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第3章 タイムスタディ調査による分析


 1.課題と方法


 (1) 2000年調査の知見と課題
 2000年調査では標準サービスとして公的制度において保障すべき介護時間数を、50人の事例を通して検討した。その際に「標準」サービスの判断基準として用いたものは、「参加(participation)」の質である。在宅脊髄損傷者の平均的な参加の実態については第2章で詳しく分析しているが、これを評価にするために設定された段階T〜Wは次のようなものである。すなわち、自宅での活動と自宅外での活動をそれぞれ低・中・高の3つのレベルに分けた。

段階T: 自宅での活動がテレビ視聴をして過ごすなど低レベルに留まっている場合
段階U: 自宅での活動は読書や趣味の活動など中レベル以上であるが、
ほとんど外出せず自宅外での活動が低レベルである場合
段階V: 自宅・自宅外での行動がともに中レベル以上である場合
段階W: 上記Vのうち特に勉強・仕事をする、毎日外出するなど自宅・自宅外ともに
高レベルである場合

 2000年調査では、段階TやUは不十分であるが、一方で、段階Wは現行の福祉水準では自助努力で達成すべきものと考え、段階Vを「標準」として保障すべき参加と判断した。そこで、段階Vの生活が可能となるような介護時間を算定した。その結果、直接介護時間(家事の代行時間も含む)はおおよそ、 
 「人工呼吸器利用」が18時間、「C4以上」;15時間、「C5以下」;14時間、
となった。さらに、「人工呼吸器利用」や「C4以上」の場合には就寝中の約9時間も拘束時間と考える必要があるため、覚醒時と就寝時を合わせた1日の必要介護時間は、
  「人工呼吸器利用」:27時間、「C4以上」;24時間、「C5以下」;14時間、
と結論づけられた。しかしながら、家族による介護は実際には、他の用事なども並行して行われる。また、隙間時間などが生じることも少なくない。したがって、介護の体制を考慮しながら、必要介護時間がどのようにして必要サービス時間に換算されるかを検討することが、新たな課題となる。

 (2) 介護動作の分類、及び動作項目
 時間計測の単位とした各動作の分類、及び動作項目は、2000年調査との比較を可能とするように、基本的に同じものである(「巻末資料U」p.45 を参照)。すなわち、介護動作は大分類としては、「生命維持」レベルの行動に必要な介護、「基本的生活」レベルの行動に必要な介護、「QOL向上」のために必要な介護に、階層的に3つに分けられている。

 中分類では生命維持レベルの行動に必要な介護としては、「朝食介助」などの食事介助や「排尿介助」などの排泄介助、「看護」などがある。基本的生活レベルの行動に必要な介護では、「起床時介助」「就寝時介助」や「入浴介助」などの身体介護の他に、家事の代行を含めている。個人的・社会的な活動を行うための介護時間は、「午前活動介助」など時間帯別に分けられている。

 小分類はすべての介護動作に設定されているわけではないが、例えば、「看護」については、「呼吸器系」の看護、「与薬・処置」「測定・検査」などに分けられている。「起床時介助」「就寝時介助」としては、洗面、歯みがき、整容などがある。「入浴介助」も「全身浴」「部分浴」などの区別がある。

 また、2000年調査で不都合であった点については、若干の修正を施した。生命維持の介護動作としては、「その他」の内容に小分類を設け、具体的な動作項目として「水分補給・軽食」や「突発的な事故への対応」などを列挙した。QOL向上のための介護動作は多様であるため、2000年調査では小分類の動作項目の提示をしていなかった。しかし、今回は外出日・在宅日の両パターンのデータを収集したため、これらを区別して計測をする必要があり小分類を設定した。これにより「活動補助・代行」「場所移動」「その他」に分けたが、調査終了後のデータ作成時にはさらに「外出準備」を加えた。その理由は、これを「活動補助・代行」に含めるのか、「場所移動」の過程の一部とするのか、判断に迷う箇所が多かったためである。その結果、「活動補助・代行」は自宅内での活動を目的とする介護動作に限定して用いることとした。外出に関わる介護は、「外出準備」と「場所移動(外出中の買物などの行為の補助・代行も含む)」のいずれかで計測した。


 2.介護時間の実態と評価

 (1) 2000年調査との対象者の違い
 タイムスタディ調査は統計調査と異なり、調査の手間からしても得られるデータが少人数とならざるを得ない。そのため、対象者の質的な違いによって計測値が変動しやすい。2000年調査では社会的な接触が少ない人との関係づくりを二次的な目的として訪問面接を行ったため、障害が重度の人や外出機会の少ない人がより多く選定されていた。得られたデータを解釈する際には、このような違いについて注意する必要がある。そこで、2000年調査と今回の調査における対象者の特徴を先ず示しておく。

