「身障者・お笑い芸人という生き方」

★ 書名

「身障者・お笑い芸人という生き方」

ホーキング 青山 著、

(えい)出版、

2002年、1400円

★ 筆者紹介
 
 ホーキング青山氏は1973年、東京都大田区生まれ。本名世多加。先天性多発性
関節拘縮症のため生まれつき手足が小さく車いすの生活。養護学校卒後、進路に
悩んでいるころ深夜放送「オールナイトニッポン」でビートたけしのDJから笑いに目
覚める。

 1994年に若手芸人コンテスト「すっとこどっこい」に出て、日本初の身障者お笑い
芸人『ホーキング青山』としてデビューする。性や排泄やボランティア批判などブラ
ックな障害者ネタで全国を講演したりライブ活動したりしている。乙武洋匡氏の
「五体不満足」ブームのとき、多忙な乙武氏の代役として出番が回ってくる。
2002年にはTBS「ここがヘンだよ日本人」などのテレビ番組にも出演。

 ビートたけしと立川談志と天龍を師事し、落語とプロレスと風俗遊びにも通う。無
年金だが一人暮らしをし経済的にも自活している。著書に「笑え!五体不満足」星雲
社、「七転八転(ななころびやころび)」幻冬社、「UNIVERSAL SEX」海拓社、など。


★ 書評(中島)

 青山氏はせきずい関係の障害者というわけではないが、頸髄損傷をはじめ脳性
マヒやポリオなどの四肢マヒ者にとっても他人事とは思えない体験や提言をしてい
るので、あえてここで取り上げることにした。

 養護学校批判や乙武洋匡批判やボランティア批判、あるいはミゼット(小人)プロ
レス擁護やたけし軍団との付き合い、障害者向けのデリバリーヘルスの案内など、
ことのほか刺激に満ちている。たとえば道で若い女性から「何かお手伝いしましょ
うか」と声をかけられ、

 「ここ10日ぐらい欲求不満気味でたまってるんだよね。だからちょっと口でヌイてく
れない?」

 などと平気で答えたりする(笑い)。女性は顔を真っ赤にして逃げていったという。
そりゃあそうだろう。この場合は相手がいかにもボランティア然として押し付けがま
しい態度だったからからかっているのだが、ことほどさように偽善の匂いに対して
は容赦ない。

 いわゆる保守的な福祉関係者からは「寝た子を起こすようなことをするな」とクレ
ームのつきそうな本であるが、決して不快になるばかりではない。

 ただ、氏や脳性マヒ者など性的な機能を残している障害者たちの性の処理法と、
そうでない障害者たちとは自ずから意識もくいちがってくるはずである。青山氏も
そこらへんの違いにはもう少し配慮が必要であろう。後者についての暴露本は残
念ながらまだまだ現れてきそうにない。

 さて、氏は身障者お笑いのパイオニアであるが、パイオニアにはいつの世にも
逆風がつきものである。たとえば「ここがヘンだよ日本人」への出演後、

 「ホーキング青山さんが身障ネタ以外で早く勝負できるようになることを応援して
います」
 
 というメールをくれた人がいるという。それに対して青山氏は

「それじゃ、今までオレの芸を見て笑ってくれていたのは、義務と演技、ってことか!?」

 と憮然としている。しかしこれは障害者で表現活動をする者にとってかなり本質的
で致命的な問題である。

 かくいう私もある先輩の女性同人雑誌作家から

 「『障害者の文学』って一体なんですか? 中島さんには障害からはなれた小説を
書いてもらいたい。それができる人だと信じています」

 という批評を何度かいただいたことがあるので、つい苦笑してしまう。それについ
ての日誌を私のホームページから転載させてもらおう。
 
 「いやあ、またかあ、まいったなあ。これだけ長いこと追求して本も出しているとい
うのに、まだわかってもらえないとはどういうことなんだろう?

 ホームページの「はじめに」を読んでもらえばわかっていただけると思うのだが、
彼女はインターネットをやっていないしなあ。私の「障害者の文学」(明石書店)もた
ぶんちゃんとは読んでくださっていないのだろう。

 念のために言っておくが、私は障害と離れた小説も書いている。昭和55年頃、佐
賀県文学賞の三席になった「あをみどろ」(ただし一条すみをというペンネームなの
で、ご存知ない方も多いだろう。彼女もおそらく知るまいと思う)、その他「ペン人」発
表の「へのもへ日誌」シリーズの中の数篇など。

 しかしそこまで目を配ってくれる人はなかなかいない。教えてあげればいいのだ
けれど、なんとなくこちらも意固地になり向こうが気づくまで放っている次第である。

 こちらは「はじめに」にも書いたように障害者ものという意識はもうほとんどなくて、
現実社会の中のほんのありのままの一コマ、という感じでそこから「文学」や「人間」
の普遍的な真実に迫りたい、と思っているのだが、それが伝わらないとすれば、私
の表現力の未熟さもあるのだろう。
 
 しかしそれだけとも思えない。察するところ彼女は「障害者もの」が大嫌いなのだ
ろう。マヒやら縟瘡やら粗相やら介護やらヘルパーやら片恋やら陰気臭くてたまら
ない、もっと普通(一人前)の人間の愛や苦悩など人生の大問題に男なら正面から
取り組んでみろ、とでもいうところなのだろう。

 その気持ちがわからないではない。なにしろ私の好きな井上陽水まで「悲しい人
には会いたくもない」(青空ひとりきり)などと歌っているくらいである(笑い)。彼女の
求めにも相応の理はあろう。

 しかしながらである。私からも老婆心をひとこと。彼女はどうも障害や老いから
目をそらしているのではないか。障害や老いが誰にも訪れうるありふれた現実で
ある、ということから言えば、それはあまりに偏狭な態度ではないか。障害や老い
だってまんざらではないのだから、そんなに蛇蠍のごとく恐れる必要はありません
よ(笑い)。

 それにねSさん。障害から離れた小説を書こうと思えば、ある意味でとても簡単
なことなんですよ。モデルのもう一つの人生を生きるのも楽しいことでしょう。いつ
でも書けるけれど、その機が熟していないとでも申しましょうか。まあ、それは先の
楽しみに取っておきますよ。それに私がSさんのような小説書いたってしょうがない。
それではリアリティーを感じられないんだから。私はやっぱり自分にとって一番しん
どいところへ<BR>立ち向かっていかずにはおれないでしょう。

 いずれにしても、障害者の表現者にとって厳しい批判をしてくれる人をもっている
ということは、一つの財産であるともいえよう」

 というものである。青山氏の何らかのご参考になれば幸いである。





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