| 第 8 章 |
| 栄 養 摂 取 |
健康を保持するために何を食べなければならないか? その疑問に答えようとする人がいない日はないだろう。われわれが食べなければならない物、食べてはならない物について、新聞、雑誌、本、ラジオ・テレビはわれわれにたくさんのアドバイスを与えるが、残念なことに、このアドバイスの多くは、混乱させるものである。
この混乱のいくつかは、われわれが自分にとっての「理想的な食事」を形作るための栄養について十分知らないためにおこる。食物のニーズも、年代、性、体型、身体的活動性と他の状況(たとえば脊髄損傷)など人によって異なる。以下のガイドラインのいくつかは、「健康な」人々のために書かれている。
・ いろいろな食品を食べること。
・ 理想体重を維持すること。
・ 脂肪、飽和脂肪酸とコレステロールのとりすぎを避けること
・ 適度にデンプンと食物繊維を含む食品を食べること。
・ 甘いもののとりすぎを避けること。
・ ナトリウムの取りすぎを避けること。
・ アルコール性の飲料を飲むときは、ほどほどにすること。
◆ いろいろな食品を食べる
健康を保つためには約 40種類の栄養素を必要とし、ビタミン、ミネラル、タンパク質、炭水化物、脂肪と水が含まれる。これらの栄養物は、食品の中にある。
ひとつの食品では身体が必要とするすべての重要な栄養素をまかなうことはできないので、適切な食事を確実にするためには、いろいろな食品を食べなければならない。
確実にバラエティに富みバランスある食事をとる1つの方法は、表8−Aにあるそれぞれの食品を毎日選択することである。
広範囲のバラエティに富んだ食事をとっていれば、ビタミンまたはミネラルのサプリメントをとる必要はない。しかし、それぞれの食品群で必要とされる種類を食べることができないならば、複数のビタミンとミネラルの補助食品で栄養的な必要を満たすことができる。ただし、最初に主治医または栄養士によるチェックを受けること。
◆ 理想体重を維持すること
体重があり過ぎると、いくつかの慢性疾患が悪化する機会は大いに増加する。肥満は糖尿病、高血圧に結びつき、血中脂肪の値を増やし、さらに「アテロ−ム性動脈硬化症」あるいは動脈の硬化を引き起こす。これらは心臓発作や脳卒中の危険性を増加させる。肥満はまた、褥瘡を拡大する危険性を増加させ、可動性を障害し、体の移動が困難になる。
低体重の場合は、感染防御力を低下させ、すぐに疲れてしまうだろう。褥瘡を拡大する危険性も増加する。低体重はまた、寿命を短くすることにも結びついている。それゆえ、「理想的」体重を維持するように努めれば良いのだが、理想体重がいくつで、どのように決めるのかに対する完璧な答えはない。しかし、脊損者のおおよその許容体重を表8−Aに挙げている。
減 量
あなたは体重を減らす必要があるだろうか。そうであれば、体内で消費するより摂取する熱量を少なくしなければならない。それにはよりカロリ−の少ない食品を選ぶか、活動量を増やさなければならないか、あるいはその両方が必要になる。減量の方法を以下に挙げる。
身体の変化に順応できるよう、徐々に体重を減らすこと。週に0.5〜1kgの減量は安全である。段階的に体重を減らせば、目標体重に到達したあとに体重が戻る可能性はそれほど高くない。長期間にわたって上手に減量できていれば、運動や食事の新たなよりよい習慣が身に付く。減量を希望する場合は、栄養士がその要求に合う食事プランを手助けすることができる。
- 朝食や昼食は抜かないように、夕食は食べ過ぎないように。
- 退屈、怒り、疲れ、不安のはけ口として食べ物をとらないように。
- 栄養価を考えて意識的に食品を選ぶ。
- 高カロリ−、低栄養のスナックを家に持ち込まないようにする。
- 脂肪や脂肪の多い食品はあまり食べないようにする。
- 砂糖や甘い物はあまり食べないようにする。
- 空腹のときにだけ食べるようにする。
- 体を動かすようにする。
- 食べ過ぎる傾向があるときは、1日の内で危険な時間帯を知り、その時間は他にすることを用意する。
