講演会報告集 最終ページ


 【福岡講演2】

日本における脊損者の性障害と治療の現状

  労働福祉事業団・総合せき損センター泌尿器科部長 岩坪 暎二

* 九州大学臨床教授、日本性機能学会理事、国際パラプレジア学会理事・日本代表委員。

 それでは、木元先生の基本的なお話に続きまして、総合せき損センターで行っております治療の一部をご紹介して、デュシャーム先生の本講演への参考にしていただきたいと思います。スライドで見ていただきます。

 まず、図1は陰茎が勃起したところを造影撮影したものです。

図1 造影撮影した陰茎

 昔は、「私は勃起しないんです」という患者さんが本当に勃起しないのかということを確かめる方法がなかったわけです。「チン拓」といって、墨をすってペニスにつけて、写すと勃起したサイズが分かるという苦肉の策をとっているところもありました。今は、郵便切手を貼りつけて寝て、夜中にリズミックに生理的な勃起が起こるかどうか、この人は勃起しないと言っているけど本当だろうか、というのを生理的な診断法で切手を貼りつけてやります。これがちぎれていれば、勃起したという証拠になります。1円の切手でも80円の切手でも同じです。1円の切手が切れやすいということではありません。

図2 勃起測定器

 最近は、アメリカから勃起を測定する「リジスチャン」という器械が輸入されて、日本でも使っております(図2)。これをつけて寝てもらう、あるいはバイアグラを飲んでいただいて、作用があるかどうかをテストします。同時に性的刺激を与えて、勃起する強さを測ることができるわけです。

図3は、上のグラフが勃起したもの、下のほうが全然反応がないものです。


図4 日本性機能学会雑誌
我々は日本の治療の現状について、日本性機能学会の
発表論文数を調査しました(図4)。


 表1は、1996年から2000年まで、5年間の学会誌に掲載された性機能障害の治療方法の演題数です。 これを見ますと、内服療法、漢方薬、バイアグラ、そのほか先ほどの木元先生の話にもありました尿道トラップ「ミューズ」で勃起促進薬を注入するという記録もあります。内容別に分けて見ますと、海綿体注射、勃起補助具、それから陰茎プロステーシス、ペニスの血管手術、心理療法、となります。

表1 性機能障害の演題数    勃起障害の治療


(治療内容)
1996 1997 1998 1999 2000

内服療法 1 1 1 1 0 4
漢方薬 5 6 4 5 5 25
バイアグラ 0 1 0 29 50 80
その他 0 2 2 0 0 4
海綿体注射 9 4 4 1 2 20
勃起補助具 5 8 6 4 2 25
プロステーシス 1 2 4 5 0 12
血管手術 1 3 1 8 3 16
心理療法 7 4 3 2 7 23


 ED(エレクタイル・ディスファンクション)は、インポテンスといわないと木元先生が言いましたが、昔からある治療法は、強精剤、ホルモン剤、媚薬、漢方薬ですね。その後開発された「シルデナフィル」というバイアグラがあります。

 漢方薬は、「あれが効くんじゃないか」「これが効くんじゃないか」とずっと使われておりました。我々はあまり信用しておりませんけども。

 それと、ホルモン医薬は変わりなくずっと演題として出ておりますし、心理療法も、毎年ディスカッションされております。特徴的なのは、おととしの春、バイアグラが発売許可され使われ始めまして、秋の演題から、バイアグラ治療経験がたくさん報告されています。去年は50題も出ています。これらのよく分からない治療法、難しい治療法に代わって、バイアグラが主流になっているということが分かると思います。

 それ以外に、勃起する人は、ペニスが立ったときに根元をバンドで緊縛すると勃起が維持できるという簡単な補助具から、勃起しない人でも、陰圧で陰茎を吸い込んで勃起させて根元を締めるという方法があります。それから、海綿体に勃起させる注射をする、プロステーシスを陰茎に挿入する治療法が現実に行われています。