 第1に、脊髄の損傷部位では、2000年調査が「人工呼吸器利用」「C4以上」「C5以下」の各グループが15人、27人、8人であるのに対して、今回の調査ではそれぞれ12人、19人、22人である。2000年調査では「C5以下」は人数が少なくまたC6やC7などは含まれていなかったが、今回は下位頸損について対象者の損傷部位の幅や人数を増加させている。これは、厚生労働省の統計において用いられている「脊髄損傷U(頸髄損傷)」の平均像に近い対象者の介護時間を把握するために、必要である。

 第2に、今回は外出日の計測が可能な対象者を選定した結果、参加の質の段階にもやや違いが出た。2000年調査では、段階Tが7人、段階Uが21人、段階Vが15人、段階Wが7人であったが、今回の調査ではそれぞれ、13人、1人、16人、22人となっている。自宅で閉じこもりきりの人が少なく活動的な対象者が増えたため、参加の段階中でUが減少し、Wが多く収集された。


 (2) 介護時間の実態
 第2章で示したように、活動の制約や参加の制限は機能障害の程度によって規定される部分が大きいため、以下でも機能障害の程度別に分析することにしたい。しかし、第2章で用いた上肢の機能障害の「最重度」「重度」「中度」「軽度」の4分類ではなく、ここでは「人工呼吸器利用」「C4以上」「C5以下」を用いる。その理由は、第1に、タイムスタディ調査では胸髄以下の脊髄損傷は対象とはされておらず頸髄損傷のみであるため、「軽度」に属する者が少ないからである。第2に、大規模統計調査では損傷部位の回答には他の箇所の回答から判断して不正確と思われるものもあったが、タイムスタディは訪問面接調査によって行われており、回答の信頼性が極めて高いためである。第3に、2000年調査の結果との比較可能性を維持するためには、同様の損傷部位によるグループ分けが望ましいためである。


 @ 直接介護時間とその行動レベル別内訳
 表3-1は、見守りを含まない1日の直接介護時間と行動のレベル別の内訳である。直接介護時間は「人工呼吸器利用」では964分、「C4以上」では747分、「C5以下」では521分であった。機能障害との相関が明瞭に示されている。

 また、行動のレベル別にみると、「生命維持レベル」「基本的生活レベル」の介護は、機能障害が重度であるほど多くの時間を要している。一方、「QOL向上レベル」の介護では、このようになっていない。「人工呼吸器利用」では提供できる介護時間がもはや限界に達しており、QOL向上のための介護にこれ以上の時間配分ができない状況にあると考えられる。

 2000年調査との比較をすると今回の調査では、直接介護時間は「人工呼吸器利用」で大幅に上回っていた。しかし、「C4以上」「C5以下」では減となっている。「C5以下」については、今回の調査対象者が2000年調査よりも機能障害の程度が軽い集団になっていることが、最も大きな理由と考えられる。他に、今回が観測データを用いているのに対して、2000年調査では申告データを用いていたなどの調査方法上の違いも考えられるが、いくつかの角度から分析を行い、今回の調査結果について検討してみることにしたい。

表3-1 行動のレベル別の直接介護時間(分)−損傷の部位別−
生命維持 基本的生活 QOL向上 2000年
調査計
呼吸器
〜C4
C5〜
361(37.5%)
139(18.6%)
97(18.7%)
473(49.1%)
467(62.5%)
322(61.8%)
130(13.4%)
141(18.9%)
101(19.5%)
964(100.0%)
747(100.0%)
521(100.0%)
853
909
849


表3-2 在宅日と外出日における直接介護時間(分)−損傷の部位別−
生命維持 基本的生活 QOL向上
呼吸器 在宅日
外出日
342(34.9%)
388(41.3%)
586(59.7%)
315(33.5%)
54(5.5%)
236(25.1%)
981(100.0%)
939(100.0%)
〜C4 在宅日
外出日
144(18.6%)
133(17.2%)
554(62.5%)
370(47.9%)
26(18.9%)
269(34.8%)
724(100.0%)
772(100.0%)
〜C5 在宅日
外出日
123(18.7%)
76(17.1%)
394(61.8%)
263(58.7%)
49(19.5%)
145(32.5%)
565(100.0%)
447(100.0%)

  A 在宅日・外出日
 在宅日と外出日の介護の内容を比較すると、表3-2に示すように、行動レベル毎の構成比に予想通りの差が見いだされた。すなわち、外出日では「QOL向上」レベルの介護時間が多い。しかし、外出日は介護時間の合計が特に増加するわけではなく、代わりに「基本的生活」レベルでの介護時間が縮小している。したがって、今回の調査で外出日を追加したことで介護時間が増加する、などの影響はもたらされてはいない。

