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★ 書名
幸福亡命
―車いすで伴侶さがし―
比佐岡 英樹 著、
三輪書店、2002年、1700円
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★書評(勝矢光信)
「幸福亡命」とは、山のあなたの空遠く...ではないけれど、17歳で障害者になっ
てから、八万円の福祉年金で豊かな暮らしができる「幸福」を求めて、日本を脱出し、
39歳でフィリピンにてステキなフィアンセと結婚するまでの、赤裸々な物語である。
障害者に夢と希望を与えてくれる本が、ついに出版された。こんなに繊細でいて、
それなのにタフな人生を送っている障害者は、なかなかいない。
障害者仲間では、「ヘキくん」こと「比佐岡英樹(ペンネーム)」はアイドル的存在で
ある。自力でフィリピンに行き、在住し、「結婚」した彼の波乱万丈の人生を、憧れと
羨望のまなこで見ている障害者は、彼にメールで質問をあびせかけた。その質問に
1つ1つていねいに答える姿に、ヘキくんの誠実な人柄を感じていた。
この「幸福亡命―車いすで伴侶さがし」は、皆からの質問に対する「回答書」である。
彼の結婚までに至る人生をもっともっと知りたがっていた障害者は、彼の出版を今か
今かと首を長くして待っていた。「結婚願望」の強かった彼は、実践し、「事業の失敗
と、数えきれない失恋」の末、遂に目的達成! 興味の尽きない内容であった。
簡潔な文章で、ありのままの告白は、サスペンス小説よりも息を呑む緊張感に襲われ
る。読み終わるまで、ハラハラドキドキ。バリアフリーや日本の福祉をうんぬんする障
害者本が多い中で、独自の道を切り開いた、異彩を放つ「パワフル・ノンフィクション」
である。とにかくおもしろい!
「結婚願望」や「性への興味」のある「普通の障害者」には、新たな必読書が出版さ
れたという印象が強い。C5受傷の彼は、自分の障害については、うとくて、福祉制度
についても知らないまま、家族に頼って生活していた。多くの障害者と同じ道をたどっ
ていた。ただ、何にでも挑戦し、失敗しても「バハラ・ナ」(明日は明日の風が吹く)、
くよくよしないで、次の道を探しながら生きてきた。これだけ重度で、熱を出し易い体
調でありながら、ビル管理、カラオケ店経営、コンピュータープログラマーをやり、ぼう
だいな借金を背負い込んでも、生きていく情熱を失わなかった。
あっけらかんとして、何とかしてしまう「障害力」を感じた。芯が強いのであった。
あまりの激しさに、読み手である私のほうが、キリキリと胃が痛んだ。これは、赤裸々
な「幸せ探求記」である。彼は
「障害者にだって気の多い人間がいてもおかしくないではないか。波風を立てずに
おとなしくしているだけでは、面白い人生なんて味わえない」
と言う。誠実な妻アレリにめぐり合うまで、本当に失敗の連続であった。しかし、
彼はあきらめなかった。障害者に一番大切なのは、あきらめない事、目標に向かって
前進する事である。彼がアイドル的なのは、このどこまでも女性を追い続ける「情熱」
と「やさしさ」であると思う。私は、フィリピン・ルセナの彼の家を訪問し、
会った瞬間に、「かっこいい!」と叫んだほどだ。感性が鋭く、しかも、頭が良い!
やさしく語りかける口調に、障害者である前に、りっぱな社会人だという印象が強か
った。
国際結婚に必要な手続き、フィリピンの習慣などもていねいに書かれてある。
これから、このような国際結婚、外国での生活を望む障害者は増加するであろう。
日本の福祉年金で、フィリピンでは十分生活していける。フィリピン女性は情熱的な
スペインの血が混じり、美人が多い。熱いカトリック信仰があるから、結婚相手にとこ
とん尽くす。離婚も堕胎も許されないから、純粋である。竜宮城に行った気分になる。
全ての人は幸福になる権利がある。障害があっても幸福を得る「貪欲さ」を失っては
ならない。そんな事を彼から教えてもらった。この書は多くの障害者に勇気と希望をあ
たえるであろう。 |
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