パネルディスカッション
<パネラー> スタンレ−・デュシャ−ム
牛山 武久 (国立身体障害者リハビリテーションセンター副院長、泌尿器科医師)
今崎 牧生 (心療内科医師、当事者)
<司 会> 坂上 博 (読売新聞社・医療情報部記者)
司会(坂上) それではディスカッションを始めたいと思います。お1人一言ずつ、自己紹介をお願いできますか。牛山先生からお願いします。
牛山 国立身体障害者リハビリテ−ションセンタ−の泌尿器科の牛山といいます。よろしくお願いします。
今崎 心療内科の医者として町のクリニックで勤務しております。9年前に頸椎の5番を受傷しました。その前から心療内科で医者をしていたので継続的に今も医者を続けている、今崎といいます。よろしくお願いいたします。
性機能障害の治療法
司会 それではまず牛山先生から日本の現状についてお話しいただけますか。
牛山 デュシャ−ム先生のアメリカについての詳細なご報告を聞いて、それに対応して、日本の現状についてお話ししたいと思います。
日本における脊損の発生率は 100万人当たり40人で、だいたいこれはアメリカと一緒です。したがって、年間日本では
5,000人、アメリカではその倍くらいです。
それから、今、脊髄損傷者は日本では10万人、アメリカでは30万人いるといわれています。日本の人口はアメリカの半分ぐらいですから計算上はもう少し多くてもいいのですが、ちょっと少ない統計になっています。その男女比は一応私の認識では3対1、つまり4分の1が女性で4分の3が男性ということになっています。
受傷年齢の特徴は、アメリカでは平均26歳とありましたが、日本は2層性、つまり20代から30代に1つの山があって、それから50代、60代にもう1つの山があります。
性については、男性は勃起と射精、女性は妊娠、出産という問題があります。勃起率とその維持については世界的にほぼ同様の傾向にありまして、日本とアメリカを比べて特に差はないと思います。反射性の勃起というのが脊損の方にはあるわけですが、勃起率は、損傷レベルによって違います。
頸髄損傷のように脊髄の上の部分が損傷された場合は「反射性勃起」があるので、勃起不全のパ−センテ−ジは少ないわけですが、勃起の維持という点において問題があります。勃起すればそれが必ず持続するのではなくて、3〜5分ぐらいしか勃起を維持できないという問題があります。
射精に関していいますと、射精できる率は10パーセントぐらいです。いかにして人工的に射精させ子どもをつくるかが今、1つの大きな課題になっております。
治療に関しては、バイアグラ以前とバイアグラ以後とでは大幅に変わりました。先ほどの講演で、プロステ−シスのスライドが出てきましたが、日本でも昭和50年代から60年代にかけて、シリコンの棒のようなものを陰茎に埋め始めました。それがはやったかといいますと、値段の関係もあったりして、必ずしもはやったわけではありませんが、一部の病院ではやりましたし、私もそういう経験はあります。
もう1つは、「陰圧式勃起補助具」というのがあります(38頁参照)。原理を簡単にいえば、掃除機のホ−スのような器具に陰茎に入れて陰圧をかけると、血液が吸われて勃起する。陰茎の根元をゴムで締めることによって勃起の状態が保てる。
もう1つは、陰茎海綿体に血管拡張剤を入れる「自己注射」です。塩酸パパベリンやプラスタグランディンE1*というような薬を直接陰茎に注射する〔注:血管拡張作用がある〕。
そのような方法で勃起はある程度得られておりましたが、バイアグラが出現して以来、第2の選択肢になりまして、第1の選択肢はバイアグラとなりました。脊損に関するバイアグラの有効率は現在60パーセントぐらいで、バイアグラ無効例に対しては今いった方法を取らざるを得ない。
デュシャ−ム先生はおっしゃいませんでしたが、射精に関しては、バイブレ−タ−による刺激と電気刺激があります。電気刺激は、肛門から電極を入れて、電気で刺激して射精させる。80パーセントぐらいの成功率です。バイブレ−タ−は、頸損では50〜60パーセントの成功率があります。問題は、精子の運動率が悪いとか、精液が汚れているということがあって、必ずしも子どもをつくることに全てが成功するわけではありません。これは後ほど討論になると思います。
もう1つは、「精巣上体切開法」というのがあります。睾丸の上にある副睾丸を直接切って精子を取り出すというようなことをやっております。今の私の報告はここで止めたいと思います。日本とアメリカとではやや日本のほうが遅れている点も多いかと思いますが、それは後ほど討論の中でいろいろと考えていきたいと思います。以上です。
セクシュアリティの喪失と回復
司会 ありがとうございます。では、今崎さんの方からご自身の体験を述べていただくとともに、性の問題に突き当たった時の心理的な変化についても教えていただければ、と思います。
今崎 はい。きょうは当事者としての立場からいろいろ話をしてくれないかというふうに頼まれて、どうしたものかなと思って、とても困ったりしていたのですが。
セクシュアリティの問題というのは、心理的には多様な問題を含んでおります。当然、恋愛の問題であるとか、体の機能の問題であるとか、いろいろな問題を含んでおりますので、ぼくなどが語ってもいいものかどうかと、ちょっと自信のない状態でお話しさせていただきたいと思います。
横に連れているのは、介助犬のワカです。今は家庭犬が常識ですし、彼も家庭の中で飼っています。オスですが、去勢されているので彼も一応セクシュアルなインペアメント(機能障害)を持っているということになりますが、メス犬がいれば楽しそうに尻尾を上げて、悩んでいる様子は全くない、幸せそうに暮らしております。私のほうは、それなりに悩むこともいろいろと今までの経験上ありましたので、そういったことを少し話してみようかと思っています。
