肺活量ゼロの患者の咽頭呼吸(GPB)例
上: GPBを最大限に行なった場合。分時換気量8.39リットル、呼吸1回につき平均して、吸気量1.67リットル、呑込み(gulp)数20回。呑込み1回につき平均84 cc。
下:通常のGPBの場合。分時換気量4.76リットル、分時呼吸数12.5回、呼吸1回につき、平均呑込み(gulp)数8回。呑込み1回につき咳を強くする
吸気を増やすことによって、咳の強さを高めることができます〔図25〕。
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二番目の目標は咳の流速をできる だけ大きくすることである。 |
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痰詰まりは肺炎とか無気肺など人工呼吸器からの離脱を妨げる最も大きな原因になっています〔図26〕。
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特に上気道感染が起きている場合、気道内分泌物の蓄積は、肺炎と呼吸不全が示す最初の症状となる。 |
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- 気道内分泌物による粘液栓は肺炎、無気肺、人工呼吸器
からの離脱の失敗、閉塞性肺気腫の主因である。
- 気道内分泌物による粘液栓は肺塞栓症に類似する。
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図26 |
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左の主気管支にポンと痰が1つ詰まっただけでも、あっというまに左肺はレントゲンで真っ白にみえるように潰れてしまいます〔図27〕。
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左の主気管支の粘液栓は左の肺を急速に虚脱させる(collapse)可能性がある。 |
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気道内サクショニング(吸引)というものがありますが、気道内吸引をしようとしても、右に入りやすいのですが、左にはほとんど入らないと思います。むしろそんなことよりはよい咳をする、強い咳をすることが大事です。その最初のステップが、深い吸気(深吸気)、つまり深呼吸が得られるかどうかです。
深吸気を得て声門を閉じると、実は250センチメーター水柱(250cmH2O)の圧が肺にかかります〔図28〕。
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咳の開始は深い自立吸気または強制吸気である。声門が0.2秒間閉じ、腹部と胸壁の筋肉によって約200cmH2Oの胸腹部圧が生じる。通常の咳では、2.5リットルの空気が6〜20リットル/秒の流速で放出される。肺活量の少ない患者では、たとえ腹部と胸壁の筋肉が強くても効果的に咳をすることはできない。 |
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刺激 吸気 圧縮 排出 |
図28 |
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そして声門を一気に開くことによってその圧が一気に出て咳になります。ですから、強い咳をするには、肺活量が1500ccを切った場合には、深吸気を最初にしてから咳をしたほうがよい〔図29〕。
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このSCI患者のように1.5リットル未満の肺活量の人では、肺を最大限に膨張させてから補助による咳を行なう。 |
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この方も脊髄損傷の患者ですが、咳を強くするために救急蘇生バックでまず息溜めをしてから咳をしようとしています。実は、吐く筋肉も弱っていることが多いので、そういう時には吐く筋肉も補助してあげます。いろんなところに手を当てて、ゴホンとする時に押してあげる。これはその人その人にここを押せば強い咳が出るという場所がありますから探してあげて下さい〔図30〕。
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徒手的補助による咳では手を置く位置がいろいろある。図のように上腹部に圧迫を加えることもできる。 |
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これはハイリムック法〔Heimlich〕のような感じなのですが、そのままハイリムック法でいける人とハイリムック法ではなかなかうまく圧がでない人がいますので、うまい位置を探してください〔図31−35〕。「ピカチュー」はアメリカでも爆発的な人気がありますが、アメリカではまだポケモンカードを集めてます。結構ロングに続いています。ピカチューの咳介助はこうなるのでしょうか? もし何でしたら、頭でゴンとやっても良いでしょう(注:これはジョーク)。
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一方の腕を胸に交差させる腹部圧迫は、胸の膨張と咳の流速の低下を抑制する。 |
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図31 |
通常用いられる簡単な腹部圧迫
図32 |
他の例
図33 |
ピカチューも胸腹部圧迫で(?)ゴホン!