 図5は、陰圧でペニスを吸い込み、そしてゴムをポンと勃起したペニスの根元に落とす器具です。すると、締まったままで勃起が維持できるのです。これを勃起補助用具といいます。いろいろな製品が販売されております。最初のころに出てきた器具です。2種類ぐらいしか厚生省認可の医療器具はありません。

  図5 陰圧式勃起補助具


 この陰圧式勃起補助具の利点は、慣れれば安全に使えるといわれています。安価です。ところが欠点として、ムードを壊す、パートナーの前でこうしてやるのはちょっとムードが壊れる、煩わしい、勃起しても血流ができない、冷たい勃起になるといわれています。痛みがあったり、出血したり、失禁してしまったりということがまれに起こります。

 勃起させる薬剤をペニスに注射する方法もあります。注射してホテルに駆け込んだりするわけです。欧米では既にこんな注射器ではなくて、麻薬に使えないように、1回1回使い捨ての製品があります。日本では厚生省が認めておりませんので、医者と患者さんとの関係で、お互いに責任を持って使ってみましたということが、一部の施設で行われています。 薬は2種類あるのですが、安いほうは、時々副作用が起こります。もう一つの薬は1万円ぐらいします。この利点は、生理的な勃起が得られる確率が高い、手軽にできる、ムードを壊さないということがあります。しかし、厚生省は認可しておりませんし、お薬が高く注射するときに痛い、副作用がある場合があります。

 プロステーシスは、人の指を作るように、シリコン性の医療用材料を挿入して、縮こまらないようにするという手術法です。実際、図6のようにペニスの根元から切開して入れます。

  図6 プロステーシスによる勃起


 陰茎は、海綿体に血液がいっぱいたまり込んで膨れる臓器で、血液の固まりです。ここを拡張してシリコンを入れます。

 また、アメリカ製のエーエムエス・600 という製品があります。中に針金が入っておりまして、手で曲げれば曲がったままになります。上を向けたり、下を向けたりできます。でも、レントゲンに写るので、日本の患者さんはたいがい嫌がります。

 アメリカ製のシリコンで、長さをペニスのサイズに合わせて切って埋め込みむものもあります。脊損者は特にそうですけれど、欲張って大きすぎるものを入れると破れて出てきますので、ちょうどペニスに合ったサイズのものを使わなければいけません。

 中に液が入っていて、弁を触ると液がこっちに移ってフニャッとなる、刺激をするとピンと立つ、というものもあります。いいおもちゃですね。私も5例ほど手術をしました。手術する前に見ると非常によく出来ているなと思います。だけど、体の中に入ったらさほど効果はみられません。

 図7は手の込んだ器械で、かなり信頼度が高まっております。

図7


 欧米ではこのようなものが使われておりますが、日本では性に関する診断・治療の保険料は認められておりません。日本は非常に遅れているわけです。

 プロステーシスの利点は、手術がうまくいって普通になったら、いつでもセックス可能、ムードを壊さないという状態が死ぬまで続くことです。欠点としては、入院手術が必要ですし、生理的な勃起ではないことです。もっと元気なペニスにしてほしいと思うけれどそうはいかない。パートナーが燃える分、ペニスは血液がどんどん入っていくわけではないですから、相手が相対的に冷たいと感じることがあります。

  図8


図8は、私が総合せき損センターで開発した脊損・頸損ケア用のプロステーシスです。費用も安いし、一部がフレックスといって柔らかくなっていまして、曲げることができます。硬いプロステーシスは突っ張っていて、いろいろ危険なこともあります。

 頸損の男性で失禁する方は、集尿器をつけたりします。

 ペニスが縮んだり勃起したりすると、抜けたり締めつけたりするので、ペニスの潰瘍をつくりやすいのです。こういうことが起こらないように、失禁対策としても、プロステーシス手術を行っています。そのために開発したものでもあります。

 脊損の方は別に問題ないですが、頸損の方はペニスを引っ張り出すのも不自由、カテーテルを入れるのも不自由だといわれます。プロステーシスをすると、ペニスが長くなって簡単に操作できる。そういう意味で、頸損の方の自己導尿に役に立つ治療なのです。