ぼくは10年前に交通事故で脊髄を損傷して四肢麻痺の状態になりました。デュシャ−ム先生もおっしゃっていましたけれども、やはり、受傷後すぐというのは当然のことだと思うのですが、これからの生活をどうしていこうかという、サバイバルのことがいちばんの問題になります。そのことについてどういう対策をしたらいいのかということで頭の中がいっぱいで、なかなかその次のところへは考えが及ばない、また考えたくないというような気持ちも当然のこととしてありました。
特にセクシュアリティの問題については二の次、三の次ぐらいで、そのことを考えるのは、自分にとってとてもつらいことだったのではないかと思います。まずは生活を成り立てていくということを第一に考えました。
いったん街に戻って生活を始めたのですが、自分が障害者であるというアイデンティティを強く持って生活していかなければいけないのと同時に、ぼくの場合はとにかく仕事がしたい、仕事を続けたいというのがいちばんの気持ちだったので、そこに自分のアイデンティティを持っていこうとしました。
心療内科という特殊な心理を扱う部門の医者なので、手が効かなくても何とかなるだろうということもありましたし、まわりの方々も非常に応援してくださったのでやってこられました。手足が動かないので、緊急時にすぐに動くことはできないけれども、まわりのスタッフの人たちと足並みをそろえて、自分にできる仕事を選択しながら少しずつふやしていくことによって、自分が置かれている職場環境の中でのポジションとか役割を獲得していくこと−−それが、受傷後5年間ぐらいまでは自分にとっていちばんの課題でしたし、そのために全てのことを費やしてきたと思います。
当然、そこでは医者というアイデンティティと障害者というアイデンティティがごちゃごちゃになってしまうので、そのことを自分はどう処理したらいいのかということを常に考えておりました。あるカンファレンスに出て患者さんのケ−ス報告をするわけですが、心理的なことを専門としていますので、いろいろな勉強のために自分1人ではやれませんので、必ず、例えばス−パ−バイザ−がいるとか、自分のやっていることを評価するシステムを保ちながら心理の仕事をしていきます。そういう勉強会の中で、自分はこういう症例を持っているので、こういうところはうまくいっているけれども、こういうところはうまくいっていないんだ、というようなことを語るわけです。
その中で、相手のことだけではなくカウンセリングをしている側、つまり、医者の側は一体どんなふうに受け取られているのかというようなことが問題になるわけです。相手の中でのセラピストのイメ−ジであるとか、セラピストに対する受け取り方というものをセラピストのほうでは把握しなければならないわけですが、ぼくの関心事は、やはり、医者と障害者というところになってしまうわけです。
そのとき、僕はたまたま女性の患者さんのことを発表していたのですが、一緒に勉強しているグル−プの若い女性に、先生の発表には「男だ」という視点が欠けているのではないかと、「先生も男じゃないですか」といわれて、はっとした、ということが2年目ぐらいのときにありました。
自分のセクシュアリティみたいなものをどこか否定して抑えているんだな、ということにそのとき気づきました。同時に、若い女性から「先生も男じゃないですか」といわれれば自分も嬉しいわけだし、こういう積み重ねというんでしょうか。<セクシュアリティを持った人だ>というふうに認識されているということをコミュニティの中で積み重ねていくことが、自分のセクシュアリティを回復していった、喪失から新しいものへと回復していった1つの原動力になっていたというふうに考えています。
司会 ありがとうございます。聞いていると、やはり、受傷後から心理的に微妙に変化していくのがよくわかりました。今度は、受け止める側のお医者さんとして、牛山先生はどういうスタンスで、どういう態勢で対応されているのでしょうか。
患者にどう接するか
牛山 性の問題について、医者のほうに入院当初に質問してくる人は非常に少数で、退院近くになって質問してくる、あるいは治療を求めて来るケ−スが多いです。先ほど、アメリカでは受傷後2、3日以内にそういう問題について話をしていると聞いて、かなりアプロ−チが難しい問題を早くからやっているな、と私は感じました。その方法論は講演の最後のほうにおっしゃいましたけれども、いきなり全てをいうのではなくて、「アプロ−チできるところからアプロ−チする」とおっしゃっていましたので、いきなり「あなたは立たないですよ」というようなことはいわないと思うんです。
というのは、サポ−トが必要なわけです。何かを宣言するときには、それに対するショックがありますから、そのショックをカバ−するスタッフもいなければならない。医者がいっても、看護婦が必ずバックアップするというのが今のわれわれの医学の方法ですから、そういうサポ−ト体制を確立した上で告知していくと。
それから、必ずそれを治すあるいは補助する手段をこちら側が持っているということが重要だと思います。医者のほうは学会などで情報が入ってくるのですが、看護婦のほうにはあまり情報が入って来ないので、病院内で勉強会を開いて討論するとか、外来やリハビリの病棟では性に関するパンフレットを用意しておき、質問があったときにすぐに答えられるものを準備しておくことはやっております。
