「アジアの障害者」

★書名 「アジアの障害者」   (中西由起子著、現代書館、1996年、2369円)

★書評 (中島)

(筆者紹介)

 中西由起子氏は聖心女子大英文科卒、障害者インターナショナル(DPI)アジア
太平洋ブロック事務所および、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)障害
者問題専門官。1990年からアジア・ディスアビリティー・インスティテュート
(ADI)代表をつとめている。国内外での知名度は高い。CBR(communi
tyーbased rehabilitation)やPHC(primary he alth care)の推進に力を尽くす。
著書に「地域に根ざしたリハビリテーション」「障害ゆえに差別される人びと」
「アジアの開発途上国の障害者」などがある。


 欧米の障害者施策や運動を研究・紹介する本が多い中で、足もとのアジアに目を向
けて、地道なレポートをしたものである。その姿勢はこれから貴重になってくるであろう。 
 
 アジアには世界の人口の6割、30億人が住んでいる。そのうちの一割、3億人が
障害者であるという。アジアにかぎらずだいたいどこの国でもほぼ一割前後が障害者
であるようだ。ただしネパール、バングラデシュなどLDC(後発開発途上国)が多いため、
正確な統計がなく資料も手に入りにくいという。

 障害の中でも特徴的なのは、ハンセン病がアジアに一番多く、1991年で551万人と
いう。フィリピンのクリオン療養所などは有名である。またエイズは1994年で
推定25万人という。タイやフィリピンなどの児童売春による拡大が深刻である。

 最下層の脊髄損傷者たちには車いすもゆき渡っていないため、最近になって日本か
らもグリーンライフ研究所の向坊弘道氏や「飛璃夢」の金子寿氏などによって寄贈活
動や、車いす製造技術の伝達などが行われるようになってきた。

 おもな国の中では、インドは人口9億人。そのうちヒンズー教徒が80%を占める。
障害者数はおよそ1200万人で、人口の1.8%。そのうち身体障害者は543万人。
農村部に76.7%が集中している。また男性が57%である。知的障害者は人口の
2〜2.5%(1981年調べ)という。
 とりわけ、ヒンズー教のカルマ(karma)という観念により、障害は前世の報いであり、
神の罰やたたりであると考えられている。また障害がうつるともいわれている。
そのため障害者への理解は非常に遅れていて、彼らは悲惨な生活を強いられて
いるという。
 とりわけ、ボンベイではギャングの派遣している物乞いの子は「作られた障害者」
だという噂もある。そうやって稼ぎの上前をはねられているのだとしたら、豊かな日本の
子どもたちに比べて絶句してしまう。
 
 韓国は人口4460万人。仏教・儒教・キリスト教が混在している。障害者は95万
6044人。1992年から「300人以上雇用の事業主は従業員の2%以上の障害者を
雇用すべき」という法律ができている。日本の「1.6%」より進んでいる。重度障害者には
毎月二万ウォン「2700円」が生活手当として給付される。とはいえ、母子保健法で
障害者の結婚は不妊手術が義務づけられていた時代もあるという。

 アジア最大の中国は人口12億人のうち、4.9%の5164万人が障害者である。
ただし小人症とハンセン病を除く。「リハビリテーション」という考え方は「康復」と訳され、
まだ始まったばかりという。5月に「障害者援助の日」がもうけられている。
ここでも「母子保健法」で障害者の結婚は許可制でしかも不妊手術が義務づけられて
いた時代があるという。

 その他、さまざまな国の内情と、障害者たちの置かれた厳しい状況が読み取れる。
日本の障害者としても何ができるのか問われてくるだろう。





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