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4.調査の概要と結果

2 調査対象者の脊髄損傷と麻痺の状況

  (1) 損傷部位
 回答者にそれぞれの損傷部位を脊椎ベースと脊髄ベースで記入してもらった。脊髄ベースの回答にはNA(無回答)が多く、かつその後の麻痺に関する設問への回答と合致しないケースが多々見られた。これは、脊髄ベースでの正確な理解がなされていないためである。多くの場合、医師から説明を受ける時、MRIやレントゲン写真で明白に判る脊椎(骨)ベースで説明を受けるためと思われる。また外傷性の場合、主として損傷した脊椎の説明を受けるためと思われる。したがって、集計は脊椎ベース、「頸椎」「胸椎」「腰椎」「その他」「NA(無回答)」の項目で行った。
 「頸椎」が470名(28.3%)、「胸椎」635名(38.3%)、「腰椎」351名(21.2%)、「その他」48名(2.9%)、「NA」286 名(17.2%)である(表2)。
 これには、複数の椎骨が損傷した場合の複数回答が含まれている。「その他」には、「仙椎」「尾椎」「骨傷なし」等の場合が含まれるが、「NA」には、これらに該当するケースが多く含まれると思われる。なお「NA」の比率が高いのは、回答者に高齢が多いので診断を忘失しているか、かつては医師があまり詳しい説明をしなかった事実を物語るものであろう。「事例調査」の確認作業において、「下肢全廃と言われたのみ」と言った説明がかなりあったこともそれを示唆する。しかし、「パイロット調査」「事例調査」から判断して、「頸椎」「胸椎」「腰椎」という回答に関しては当事者にほとんど誤解はないと判断できる。これのみでは、正確な麻痺レベルは確定できないが、おおよその脊髄の損傷・麻痺部位は判断できる。胸椎・腰椎損傷合計59.5%という数字は、厚労省統計の対麻痺58%とあまりかけ離れていない。


  (2) 外傷性脊椎損傷のタイプ
 外傷による脊髄損傷者(1414名)の脊椎が受けた損傷や衝撃のタイプの割合は以下の通りである。
 「脱臼」56名(4.0%)、「脱臼骨折」650名(46.0%)、「骨折」392名(27.7%)、「骨傷なし」148名(10.5%)、「その他」56名(4.0%)、「NA」112名(7.9%)である。「脱臼骨折」が圧倒的に多い。「事例調査」から判断して、「その他」には、医師から「圧迫骨折」、「挫滅骨折」、「破裂骨折」等と説明された骨折のタイプも含まれると思われる。また、「NA」は忘失かきちんとした説明を受けなかったケースが多い。


  (3) 非外傷性脊髄損傷の原因となった疾患や要因
 非外傷による脊髄損傷者(161名)は、「疾患・先天性奇形等」と「その他」の回答があるが、「その他」には、他の病気の治療の合併症として脊損になった者(放射線障害、動脈解離の大手術に伴う脊髄虚血など)のほかに「原因不明の脊髄症」と診断された者が含まれる。「疾患・先天性奇形」(107例)の内訳は、脊髄腫瘍が32例(29.9%)、脊髄動静脈奇形22例(20.6%)、脊髄梗塞14例(13.1%)で大半を占める。脊椎の異常・疾患(10例)、脊髄炎(7例)、脊髄空洞症(6例)のほかに「その他」が27例と多い。
 これに関する回答者の付記から、内容は、後縦靱帯骨化症等による脊柱管狭窄症、二分脊椎、神経鞘腫、硬膜外血腫、癌の転移など多岐にわたる。今回調査で、少ないとは言え、非外傷について161というまとまったデータが得られたのは意義があると言えよう。