 さらに外出日に「基本的生活」レベルで時間が減少する介護動作を調べてみると、在宅日と比較して家事援助の小分類の「調理」と「入浴」で著しい。「調理」は外出時には外食となるため不要となるが、「入浴」は「外出」とトレードオフ関係になっている。特に「人工呼吸器利用」や「C4以上」では、入浴が外出介護の増加の影響を受けて減少する傾向が顕著である。

 B 直接介護時間の介護者別内訳
表3-3は、損傷の部位・同居家族の有無別に、介護者を「家族の主介護者」「家族の副介護者」「公的ヘルパー」「有償ヘルパー」「訪問看護婦」「その他」に分けて、だれがどの程度の時間、介護を分担しているのかを示している。

表3-3 介護者別の直接介護時間(分)−障害の部位別・同居家族の有無別−
               呼吸器             〜C4           C5〜
            同居     単身     同居     単身    同居     単身
家族(主)
家族(副)
公的ヘルパー
有償ヘルパー
訪問看護
その他
外出先
570(60.1%)
101(10.6%)
80(8.5%)
73(7.7%)
73(7.7%)
51(5.4%)
0( - )
0( - )
0( - )
505(44.7%)
110(9.7%)
210(18.6%)
305(27.0%)
0( - )
451(60.8%)
9(1.2%)
196(26.3%)
0( - )
54(7.2%)
29(3.8%)
18(0.5%)
23(3.0%)
9(1.2%)
347(46.2%)
333(44.3%)
8(1.1%)
32(4.2%)
0( - )
296(60.1%)
23(4.6%)
57(11.6%)
38(7.6%)
25(5.2%)
36(7.3%)
18(3.6%)
4(0.6%)
0( - )
512(92.2%)
23(4.1%)
12(2.2%)
5(0.8%)
0( - )
949(100.0%) 1130(100.0%) 742(100.0%) 752(100.0%) 493(100.0%) 555(100.0%)


1) 同居家族ありの場合:障害が重度であるほど、家族の介護時間が長い。副介護者を含めた家族の介護時間は、「人工呼吸器利用」では11時間(671分)、「C4以上」では8時間弱(460分)、「C5以下」では5時間強(319分)になる。また、直接介護時間に占める割合は、「人工呼吸器利用」で70.7%、「C4以上」で62.0%、「C5以下」で64.7%である。

 直接介護時間に占める外部サービスの利用割合は、より多くの介護が必要であるにもかかわらず「人工呼吸器利用」でむしろ少ない。その理由は、訪問看護婦の利用が制限的である現状では、呼吸器ケアを家族がせざるを得ないからである。またこれに加えて、気管切開をしており、音声の機能障害があってコミュニケーションにおいて活動の制約が生じやすい人工呼吸器利用者にとっては、介護者は固定されている方が安心である。その結果、意思疎通の可能な家族に一層負担が集中しているものと考えられる。それでも2000年調査に比べ今回の調査の対象者では、「人工呼吸器利用」における介護の担い手が分散しており、このことが介護時間の増大をもたらしたと考えられる。


2) 単身の場合:別居の家族が一部、介護に関わる場合もあるが、基本的にはほとんどすべてが外部サービスの利用となる。「人工呼吸器利用」であって単身での生活は、現行のサービス供給水準からすると考えにくい。しかし、本調査では極めて特殊であるが、形式的には単身で母親がボランティアという形で介護を行っている例があった。この例における母親の介護時間は305分で、総介護時間の27.0%である。確かに平均的な家族同居に比べて介護時間は短いが、ほとんどすべてが外部サービスという他の単身者とは状況がかなり異なっている。

 「C5以下」では9割以上の介護時間を「公的ヘルパー」によって確保しているが、「C4以上」では「公的ヘルパー」(347分で46.2%)と「有償ヘルパー」(333分で44.3%)を同程度の割合で利用している。公的保障が不十分である現状を反映して、有償ヘルパーの活用が多い。


 (3)直接介護時間の評価

 @ 人工呼吸器利用
 今回の調査では、人工呼吸器利用者の見守りを含まない直接介護時間は約16時間であった。しかし、調査対象者の参加の質をみると、12人中7人が段階Tに留まっており、自宅で休息したりテレビ視聴をしたりの生活が中心となっている者が多かった。したがって、タイムスタディ調査における直接介護時間をもって標準的な介護時間とすることは、不適切である。

