肺胞換気を維持する
CO2も皆さん、動脈血液ガスだけでモニターをすると思われるかもしれませんが、呼気ガスで鼻のカニューレから非侵襲的にモニターすることができます。パルスオキシメーターは皆さんよくご存知ですね〔図54〕。
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患者評価は、呼気終末炭酸ガス分圧(EtCO2)の測定から始め、 |
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次に酸素飽和度測定を行う 。 |
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先ほど酸素飽和度が95%以下になる原因の最後の1つを言っていませんでした。1番目が換気の不十分、2番目が痰、3番目が肺の実質が肺炎など病気になっていること。
呼吸機能検査をいわゆる検査室でする代わりに、この簡単な流量計〔ハロースケールなどのスパイロメーター〕でいつでもどこでも肺活量をはかることができます〔図55〕。大事なことは、座位の時、横になっている時など、姿勢を変えてモニターすることです。(横になったときに肺活量が結構下がりますので、特に寝ているときに吸気が下がる可能性があるということは、座位だけではわかりません。)
それと、これでこまめに肺活量を測ると、装具が合っているかどうかがわかります。よい装具は肺活量が増えていますが、合ってない装具の場合は、肺活量が減って横隔膜の動きが悪くなっていることもあります。また、ハロースケールなどスパイロメーターでは、深吸気を測ることできます。
咳の強さをピークフロメーター、これはいろいろなメーカーから出ていますが、それで吸気・呼気の介助をしているときとしていないときの両方を測ります〔図56、57〕。
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スパイロメーターは座位と仰臥位の患者の肺活量を測定するために使用され、この両位置での最大通気量を測定するのに使用される。 |
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介助なし咳および介助咳の最大流速をピークフローメーターで測定する。 |
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もう1つ大事なことは、普段の換気を正常に保つことです〔図58〕。
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呼吸治療における第3の目的は1日24時間、肺胞換気を維持することである(参照:スライド15番) |
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横隔膜が弱っているということは、この図59の馬にたとえられると思います。横隔膜が一生懸命に動いて息をしてそのまま休ませないでいると、そのうち馬は倒れてしまいます。人工呼吸器はこのピックアップトラック(レースから遅れすぎた者を引っ張り上げる)のようなものだと思います〔図60、61〕。
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疲労した横隔膜はこの疲労した馬のようなものであり、休まなければ動けなくなってしまう。 |
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人工呼吸器はこのピックアップト ラックのようなものである。(61)
夜間の休息により、横隔膜が日中よく機能することを可能とする。(62) |
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夜、人工呼吸器を付けて休ませてあげると、日中になるとちゃんと自力で息ができるようになる〔図62〕。 |
結局、もし気管切開していなくて夜間、きちんと吸気筋を休ませてあげると、日中はちゃんと吸気をすることができます。
気管切開チューブ使用による弊害
ではどうして皆、気管切開チューブをしたらいいとはならないのでしょうか〔図63〕。
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どうしてこれらの患者全員が気管切開チューブを使用すれば良いということにならないのか。 |
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実は気管切開チューブをしている患者の70%以上では、気道の狭窄が起きてしまいます〔図64〕。
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どうしてこれらの患者全員が気管切開チューブを使用すれば良いということにならないのか。 |
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気管切開チューブの使用は危険な合併症をたくさん持っています。せっかく命を救うために気管切開チューブをしているのに、結構危険な合併症がいくつもあり、それによって命を落とすことが少なくありません〔図65〕。
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長期間の気管切開チューブ留置に起因する多くの致死的合併症のほか、理解すべき重要事項は、これらの気管切開チューブが病原菌によりコロニーを形成し正常な咳を妨げること、患者が持続的に換気支持に依存するようになること、さらに気管切開チューブに起因して気道分泌物が生じ、従来の方法として、吸引カテーテルを切開チューブに通して吸引すると、この気道分泌物が気道を降下して肺の奥にまで入り込むことである。吸引によって繊毛が剥脱され粘膜繊毛挙筋が破壊される。チューブと細菌は慢性炎症、肉芽形成を引き起こし、気道は感染しやすくなる。 |
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気管切開に起因する合併症
切開術時:不整脈、出血、 縦隔・皮下気腫
急性および慢性:院内肺炎、慢性化膿性気管支炎を伴う細菌コロニー形成、吸気の加湿が必要、気管食道瘻、敗血症、膿瘍、蜂窩織炎、気胸、肉芽、出血、気管狭窄、気道潰瘍、吸引の必要性、喉頭および嚥下障害、コミュニケーション障害
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図65 |
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気管切開した患者はよく24時間の人工呼吸器依存になっているのはご存知だと思います。どうして24時間依存になってしまうのでしょうか。
24時間の人工呼吸器依存となった患者の気管切開チューブを抜くことにより、その人たちが夜間だけ非侵襲的人工呼吸を行うだけで、日中は自分で自発呼吸を保つことができるようになります〔図66〕。
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気管切開チューブにより換気される患者もCO2減少で過換気になり、人工呼吸器依存が増える。患者が気管切開チューブ換気から非侵襲的陽圧人工換気に切り替えるとCO2は増えて正常に戻る。通例、患者の呼吸器の離脱を行い、夜間のみ呼吸器使用できる。 |
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図66
非侵襲的呼吸法(17人)とTIPPV(33人)の経過比較
横軸:年数
縦軸:現在のPaCO2(mmHg) |
