「恋する車イス」

★ 書名
「恋する車イス」

木島英登著、
徳間書店、
2005年、1500円
★ (書評) 中島虎彦

 副題として、「Sex in wheel chair 未経験のまま下半身不随になった僕の物語」とある。

 キージー、こと木島氏は1973年、大阪府生まれ。府立池田高校3年のとき、ラグビー部の練習中に下敷きとなり、胸椎11番の脱臼・骨折して脊髄損傷となる。以後、車いすの生活。その後、神戸大学卒業。学生時代からアメリカにホームステイし英語を身につけ、以後世界中を旅するようになる。現在までに60ケ国以上。卒業後は広告会社「電通」に入社。七年間働いたあと、退社して自ら障害者問題の研究所を旗揚げしている。
 
 この本では過去から現在までの女性遍歴を赤裸々に語っている。車イスで復学した高校時代から、神戸大学時代、米国研修時代、電通時代、退社後まで、さまざまなシチュエーションでのノウハウを紹介している。
 たとえば病院、ラブホテル、カーセックス、自宅、ソープランド、テレクラ、ホームステイ先、フィピンパブ、同性愛、性具、ホームページなどなど、その探究心の旺盛さには驚き呆れるばかりだ。まるで「車イスの性の狩人」という感じである(笑)。本文から、ただただ口あんぐりとなる引用をどうぞ。

 「『どうして頑張れたんですか?』とよく聞かれる。『女性にモテたかったから』と答えている。(中略)訪れた国よりアタックした女性の数のほうがはるかに多い」

 「受傷してから、宗教の類の誘いは多い。(中略)嫌だと感じながらもおとなしく、我慢をして、されるままにしていた。(中略)ありがとう。でも僕はそくまでやわじゃないんですよ。(中略)いろいろな人が、車イスの人は不幸だと決めつけ、これしろ、あれ買え、と言ってくる。冗談ではない。僕は自分で決めたいんだ」

 「大学生のとき、(中略)Hがしたい。とにかく童貞を捨てたかった。(中略)ちょっとでも関わる人、ちょっとでもかわいいと思う人、ちょっとでも色気があってヤラせてくれそうに見える人、すべてにアタックした。下手な鉄砲だが、数を打つ戦法を取った。
 フラれたら、固執して粘ることより、すぐ次の女性に的を切り替える。アタックもするのも早ければ諦めるのも早かった。あまりにも想いが強くなりすぎるとフラれることが辛くなるので、早くからアタックした。いずれにせよ節操がないこと、このうえない。
 僕自身に魅力がないのか、真剣さが足りないのか、気持ちの余裕のなさがガッツいた態度として出ていたのか、告白が成功することはなかった」

 「エレベーターで(中略)つまり関心がないのだ。車イスの僕のことを気にする人はいない。世の中そんなものである。」

 「どうやって僕はセックスするのか? 興味のある人も多いだろう。(中略)痙性や、腹筋などを総動員して勃起させることは書いた。(中略)脈拍をわざと上げるのも技術の一つだ。(中略)ハアハアとわざと息を荒げれば脈拍は自動的に上昇する。(中略)脈拍を挙げるということで脳が性的に感じていると勘ちがいを起こし、よりエクスタシーを得やすくなる。(中略)挿入するのも女性に上になって入れてもらわなければならないし、油断するとすぐ萎えてしまうので素早く包みこんでもらわないといけない。途中で止めず、一気に奥まで、そこできっちり固定をして締めてもらって初めて成功する」

 「ソープランド。(中略)やはり、車イスは厄介者として見られるのだ。呼び込みも声をかけてこないし、店に入って顔色を変える女性もいる。はっきり入店拒否されることもあれば、障害者には理解があるのよ的な同情丸出しの偽善臭に辟易することもある。(中略)お金を払ってまで、こちらが気を使わねばならないなんてコリゴリだ。結局、風俗は僕の肌に合わなかったということだろう」

 「事故による保証金でお金持ちになった中途障害者がいる。仕事をせず、障害者年金や労災年金で、暮らしていくのを見たりした。それも立派な生きていく方法だが、大金をつかんで、労働意欲をなくすより、自分で稼げるようになったほうがいい。
 (中略)とはいえ裏事情はある。車イスになる半年前に母方のお爺ちゃんが亡くなった。母には(中略)遺産として1300万円の現金が入っていた。(中略)だから当面の現金に困ることがなかった。これは非常に重要なことである。僕の看病のため、母もパートをやめることができたのだから。(中略)お金があっても幸せになるとはかぎらないが、不幸を防ぐこときできる。お爺ちゃんには感謝しなくては」