 参加の質と直接介護時間との関連を調べてみると、段階Tの7人は平均856分と少なく、段階V以上の4人の平均1123分と比べて格段の差があった。そこで、段階V以上で要している時間を標準的な介護時間とすれば、19時間弱となる。ところがさらに、今回の調査では在宅日と外出日のデータが得られたが、先に述べたように外出日では介護時間が増加するわけではなかった。QOL向上レベルの介護時間を増加させる代わりに、入浴などの基本的生活レベルの介護時間が減少していたのである。このようなしわ寄せが起こらないようにするには、在宅日に比べて外出日には若干、介護時間を上乗せする必要がある。以上の点を考慮すると、外出日には人工呼吸器利用の場合には20時間程度の直接介護時間が必要と考えられる。

 A 「C4以上」及び「C5以下」
 2000年調査では直接介護時間は、「C4以上」で15時間、「C5以下」で14時間と算定されたが、今回の調査では「C4以上」では13時間弱、「C5以下」では9時間弱であった。調査対象者の参加のレベルをみると段階V以上へは、「C4以上」では19人中15人が、「C5以下」では21人中19人が達していた。したがって、介護時間数は少なくなっているものの、参加の質という点からは妥当であるといえよう。

 しかし、「C4以上」においては「人工呼吸器利用」と同様に、外出日で入浴などの介護時間が減となるといった結果が見いだされている。そこで、入浴介助の上乗せ分を考慮し、外出日には14時間とすることが適当であると判断される。

 財源に限りがある状況においては、最重度である「人工呼吸器利用」に重点的にサービス配分をし、その他のグループで下方修正することはやむを得ないことと考えられる。但し、「C4以上」「人工呼吸器利用」では直接介護時間の他に、就寝時の見守り時間も加える必要がある。また、介護は通常、必要時に断続的に行われ、隙間時間や待機時間が生じる。これらのことを考慮すると、必要サービス時間を算定する際には直接介護時間以外にも検討すべき問題がある。そこで、第3節での介護の体制についての分析を踏まえた上で、さらに第4節で必要サービス時間を算定する。


 3. 介護の体制

 損傷部位によって1日に9〜16時間に上っていた直接的な介護が、どのような体制で行われているのかについてみていく。図3-1〜3-3は、損傷の部位・同居家族の有無別に1日のどのような時間帯にどの程度の時間をかけて介護が行われているのかを表したものである。1時間単位毎に介護動作の所要時間を集計している。例えば、1人の介護者が1時間を休みなく介護すれば60分、半分程度を介護時間に充て半分は待機していれば30分程度となる。また、2人の介護者が60分間を終始介護すれば計120分程度となる。ここでは動作の開始時点で記録をしているため、長時間に及ぶ介護動作の場合には、実際に行われた時間帯と若干のズレが生じる場合もある。しかし、計測された介護動作1つ1つは、5分程度の短いものが過半数を占めている。一部には数時間のものがあるが、全体の83%は30分未満である。


 (1) 人工呼吸器利用の場合

 @ 時間帯による介護量の違い
 単身は1事例のみであるため、家族との同居者11人についてみていく。「介護時間=60分」はその時間帯には終始介護が行われていることを意味するが、図3-1aをみると、午前8時台から午後6時台頃まではほぼずっとそのような状態になっている。また特に、午前9時〜11時台、午後2時台、午後4時台には60分を上回り、2人体制で介護が行われることが多い。2人体制となっている時間帯には入浴や外出行動が取られていることが多く、このような介護は1人では困難といえる。



図3−1 時間帯別介護所要時間 (分)−−人工呼吸器利用の場合


 これらの時間帯を除く午前6時〜7時台と午後7時〜12時台は、所要時間が30分程度である。他の用事をしながら介護も行う形になるが、拘束は大きい。午前0〜5時台は各時間帯で5〜10分程度であるが、就寝中も一定の時間の間隔で介護が必要である。

 A 介護者の体制
1) 同居家族がいる場合:大きな特徴は重介護であるにもかかわらず、外部サービスが午前8時台〜午後7時台にのみ入っており、夜間や早朝・深夜時間帯は家族だけで介護している点である。「C4以上」「C5以下」では家族が同居していても、夜間や早朝・深夜時間帯に外部サービスを利用している場合がある。つまり「人工呼吸器利用」では、日中時間帯以外では呼吸器ケアが中心となるため、外部サービスの利用が難しいのである。
 家族の主介護者が介護から解放されることはほとんどない。図からも、外部サービスを利用していても日中には2人の介護者を必要とすることが多く、「家族の主介護者+家族の副介護者」、または「家族の主介護者+家族以外の介護者」の組み合わせで介護にあたっていることが示されている。