 私どもの経験を少し紹介します。脊髄損傷者に対するプロステーシスの治療は、1981年から現在までやっております。それ以前は、古いタイプのもの、あるいはアメリカ製のものも使っておりましたが、1989年から、我々が脊損・頸損向きに「せき損センタータイプ」を開発しました。93例、合計157 例手術しています。

 成績ですが、93名の方に手術をして、アンケート調査を2回しました。残念ながら、回収率は50%しかありませんでしたが、頸損の方が12名、脊損の方が28名、それ以外の方が8名、年齢が43歳です。日本人の陰茎の長さの平均は17センチメートルです。12センチから22センチまで用意しています。

 その結果についてです。手術の結果、93名のうち86名、92%の手術が成功しています、時々、患者さんに感染があるのです。昔は、感染率が5%ぐらいと高かったのですが、今はほとんどありません。術後、感染していた人が93名の中で5名います。サイズの不満、もっと大きいのを入れてくれという人が1名、痛みのために入院していた人が1名おられます。勃起障害の対策として、患者さんの評価は、満足が38%、どちらともいえが50%、不満が12%です。 期待するほど生理的なものではないわけですが、勃起障害としては、それなりに意味があると理解して下さい。

 ほかに性の問題で、子供が欲しいという方がおられます。特に若い方も脊損はなかなか射精ができません。精液が採れにくい、採れた場合でも精子の条件が悪いので、婦人科の専門の先生と協力しながら子供をつくる努力をしています。

 米国からシーガ博士がせき損センターに器械を持ってきてくれました。せき損センターでも電気刺激で精液を採る脊損の生殖医療を行っています。

  図9


 これは、お尻から電極を入れて電気刺激をして、出てくる精液を採るという方法で、外来でもできます。月曜日に予約制でやっております。シーガ博士は、もともとパンダとか稀少動物の授精用に開発された器械を、人間向きに作り替えた方です。これで5名、妊娠・出産に至りました。 これも多くないですけど、もっと患者さんが希望してこられれば、増えるのではないかと思います。


 最後に、私のところで『脊損・頸損者のための性と出産のガイドブックを一般の方に読んでいただけるように、出しております。ただ7〜8年前なので、バイアグラの話は全然出ておりません。日本ではバイアグラが、まだ保険に認められていないというのが問題だと思います。

 ご静聴ありがとうございました。


 『脊髄損傷者のための性と出産のガイドブック』、1996年、三輪書店。

  図10 





 ■ 福岡講演会・質疑応答

 質問1 私は72歳で、頸損で9年になります。私は、恋愛でセックスが好きで、若い人たちも、脊損の方がいたら悲観しないでやってください。まず私からお礼を申し上げます。私もバイアグラはここで4〜5回もらいました。家内だけでなく、5年間かけて、人生もう二度とないとの思いで援助交際までしている状態であります。バイアグラで勃起はして、性感覚の点で私個人的に研究してから後、導尿パイプは少しばかりはめて、コンドームはよくはめて、圧力でおしっこは出ないだろうと、そういうことまでやりました。導尿するときは、精液は後で出るものだなと思いました。若い人たちは、セックスは復帰してから、いろいろ方法があるので、実際少しずつやってください。ビデオなどで勉強して、そうしないと生きがいが駄目になってしまうと思いますので、自分自身で元気づけてやってください。

 質問2 27歳の息子がいるのですが、精子があまり出ていないと検査で言われたのですが、今後もずっと続くものなのでしょうか。

 岩坪 今のご質問ですが、精子というのは健康な間は睾丸で出来ます。脊髄損傷でまひになりますと、生成する能力が落ちますので、どうしても精子の数が少なくなるとか、正常でない未熟な精子しか作れないという状況になります。私の特殊外来で、電気射精法で調べた精子の数は大概の方が少ないです。しかしながら、無くなるということはないですね。数は変動しますが、数が少ないのと、元気がない、運動している精子が少ないです。これはまひがありますと、しょうがないことです。でも、子種がないというわけではありません。

