ALSヘルスケア供給者マニュアル  カナダALS協会編
( 原題 Resources for ALS Healthcare Providers)


★書名 「ALSヘルスケア供給者マニュアル  カナダALS協会編」
      ( 原題 Resources for ALS Healthcare Providers)
(稲勝理恵・西堀好恵・松井和子訳、浜松医科大学医学部臨床看護学科発行、
 発行人 松井和子原著、1994年4月発行、訳書 2000年3月発行)

★書評 (中島)

(内容)

  ALS( 筋萎縮性側索硬化症 )という障害の概要から、ヘルスケア供給者の役割
と課題について、呼吸、人工呼吸、栄養、嚥下、誤嚥、窒息、便秘、拘縮、痙攣、
脱水、浮腫、不眠、流涎、運動、筋力低下、神経圧迫、痰、痙性、補助具、情緒不
安定、性的関心など、実に細かい項目にわたり解説をしてある。そしてそれに対
する家族や、医師、看護婦や、栄養士や、作業(理学)療法士や、呼吸(言語 )療
法士や、ソーシャルワーカーや、牧師などの役割について、これまた細かい項目
にわたり解説してある。

  四肢マヒ者へのケアでは最先端をいくカナダのバンクーバー地区での取り組み
に詳しいアイリーン 氏から寄贈された本書を、浜松医大の松井氏らが翻訳したも
のである。松井氏によると「本書が追究する課題は単にALS患者のみでなく、類
似の障害を持つ人々やケア供給者にとっても共通するのではないか」「看護学の
領域ではなお未浸透な状況にある」という。


  タイトルの「ヘルスケア供給者」というのは、ALS患者に対して治療や看護を行
う関係者たちの総称だろうかと初めは受け取られるが、原文では「people living
with ALS」となっていて、それを松井氏たちは「ALSとともに生活する人々」と訳し
ている。つまり医師や看護婦や療法士の側は 「ヘルスケア提供者」と訳して区別
されており、「供給者」とは患者の側を指しているということがわかる。ケアやリハ
ビリの主導者はケア提供者ではなく障害当事者自身にあるという、アイリーン氏た
ちの主張が強く打ち出されている。日本語の呼び方がちょっとまぎらわしい感じは
するが、これは今や障害者運動の主流となりつつある。

  ALS患者といえば、イギリスの理論物理学者ホーキング博士が有名である。頸
髄損傷とは違うが、 その障害やケアの程度は非常に似通っているので、あえてこ
の欄に紹介することにした。ただ、各項目は実に細かく分かれているのだが、具
体的な記述に乏しいきらいがある。いずれにしても関係者には貴重な手引き書と
なり資料となるだろう。医学用語の統一などむずかしい翻訳に当たられた松井氏
たちには敬服のほかない。


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