司会 神奈川県総合リハビリテ−ションセンタ−の石堂哲郎先生がいらっしゃっておりますので、石堂先生はどういうスタンスで患者さんに対応されていらっしゃるのか、病院ではどういう態勢になっているのかをちょっとお話しいただけないでしょうか。
石堂 神奈川県総合リハビリテ−ションセンタ−病院の泌尿器科の石堂と申します。今のご質問ですが、私たちの病院では年に2回、「脊損と性」という講演会を開いています。対麻痺の場合は6カ月ぐらい、四肢麻痺の場合は約12カ月で退院という目標がありますので、1年に2回やればどちらかの会に参加できるという予想で「脊損と性」という講演会を開いています。
司会 わかりました。ありがとうございます。日本では、病院からの情報提供が少ないということを患者さんから聞くことがよくあるんですが、今崎先生、一般論としてどうなんでしょうか、そのへんについては……。
今崎 今までは1つの日本の風土的な状況として、例えば、脊損、頸損の場合はまだ進んでいるのですが、他の先天的な問題がある場合は、「寝た子を起こすな」論理というのが古くから根強くあります。「セクシュアリティを持っているということに触れることは、非常にその人を傷つけるのではないか」というような懸念があり、やはり、看護婦さんやスタッフはそのへんを非常に気にしておられるということを、医療現場にいて思うんですが……。
司会 逆に患者さんの立場から見ると、どう感じられますか。
今崎 それは確かにその通りだという気もします。伝わり方であるとか、教えてもらい方であるとか、どういう場でだれからというようなことはとても大事なことです。一方的に紋切型でやられると、確かにやりにくいという点もあります。
それ以前の問題として、例えば、ここに来られている先生方は非常に豊富な知識と、また、ご自身が開発されたいろいろな手法などを身につけておられる第一線の先生ですが、これがちょっと地方に行ってしまうと一挙に情報量としても、また技術提供量としても落ちてしまうというようなことがあります。関東近辺の方は比較的恵まれているかと思いますが、これがより地方に広がっていくと格段の差があるのではないかと思います。
司会 せっかくなのでデュシャ−ム先生にもお聞きしたいのですが、先ほどお話に出ましたリハビリテ−ション・プログラムというのは、アメリカ全土で統一的なプログラムが受けられるものなのでしょうか。それとも病院ごとにまた違ったものがいっぱいあるというような状況なのでしょうか。
デュシャ−ム リハビリテ−ション・プログラムは大きな病院のほとんどのところにありますが、それはその病院のドクタ−の見解とかスタッフの意見を反映しているので、内容自体は全部が同じではありません。何が重要かということもその病院のドクタ−やスタッフが考えるので内容は変わってきますが、スタッフ全員が患者さんにかかわる上で責任を持っている点は同じです。
司会 牛山先生、日本においての地域間格差とか施設間格差というのは、どんな感じに捉えられていますか。
脊損リハビリ施設
牛山 歴史的にみると日本では労災病院が取り組んできました。例えば関東地方では、関東労災病院、東京労災病院、横浜労災病院などありますが、脊髄損傷の方を早くから受け入れてリハビリテ−ションが行われておりました。北海道では美唄労災病院、九州では総合せき損センタ−、山陰では山陰労災病院というような拠点病院はあります。
その後、神奈川県総合リハビリテ−ションセンタ−病院や国立身体障害者リハビリテ−ションセンタ−ができまして、そこで脊損の方のリハビリテ−ションをやっております。
関西、九州にも大きな拠点があり、さらに小さいものではいくつかの県にリハビリセンター病院があります。その病院の泌尿器科の医者がおもに性に関するリハビリをやっていますが、泌尿器科の医者がいないところもあります。そういう情報はどうやって入るかというときに、日本パラプレジア医学会(現、日本脊髄障害医学会)で情報交換しているのが現状です。
司会 わかりました。先ほどちょっと今崎先生が触れられましたが、日本の障害者にとって性のタブ−視という問題がありますが、そのへん、お仲間の中でもこういう話はあまり触れたくないというイメ−ジはあるのでしょうか。
当事者の受け止め方
今崎 どうでしょうか。このへんは、普通は障害があろうがなかろうが、あまり細かい話はしないと思うんですね。しかし、障害を持っている場合には、非常に身体的・具体的なことは現実的問題になっているということもあって、実際に必要な情報はあるけれども、そういう話を仲間うちでやるということは一般的にはあまりないと思います。
同時に、そういうことをみんなも問題だと感じていて情報もほしいと思っているので、障害者のグル−プの会合やあるいはピアカウンセリングの場所というようなところでは、かなり以前からセックスの問題や子どもをつくる場合の問題は取り上げられていました。
司会 もう1つ、デュシャ−ム先生にお聞きしたいのですが、アメリカと日本の性の扱われ方についての問題です。日本よりもアメリカのほうが性の問題について重要視するということをよく聞きますが、患者さん自らが性に関する情報をほしがって病院に来るというような感じなのでしょうか。それともアメリカでも医師の側から、躊躇しながらも、情報を提供しているのでしょうか。
デュシャ−ム アメリカの社会においては一般的に、障害者はセックスについてのいろいろな要求や性欲はないというふうに思われています。そういう意味では差別があります。だから、<障害者には性欲がないので、平均的な人たちとは違う>というような捉え方をされています。