 「世界50ケ国以上も金持ちだから旅行ができたと誤解されることが多い。また、自分が夢を実現できない理由、海外外旅行ができない理由を、お金がないからとする人が多い」

 「車イスで野宿だってするし、留学生の実家におじゃまさせてもらうなど、基本的には節約型の旅行をしていることは言うまでもない」

 「海外旅行は自分自身を成長させてくれた。就職もそのおかげだ。何より世界中の人と知り合えた。自分への投資と思えば非常に安いものであると考えている。(中略)後に「空飛ぶ車イス」の印税や関連収入(やアルバイト)で(学生時代)39ケ国の旅行代は清算した」
 
 「レズビアンの(中略)彼女から教わったことも多かった。セックスの相手だけを満足させるだけでなく、自分も気持ちよくなっていい。双方が気持ちよくなることがまず一番大切であること。そして、玩具を使ってもいいこと。気持ちいいなら何でもやってみていいこと。できないことはマイナスじゃない。違うやり方を考えればいいだけなのだ」

 「そこから導き出した結論は、『脳みそで感じるセックス』」

 「精神的に感じるにはどうしたらいいのか? (中略)脳みそで感じるとは、具体的にどういうことなのか? 人間には帰属願望がある。理解されたい。守られたい。役割をもらいたい。相手の欲望を聞き出し、まず、それを叶えてあげること。あるいは自分の欲望をさらけだし、叶えてもらうこと。相手のことを理解していると伝えることで精神的な充足感を得ることができる。心と心で会話をすることが、肉体への快楽にも還ってくる。僕は冗談めかしてこう言う。 『股を開かせる前に、心を開かせよ!』」

 「テレクラを通したネットワークで女社長は生きていた。女社長がセックスに関して面白いことを言っていた。『毎日セックスしているほうが感度がよくなるの。やらなくなると感度が鈍くなるの。セックスは減るものじゃないわ。やればやるほど良くなるの』」

 「(テレクラで知り合った)女王様は100万円の慰謝料を払えと言ってきた。『そんなお金ありません』と応対すると、『身障だからって遊ぶんじゃねえ。自分の尻がぬぐえないなら、親に頼みな、わかったか!』

 「風俗は好きではない。お金を払ってまでしたいとは思わない。(中略)もし仮に(フィリピンパブの)ミミがお金が必要で、貢ぐ必要性があるのなら、店を通さずに彼女に直接お金を落としたい。そう思うからこそ、しきりに店外デートに誘った。(中略)ところが、店側や店に雇われている女の子たちは、そんなことは考えない」

 「ホームページを開いても、なぜか障害者からのアクセスはあまり多くない」

 「障害のある人も、高齢者も、誰もがボランティアをすることができるはず。誰もが困ったときは助けられるべきなのに、ボランティアする側とされる側に分かれているのが問題だ」

 「誰にでも、できないことがあり、逆に何かできることがあるはず。ボランティアも提供者側と享受者側、両方を経験すれば、どちらの気持ちも分かり、よりスムーズな関係が築ける」

 「会社を一年間休職して、米国カリフォルニア大学バークレイ校へ研修生として留学した。(中略)大学で勉強すれば、職業選択の幅も広がり、障害を持つ人がもっと多様に社会参加できる可能性が広がると思うのだが、大学側は事例がないばかりに受け入れを断ることが多発している。障害を持つ当事者自身も、環境の不整備や卒業後の就職などに不安を抱いており、進学率は進んでいない。(中略)情報がないばかりに招く不幸を防ぐため、研修テーマを『障害を持つ学生の受け入れ態勢とその組織 米国最新事例』とした。」
 
 「研修も大切だが、いつものようら女性にも全力投球を試みてみた。(中略)いろいろな人にメールを出した。アジア系の人にはやはり親近感があり、ブロンド美女には臆病になった。ハーフや、黒人、ヒスパニック、家の近くの人にも出した」

 「17歳で車イスになり社会から冷たくされ、今まで傷ついてきた。周りの態度が変わったことへの絶望感による悲しさ(中略)どう踏み込むべきか悩んだ。No pain.No gain. 痛みなくして得るものなし」


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