zaikaityosa.pdf ファイルのDL 27.kb

日本せきずい基金リポート05
在宅高位脊髄損傷者の介護システム
に関する調査報告書
2003年3月

社会福祉・医療事業団(高齢者・障害者福祉基金)助成事業

特定非営利活動法人 
日本せきずい基金

−目 次−

 はじめに

第1章 調査の概要

1.調査の分析枠組みと目的
 (1) 分析枠組み
 (2) 調査の目的

2.調査の方法と対象
 (1) 統計調査
 (2) タイムスタディ調査


第2章 統計調査による分析

1.機能障害・活動の制約・参加の制限の状況
 (1) 機能障害とそれへの対応
 (2) 活動の制約
 (3) 参加の制限
 (4) 参加の質を向上・制限する要因

2.介護の実態
 (1) 家庭における介護者
 (2) 在宅保健福祉サービスの利用状況
 (3) 在宅保健福祉サービスの利用を規定する要因


第3章 タイムスタディ調査による分析

1.課題と方法
 (1)2000年調査の知見と課題
 (2)介護動作の分類、及び動作項目

2.介護時間の実態と評価
 (1) 介護時間の実態
 (2) 直接介護時間の評価

3.介護の体制
 (1)「人工呼吸器利用」の場合
 (2)「C4以上」の場合  
 (3)「C5以下」の場合

4.必要サービス時間の分析
 (1) 単身モデル
 (2) 同居モデル
 (3) 介護時間数の制限と生活の変化


第4章 要約と政策提言

1.報告書の要約
 (1) 統計調査における知見
 (2) タイムスタディ調査における知見

2.提言@:支援費制度の見直しに関連して
 (1) 支援費の公平な配分
 (2) 個人における必要時間の評価基準

3.提言A:障害者プランの見直しに関連して
 (1) ホームヘルプサービスにおけるヘルパー数の推計
 (2) サービス供給体制の改善

 おわりに

 引用文献

 資料T.「在宅脊髄損傷者の介護に関する調査」−基本集計結果
    U.タイムスタディ調査介護動作コード表
             


  はじめに

 本報告は、「在宅高位脊髄損傷者のケアシステムモデル化」事業として2002年度に実施された調査報告書である。調査の実施に当たっては、社会福祉・医療事業団(高齢者・障害者福祉基金)の助成を得た。その目的は、在宅高位脊髄損傷者のQOLの向上のために実態調査を行い、その分析から地域ケアシステムのモデル化を行なうことにある。

 第1章以降においては調査の概要、統計調査・タイムスタディ調査の分析を行った。第4章においては「要約と提言」を記し、脊髄損傷者の固有の介護ニーズを明らかにし、支援費制度や新障害者プランにおいて見直すべき事項を明らかにした。
 その詳細は後述の通りであるが、ここでは本報告の要点を下記に示す。

 【調査対象者】

統計調査:1665人に郵送調査。有効回答数は675人(回収率40.5%)。
障害レベルは頚椎:444名、胸髄以下:215名、その他:16名である。

 タイムスタディ調査:訪問調査により全国の41人の対象者から外出日を含めた53日分を5分間ごとに介護実態を調査した。対象者は全て頸髄損傷であり、呼吸器利用者12名、C4以上19人、C5以下22名である。


 【統計調査から】

 機能障害が、活動の制約や参加の制限とどう連関するかを示した。すなわち、機能障害を最重度から軽度に4分類したとき、最重度では公的サービスの利用も含めた入浴は週2、3回が5割を占めている。また社会参加のレベルを低(T)〜高(W)レベルに分類すると、最重度の52%がレベルTに留まっていた。 在宅介護の実態では、主介護者の8割が配偶者または親であり、主介護者の就業率は妻が29%、母が15%である。また副介護者のいない者が59%を占めている。

 一方、サービス利用状況は量的にも質的にも低調であり、毎日何らかのサービスを利用している者は2割に過ぎない。最重度では24%が有償ヘルパーを利用しており、サービスの供給体制や派遣時間帯が現実のニーズに応えていないことを示している。


 【タイムスタディ調査から】 

 1日の直接介護時間は、呼吸器利用;16時間、C4以上;13時間、C5以下;9時間と推計。
 就寝時間、待機時間、隙間時間を含めた実際の必要サービス時間は、

   <単身> C4以上;24時間、C5以下;10時間
   <同居> 呼吸器利用;12時間(職住近接で)、
          C4以上;9時間、C5以下;4時間となる。

