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 エアリーク(空気漏れ)への対処法

 このフランスの患者さんは鼻マスクでどうしても口からのエア漏れがあるというので、バイトプレートでエア漏れを防ごうとしているところです。有名な先生ですが、バイトプレートの周りからエア漏れがあってどうしてもうまく防げません〔図109〕。

109. 医師は重篤な脊柱側弯症患者であるこの鼻マスク換気使用者のために、口にバイプレート(咬合床)を押し入れることで口からの空気漏れを減らそうとしている。しかし、これはうまくいかない。
図109


 彼女はインド人のCOPD、つまり慢性閉塞性肺疾患の患者です〔図110〕。

110. これは慢性閉塞性肺疾患患者である。酸素を必要とするほか、鼻マスク換気を必要としている。
図110

 彼女は酸素をまず必要としています。しかしCO2もすごく高くなってしまっていて、結局人工呼吸も必要であることがわかりました。呼吸器内科の医師は、鼻プラグの人工呼吸器をして口からのエアリーク〔空気漏れ〕を防ぐために一生懸命テープで塞ごうとしています〔図111〕。

111. 医師は患者の口をテープで閉じて口からの空気漏れを防止しようとしている。これもうまくいかない。
図111


 このテープは15分くらいで取れてしまってあまり効果がありません。どうしても鼻マスクで口からのエアリークが問題になる人は、あのように口の周りをがちがちにテープでするより、リップシールを使ったほうがよいかもしれません〔図112〕。

112. それなら鼻は使用しないで、マウスピースとリップシールを通して換気する方がはるかに実際的で有効的であろう。
図112


 気管切開というのは異物が首から気管に入っていくということです。
 もうあまり気管切開をしないようになると思います。本来は気管切開をされなくなるべきなのですが、医師たちがそれをし続けている、というのが現状になってしまっています。医師たちがこのような方法を学んでくれない、ということが問題ではないかと思います。

 特に睡眠時だけに換気補助が必要な方には、気管切開ではなくてもよいところがたくさんあると思います。肺胞低換気、いわゆる換気不十分になって最初に必要になるのは、睡眠時の呼吸補助だけなのです。症状があれば使えばよいし、症状がなければ使わなくてもよいということで、このような基準〔図113〕ではなくても、「症状があったら使う・なければ使わない」という簡単な基準でもいいのではないでしょうか。

113. これらは夜間の鼻マスク換気の適応について述べたものである。それは重要ではない。症状のある患者は鼻マスク換気を使用し、症状のない患者は使用しないということで良いのではないでしょうか。大切なことは風邪の間に呼吸不全の悪化を防止することである。
 鼻マスク換気導入開始の基準
  • 気管切開より早く導入して良いが、早すぎても発達面で好ましくない(Make BJ.Neuromuscular Disorders 1991;1:229/230)
  • M/NIPPVの歴史が米国より10年古い欧米でも、やや早い基準から遅い基準まである。

 §米国(Bachら、1994年)
  1. 病気の進行のスピードが速い場合
  2. PaCO2かEtCO2最高値が50mmHgを超える高CO2血症を認める場合
  3. SaO2平均値が95%未満になる場合
  4. CAH症状を認める場合(Bac JR.etal.Respiratory Care.1994;39:515・531)
図113
114. NPPVのためのストラップのない口鼻インターフェイスを作ることはできるが、必要とされることはまれである。
図114
図115
図116
図117
図118


 睡眠ポリグラフのいろいろな数字を見たり解析したりすることはそれほど重要ではありません。私たちは患者をみているわけで、患者をみることによってその適応は十分にわかるのではないでしょうか。

 せっかく鼻マスクを使いたいのに、市販のものが合わないときに、どんなものを作るかをちょっと紹介します。型どりをしてこのように鼻の周りを覆って鼻マスクの人工呼吸をすることができます。でもNPPV療法の初期(1980年代)には作っていましたが、作るのが大変なので、今は市販でもリップシールのいいものを使ったほうがよいかもしれません〔図101−108〕。