 子どもをつくるということに関して言えば、今のところ「顕微授精」というものがあります。これは婦人科の先生とタイアップしています。まず精液を採る、採った精液の精子を純化して、奥さんから採った卵に受精させて、また奥さんのおなかに戻します。この方法だと、妊娠する可能性が非常にあります。実際、せき損センターでも5名生まれています。タイアップしている婦人科の先生を紹介しています。

 要するに精子の数がどうかというのは、子どもができるかどうかということでしょうか。それを調べることはできます。ただし、睾丸がはれるとか、おしっこが濁っていて、睾丸炎、副睾丸炎になられると、せっかく出来ている精子も出てこなくなります。だから、管を入れたままにしておくなど、おしっこの管理をいいかげんにすると、睾丸の機能にも合併症を起こします。おしっこも大事です。もともと精子の機能は落ちていますけど、子種がないわけではありません。医学は進歩していますので、子供をつくることは可能です。調べられるといいと思います。一般の泌尿器科ではなかなかしてくれませんが、せき損センターか、福岡市内でしたら原三信病院でやっております。私どもの友人の医者がおります。そういうことでよろしいでしょうか。

 質問 受傷部位は関係ありますか。

 岩坪 受傷部位はほとんど関係ありません。ただ、脊髄の末梢神経といいまして、勃起しないようなまひになった人、非常に低い腰の骨が折れるとか、腰から下の外傷の人の場合にはけいれんがありませんので、完全まひであれば重篤ではないかと思います。まひのレベルよりも、全然神経が残っていないのか、いくらか残っているかが問題ですね。受傷部位の高さはあまり関係ないです。

 質問3 私は53歳です。妻と26歳も年が違います。バイアグラを服用する前、何も知識もないままセックスをして、ペニスが骨折したらしいです。自分では折れたとか気づかないまま、次の日、はれあがって何だろうなと思ったのですが、3カ月に1回の検査の時に、岩坪先生にそのように説明を受けました。その後の導尿も入らなくて、すごく困りました。まだ、今は退院していないのですが、スムーズに導尿ができるようになりました。ペニスがまさか骨折するとか自分自身も知らなかったので、皆さんもこういう経験をしないように、そういうことも詳しく教えてやってほしいです。

 岩坪 ペニスが勃起しますと、血液が充満して硬くなります。滑ったり、打ったりすると、骨折と言われましたが、骨折みたいに曲がるようになります。それは、しばらくすると引きつれみたいになって真っすぐ立たなくなります。それと、脊損・頸損の指導で、デュシャーム先生が言われたように体位の問題で、無理な体位をとったり、滑ったりということで注意しなければいけないのは、陰茎が折れる、曲がるということがあり得るということです。また大腿頸部骨折は、まひのある人は、どんなことであっても起こりやすい危険をはらんでいます。セックスのときも難しい体位をとらないように、安全を考えることが必要ですね。

 質問4 今の問題にも関連しますが、男性脊髄損傷の方がセックスしやすいような椅子の開発が可能ではないかと思いました。車椅子の利用はいろいろ障害がございます。セックスがしやすいように背もたれがリクライニングすること、椅子の足の高さが変えられること、女性のパートナーが、前からでも後ろからでもインサートができるようなシンプルな形であること。そういった椅子ができましたら、非常に安定した姿勢で、それから女性のほうもコンフォタブル(快適)なセックスが楽しめると考えておりますが。

 デュシャーム 一般に男性が脊髄損傷者の場合に考えられることは、車椅子の安全ストッパーなどの工夫はできるでしょうが、特にそれのための椅子といったものは聞いたことはないです。でも、いい考えかもしれませんね。

 質問 ぜひ必要だと思うのです。姿勢の変換など無理が出てまいりますから、皆さんがリラックスしたセックスを楽しめるために、椅子に座ったままの姿勢でなさるのがいちばん適正ではないかと思います。素人目ではございますが。

 デュシャーム 特にアメリカで、そういう調査がされているなどの話は聞いたことはありません。また、それを作るためにお金が必要であろうということで、なかなか難しいのではないかと思います。