2) 単身の場合:先に述べたように、ここでの「ボランティア」は実際には家族である。直接介護時間に占める家族介護の比率は27%であるが、図3-1bに示されているように、時間帯では夕方5時〜早朝5時台までの12時間、及び午前9時台、午後12時台に各1時間の、計14時間拘束で介護や見守りを行っている。この事例では昼食時間帯にも介護をしており、職住近接という条件付きとなるが、同居している家族が就労をする1つのモデルといえる。


 (2) 「C4以上」の場合

 @ 時間帯による介護量の違い
1) 同居の場合:図3-2aをみると、ヘルパーなどの勤務形態の影響を受けたためか、外部サービスは午前10〜11時から及び午後1時からの利用が集中している。午前9〜11時台、午後1時台に介護時間数は60分を上回り、時間の一部が2人体制となることが示されている。これ以外の午前7時〜午後7時台は、30〜60分となっている。この時間帯は人工呼吸器利用ではほぼ終始介護が必要であったのと比較すると、他の用事をしながらの形になる。深夜は見守りが必要であるものの、定時介護というよりは必要時の場合が多い。

2) 単身の場合:特定の時間帯でサービスを利用する同居者と異なり、単身者では常時滞在型ヘルパーの利用が多い。そのため図3-2bによると、時間帯による介護量の増減の幅は同居者よりも小さい。このような介護体制のために介護時間が60分を越える時間帯はほとんどないものの、午前8時台〜午後21時台は30〜60分となっている。

 A 介護者の体制
1) 同居家族がいる場合:特に家族介護が30分を上回り拘束が大きいのは、午前9時台、正午、午後6時台である。1日3回の食事介助と夜間時間帯の介護、早朝・深夜時間帯の見守りは、家族が行っている場合が多い。家族以外の介護者が相対的に多くなっているのは、朝食介助後の午前の時間帯、及び昼食後の午後の時間帯である。外部サービスを利用している場合にはこれらの時間帯に数時間、介護に拘束されない時間を得ることが可能になるものと思われる。
 図3-2aをみると、外部サービスは午前10〜11時台には「その他」の介護者、午後1時台には「公的ヘルパー」に担われていることが多い。これは、午前中には訪問看護婦が入浴介助などを、午後はヘルパーによる活動の補助や外出などが行わることが多いことを表している。

2) 単身の場合:先の表3-3(19頁)では、「C4以上」では「C5以下」に比べ、有償ヘルパーの利用が多いことが示されていた。家族介護者がいない単身者では、有償ヘルパーは公的サービスの時間数の不足を補っている。そこで図3-2bにより、2種類のヘルパーを区別して活用しているかをみると、有償ヘルパーは特定の時間帯で介護をしているのではなく、すべての時間帯に渡って利用されている。


 (3) 「C5以下」の場合

 @ 時間帯による介護量の違い
1) 同居家族がいる場合:図3-3aをみると、介護時間が60分を越える時間帯は午前9時台のみである。介護ニーズはこの時間の前後に集中しており、起床時介助や朝食などの部分介助が行われているためと考えられる。「C5以下」では参加の質がW段階に達している者が半数を超えているが、社会的統合度が高い生活になると一般社会のリズムに合わせて生活を組み立てていく必要が生じることを意味している。介護が集中する朝の時間帯と午後3時台、午後6時台を除くと、介護時間は30分未満である。

2) 単身の場合: 図3-3bをみると、「C4以上」の単身の場合に比べ、時間帯によって介護量の増減の幅が大きくなる。常時滞在型ヘルパーの利用が少なくなり、一定の時間にヘルパーが利用されその時間内で介護が行われるためと思われる。
 また、「C4以上」の単身でも同じ結果が示されていたが、ヘルパーなどの勤務上の都合によると思われるが、早朝の6〜7時台にはほとんどサービスが行われていない。車椅子利用時間が長い「C5以下」では、離床時刻が遅い場合には就床時刻も遅くなる。深夜2〜3時台に「C5以下」の単身で介護時間数が多いのは、就寝中に介護のニーズがあるためではない。就寝時間が遅い者が多く、この時間帯に就寝時介助が行われるからである。

 A 介護者の体制
1) 同居の場合:「C5以下」では「C4以上」のように、朝食や昼食時に家族による介護時間が増加するという傾向はみられない。食事が全介助から一部介助となるためと思われる。夕食は一家の団らんの時間でもあるため家族による家事援助が多くなるが、他の時間帯では家族が行う介護とヘルパーなどが行う介護の内容が、特に区別されなくなっていることが示唆されている。公的ヘルパーは訪問看護婦やボランティアなどが得られにくい時間帯で利用されている。



図3−2 時間帯別介護所要時間(分)−「C4以上」の場合


2) 単身の場合:公的サービスによってほとんど介護が行われている。「C5以下」では常時介護が必要ではないため、待機時間や隙間時間ができる。この時間は家族であれば他の用事に充てられるが、公的ヘルパーではそのような時間の活用がないため、同居家族による介護の場合よりも、図3-3bでは介護時間が多くなっている。