図34 |
| 手を使わない例 <ジョーク>
図35 |
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咳の強さは、喘息でよく使うピークフローメーター〔呼気流速計〕で計ってあげてください〔図36〕。
ゴホンとして唇から空気が漏れてしまう人はエアマスクでゴホンとしてください〔図37〕。自然の咳の強さと、ちょっとした徒手介助をしたときどれだけ上げられるかを測ってください。
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唇が弱くてマウスピースをくわえられない場合、咳の最大流速はフェイスマスク経由で測定する。 |
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深吸気を得たあとに徒手での呼気介助をして、それでどれほど強く咳ができるかを計ってください〔図38、39〕。
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介助による咳の最大流速の測定では、息溜めにより最大に膨張させ、声門が開くタイミングに合わせて胸腹部圧迫を行なう。そのときの介助による咳の流速は、ここに示すようなピークフローメーターで測定される。 |
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他の例 |
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〔図40〕の左が自然の咳で、咳の強さ(PCF)はかなり下のほうになっていますが、咳の介助をしただけで咳の強さがあがるのが分かります(右側)。この黄色い線はPCFが160リットル/分で、160を切ると風邪を引くとすぐ肺炎になると思いますが、右側のように介助するとほとんどの人は160以上になります。
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徒手的介助による咳では、咳の流速を160?/分以上に増大させることが可能である。この流速が咳によって気道内分泌物を外に出すのに必要な流速の最小値である。
左:VC-PCF;最大呼気流速(肺活量)
右:VC-assist PCF(MIC);介助咳(徒手的介助による咳)の
最大流速(最大強制吸気量) |
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これは神経筋疾患の患者さんなのですが、脊髄損傷では咳の介助するともっとこれより上がると思います。なぜかというと、脊髄損傷の方はそんなに喉咽頭機能が悪い患者さんは少ないので、介助すればPCFをもっともっと上げることができます。ですから神経筋疾患の患者でできることは脊髄損傷の患者はもっとうまくできます。深吸気も上手ですし、呼気介助も上手にできます。そうすることで気管切開チューブをさけることができるはずです。
たとえば、左のほうが自然の咳で125リットル/分、これは2リットル/秒ですが、それが300リットル/
分つまり5リットル/秒まで倍以上に増えます〔図41〕。
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一般に、咳の最大流速は秒速2リットル(120リットル/分)から5リットル/秒(300Lリットル分)に増大できる。 |
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PCF
(リットル/分) |
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効果的な咳は
160リットル/分以上 |
図41 カフマシーンの適応を知るためのPCEF測定
(左から)
@自然呼吸で自然な咳(125リットル/分)、
ANIPPVで自然な咳(162リットル/分)、
BMICで自然な咳(170リットル/分)、
C自然呼吸で介助咳(210 L/分)、
DMICで介助咳(305リットル/分)
PCF:呼気の咳の最大流速 |
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器械による咳の介助により、肺は通常35〜50 cmH2Oの圧力で大きく膨張する。その後、圧力は約−35から−50
cmH2Oに落ちる。このことにより10?/秒の呼気が生じる。腹部圧迫は陰圧相の間に行なう。 |
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図45は北海道の当時5歳の脊髄損傷の患者ですが、気管カニューレを抜いたあとのことです(15頁)。1週間くらい咳介助に胸腹部圧迫が必要だったのですが、そのあと今は胸腹部圧迫が必要なくなって自分で痰が出せるようになりました。一時期ふさいだ直後はこういうことをしながら、どうしても出せない痰はカフマシーンという器械で一時期出して、そうしてこの方は気管切開チューブをふさぐことが出来ました。
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積極的にカフアシストに協力してくれた北海道の2歳半の患者。 |
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この方は72歳の脊髄損傷の患者で、肺活量は200ccしかありません〔図43〕。彼は自発呼吸は無理なのですが気管切開チューブをとりました。彼は非侵襲的換気療法を24時間しております。しかし気管切開チューブをしていたので喉のところにかなりダメージを受けていました。食べるとどうしても誤嚥してしまいます。誤嚥はするのですが、経管栄養ということではなくて、とにかく食べて、3回飲み込んだ後は必ずカフマシーンをして誤嚥した分を取り除くということで、彼は食べ続けることを選びました。痰や食物残渣がマスクのところまで飛びあがっているのが分かると思います。
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気道分泌物とその他の飛沫が飛び上がり、気管切開チューブを抜去したこの72歳の脊髄損傷患者のフェイスマスクに吐き出されている。患者の肺活量は200ml未満で、人工呼吸器を外して自発呼吸する能力がない。患者は持続的な非侵襲的換気に切り替えられた。 |