  (4) 麻痺のタイプ
 上記の外傷や非外傷によって脊損となった回答者の麻痺の状況をみた。
近年では、ASIAやフランケルなどの評価尺度に基づいて麻痺のレベルの説明を受けることも多くなったが、かつては、医師によって診断基準はまちまちであった。また、損傷時からの経過時間によって麻痺のレベルは変化することもあり、いつ診断を受けたのかによっても左右される。
 そのような前提のもとに医師の診断による麻痺のタイプを記入してもらったが、「完全麻痺」が1025(61.8%)、「不全麻痺」が485(29.2%)、「不明」95(5.7%)、「NA」54(3.3%)であった。「不明」には忘失か医師から説明がなかった者、「NA」にはほとんど麻痺のない者が含まれる。
 ASIA、フランケルいずれの基準においても、完全麻痺は、損傷部位以下(麻痺部分)において通常の感覚を認めないが、今回調査における「完全麻痺」者の中には、117例において麻痺部分に通常の痛覚、温冷覚、触覚のいずれかが残っていた。したがって、「完全麻痺」者のうち約1割は「不全麻痺」者である可能性がある。一方、不全麻痺者にも、完全麻痺者が含まれていると推測される。今回調査の回答者の特色として、完全麻痺が6割近く占めることには変わりはないであろう。
 麻痺の状況を残存運動能力と通常の知覚が残っている部位について集計した場合、以下のようになる(表3,4およびグラフ6,7)。
 基準は、上位頸髄、中位頸髄、下位頸髄、上位胸髄、中位胸髄、下位胸髄〜腰髄1,2位の損傷を念頭に、「骨傷なし」や「不全麻痺」によるバリエーションを考慮した。
  以上のような運動麻痺と知覚麻痺の概要は、本調査への協力者の損傷部位が、胸・腰椎損傷で6割を占めていることを反映している。全国労災病院での「リハ治療上支障を来たした麻痺域の痛み」の調査における、頸髄損傷66%、胸・腰・仙髄損傷33%、退院時四肢麻痺67%、対麻痺33%、完全麻痺38%、不全麻痺62%に比較して対照的なサンプル構成である(『脊髄損傷のOUTCOME』医歯薬出版、2001)。

【グラフ6】 残存運動能力の状況 (N=1,659、複数回答)


【グラフ7】 通常の知覚があると感じる身体部位 (N=1,659)



表3 残存運動能力の状況
           (N=1,659、複数回答)
歩行できる………………………………
自力で立位ができる ……………………
自力で車椅子に移乗できる ……………
自力手動で車椅子を操車………………
挙手できる………………………………
ものを握ることができる…………………
自力で体位交換ができる ………………
自力で体幹を保持できる ………………
四肢麻痺で全面介助が必要……………
人工呼吸器が必要………………………
装具利用で自筆、パソコン操作可能……
NA ………………………………………
117 (7.1%)
154 (9.3%)
1178 (71.0%)
1288 (77.6%)
1000 (60.3%)
1138 (68.6%)
1050 (63.3%)
486 (29.3%)
192 (11.6%)
14 (0.8%)
189 (11.4%)
45 (2.7%)


表4 通常の知覚があると感じる身体部位
           (N=1,659、複数回答)
首から上 ………………………………
肩、鎖骨周辺から上  …………………
乳首周辺から上、両上肢………………
みぞおち辺りから上……………………
ヘソ下辺りから上………………………
ひざ辺りから上…………………………
全身 ……………………………………
部位によりまばらにある ………………
その他 …………………………………
NA ………………………………………
77 (4.6%)
194 (11.7%)
299 (18.0%)
193 (11.6%)
569 (34.3%)
58 (3.5%)
49 (3.0%)
83 (5.0%)
64 (3.9%)
73 (4.4%)


  (5) 痙性・痙攣の有無
 痛み発生の引き金になることもある痙性や痙攣の有無については、以下の通りである。「両方あるがあまりひどくない」ケースと「まったくないかほとんど気にならない」ケースを合わせて50%を占めており、「痙性と痙攣がともに強く、生活に支障を来たしている」事例が180(10.8%)、「強い痙性がある」例が229(13.8%)、「強い痙攣がある」例が172(10.4%)あり、35%が痙性と痙攣に苦しんでいる。



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