図3−3 時間帯別介護所要時間 (分)−−「C5以下」の場合


 4. 必要サービス時間の分析

 タイムスタディ調査によって計測された直接介護時間は、「人工呼吸器利用」では約16時間、「C4以上」では13時間弱、「C5以下」では9時間弱であった。しかし、この時間数によって成り立っている参加の質等の評価を行った結果、標準的な介護時間は「人工呼吸器利用」では19時間(外出日は20時間)と上乗せされた。また、「C4以上」「C5以下」ではそれぞれ、直接介護時間の13時間、9時間が妥当な時間数であると評価されたが、「C4以上」では外出日は14時間が必要とされた。

 しかし、サービス利用時間を算定するには、まだ考慮すべき問題がある。1つは家族との同居の場合、家族介護をどう位置づけた上で必要サービス時間を決定するかである。これに対して単身者の場合には、介護時間はすべて外部サービスによって保障されることになる。しかし、実はこの場合であっても、必要時間の算定はそう単純ではない。なぜなら、施設では複数の利用者を集団的に介護するため、時間の効率をあげることが可能である。これに対して、在宅介護では隙間時間や待機時間が生じるため、必要サービス時間はこれらの時間を含むものとなる。以下では、必要サービス時間の検討を同居家族の有無別・損傷部位別に行う。但し、「人工呼吸器利用」では家族同居のモデルのみとする。将来的には「人工呼吸器利用」の単身モデルも実現すべきであるが、現状では施設入所を考えざるを得ないであろう。

(1) 単身モデル
 近くに住んでいる親・きょうだいが一部の介護を行っているケースもあったが、単身モデルでは介護時間のすべてを外部サービスで充足する必要がある。本調査では、家族同居に比べ単身では介護時間が長かった。これは、家族介護者の場合には他の用事をしながら介護を行う形が多いのに対して、外部サービスではこのような隙間時間の活用が難しく、待機時間などがより多く含まれるためである。したがって、単身モデルでは場合によっては、第2節で算定された標準的な介護時間を上回る必要サービス時間が要求される。

 @ 「C4以上」
 先ず、1日の生活を時間帯との関係でみることにしたい。午前9時、正午、午後7時台には生命維持レベルの介護が行われている。この時間帯には、食事介助などが行われている。一方、午前8時〜午後1時台では基本的生活レベルの介護が多く、午後1時台、午後3時台にはQOL向上レベルの介護が多くなっている。つまり典型的な生活パターンとしては、午前中〜午後1時台は起床時や入浴時の介助が、午後1〜3時台は外出や自宅内での活動の代行・補助などが行われている。図3−2にも示されていたように、午後2時台には一時、介護時間が減少するが、介護の内容から判断すると、午後1時台から開始した外出や自宅内での活動において、この時間帯では待機時間が多く生じるためと考えられる。したがって、外出・活動を継続中の午後2時台は介護者が不要というわけではない。逆に介護者を不在にした場合には、外出などを中止せざるを得ない事態が生じることも考えられる。

 「C4以上」では参加の質を確保する標準的な直接介護時間が13時間(外出日は14時間)であり、就寝中見守りの9時間を含めて、計22〜23時間という計算となる。しかし、これに外出や活動中の待機時間を含めるならば、複雑な計算をするまでもなく必要サービス時間は24時間になるであろう。但し、就寝時介護が不要という者が統計調査では「C4以上」で55.0%と半数を占めていた。そのため、深夜時間帯については個別の状況によって、「なし(代わりに緊急呼び出しコールを設置)」または「巡回介護」という方法が検討されてもよいであろう。

 A 「C5以下」
 「C5以下」では常時介護が必要ではないため、直接介護時間の9時間をニーズの高い時間帯にどのように配分するかが重要となってくるであろう。「C5以下」では、1日のうちで基本的生活のための介護が午前9時台に際だって多くなっている。また、正午〜午後3時台に相対的にQOLの向上のための介護が必要になっていることが特徴である。

 したがって、これを支援費制度の居宅介護支援の区分で表すとすれば、例えば午前中は起床時の「身体介護」が1時間、「家事援助」2時間の計3時間程度、一方、昼食から午後3時台頃までは断続的な介護となるが「移動介護」ないし「日常生活支援」を合わせて4時間程度、夕方以降は夕食と就寝時介助について「身体介護」2時間、「家事援助」1時間の計3時間程度で、1日10時間程度の介護サービスを必要時間帯に合わせて配分することが適当といえよう。参加の質を確保するための標準的な介護時間は9時間であったが、特に外出や自宅内での活動では待機時間が生じやすい。そのため、サービス必要時間は10時間程度となる。