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彼も脊髄損傷ですが、急性期に気管切開をされてそれを取り除きカフマシーンで排痰をしているところです。カフマシーンは深呼吸で40cmH2Oまで上がりまして、それから急激に−40cmH2Oまで圧が下がりますので、10リットル/秒の流速が出ます〔図44〕。
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彼は自発呼吸する能力がないのに気管切開チューブを抜去したC2四肢マヒ者である。チューブが挿管されていたため、患者には気管切開口閉鎖まで約1週間、多量の気道分泌物があった。この期間中、患者の気道分泌物を除去するためにカフアシストによる器械的介助咳に依存した。われわれは100名以上のSCI人工呼吸器使用者から抜管し、非侵襲的換気に切り替えた。 |
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この方は先天性の脊髄性筋萎縮症という脊髄の前角だけがやられる、病態としては脊髄損傷によく似ているものなのですが、2歳でもきちんと協力してカフマシーンを使って痰を出すことができました〔図45〕。
このようにして痰をとることで、吸引チューブを入れて気道を損傷するよりはずっとうまく痰がとれますし、先ほどのように右の気管支に入りやすくて左がとりずらいということもなくて、両方均等に痰をあげてくることができます。
泣いたり嫌がって喉をぎゅっと締めない限り、カフマシーンは有効にできますので、2歳半でも嫌がったり泣いたりしないようにできれば協力してもらえればうまくできる人もいます。逆に、うんと小さい10ヶ月以下とかで特に抵抗しなければうまくできますが、それ以上になって4、5歳まで協力が得られない場合に使うことが難しいことがあります。
カフマシーンにちゃんと協力できるようになれば、肺炎になったり呼吸不全になる心配はほとんどなくなると言えます。
先ほどの酸素飽和度が95%以下になった患者は、徒手による介助咳(アシステッドコッホ)あるいはカフマシーン(カフアシスト)によって痰を出してあげさえすれば、肺は健康な状態に保つことができます。
このような患者に酸素を上げる必要はまったくないのですが、きちんと痰を出してあげて酸素飽和度が95%以上になって肺炎になっているということはまずありません。
これは皆さんよくご存知のクリストファー・リーブですが、これは台湾の新聞に紹介されたものです〔図46〕。いわゆる普通の吸引ではなく、カフマシーン(カフアシスト)を使ってチューブからの吸引をしたところです。彼はもし気管切開チューブをしていなければ、もっともっと呼吸器からの離脱時間があると思うのですが、むしろ気管切開チューブがあることで呼吸器への依存を強めてしまっていると思います。
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これは、気管切開チューブの抜管に応じていたら、人工呼吸器を外して自発呼吸できたであろう男優(C.リーブ)であるが、より効果的にかつ楽に分泌物を除去するためにチューブによるカフアシストを使用している。 |
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これは理学療法士の方がよくご存知だと思いますが、いわゆる胸郭のパーカッション(叩打)をすることで痰を動かす方法〔図47〕、姿勢排痰(体位ドレナージ)もよくご存知だと思います〔図48〕。
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胸部パーカッション |
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・ 胸部パーカッション(叩打法)
は、低酸素症や不整脈の原因となることがある。
・ 叩打する頻度は100〜480回。 |
図47 |
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および体位排痰法(体位ドレナージ)は有用ではあるが、介助咳に代わるものではない。〔○印が痰が貯留しているところ〕 |
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これはかなり高い治療法になってしまいますが、胸郭の外からバイブレーション(振動)をかけて、痰を動かす方法や、ハイアックオシレータといって、胸郭をバイブレーションするもの、中のほうからパーカッションしたエアーを送って痰を動かすものなどの器械があります〔図48−52〕。
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同様に、ベストで速い振動を加える器械(ThAIRapy Vest) |
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チェストシェル下にサイクリックに振動を与える器械(ハイアックオシレータ) |
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パーカッション器械 |
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胸部を振動させるが、介助咳に代わるものではない。 |
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図52 グラフは横軸が10mm/秒ごと、
縦軸はcmH2Oで0〜20程度の波形を示している。 |
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今紹介した器械は2万〜4万ドルくらいのものですが、カフアシストはその10分の1くらいでできる方法です〔図53〕。
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ハンドヘルド胸部バイブレーターは有用で他の装置よりはるかに安価である。 |
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