したがって、患者さんは病院でドクタ−にこういう質問をすることをためらってしまい、自分の将来のいろいろな性の機能や能力などに関して、どういうことになるのか、はっきり捉えられないというのが現状です。そして、いったん退院してしまうと、今度は性についてのいろいろな問題に関して、質問したくても質問に答えてくれる人がまわりにいないので、結局孤立してしまいます。
ある研究によりますと、脊髄損傷の方は退院してコミュニティに戻っても、やはり、仕事や社会などいろいろな点で引っ込み思案になってしまい、自分だけで孤立してしまうということが報告されております。
司会 ありがとうございます。せっかくなので「自立ステ−ションつばさ」のFさんに、できましたらご自身の体験を含めてどのような悩みを持たれたのかお話しいただきたいと思います。
バイアグラの保険適用を
F: こんにちは。私は2年前にのせきずい基金が開催した「障害者の性」の講演会のときもちょっとお話しさせていただきました。
まず先生にお聞きしたいのは、バイアグラは「日常生活改善薬」という位置づけでしかないので全く保険が効かないと思うのですが、それは依然として変わらないのでしょうか。日本では50ミリグラムぐらいまでしか出してもらえないのですが、私の場合は25ミリグラムが1錠
2,000円でした。2,000円という金額はそれぞれの医者の意思によって多少変えることができるらしいのですが、その額は安くならないものなのでしょうか。
私はちょっと興味があったので調べたことがあるのですが、輸入するほうが安いんです。25ミリグラムの場合は1,280円ぐらいで、日本で医者に出してもらうよりも安いんです。自分で逆輸入して買ったほうがよっぽど安いんです。しかも50ミリグラムとか
100ミリグラムとかも手に入ります。
EDの方はある程度病気と認められていますが、私たちのような脊損、頸損の場合は薬を使わなければ勃起しない、薬を使わなければできませんので、精神的に引け目を感じたり恥ずかしいと思う面もあります。わざわざ高い金を出して薬を貰うということは、ばからしさと恥ずかしさがあってなかなか医者に行く気になれません。
だから、もっと医者の立場から保険適用に動いて頂きたいと感じています。私たちも声を上げなければいけないのですが、薬価の面で保険が効いたり、アメリカのように無料配付してもらえるようになれば、私たちも使いやすくなります。こういう生理的な問題がどんどん社会的な問題として上がってくれば、もっと日常的に討論できると思います。
それから、今、病院の中でリハビリが取り入れられているといいましたけれども、主要都市の大きな病院ではリハビリが取り入れられていると思いますが、小さな町の小さな病院でも取り入れられているかというと、多分疑問符がつくと思います。だから、例えば事故後担ぎ込まれた病院が専門の病院でなかったらアンラッキ−、専門の病院であればラッキ−というふうになってしまいます。脊髄とか頸髄を損傷した場合、最初に担ぎ込まれた病院がいいか悪いかで、それから先の生活がだいぶ左右されてくると思います。私もそれを経験しているので、やはり底辺の小さな病院にも徹底してリハビリを取り入れていかないことには、本当にどんどん遅れていくばかりですから、まず、日本はそこのところを考えてもらいたいと思います。以上です。
司会 ありがとうございました。せっかくですから、牛山先生からバイアグラの状況と日本の現状をご説明いただけますか。
牛山 バイアグラの保険の適用は未だになっておりません。1錠25ミリグラムと50ミリグラムの値段の差というのは、うちの病院でも
100円ぐらいの差でしかありません。だから、50ミリグラムを買って、それを半分に切って飲むというような患者さんもおります。それから値段は、自由診療なので、いくらで売ってもいいことになっています。うちの病院の近くの開業医の方は1錠2,000円位で売っています。うちでは
1,200〜 1,300円で売っていますが、ほとんど利益がないような状態で、これは国立病院としては問題なんですけれども。それから、バイアグラを保険に乗せろという話は全国脊髄損傷連合会の妻屋会長がやっておられますので、一言お願いしたらいかがでしょうか。
司会 患者さんの仲間うちでどのようなご意見を持っている人が多いか、についてお話しいただけますか。
妻屋 私たちはこの問題には1998年のバイアグラの発売当時から着目いたしまして、連合会の会報等で薬の説明をしてきたところです。私たちは何らかの障害によって脊髄を損傷し、失われてしまった性の問題について非常に関心を寄せている団体です。例えば、交通事故の場合は加害者にその損失を賄ってもらうとか、あるいは労災事故の場合はその企業に損害を補償してもらうというような考え方を徹底して持っています。
だから、そういう考え方の上で、一般の障害者は体の機能が失われているわけですから、歩行できない、あるいは自由に手で作業ができない、それを補うために国は、例えば補装具とか車椅子、あるいはその他の補装具を支給しているわけです。ですから性機能の喪失に対しても、それを補うためには当然バイアグラ等を無料で配付するべきだ、という考え方に基づいて私たちは運動したわけです。
いろいろ努力をした結果、ある一定の理解は得られたと思っておりますが、先ほど牛山先生がおっしゃったように、保険適用は何らの動きもないというような状況で現在は止まっているところです。学会の中には大賛成、後押ししますというところもあるので、今のところ希望は捨てておりません。引き続き活動は続けていきたいと思っております。
以上です。