 また、午前中に出勤する人の場合には起床時介護の時間帯を早めるとともに、朝の時間に「移動介護」が必要になる。しかし、逆に外出先では介護者が不要となる場合もあるなど、ケアプランは個人の生活スタイルに合わせて変化することになる。


(2) 同居モデル
 家族だけで介護したいかどうかはそれぞれの家族の選択に委ねられるべきではあるが、公的な福祉として保障すべきことは、家族が個人の生活スタイルを維持できるような介護サービスを提供することであろう。この場合、特に家族介護者の就労への配慮が必要となるが、統計調査における家族の主介護者の就業率(本調査ではフルタイムかパートタイムかについては区別していない)は、最重度で10.3%、重度で28.2%、中度で35.0%、軽度で38.8%であった。脊髄損傷者の個人年収が著しく国民全体の分布よりも低所得層に偏っているにもかかわらず(「巻末資料T」p.44 を参照) 、家族の就労もかなわない状況にある。

 @ 「人工呼吸器利用」の場合
 「人工呼吸器利用」では第3節で示したように、家族が介護から解放されるのはせいぜい午前中の2〜3時間程度である。現在の介護体制では家族介護者の就労はほど遠い。しかし、本調査での「単身」事例において、職住近接という条件付きになるとは思われるが、家族の就労を可能にするモデルが示されていた。

 例えば、午後5時〜深夜〜午前10時までの介護と見守り、及び正午の昼食時間以外で、外部サービスを利用する場合を考えてみたい。このように家族の分担を考えると、午前10時〜11時台、午後1時〜午後4時台の6時間は外部サービスが必要である。また、図3―1にも示されたように、「人工呼吸器利用」では午前9時〜11時台、及び午後2時台、午後4時台の計5時間で介護時間数が60分を越え、2人体制が取られている。そのため2人体制である時間帯を加えると、サービス必要時間は11時間となる。さらに、午後3時台は介護時間は37分と少ないが、午後2〜4時台に外出が行われるとすれば、外出継続中の午後3時台は介護者が不要というわけではない。したがって、外出日の必要サービス時間は12時間となる。

 A 「C4以上」及び「C5以下」の場合
 人工呼吸器利用以外の頸髄損傷においては、家族の主介護者の3〜4割が就労している現実を考慮して、パートタイム就労のモデルを考える。午前9時〜午後5時頃までの日中8時間程度を公的に保障し、家族の行う介護は帰宅後〜翌朝の直接介護、及び見守りとする。

 「C4以上」では基本的に常時、介護者が必要である。つまり、家族不在中の外部サービスが必要な時間帯は8時間である。しかし、午前9時台(64分)と午後1時台(78分)は介護時間が60分を越えており、少なくともいずれかの時間帯で1時間程度は2人体制となることを考えるべきである。したがって、必要サービス時間は9時間となる。

 「C5以下」の家族同居モデルでは、朝と夕方以降に必要な身体介護と家事援助は家族が分担するが、日中の「移動介護」ないし「日常生活支援」を合わせて4時間程度、サービス利用が必要である。


表3−4 介護時間の算定の結果−損傷部位別
1)計測された
直接介護時間
2)標準介護時間
直接介護 + 就寝時見守り= 計
必要
サービス時間
人工
呼吸器
同居
単身
16時間
(964分)
19時間  + 9時間  = 28時間
(外出日20時間)   (外出日29時間)
11時間
施設対応
〜C4 
同居
単身
13時間弱
(747分)
13時間  + 9時間  = 22時間
(外出日14時間)   (外出日23時間)
9時間
24時間
C5〜 
同居
単身
9時間弱
(521分)
9時間     −      9時間 4時間
10時間

注:
1)タイムスタディ調査による家事代行時間を含む介護時間
2)参加の質(参加の段階V以上、外出日の上乗せ等)を
 考慮して設定された必要介護時間
3)但し、外出日は12時間

 以上、タイムスタディ調査にもとづき、標準的な介護時間や必要サービス時間を検討した。これらの結果を整理すると、表3−4の通りになる。


 (3) 介護時間数の制限と生活の変化

 支援費制度では居宅介護の時間数をめぐり、厚生労働省と障害者団体との間で2003年1月、交渉が行われた。その結果「月120時間(全身性障害者の場合)」という上限は撤回され、制度開始時はとりあえず現状の利用時間を維持することで決着した。しかしもし、このような利用時間数の制限が導入されれば、家族が介護せざるを得なくなり負担が増すことになる。単身の場合には、より一層の生活上の制限が生じてくるであろう。そこで最後に、公的ヘルパーの利用時間が1日4時間と制限された場合に、どのような生活の変化がもたらされるかを分析する。