- 寛容になること。完璧な人はいない。もし、1回の食事あるいは1日、ダイエットしそこなったら、次の食事や他の日にあまり食べないようにして埋め合わせれば良い。
体重増加のために
体重を増やす必要がある場合は徐々に増やすこと。1週間に0.5〜1kg、一定に増加させれば、脂肪ではなく筋肉量の増加が期待できる。体重増加の手助けとなるいくつかの方法を下に列挙した。
- 1日に少なくとも3回、バランスの取れた食事を摂る。
- 食欲が減退している場合は、日に6回の少量の食事を摂る。
- 以下のような脂肪分を多めに含む食品を摂る−−全乳、ミルクセ−キ、エッグノッグ(卵入りの飲料)、ドレッシングをつけた生野菜、クリ−ムス−プ。
- パンやクラッカ−にマ−ガリン、ピ−ナツバタ−、ゼリ−あるいはジャムを多めにつける。
- 濃い肉汁やクリ−ムス−プを使用する。
- ドライフルーツ、ナッツ、アイスクリ−ム、ミルクセ−キのような高カロリ−の間食を摂る。日中忙しいなら軽食を持ち歩く。
- 事前に食事の計画をたてたり、友人と一緒に食べるなどして、できるだけ楽しくリラックスした食事時間を作る。食事中の議論は避ける。
- 見映えの良い、おいしい食べ物を準備しなさい。
- 食後に間をおかず、飲み物や高繊維質の食品(サラダ、野菜、果物)等すぐに満腹感の得られる物を摂ると良い。
【表8−A】 体重の許容範囲
男 女 身長(cm)−体重(kg) 身長(cm)−体重(kg) 155 ....55.8-58.5
157 ....56.7-59.4
160 ....57.6-60.3
163 ....58.5-61.2
165 ....59.4-62.1
168 ....60.3-63.5
170 ....61.2-66.2
173 ....62.1-64.9
175 ....63.0-67.6
178 ....64.0-68.9
180 ....65.3-70.3
183 ....66.7-72.1
185 ....68.0-73.9
188 ....69.4?75.8145 ....44.0-48.1
147 ....44.5-49.0
150 ....44.9-49.9
152 ....45.8-51.3
155 ....46.7-52.6
157 ....48.1-54.0
160 ....49.4-55.3
163 ....50.8-56.7
165 ....52.2-58.1
168 ....53.5-59.4
170 ....54.9-60.8
173 ....56.2-62.1
175 ....57.6-63.5
178 ....59.0-64.9
◆ 脂肪やコレステロールを避けること
飽和脂肪とコレステロールの双方が、心疾患のリスクを増加させることは知られている。
- 飽和脂肪はバターのように室温で固まる脂肪である。それは動物性食品やココナッツ、ヤシや他の植物性油に見出され、水素添加により飽和脂肪に変えられる。
- コレステロールは身体のすべての細胞に見られるロウのような物質である。それは細胞膜の必須成分で、動物性食品中に含まれる。しかし、肝臓は必須コレステロールすべてを作ることができるので、コレステロールを食事から摂ることは必要ではない。
脂肪、飽和脂肪、コレステロールの過剰摂取を避ける方法
- 赤身肉、魚、鶏肉、乾燥した豆やえんどう豆をタンパク源として選ぶ。
- 卵やモツ肉(肝臓のような)の使用を控える。
- バター、クリーム、水素添加したマーガリン(固形のマーガリン)、ショートニング、ココナッツ油そして、これらの製品で作られた食品の摂取を制限する。
- 肉の余分な脂身を取る。
- 食品は揚げるよりむしろあぶるか、焼くか茹でる。
- 食品に含まれる脂肪の量や種類を確認するために注意深くラベルを読む。
体重不足の場合は脂肪を避けるべきではない。単価不飽和脂肪酸か多価不飽和脂肪酸*をとりなさい。
〔*訳注〕 単価不飽和脂肪酸はオリーブオイルや菜種油などの植物油に多く含まれている。多価不飽和脂肪酸は体内では生成されず、DHA、EPAなどの魚油、リノール酸、αリノール酸に含まれている。
◆ 複合炭水化物と繊維質からなる食事を摂りなさい