当事者アンケートから
司会 牛山先生、妻屋さんが会長をされている「全国脊髄損傷者連合会」で会員さん向けのアンケ−トを行なったということですが、特に男性の損傷者のパ−トナ−がどういう思いでいるのかについても、お話しいただけますか。
牛山 妻屋会長の了解を得まして、「性に関するアンケ−ト調査」を昨年行いました。内容は結婚しているか、いないか、性交渉の有無、それから勃起機能−−これは国際勃起スコア−というのがあるのですが、その5項目についてアンケート調査をしました。
満足度に関して「性生活について」という項目があるのですが、「どちらかといえば不満」、あるいは「不満」というのが確か50〜60パーセントという結果でした。
「現在の勃起の状態が一生続くとしたらどう思うか」というのがありまして、20〜30代の人では76パーセントが「不満」、あるいは「非常に不満」という結果でした。
年齢が上がるに連れて不満度は下がってくるので、60歳ぐらいでは50パーセントが「不満」か「非常に不満」というような結果でした。
そのほか性交渉の頻度とか治療の意向、つまり「勃起についての治療をどうしたらいいのか」とか、「医師への相談はどうしているか」というのがありまして、その中では結構相談に行かない人が多いですね。相談に行く人は30パーセントもいなかったと思います。相談しない理由の1つに「面倒臭い」というのがありました。それから、「恥ずかしい」とか「検査の内容が不安である」とか、あるいは「どういう病院へ行ったらいいのかわからない」、「費用が問題である」というようなことがありました。
パ−トナ−の方に対してはそこには書く欄がなかったのですが、自由記述欄に、「長年、脊損で奥さんに世話になっていて、十分に抱いてあげることができなくて残念である」という記載がありました。以上です。
司会 ありがとうございました。今崎先生、心療内科をやっていらっしゃって、こういう精神的な問題というのは、やはりパ−トナ−と一緒に受診すべき問題であるとは思うのですが、日本ではなかなかそうなっていないと思います。
いかがでしょうか。
今崎 セクシュアルな問題が心理的な問題として臨床の場面に持ち込まれるということは極めて稀であり、その場合も男性が1人で来られるケ−スがほとんどです。例えば、男性がぼくのように脊損で、そのパ−トナ−である女性がその種の問題について病院に相談に来るというのは、大変やりにくいのだと思います。自分の経験からも、身体的な機能を奪われているということは、自分自身のセクシュアリティに対する自信の喪失にもつながる問題だと思います。
しかし、現在いろいろな医療技術の補助を得ながら、かなりのことが可能であるということを知っているとか、わかっているということは、その後の生活においてとても大事なことだと思います。そうでないと、自分自身でセクシュアリティの面について覆い隠してしまったり、バリアをつくってしまうというようなことが続いてしまうのではないかと。
やはり、セクシュアリティのことについて「面倒くさい」とか、「まあ、いいか」というようなことが続いてしまうと、チャンスや可能性を失ってしまうのではないかというような気がするんですけれども。
司会 先ほどデュ−シャム先生も、患者が社会的に孤立してしまうと言われました。今崎先生、性の問題に向き合わないという生き方は、人間としての尊厳、自立を損なうものなのでしょうか。やはり、これは超えなければならない問題なのでしょうか。
今崎 大変重い質問で、僕が答えてもいいものかどうかとも思います。きょうのタイトルは「セクシュアリティ」ということですが、セクシュアリティを持って人間が生活するということはごく自然なことであって、権利としても当然だと思います。リハビリテ−ションの世界大会でも70年代には西池先生という方が、障害者であってもセクシュアリティを持っているべきだという、その権利について早くから発表されています。それは具体的にパ−トナ−がいるとか、性交渉が可能であるということとはまた別問題のことである。人間として生きていく上で違うことではないか、というのが私見です。
例えば、自分の信念を持って、独身生活を続けている女性の中には、しっかりとセクシュアリティを持っておられる方がたくさんいらっしゃいます。それは個人の生きかたの問題であって、そういう方に出会うと、やはり、すばらしいなと僕も感じますので、決して具体的なことだけではないと、僕自身は考えています。
妊娠・出産の問題
司会 女性の問題として、子育て、出産の問題がありますが、この点について、牛山先生から医学的なところをお話しいただけますか。
牛山 脊損の女性には、妊娠することができるのか、子どもができるのか、性機能はどうなっているのか、というごく自然な質問があります。卵巣や子宮は脳下垂体から出る性ホルモンでコントロ−ルされているので、生理は受傷後何カ月か止まることがありますが、すぐに回復して妊娠は可能です。
もう1つは出産までの問題があります。出産までに体重が増えてしまうので褥瘡ができやすいとか、尿路感染症になりやすいとか、通常の妊娠中毒とか早期破水の問題などもありますので、通常の妊娠合併症プラス脊損に独特な特性を持ったケアが必要だと思います。
出産になりますと、いちばん大きな問題は、子宮に収縮があるかという問題です。今は子宮収縮剤がありますので、それを補助的に使うことができるのですが、「経膣分娩」いわゆる自然分娩なのか、あるいは帝王切開をするかという選択肢があります。統計的に私どもが調べたのでは、帝王切開のほうがやや多かったです。外国のデ−タでは、どちらかというと経膣分娩のほうが多いのですが、日本でもだんだん経腟分娩がふえると思います。
