあまりにもキレイな常套句すぎてこそばゆい。もう少し工夫 がほしい。 |