平均的なアメリカの食事における主要なエネルギー源は、炭水化物と脂肪である。脂肪の摂取を制限すれば、必要エネルギー量を満たすためには、日々の複合炭水化物の量を増やすべきである。
体重を「理想的な」水準まで減らそうとするには、炭水化物は脂肪より単位重量あたりのカロリー量が半分以下しか含まれないので有益である。
複合炭水化物は単純な炭水化物より良い。テーブルシュガーやシロップや蜂蜜のような単純な炭水化物は、カロリーは供給するがそれ以外の栄養は少ない。豆、えんどう、ナッツ種、果物、野菜、すべての穀物パンとシリアルのような複合炭水化物は、カロリーに加えて繊維質や多くの必須栄養素を含んでいる。
平均的なアメリカの食事は、比較的繊維質が少ない。繊維質(栄養価が少なくかさが多い)は糸のようなもので、胃の消化酵素では消化されない。その結果、繊維の助けを借りて腸プログラムを行なうことで規則正しく生活できる。規則正しい生活は脊髄損傷者にとっては課題でもある。
食事に十分な繊維質や複合炭水化物を確実に摂るためには、果物、野菜、すべての穀物パンやシリアルを食べると良い。繊維質の多い食品の例を以下に挙げる。
パンとシリアル(穀物加工品)
果 物
- オールブランシリアル。小麦やレーズン、全粒パンやオールライ麦パン、ひき割り麦パン。シリアルの箱のラベルを読むこと。
- 玄米あるいは精米していない米。
- 焼いたり茹でた皮付きのジャガイモ。
- ひき割り小麦、大麦やきび。
野 菜
- 新鮮なオレンジ、りんご、梨、さまざまなベリー類、ぶどう、もも、プラム。
- 干しぶどう、プルーン、桃、あんず、ナツメヤシの実、イチジクのような乾燥果物
マメ科の植物とナッツ、種子類
- キャベツ、セロリ、チコリ、きゅうり、エスカロール(エンダイブ)、レタス、トマト、人参。
- すべてのタイプの豆、グリーン(フダンソウ、からし、ケール)、ブロッコリー、ケールキャベツ、西洋トウナス、芽キャベツやトウモロコシのような調理した野菜。
- 大豆、インゲン豆、リマ豆、裂けたえんどう豆、くるみ、ピーナッツ、ひまわりの種、かぼちゃの種。
◆ 甘いものを摂りすぎない
甘いものを食べ過ぎることから起こる主な健康障害は虫歯である。それ以外に考えるべきは、甘いものはからだが必要とするより高カロリーではあるが低栄養であることである。したがって、もし体重を減らす必要があるなら食事で甘いものの量を制限する必要がある。体重を減らす必要がないなら、「食品ガイドのためのピラミッド」(図8−1)から必要な食品を摂った後で食後に甘いものを摂るのも良い。
砂糖や甘いものの摂りすぎを避けるには
- 白砂糖、ブラウンシュガー、精製していない砂糖、蜂蜜、シロップを含めたすべての砂糖類をあまり使わない。
- 1.のような砂糖類を含むアメ、清涼飲料、ケーキやクッキーのような食品をあまり食べないようにする。
- 新鮮な果物、無糖の、あるいは濃いシロップより、ライトシロップの缶詰の果物を選びなさい。
- 砂糖の摂取量を知るために、食品のラベルを読みなさい−−もし最初に、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、デキストロース、乳糖、果糖あるいはシロップの名前が出ていたら、大量の砂糖が含まれている。
- どのくらいの量の砂糖を食べているかと同様に、どのくらいの頻度で砂糖を食べているかが重要であることを覚えておくこと。
◆ ナトリウムの摂りすぎを避ける
食卓塩はナトリウムと塩素を含んでいる−−ともに必須の栄養素である。しかしながらあまりに多くのナトリウムは、高血圧あるいは心臓病を持つ人々にとって危険である。それはまた、浮腫(水分の貯留による腫脹)を引き起こす。
ナトリウムはわれわれが食べている多くの飲料や食品に存在している。特に加工食品、調味料、ソース、つけ物、塩気のあるスナックやサンドウィッチの肉の中に含まれている。重曹、ふくらし粉、グルタミン酸ナトリウム、清涼飲料水、そしてさらに多くの薬物(たとえば多くの制酸剤)はナトリウムを含む。それゆえ、アメリカの成人は彼らが必要とするより多くのナトリウムを摂取していることは、驚くべきでない。大部分のアメリカ人は必要とされるより多くのナトリウムを摂取しているので、ナトリウムの摂取を減らすように考えなさい。