しかし、自律神経過反射という問題があり、第6胸髄損傷より上の損傷の方は、出産のときに血圧が上がってしまうという脊損特有の現象が起きるので、いつでも帝王切開ができる状態で分娩していくということが重要です。
ただし、脊損のことを産婦人科医がどのくらい知っているかということが問題です。というのは、パラプレジア医学会に産婦人科の先生が参加するということは稀なので、脊損医療の情報はもっと流さないといけないと思います。実際に我々の情報網の中に入ってくる産婦人科の先生方には、うちのスタッフがアプロ−チしていろいろと情報を流すようにしていますけれども、経膣か帝王切開になるかはケ−ス・バイ・ケ−スです。
むしろ、妊娠が疑われたときにどの医者にまず相談に行くかという問題があります。生理がないということを泌尿器科にいってくる女性が結構いるので、妊娠反応を調べて「子どもができていますよ、どうしますか」といって婦人科に紹介する。逆に、脊損の方が婦人科に行って、「堕しなさい」といわれて、こちらのほうに連絡が来たりしたことがありました。
非常にまだ不幸な状態といいますか……。脊損のことを知っている医者は「ぜひ産みなさい」と必ず言うと思うんですが、そのへんのところが行く先によってまだ不幸な状況があるというのが現状だと思います。
女性当事者から
司会 この点について会場のSさんにご自身の体験などを含めてお話しいただけますか。
S: 先ほどの講演会のお話にも、やはり、男性に比べて女性のセクシュアリティについてはなおざりにされている、という部分がありました。男性の方には専門の泌尿器のドクタ−がいらっしゃいますが、女性には脊髄損傷に詳しい専門の婦人科医がいるということは、私自身聞いたことがありません。
私はけがをする前から婦人科の持病があったので、そのときから診ていただいている個人医院のいい先生のところに今も定期的に通院しているのですが、これが車椅子になってからだとしたらどうだっただろうか、とすごく思うんですね。
普通の方でも産婦人科というのはちょっと敷居が高いところだと思うんですが、そこへ車椅子で行って内診台に上がるかと思うと、とても気が重くなります。ましてや医療従事者の方が脊損について全然知識とか理解がない場合は、ものすごくデリケ−トな場所の問題や病気なので、その対応によっては傷ついたりすると思います。私にはたまたまよい先生がいてくださいましたが、ほかの方はどうなのかな、と思う部分がすごくあります。
出産もそうですが、女性特有の産婦人科にかからなければならない病気になったときに、そういったことを気軽に相談できる窓口があったらとすごく思います。そういう問題を抱えたときに悩みを相談できる場所がない、というのが現状です。以上です。
司会 ありがとうございます。牛山先生、産婦人科医ばかりを責めているわけではないのですが、やはり、そういう情報を共有する場を持つということはなかなか難しいのでしょうか。
牛山 まず、リハビリテ−ション病院を例にとってみますと、産婦人科に常勤医はおらず、パ−トの先生に来てもらっています。労災病院の中には婦人科の常勤医がいるところがあるので、そういう病院は比較的いいかと思います。パ−トの先生さえいないところはたくさんあると思います。その問題にどういうふうにアプロ−チしたらいいのか、私にもまだわかりません。
脊損の方の出産経験がどのくらいあるかというと、1つの病院で1年間に1例あるかないかだと思います。何年もかかって数例……。最近私の目に止まったものでも8例が最高でしたね、1つの病院で長い間かかって。そのくらいの頻度だと思いますので、これは今後の課題だと思います。
司会 ありがとうございました。一応、討論の細かいところはある程度終えましたが、何か、質問等はありますか。
どうぞ。
性の喜びをサポートできるか
藤木 せきずい基金の藤木です。アメリカと日本では性に関するとらえ方があまりにも違うなと、そのように思いながら聞いておりました。具体的には、アメリカでは子どもを生む、つくるという2つのことだけではなく、もっと積極的に性を楽しむことをものすごい価値として受け入れている。また、コミュニケ−ションの一つの手段であり、性に関して楽しむことがその人の自尊心を高めることに非常に役に立ち、社会参加等にも大いに有意義な効果を果たすことができると。アメリカでは性に対してそういう捉え方をしているというふうに、デュシャ−ム先生のお話しを伺って感じました。
しかしながら、日本では性に対して喜びや楽しみ、あるいはコミュニケ−ションの一つの手段としてその人の自尊心を高める行為であるといった視点が残念ながらないというのが現状であろうと思います。実際、日本では、性といった場合は、子どもを産めるのか、つくれるのかという、その2点に集約されているのではないか。
そこで、日本の泌尿器科の先生におたずねしたいのですが、今後、性を一つの喜びとして患者に指導していく可能性があるのかどうか。そして、性に対して喜ぶことはその人の自尊心を高めるのに非常に効果があるので、積極的に性に対する喜びを喜びとして感じるような指導はいつごろ行われる可能性があるのか、おたずねしたいと思います。お願いいたします。
司会 どうでしょうか、牛山先生。
牛山 非常にいい質問であり、なかなか厳しい質問ですね。最近、雑誌などで障害者の性が取り扱われるようになりまして、特に、バイアグラを飲んでというような絡みで2社ばかりマスコミから「どう思われますか」とコメントを求められました。つまり、性を肯定するか、障害者の性を興味本位で見ているという面が世の中一般にあるけれども、それを医者としてどう思うかというわけです。当然、それは大いに結構なことだと。別に興味とかいうのではなくて、通常の人間としての働き、活動なので、どんどん積極的に支援したいとコメントを出しています。