 サービス必要時間を1日4時間(月120時間)とした場合、呼吸器使用及びC4以上の単身者は在宅が不可能となる。家族同居の呼吸器使用者が現状を維持するには公的ヘルパーが1日5時間必要である。1日4時間となった場合には1時間分を家族介護で埋めなければならないが、家族の主介護者の直接介助時間だけですでに10時間を越えており、在宅生活は継続不可能になっていくと見られる。C5以下でも1日4時間派遣では現在の4割程度に切り下げられ、参加の質が相当に低下する。


 【提言@ 支援費の見直し】

 上限問題に関して:2003年1月に厚生労働省は派遣時間の上限を持ち出してきたが、その理由は市町村への補助金の公平分配が挙げられていた。しかし、市町村の障害者数に応じて補助金配分することが公平な配分を意味するとものではない。
 高齢者と異なり、要介護障害者の発生率は低く、障害種別も多様なため、本調査のように国レベルで障害種別ごとの必要サービス量をまず把握することが必要である。

 必要サービス量の評価基準:在宅介護においては、生活パターンと時間ごとの介護必要量を把握して、サービス量の評価基準を作成すべきである。
 また、何を必要サービスとするかも問題である。生存レベルなのか参加の質を保障するレベルかで必要サービス量は大きく異なってくる。本調査では現状を勘案し、中レベルの参加段階、すなわち「週に数回、散歩・買い物・娯楽へ出かける」レベルを公的介護サービスの必要時間としている。


 【提言A 障害者プランの見直し】

* 個人のサービス必要時間:必要サービス時間数は、以下のように算定された(1人1日)。
最重度:(同居) 11.3時間 (単身) 28.3時間 * (* 参考データ)
重  度:(同居) 9.0時間 (単身) 19.5時間
中  度:(同居) 4.0時間 (単身) 10.0時間
軽  度:(同居) 1.0時間 (単身) 3.0時間

 わが国の在宅脊髄損傷者数は8万7620人、その内ケアサービス利用者は5万1259人と推計された。これに上記のレベルごとのサービス必要時間数を当てると、脊髄損傷者全体の1日のサービス必要時間は19万4666時間となる。 これは1日8時間労働のヘルパーが2万4333人必要であることを意味する。また、ローテーションを考慮し1日に稼動するヘルパーを全体の3分の2とすると3万7000人のヘルパーが必要となる。

 昨年末に策定された新障害者プランでは5年後のヘルパーの整備目標が6万人とされているが、脊髄損傷だけで実にその6割を占めることになる。そもそも6万人という数字は、介護保険のように市町村の必要サービス量を積み上げたものでなく、何の根拠もないまま打ち出されたものである。国として障害種別によるサービス必要量を調査し、現実に即した整備目標を策定すべきことは明らかであろう。

 サービス供給体制:最重度・重度の単身者でも、深夜の見守りとしての公的ヘルパー利用者は半数に過ぎない。軽度で一般就労している場合には早朝・夜間へのニーズが生じている。在宅生活を維持していくためには、深夜や早朝・夜間帯での公的サービスの充実が必要である。

  ヘルパー派遣方式では、「ヘルパーの固定」を求める者が突出して第1位である。重度の場合はとりわけ専従方式が求められている。医療類似行為についても一定の研修を受けたヘルパーに認めるなど早急な解決が求められている。

 以上のように本調査は、在宅高位脊髄損傷者の介護実態と必要サービス量をデーターをもとに明らかにしたものであり、これをもとに新たな地域ケアシステムを構築していくべきものと考える。

 国はまず、障害種別の必要サービス量の評価尺度を作成し、それをもとに公費配分を検討すべきであろう。都道府県は、市町村と連携しつつ障害者ヘルパーの養成に努めるべきであろう。市町村は新たな「障害者計画」において多様なサービス供給体制の整備に努めることが求められている。

 調査にあたっては、分析フレームから考察まで駿河台大学経済学部の渡辺裕子先生に多大の労を煩わした。訪問調査や郵送調査にご協力いただいた皆様、調査員の方々などこの調査にご協力いただいた方々に深く謝意を表したい。

 2003年3月10日


NEXT

第1章  調査の概要 
第2章  統計調査による分析 
第3章  タイムスタディ調査による分析 
第4章  要約と政策提言 
資料T. 「在宅脊髄損傷者の介護に関する調査」
   U. タイムスタディ調査介護動作コード表