食卓塩はあまり使わないようにすること。多量のナトリウムが加えられている食品を控えること。自然な方法で調理した食品の一部としてより、防腐処理や味付けされた食品の一部として、ナトリウム摂取量の半分までは「隠されている」かもしれないことを覚えておくこと。
過剰なナトリウム摂取を避ける
- 塩味でない料理になじんで、楽しむようにする。
- 加える塩は少量で調理する。
- 食卓では、ほんの少し塩を加えるか、塩なしにする。
- ポテトチップス、プレツエル、塩味のナッツやポップコ−ン、調味料(醤油、ステ−キソース、ガ−リックソルト)、チ−ズ、漬け物、干し肉のような、塩分の多い食品の摂取を控える。
- どの食べ物の中にナトリウムがあるかを知るために、注意深くラベルを読む。
- ハ−ブやスパイスで香り付けする。ちょっとやってみよう−−すこしずつやれば、ずっと続けられる。その食品の風味を強めるようにし、圧倒しないように! 4人前ごとに小さじ1/4で始めるとよい。いくつかの一般的なスパイスとそれら使用法は表8−Bに挙げている。
【表8−B】 塩の代用となる調味料
スパイス その使用法
オ−ルスパイス ・・・・ 挽き肉、シチュ−、トマト、桃 バジル ・・・・ 卵、魚、子羊の肉、挽き肉、レバー、シチュ−、サラダ、ス−プ、
ソ−ス、魚カクテル月桂樹の葉 ・・・・ 肉、シチュ−、家禽の肉、ス−プ、トマト ヒメウイキョウ ・・・・ 肉、シチュ−、ス−プ、サラダ、パン、キャベツ、アスパラガ ス、
ヌードル蝦夷ネギ ・・・・ サラダ、卵、ソ−ス、ス−プ、肉料理、野菜 りんご酢酒 ・・・・ サラダ、野菜、ソ−ス カレ−粉 ・・・・ 肉、鶏肉、魚、トマト、トマトス−プ ディル ・・・・ 魚ソ−ス、ス−プ、トマト、サラダ、マカロニ ガーリック
(無塩)・・・・ 肉、ス−プ、サラダ、野菜、トマト レモン汁 ・・・・ 肉、魚、家禽の肉、サラダ、野菜 花はっか ・・・・ ス−プ、ソ−ス、サラダ、ラム肉、ポットロースト、豚肉、子牛の肉、
(甘い)魚、野菜マスタード(乾燥) ・・・・ 挽き肉、サラダ、ソ−ス タマネギ(たま
ねぎ塩ではない)・・・・ 肉、野菜、サラダ パプリカ ・・・・ 肉、魚、シチュ−、ソ−ス、ス−プ、野菜 パセリ ・・・・ 肉、魚、サラダ、ソ−ス、ス−プ、野菜 ロ−ズマリ− ・・・・ 鶏肉、子牛の肉、ミ−トロ−フ、牛肉、豚肉、ソ−ス、詰め物、
ジャガイモ、エンドウ豆、リマ豆、セ−ジ ・・・・ 肉、シチュ−、ビスケット、トマト、いんげん豆 きだちはっか ・・・・ サラダ、卵料理、豚肉、挽き肉、ス−プ、西洋トウナス、緑豆、
トマト、えんどう豆タイム ・・・・ 卵、肉、ソ−ス、ス−プ、えんどう豆、タマネギ、トマト、サラダ タ−メリック ・・・・ 肉、卵、魚、ソ−ス、米 ワイン ・・・・ マリネに使用されるかもしれない
◆ アルコ−ルは適量に
アルコール飲料はカロリ−が高く、そして他の栄養が低い傾向がある。理想体重を達成したいなら適量の飲酒家でもさらに量を減らさなければならない場合もある。
他方、大酒飲みは、不可欠な栄養を含んでいる食品に対する食欲を失うこともある。
乏しい食事摂取のために、またアルコ−ルがいくつかの必須栄養素の吸収と作用を変えるため、大酒飲みではビタミンとミネラルの欠乏はよく起こる。大量飲酒はまた、肝硬変といくつかの神経障害のような重大な状態を引き起こす場合もある。飲酒・喫煙する人には、そうしない人々より、のどと頚部のガンは、より多く見られる。もし飲酒するなら、適度にすべきである。
アルコールの適量とは
- ワインを6オンスグラスで1、2杯(約180〜360cc)。
- ビ−ルで小瓶1、2本(約360〜720cc)。
- 80度の強い酒をおちょこ1、2杯(約30〜60cc)。
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