★ 脊髄損傷者の性」(日本せきずい基金ニュース別冊3 )

★書名 「脊髄損傷者の性」(日本せきずい基金ニュース別冊3 )
      障害者団体定期刊行物協会発行
      日本せきずい基金事務局編集、2000年4月、500円

★書評 (中島)

(内容) 

 1996年6月に大宮市で開催された「脊髄損傷医療講演会」の報告書である。
国立身体障害者リハビリテーションセンター泌尿器科医の牛山武久氏や、中部労災病院泌尿器科医の小谷俊一氏らが、脊髄損傷者の性機能について語っている。
  まず勃起不全の治療法として、陰圧式勃起補助具(リング)、自己注射(塩酸パパベリンなど)、尿道注入剤、プロステーシス埋め込み手術、シリコン埋め込み手術のみ、などの功罪を図解入りで紹介している。また「インポテンス」の差別感を薄めるため「エレクタイル・ディスファンクション」と呼び替える提案などがなされている。

 次に「射精」の補助として、ネオスチグミンをくも膜下に注入する方法、バイブレーターで刺激する方法、肛門への電気刺激、副睾丸切開による精子取り出し、などが紹介してある。これも一長一短あるようだ。また脊髄損傷よりも頸髄損傷のほうが成功率が高いなど、意外な統計も添えられている。

 次に挙児(子どもをもうけること)の実例として、人工授精、体外受精、精子凍結などについて紹介してある。それによって過去どれくらいの成功率がみられるか、表やグラフを使って説明してあるが、まだ非常に少ないのが実情だ。しかし男性セキソンより女性セキソンの母胎のほうが強靭であることを示している。

 その他、実際にバイアグラを使用したケイソン者からの報告、それを入手する方法、使用上の注意、医療機関の問題点、精子バンク、バイアグラでは射精までには至れないこと、などについても説明されている。

 詳しい問い合わせは「日本せきずい基金」まで。

 ひと昔前までこういう話題はなかなか大っぴらにはできなかった。しかし今では医療講演会として白日の下で行われるようになったのだから、やはり時代は進展したのだろう。
 朝日新聞(西部本社版3月26日頃 )の記事によると、福岡と東京に身障者を対象にした風俗店(いわゆるデリバリー・ヘルス)がオープンしたという紹介もあった。予想通り賛否両論がわきおこっていたが、そういう有形・無形のタブーや抑圧を乗り越えて、とうとう(ようやく)ここまできたかという感慨がひとしお湧いてくる。そこには数知れない先輩たちの試行錯誤が積み重ねられてきたことだろう。

 既婚で脊髄損傷や頸髄損傷になった者の場合、こういう情報はそれこそ喉から手が出るくらい欲しいものだろう。かといってどこに相談すればいいものやら、途方に暮れていた人たちもあったことだろう。私が「脊損ニュース」誌に「障害者の文学」や「BOOK ENDLESS」を連載しているときも、比較的問い合わせが多かったのは性に関する話題のときであった。
 この問題がいかに切実なものであるかわかる。それを「日本せきずい基金」がアカデミックな資料として提供できるようになったことは喜ばしい。

 別冊1.2の「損傷を受けた脊髄・頸髄神経の再生の研究と支援」というメインテーマとともに、この性に関する情報ももう一つの主要なテーマとなってゆくことだろう。図解が多いのもわかりやすいが、ここでもやはり男性の情報が多く、女性のそれはおざなりの感があるのは否めない。


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