 岩坪 本日のデュシャーム先生のお話のいちばん大事なところは、セックスというのは、物理的にペニスを女性の膣に入れるということではないのです。両性の愛情、心のつながりというのが基本になければ、どんな器具を使っても本末転倒であります。

 実際、障害者にいろいろなお話を伺いますと、物理的にはセックスはできないけれど、非常に仲がいい、愛情いっぱいでお互いに信頼しているといいます。もし、その信頼関係がなければ、「自分が障害者になったから妻に男ができるのではないか」「自分は妻に満足させられていないのではないか」、と嫉妬心や猜疑心が起こり、いろいろな家庭破壊、人間関係の破壊が起こります。

 そうではなくて、セックスというのはお互いの愛情の表現で、どんな方法でもいいわけです。「泌尿器科医は、ずばりペニスを膣に入れるという発想からいく」、日本の男性はそういう先入観が強いです。特に、ビデオを見て、あんなにできるのが当たり前だと思っています。そこのところの心の問題、脊損になられた方がよく考えるべきことで、ヒューマニティー(人間性)というのがセクシュアリティと同じだという大事なところをお話になったと思います。

 メカニカルなことはプロの人がしますが、サイコセラピーとか医学的な情報を患者さんに正しく伝えて、しかもパートナーシップの問題を克服するということが、いちばん大事なことではないかと思います。すみません、少しコメントをさせていただきました。

 司会 質問が一つ参っております。「男性器から女性器へ尿が移って、女性が膀胱炎になりますか。対策としてはコンドームという方法のみでしょうか」、こういうご質問が来ました。

 岩坪 大事な質問だと思います。セックスの場合、健常者でも、肝炎やエイズのウイルス、淋病、梅毒などの感染があります。パートナーに対して十分な配慮が必要です。女性の場合は、そうでなくても膀胱炎になりやすいということがあります。もしも男性が、セックスの最中に失禁すると、女性が上位であれば、直接たくさんの尿が膣に入ることはないと思います。しかし、男性の尿が感染していれば、膀胱炎の菌がうつるかもしれません。そういう意味で言えば、コンドームを使うということは、衛生的にも、感染を起こさないためにも、パートナーに対する配慮ですね。これ以外にはなかなかないと思います。失禁する人は、コンドームをつけてセックスをするということが、常識的な対応だろうと思います。必ずしも膀胱炎になるというわけではありませんが、可能性はあります。どうしても心配なら、抗生物質を内服するということも、臨時に考えられるかもしれません。

 質問5 私は頸椎の5番、6番をやられまして、それまでは全然気がつかなかったのですが、もともと若いころから頸椎が悪かったと知らされまして、だから若い時から駄目だったんだなという感じでした。先ほどからバイアグラの話が要所に出てきていますが、まだ一度も使ったことがありません。細胞が感じないわけではないですが、パートナーとのスキンシップもありますし、一緒に生活をしていきたいという気持ちが強いものですから、少しは何とかならないものかなと考えておりました。

 バイアグラが出てきても、知識がないものですから、心臓に関することが盛んにいわれていますし、心臓に障害があるとか、血液の検査をしなければいけないなどという話も聞いております。私は中性脂肪が多いので、中性脂肪を抑えるような薬を頂いているのですが、それに対しての指示がありません。どのぐらいの人までがそういう薬を使っていいのかというのをお聞きしたいです。

 司会 まず、先生にお聞きする前に、この会があるということで、先日、私もデュシャーム先生に処方していただきました。その際の検査は、心電図を測る、血圧を測る、この2点がありまして、あとは問診です。特に難しい問診はなく、ニトロ系の薬を飲んでいるかというところがポイントだったようです。血液検査としては、アメリカに比べては面倒くさいですが、二の足を踏むほどでもないです。

 木元 私の講演で話したと思いますが、バイアグラは心臓にとっては非常に安全な薬です。もともと心臓のための薬ですから、心臓の能力をむしろよくします。心臓の病気と勃起障害というのは、お年を取った人は合併することが多いのです。そういう時速6キロぐらいの歩行ができないような人がセックスをすると、心臓に負担がかかって事故を起こすのです。バイアグラ自身で起こるわけではないのです。