 1日4時間の利用時間では、「人工呼吸器利用」「C4以上」の単身者は検討するまでもなく在宅生活が不可能になる。そこで、家族同居者と「C5以下」の単身者において在宅生活を維持しようとした場合、どのような制限が生じるかを描いてみたい。ここで取る仮定としては、介護サービスは最も多い必要な時間帯に計4時間、利用できるものとする。また、訪問看護婦は「人工呼吸器利用」と「C4以上」では派遣されるが、その他の有償ヘルパーやボランティアは利用されないものとする。

 @ 家族同居の「人工呼吸器利用」
 表3−3(19頁)に示したように現状では直接介護時間は949分で、うち、家族の主介護者の介護時間は570分である。その他の介護者は379分であるが、訪問看護婦が73分利用されており、残り時間は303分である。この時間は実際は家族の副介護者、有償ヘルパー、ボランティアなども分担しており、公的ヘルパーのみが担っているわけではない。しかし、副介護者がいない、有償ヘルパーを雇用できない、ボランティアがいない等はしばしば起こりうる問題であり、本来は公的ヘルパーによって保障されるべきである。つまり現行の介護の水準を維持するためには、どうしても公的ヘルパーが直接介護時間換算でも5時間必要である。1日4時間の利用時間が設定されれば、他の1時間分は家族介護で補うことになる。

 しかし、家族の主介護者の直接介護時間はすでに10時間を超えており、長期間に渡って継続できる状態ではない。介護負担はすでに限界に達しており、これ以上の負担増ではいずれ在宅生活は継続不可能になると考えられる。あるいは、人工呼吸器利用者の参加の質は12人中7人が段階Tにとどまっていたが、さらに生活水準が低下することになる。

 A 家族同居の「C4以上」
 現状では直接介護時間は742分で、家族の主介護者は451分を分担している。その他の介護者は291分であるが、うち訪問看護が54分利用されており、残り時間は237分となる。この時間が公的ヘルパーに担われるとすれば、上限4時間は現在とほぼ同じサービス水準となるであろう。
 しかし、「C4以上」でも家族は直接介護時間8時間程度と就寝中の見守りを行っている。これではせいぜい、日中数時間の外出ができる程度である。家族の主介護者が自己の時間を持つことを犠牲にして在宅生活を支えるという状況が、続くことになる。

 B 家族同居の「C5以下」
 現状では直接介護時間は493分、うち家族の主介護者による介護時間は296分である。その他の介護者は197分であるから、公的ヘルパーは待機時間・隙間時間を含めても4時間以内の利用で、現行の生活水準は維持できると考えられる。しかし、この場合の家族の就労は、パートタイムか職住近接型に限られる。フルタイム就労という選択肢を可能とするには、不十分な利用時間である。

 C 単身の「C5以下」
 現状では直接介護時間は555分であり、サービス時間が4時間と設定された場合には、このうちの4割強程度しか時間が確保されないことになる。512分を公的ヘルパーによって得ている現実からすれば、大きな変化が生じる。

 もし、有償ヘルパーやボランティアの利用ができないとなれば、ニーズの高い時間帯4時間にヘルパーを利用することを考えた上で、生活時間の組み直しをすることになる。例えば、午前中と夕方以降の各3時間程度の介護時間を半分程度に抑えるほか、優先順位からして、午後の「移動介護」ないし「日常生活支援」を4時間→1時間と大幅に減少せざるを得ないであろう。結果として外出などを断念することになり、参加の質のレベルを低下させることになる。

 また、現在の生活を維持しようとするならば、1日6時間程度の有償サービスを全額自己負担することになる。単価の高い「身体介護」は支援費制度が利用でき、例えば1日あたりで、1)「家事援助」を3時間、2)「日常生活支援」を2時間、3)「移動介護」を1時間利用するとすれば、

(3×1,530)+(2630+990)+ 1,530 =9,740円/日
となる。月額の負担は292,200円にも達する。

 以上のように上限が4時間ということになれば、同居家族がいる場合には、家族が自己を犠牲にして今後も頑張り続けることになる。しかし、人工呼吸器利用者の場合には在宅生活の維持が困難になるであろう。一方、単身の場合には、「人工呼吸器利用」や「C4以上」では施設に入所するしかないが、「C5以下」でも参加の質の大幅な低下がもたらさせる。



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目 次   トップページ
第1章  調査の概要 
第2章  統計調査による分析 
第3章  タイムスタディ調査による分析 
第4章  要約と政策提言 
資料T. 「在宅脊髄損傷者の介護に関する調査」
   U. タイムスタディ調査介護動作コード表