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気管切開をしていると、どうしても過換気になってしまって、CO2が低く保たれないと気がすまないという状況になってしまいます。なぜなのかはいまだよくわからないのですが、気管切開をすると、「もっともっと空気がほしい」「もっともっと換気をたくさんしてほしい」という要求が患者から出されるようになります。それに応じているとどんどん過換気になってしまって、ちょっとでもチューブを人工呼吸器からはずすと、その過換気を自分では維持することができなくて、すぐに人工呼吸器に戻してくれということになります。気管切開チューブを取り除いて非侵襲的換気法にした場合には、上のグラフのようにCO2は正常化します〔図66〕。
もう一つ、気管切開で24時間人工呼吸器依存になる理由は、気管切開チューブが分泌物を増やし、それで苦しくてずっと換気を要するということになります。こうして、人工呼吸器をずっとしていることによって横隔膜のデコンディショニング、いわゆる廃用性萎縮を起こしてしまって、自分で横隔膜で息をすることがさらに弱まってしまいます〔図67〕。
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気管切開チューブ留置者は、また呼吸筋の廃用性萎縮を起こし、気道分泌物増加は人工呼吸器を外しての自発呼吸を妨げる。 |
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「チューブによる機械的な換気は横隔膜の収縮性を減少させる」
(Le Bourdelles et al. Am J Respir Crit 1994;149)
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図67 |
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もし、1度肺炎や呼吸不全になったからといって、もし家に酸素を持たせて帰すようなことをすると、次に肺炎になった時にはもっと悪い状態になりやすくなります。
気管切開チューブをされた患者と24時間の非侵襲的換気療法をした患者を比較すると、気管切開した患者のほうが急に呼吸不全になって病院に来ることが多いです〔図68〕。
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気管切開チューブを挿入した人工呼吸器使用者は、(たとえ、持続的に非侵襲的換気を必要とする場合であっても、)非侵襲的換気の使用患者よりも入院率が高い。 |
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在宅人工呼吸器使用と
酸素療法における肺炎による入院率の比較(期間)
@ 在宅で酸素療法を行なった場合(p< 0.001)
A 初期呼吸促迫後に治療を受けなかった場合(p<0.001)
B 気管切開下または非侵襲的にIPPVを行なった場合
(p<0.001)の順で、肺炎による入院率が高かった。
24時間非侵襲的IPPV 使用者は肺炎による入院率が
最も低かった(p<0.001)。
* 酸素療法はIPPVの代用として有効とはいえない。
非侵襲的IPPVは24時間安全に使用できる。
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図68 |
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非侵襲的換気療法の事例から
体外式の陰圧人工呼吸器、これは夜間補助のみに有効であり、閉塞性無呼吸を発症させることから使用すべきではないでしょう〔図69〕。
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体外式陰圧人工呼吸器は、肺の換気を行うため胸部に陰圧をつくる装置である。この人工呼吸器は夜間換気補助のみに適用されるが、呼吸筋の最適休止を可能としないような閉塞性無呼吸を発症させる。したがって今後使用には慎重であるべき。 |
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この患者は脊髄性筋萎縮症の最重度のタイプの方ですが、もう生後4ヶ月のときからずっと鼻マスクの人工呼吸器を24時間して今10歳になります。
彼は4ヶ月のときに鼻マスクを導入するとき以外は、ずっと体外式陰圧人工呼吸器は、したことはありません。
彼はまったく自発呼吸ができず肺活量もゼロですが、マウスピースをして換気をしながら、奥さんはお腹のところにボディ・ベンチレーターというものを巻きつけているところです〔図70〕。
| 70. |
依然として有用とみなされる体外式呼吸器は間欠的腹圧式呼吸器、すなわちニューモベルト(neumo-belt)である。この患者はニューモベルトを装着しようとしている間、マウスピースにより持続的間欠陽圧換気を受けている。 |
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これは体外式人工呼吸器のもう1つのタイプですが、お腹の帯状の袋に空気が出入りし横隔膜を動かして換気するものです〔図71−72〕。
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エアサックがベルトの中に入っている。 |
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| 72. |
サックは車椅子の背に装備された陽圧呼吸器から空気を補給されている。ニューモベルトは患者が座位にあるときだけ機能する。サックが膨らむと、腹部器官を横隔膜に押し上げ、横隔膜は上方に動いてベルト使用者に強制呼気をさせる。サックが空になると、重力により横隔膜は下がり吸気は受動的にされる。 |
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このエアの入る袋がまわりの紐で固定されます。空気が入ってくると袋が横隔膜を押し上げて息が出て行って、空気が出て行くと横隔膜が下がって、空気が患者の肺に入っていきます。
患者は自発呼吸がまったくできなくても、日中座位になっているときはこのようにボディ・ベンチレーターで換気ができます。そうすると服の下に隠れてしまうので、誰も呼吸器を使っているとは気づかない状態で使えます〔図73、74〕。
| 73. |
この脊髄損傷患者は2年間気管切開チューブを使用した。患者は持続的に換気補助を必要としている。患者はチューブを外している間に、気管粘液閉塞のために2度の呼吸停止を起こした。患者はチューブを抜去して、日中は換気補助のためニューモベルトを使用し、夜間はマウスピース換気を受けている。この患者は上手な舌喉頭呼吸者でもある。 |
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| 74. |
ニューモベルトは衣服の下に装着するので、マウスピース、鼻インターフェイス,頸部の気管切開チューブから換気を受けるよりは外見がいい。 |
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彼は脊髄損傷の患者ですが2年間気管切開をしていて、その間は2年間ずっと24時間の人工呼吸を必要としていました。今はもう日中はボディ・ベンチレーターで夜間はリップシールを使っています〔図73〕。
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