 非侵襲的換気療法の2タイプ

 非侵襲的換気療法には2種類あって、バイレベルタイプの従圧式のもの(バイパップ、BiPAP)と従量式で鼻マスクを行うIPPVとがあります。バイパップはある圧まで空気を送るものです。ただ、これは呼気弁がないので、呼気の再呼吸を防ぐためにコンスタントにエアが流れています。そうすると、横隔膜が弱っていたり呼気筋の弱った患者には、吐くときにもエアがきてしまうので、けっこう吐きづらい、苦しいと感じる方がいます。それとバイパップですと、先ほどの息溜めとか深呼吸が得られません。

 しかし、喉咽頭機能が非常に悪いALSの患者とか、指示に協調できないお子さんの場合は、バイパップの方が都合がいいこともあります〔図119〕。また、息溜めの機能をほとんど持たない患者はバイパップでいいと思います。

119. バイレベル気道内陽圧換気は、協力が難しい幼児、および発話・嚥下あるいは息溜めのできない筋萎縮側索硬化症(ALS)患者に適応となる。
図119

 でも脊髄損傷の患者は喉の機能が非常によくて、息溜めがよくできるわけですから、どちらかというとバイパップタイプよりは従量式人工呼吸器のほうが有用ではないでしょうか〔図120〕。これはクリストファー・リーブも気管切開で使っていて皆さんにはおなじみの従量式人工呼吸器ですが、これは鼻マスクでも使えますし、息留めができます。

120. しかし、従量式人工呼吸器は、いつでも息溜めができるため他のすべてのSCI患者および神経筋疾病患者には最適である。
図120


 これは徳島の患者でDMD(ドリーム・ミュージック・ディレクトリー)というロックグループです。「デュシェンヌ・マスキュラー・ジストロフィー」(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)のDMDをもじってバンド名をつけたとも考えられる患者グループです〔図121−123〕。マウスピースで空気を得て、歌っています。風邪を引いて痰が出てきたりしないかぎりは、皆さん心配なく活動できると思っていました。

121. 徳島のロックグループDMD(Dream Music Directory)である。その演奏者のうち3名は日夜、非侵襲的換気を使用した。
図121
122. これは気管切開後に死亡したDMDの歌手マコトである。現在ニュー・ジャージー州と北海道では、気管切開はいずれのデュシェンヌ型ジストロフィー患者にも必要ではない。
図122
123. ライブ演奏中のDMDである。
図123
図124


 指標は酸素飽和度95%以上

 風邪を引いて、パルスオキシメーターを付けて、酸素飽和度が94%を切るようであれば、きちんと痰を出して酸素飽和度を95%以上に保ってあげれば大丈夫です。普段は睡眠時だけ人工呼吸をしている方は、風邪を引いたときだけ24時間人工呼吸をつけたほうがよいでしょう。

 人工呼吸を従量式で行っている場合には、息溜めを自分で呼吸器を使ってできますので、それで咳を強くして痰をきちんと出すことができます。

 図125は、少なくとも1ヶ月以上気管切開をしてから、気管切開チューブを抜いて非侵襲的換気療法に代えた患者の150人のサーベイです。患者に「あなたは気管切開と非侵襲的換気療法とどちらがいいと思いますか」、たとえば、食べること、睡眠、会話、外見、快適性、簡便性、安全性、そして総合判断ということで聞いてみました。

125. 咳が弱くなり介助咳の最大流速が270リットル/分を下回るまで減少したときは、患者は家庭にパルスオキシメーターを配備することが必要である。患者は従量式人工呼吸器とカフアシストを使用する必要がある。患者には、酸素飽和度が95%を下回った時にはいつでも、1) 低換気 2)気道粘液貯留が原因でなっており、また、これらの問題が適切に処置されない場合には、患者は呼吸不全に陥ることを教えておく必要がある。
  外来患者プロトコール  

特に、風邪を引いたときは酸素飽和度(SpO2)が常に94%を
上回るように保つ。

 どのように? 器械式介助咳

(MAC)と非侵襲的換気療法によって行なう。
酸素飽和度(SpO2)が95%を下回った場合、低換気、
気道粘液貯留、あるいは肺炎を併発していることがある。
図125

 これを見てわかるように、ほとんどの方は非侵襲的換気療法のほうを好まれます。非侵襲的換気療法の患者は、「もし気管切開に戻るということであれば、もう命を諦めたほうがよい」と言う方が多いです。

 さらに多くのことを知りたいという方は、私のホームページをご覧下さい。
http://www.doctorbach.com/


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