 去年、アメリカのプリンストン大学というところで、循環器などいろいろな医者が集まりまして、会議を開きました。フローチャートという、こうしなさいという表ができているのです。それに当てはめていけば、全く安全に処方できます。受診していただいて、そのフローチャートに当てはめていって、危険因子をチェックするのです。例えば高脂血症があるとか、たばこを吸う、太っている、糖尿病がある、血圧が高いとか、そういったリスクをチェックしていって、あなたは出しましょう、あなたはちょっと危ないかもしれないから循環器内科を調べてもらいましょうというふうになっています。だから、それは受診されたら問題ないと思います。

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 広瀬 時間もそろそろ迫ってまいりましたので、最後に私ども「日本せきずい基金」についてPRをしたいと思います。

 せきずい基金の最終的な目標は脊髄の再生です。車椅子から立ち上がろう、脊髄のけがを治してしまおうということを目指して、みんなで頑張っています。頑張っている連中が私を始め、会長は完全に足が不自由で、Cの3番辺りの頸損です。それから、事務局長もCの3番です。ほとんどが車椅子で、実際、活動しているのが7〜8人です。なかなか思うように動かないところもあるのですが、こういう会を催したりして、いろいろ活発に運動しているつもりであります。

 また、年に4回、会報を出しております。脊髄の再生の技術は世界でここまで進んできたとか、脊髄損傷に関する情報を皆様にお届けするために、一生懸命、外国の情報や日本の先生の情報などを頂いて、1万2千部以上を発行しております。

 特に会員入会の申し込みをする必要はございません。ただ、会報が欲しいんだ、協力する気があるんだ、とそれだけで結構です。会費も要りません。たまに、小遣いがちょっと余ったからと、気持ちご協力いただけると大変助かります。何しろ、すべて募金によって成り立っている「日本せきずい基金」ですので。

 それから、活動資金の調達方法の一つに、チャリティオークションというのをやっております。コンピュータをやっていらっしゃる方はご存知かと思いますが、yahoo のオークションのトップページに、チャリティオークションというコーナーがございます。そこに、いろいろな有名人のかいた色紙、あるいは使っていたものなどを出して、落札していただいて、その売上金を我々の会のほうで使わせていただいております。ですから、私の親戚にいる、あるいは私の息子は有名人だよ、などありましたら、ぜひご協力いただきたいです。そういう援助の方法もありますので、よろしくお願いいたします。

 それから、今回、デュシャーム先生が、セックスに関するアメリカのビデオを持ってきてくださいました。これを私どものほうでダビングしまして、英語部分を日本語っぽくサブタイトルを入れようと思いますが、字幕スーパーを入れて、無料でお貸し出しいたします。

 今日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。岩坪先生、木元先生、ありがとうございました。

 Thank you very much Dr.Ducharme. 

 また、これを機会に「日本せきずい基金」もよろしくお願いいたします。




 ■ 会場アンケート 東京・福岡

【7月21日・東京】 参加者:150名

博士の講演はとても三項になりました。パネルディスカッションはメンタルな部分、男性脊損者にかたまってしまいました。

セクシュアリティの問題は、障害のない者にとっても難しい問題だと思います。質問の中にもあったように、異性間同士の関係の中だけではないのだと思います。私は学校で社会福祉を学び始めたところで、「障害者のセクシュアリティ」についてちゃんと考えたことはありませんでした。今日お聞きしたことは難しいものでしたが、いろいろなことがあるのだなと思えてよかったです。

 講師のスタンレー・デュシャーム医師に聴いてみたいことがあります。10代などで若くして脊損になった場合、恋愛観や性に対する価値観がどのように変化するか、どのように脊髄損傷が影響しているかということです。ナースとして日ごろ脊損者に関わるほかにも、友人、時には恋愛のパートナーとして多くのつきあいをしていますが、無意識のうちに脊損者が恋愛のパートナーとして健常者を選ぶ傾向があるように思います。しかしそれがその人との人間形成(人間的成長)にどんな影響があるのだろうか、それでよいのか、と思うことがあるのです。