しかし、なぜそういうコメントが必要なのか私にもよく理解できないのは、まだ日本の社会がそのような状況にあると。それをリハビリ病院からどのくらい変えることができるのか、そして、いつごろできるのかというのはなかなか難しい質問で、ここで「いつ、幾日こうします」というふうに今のところ私も言えませんが、基本的なスタンスとしては、そういうことです。
「具体的にどうせよ」というプランがどこかから出てくれば、またそれなりの対応を考えたいと思いますが、今はあまりはっきり言えないのが現状です。よろしいでしょうか。
そこで1つ質問があるんですが、以前、頸損の本を訳したときに、頸損の人がセックスをするときの体位を書いた図があったので、アメリカではかなり積極的にやられていると思いました。もう1つは、ビデオをつくって見せているということを聞いたことがあるんですが、デュシャ−ム先生のところで何かそのようなことについてやっていれば教えていただきたいと思います。
デュシャ−ム そういうビデオはあります。持ってきましたので「日本せきずい基金」の方でコピ−していただいて、見たい方にお見せすることができると思います。ニュ−ジャ−ジ−州にあります、リハビリテ−ションセンタ−がつくったビデオです。
先ほどの藤木さんの質問にお答えします。おっしゃる通りだと思います。性的に何ができるかというパォ−マンスとか、身体的な事柄だけを話していると、社会の本流とは何なのかということが見逃されてしまうのではないかと思います。そういうことだけを考えていると、例えば、性機能に問題のある人たちが、どうしてこんな心配までしなければいけないのかと考えてしまうでしょう。
セクシュアリティということは、子どもをつくって育てるということだけではなく、喜びを与えることであり、喜びを貰うことであり、喜びを分かち合うことだということを、脊損の方々も含めていろいろな方々に伝えていく、話していくことが大事ではないでしょうか。
(注:ニュージャージー大学ケスラー・リハビリテーション研究所編、米国退役軍人マヒ者協会製作の「Sexuality
Reborn」。2002年7月にこの日本語版「甦るセクシュアリティ」を日本せきずい基金で製作、希望者に無償配布する)
司会 ありがとうございました。ほかに何かご質問、ご意見などありますか。
N: 同性愛の障害者に対するサポ−トは、日米で何かありますか。同性愛の人はまだ差別されることが多いような気がするので、孤立感がより一層深いので、より高度なサポ−トが必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
司会 まずは牛山先生からこの点について、よろしいでしょうか。日本の状況などは……。
牛山 私は同性愛は別に否定しませんし、いいか、と思います。障害者の同性愛はあるかという問題については当然あると想像していますが、実際の例は私は知りません。
司会 デュシャ−ム先生はいかがですか。
デュシャ−ム こういうお話をしてもいいか、どうか、ちょっとわからなかったので、この問題を出していただいてうれしいです。
今、牛山先生がおっしゃいましたように、ホモセクシュアリティの方々にはたくさんの問題があります。例えば、リハビリテ−ション・センタ−の中で差別を受けているとか、リハビリテ−ションのスタッフがホモセクシュアルの方にセクシュアリティについての情報を出すことをためらうということもあります。つまり、ホモセクシュアルであることと障害者であるということの両方の差別を受けているので、セクシュアリティの情報を出すにあたってもなかなか難しいところがあります。
司会 ありがとうございました。ほかに何か質問、ご意見はありませんか。
荻野 全国脊髄損傷連合会の荻野と申します。今、脊髄損傷は急性期に病院に入ったときから退院に至たるまでに、心理的な、精神的なサポ−トはほとんどの病院から受けられません。ましてやセクシュアリティについては、積極的に指導してくださる病院はほとんどないかと思います。むしろ最初に脊髄損傷になったときの精神的なサポ−ト、このへんがまた相当欠けているかと思います。きょうは2つの病院から我々のよく存じ上げている先生がいらっしゃいます。けれども、一般的な話はそうです。そして、結局うちに帰ってからセクシュアリティについて自覚したり、思い知らされることによって愕然とするのが現状のようです。
同時に、藤木さんがおっしゃったように、私たち男性の側からは特にですが、人間の中に全てのセクシュアリティがいろいろな形で含まれておりまして、それをどういうふうにして満足させていくか、これは私たち全体の大きな課題だと思います。答えは出ないかと思いますが、半分意見と半分質問ですが、よろしくお願いします。
司会 精神面のサポートについて、今崎先生はどう思われますか。相談窓口等も含めて、やはり病院以外でもお話しする場があってほしいと感じていますか。
今崎 やはり、問題を自分1人で抱えてしまったり、障害がある場合はどうしても活動性が落ちてしまうのでなかなかアクティビティが高まらない、交流の機会が少ないということがあります。しかも、特にセクシュアリティの問題というのは非常に心理的な負担を伴う事柄なので、そんなに動かなくてもそのことについて相談することができたりサポ−トがあった方が、より心地よい生活を送るチャンスがふえると思いますので、そういうものがどこかにあるとすれば、すばらしいことではないかと思います。