 「脊髄損傷者の性教育」
ビデオを作ってみたらどうかと思うのですが……


 セクシュアリティは性交渉ができる能力があるなしの問題ではないとわかったこと、自分が男性・女性であることがどういうことなのか、一人ひとりよく考えることが必要と思った。

 アメリカの病院内で夫婦のプライバシーを守る場を与えられ、そこで分かった問題をすぐに病院内の専門スタッフに相談できるということを聞き、やはり夫婦が単位とされ、夫婦関係が尊重される社会、価値背景があると思いました。 日本は夫婦の関係が、ただ子どもを作るだけとか、性交をするためだけにあるような文化・価値背景では、物理的・生理的な取り扱いだけではなく、夫婦のよりよい関係性の構築のための心理的要素の必要性,命の、性の価値についてしっかり討論・相談し、その意義を深く理解する教育が必要と思いました。

 受傷直後の方にとって大きなサポートは同じ体験をした人々であると聞き、体験者の中からピアカウンセリングの現実などを聞きたいと思いました。

 私は看護学生で、脊髄圧迫骨折の29歳の男性と3週間関わらせていただきました。私は非常に未熟で、性に関してどう返答していいのか分からないまま実習を終えました。何をどう感じ、考えられているのか、周囲や病院スタッフは何ができるのか、分からないと患者さんはもっと苦しくつらい毎日になってしまうので、実習後ですが、こういった会に参加させていただけたことにより、わかったことも増え、勉強になりました。

 非常に大事な問題であるが、これまで不問に付されてきた。ごく新しい問題として、これから障害者仲間にも伝えていきたい。

 私は一般で参加させていただきましたが、身近には障害を持つ方はいません。ここ半年、ヘルパーの資格をとったりして脊髄損傷者についても興味を持っていました。しかし、性への問題がとても深刻な問題とは考えていませんでした。講演会の中でどなたかが「世間の人は、障害者のセクシュアリティを興味本位でしか見ていない」と……。

 私もその一人でした。そう感じさせられました。もちろん今は、世の中の人の考えを変えていかなければいけないんだなぁと思いました。バイアグラを本当に必要としている人たちの気持ちを今まで考えたこともなく、とても恥ずかしく思いました。今の私には協力できることがありませんが、もっと脊損について学び、すこしでも自分の周りの人たちに、今回学んだことを話していければと思いました。  バイアグラの保険適用はどうなるのか。女性の障害者のセクシュアリティなど、相談窓口ができていくのか?


【7月29日・福岡】 参加者:70名

 臨床心理士の動きがまだ低いと思われる日本で、看護婦として受け止められる器を持ちたいと思いました。脊損の方にかかわらず、性の問題がもっとオープンになるよう働きかけが必要ですね。本日はたいへんよい話を3名の先生方より聞けたことに感謝しております。(看護婦)

 本日の講演はとても参考になりました。私はせき損センターの訪問看護婦をしています。セクシュアリティな質問はなかなかできないのですが、質問されたときに話をすることができると思います。セックスだけでなく、生活が送れるよう少しでも力になりたいと思っています。

 女性の頚損・脊損者の性交や出産には障害はないのでしょうか。産科のドクターの参加がほしかった。どれだけ出産できているか知りたかった(性交や体外受精、顕微受精について)。(32歳男性・受傷暦10年の親)

 入院中のPTの指導として今後バイアグラ(例えば外泊時など)の使用が増えると思われますので、今回の講演でヒントを得たように感じました。(看護婦)

今、コンチネンスの勉強を始めたところです。タイトルを見て興味がわき参加しました。思っていたとおりショッキングなリアリティある講演で鳥肌が立ちました。これからの仕事の上で参考にさせて頂きたいと思います。またせきずい基金へぜひ協力させていただきたいと思います。(看護婦) ■



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