ここで1つデュシャ−ム先生に質問させていただきたいのですが、男女を問わず、セクシュアルな部分での機能喪失というのは、人として大変重い問題を抱えていると思います。私の経験からいっても、例えば、今後彼女をつくってもかわいそうじゃないだろうかと思ってみたり、女性も、自分が妊娠できなかったら相手の人がかわいそうじゃないだろうかと心配や危惧をしがちだと思います。しかし、そういうことがあっても実際には性愛を持った幸せな生活が送れるんだと。もしくは先生が持っておられる事例の中で、そういう相談を受けたことがあるけれども結果はとてもハッピ−であったというような、勇気づけられるお話を1ついただけるとうれしいのですが。
デュシャ−ム 性的機能自体に問題があっても、カップルとして親密に仲良く前向きにやっていくことができます。これまでの経験では、セクシュアリティに関して自分に自信がないと、パ−トナ−をハッピ−にすることができないというふうに捉えてしまい、パ−トナ−との関係を築いていくことをやめてしまいました。
身体的な要素だけではなく、自分に対する自尊心や、パ−トナ−に対して前向きに何かを与えることができるのだ、という気持ちが重要だと思います。
だから、性機能に関してサポ−トしてあげる前に、「あなたには魅力がありますよ」「いろいろな人に会って社交的な生活をすることによって、いろいろな関係を築くことができるんですよ」ということを教えてあげることが大事だと思います。
受傷後の体の萎縮などをとても恥ずかしいと思って自分の体を鏡に映さなくなったり、人に見せたくないという気持ちなってしまうので、「あなたには魅力があるんですよ」ということを強調していくことが、性機能に関してのいろいろなことを教えてあげる前に必要です。
討論の終わりに
司会 ありがとうございました。障害者にとって性の問題が重要であること、しかしながら障害者以外の方々がそのことに関心を持っていなかったり無知だったりすることが、今までの討論で浮き彫りにされたという感じがします。時間が迫ってきましたので3人の方々から最後に一言ずつ、討論の感想もしくは日本の医療のあり方についての提言などいただけますか。牛山先生からお願いします。
牛山 きょうは主に泌尿器科的な男性機能の情報を中心にお話ししましたが、セクシュアリティというのはそれを超えた男性としての尊厳、あるいは人間としての尊厳がセクシュアリティにつながっている、というご意見を私は非常に重く受け止めています。実際に医者ができることというのは、医学技術的には非常に小さなことです。私自身の力では如何ともしがたいような大きな問題がその上に厳然とのしかかっています。
セクシュアリティの問題にしても、例えば具体的に女の子とのつき合い方にしても私よりも格段に上手な患者さんがいらっしゃるので、むしろ私のほうが参考にしています。例えば友だちができないとか、結婚相手の女の子が見つからないというような問題は、病院ではなく、社会全体のテクニックといいますか、情報の中から吸収してつくりあげていくものだというふうに、私は感じております。
今崎 きょうはお呼びいただいてありがとうございました。デュシャ−ム先生は、心理的な側面からのサポ−トと言いながらも、実際は非常に重い身体的な問題に付随する心理的な問題というものを、非常に温かく、また前向きに精力的に扱っておられるというところを聞いて、私も医療現場にいる者としてとても感銘しました。
牛山先生も、ご自分でいろいろ開発されておられますが、アクティビティといいますか、こういうことが大事なんだというようなことがあったとき、これは医療だけではないのかもしれませんが、特にこういうセクシュアルな問題に関しては、どうしても引け目になってしまいがちなところもあるので、社会の側にもぜひアクティビティのある対応を期待したいと思います。
司会 ありがとうございます。最後にデュシャ−ム先生、お願いします。
デュシャ−ム 本日、参加できましたことをとてもうれしく思います。また、セクシュアリティの問題に関して、医師の方々の認識が非常に深いことにも、うれしく思いました。それから、自分が抱えているいろいろなデリケ−トな問題について話したり、それに対する治療法などを教えてくれるドクタ−を見つけることが如何に難しいかというご発言がありましたが、本当にそうだと思いました。
脊損の方の場合、まず、どういう人に対して、こういう情報がほしいんだということ要求したらいいのかということを見つけて、要求していく。「こういう質問に答えてください」「こういう情報を出してください」と言って、いろいろな物事を変えていくことが重要だと思います。
司会 以上で討論を終わりたいと思います。皆さん、ありがとうございました。総合司会者、
牛山先生、今崎先生、坂上さん、本日は長時間にわたりまして、本当にありがとうございました。
Thank you very much Dr.Ducharme.
それでは「日本せきずい基金」の理事、若林多起子より閉会のご挨拶させていただきます。若林さんお願いします。
若林 以上を持ちまして、本日のスタンレ−・デュシャ−ム先生の講演会を終了いたします。
皆さま、お暑い中本当にありがとうございました。心からお礼申し上げます。今後とも皆様方のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
NEXT ページ3 全6ページ
各ページに移動します。
1 2 3 4 5 6