yyc4.pdf:PDF形式でDLできます。260kb
第 4 章
呼 吸 管 理


 呼吸とは、口や鼻から無意識に空気を取り入れることである。呼吸には次の2つの目的がある。

 @ 体の組織に酸素を供給する。
 A 細胞からの老廃物である二酸化炭素を取り除く。



 酸素と二酸化炭素のガス交換は肺によって行なわれる。肺の中での酸素の通る道は、気管から始まり気管支を通り、首から下に向かってちょうど木を逆さにしたように枝分かれして次第に細くなっていく(図4−1参照)。


 この枝分かれは非常に細くなるまで続く。そして最後は風船の房のようになって終わる。これらの風船は肺の壁を通る血管に接している。このような構造になっているので、息を吸い込むとこれらの風船がいっぱいに膨らむのである。

そこで酸素は血中の赤血球に取り込まれ、心臓の働きによって全身に送られる。二酸化炭素は逆に血中から肺に送られ、そこで息を吐き出すことによって外に出される(第3章「循環器系」参照)。


 呼気には通常何の労力も必要としないが、吸気には労力が必要である。速い呼吸にはより多くの労力が必要となる。吸気には様々な筋の働きが必要である(表4−A参照)


【表4−A】 呼吸に使われる筋肉
呼吸器系の筋肉 機能 損傷レベルと呼吸器系筋肉への影響
横隔膜 呼吸運動をつかさどる主要な筋肉。
肺のすぐ下にある。
損傷レベルがC5以上の場合、
横隔膜および他の筋肉が機能せず、
一時的または生涯、人工呼吸器*が
必要となる。
肋間筋 各肋骨間に分布する。
咳や深呼吸のために使用される。
損傷レベルがT1以上の場合、肋間筋
の筋力は弱くなるが、横隔膜および
頚部の筋が呼吸運動を助ける。
腹 筋 咳をするときに使用される。
肋骨から臀部に走る筋肉。
損傷レベルがT12以上の場合、腹筋の
筋力は弱くなるが、肋間筋、横隔膜、
頚部の筋が呼吸運動を助ける。

* 人工呼吸器が必要とされる際には、使用法について特別な訓練を受ける。


 ◆ 肺を健康に保つために
  1. 禁煙する。喫煙により気管の分泌物は増え感染しやすくなる。また、喫煙は肺の汚染浄化作用を抑制する。

  2. もし頚髄損傷か上位胸髄損傷なら、定期的に呼吸訓練をしなさい。スパイロメーターを持っているなら、少なくとも1日に2回から3回それを使うこと。持っていない人は、1日に2〜3回できるだけ深く吸うような深呼吸訓練をしよう。息を吸って止め、数を3つ数えてから全部の息を吐き出す。これを毎回、5〜10回繰り返すこと。肺活量を増やすための方法に、横隔膜を使った「カエル呼吸」というものがあるが、これも練習により習得できる呼吸訓練の一方法である。この訓練が必要な者には言語聴覚士が教える。

  3. 煙、ほこり、危険な化学物質など、良く知られている汚染物質には近づかないこと。

  4. 風邪を引いたり、のどが痛くなったら呼吸訓練をより多くすること。 風邪を引いたときには強制的な排痰を1日2〜3回すること。そうすることで分泌物を排除し、肺炎の予防をすることができる。これらの兆候を軽く考えないこと。風邪やのどの痛みなどの症状が1週間から10日続くようなら、脊損クリニックか近くの医師の指示を受けること。

  5. 腹帯をつけることで、マヒした腹筋の機能を補い呼吸能力を高めることができる。

 呼吸器系の諸症状
 呼吸器系症状の原因はいろいろあるが、肺炎などのように感染によるものがもっとも一般的である。その他の場合でも同じような自覚症状がある。次のような症状のうちひとつ以上の症状が見られる。

 1.息切れ  2.速くなる呼吸  3.痰の増加
 4.肺活量の低下  5.目覚めたときの頭痛、発熱、倦怠感


 治療の方法
  1. 呼吸訓練の回数を増やし、2時間おきにすること。

  2. 「咳の介助」はあなたの咳の効果を高める。誰かに咳のタイミングに合わせて腹部を押してもらう方法である。ただしこの方法は指導を受けてから行なうこと。また、体を前傾し自分の腕で腹部に圧を加えることで咳を一人で出しやすくすることができる。

  3. 姿勢変換を頻回に行なうこと(坐位から仰臥位、仰臥位から側臥位等)。そうすることで肺のあらゆる部位への空気の流入が良くなり、肺の働きを高めることができる。

  4. 呼吸訓練の後に、できるだけ体位排痰法(ドレナージ)*を行なうこと。ただし、正しくその方法を指導されてから行なうこと。頭や胸を下向きにすることで、気管内の分泌物が重力の作用で排出されやすくなり、がより効果的になる。

    〔訳注*〕 体位排痰法:肺の各部位にたまった痰を、その部位の気管支走行に沿った方向に体を傾け、痰を排出しやすくする方法。頭部を下げる体位の場合には高血圧症があるか注意し、数分程度から始めること。

  5. 胸部への叩打法(パーカッション)も、頭を下向きにした上で行なう。手のひらを軽く曲げて胸部をポンポンと誰かに叩いてもらう方法である。この方法も分泌物の排除を助ける。正しく行なえるように指導を受けること。

  6. 温かい風呂に入るかシャワーを浴びること(熱すぎないこと)。浴室の温かい湿った空気は痰に湿り気を与え咳による排出を容易にする。1日に1〜2回入るようにして、そして咳をすること。〔訳注:風邪等のときに風呂に入るべきかどうかは議論のあるところだが、一般的に欧米では入る方を薦めているようである。〕

  7. 希薄な分泌液の増加は、咳をすることを容易にするだろう。
 もし症状が5日から10日も続き、このような治療法で効果が見られないときは脊損クリニックにかかること。症状が悪化したり発熱したら、脊損センターか近医にかかりなさい。

 症状が悪化したり発熱した場合にも、脊損クリニックやかかりつけの医師にかかること。

 ある種の呼吸器感染には、バクテリア退治のための抗生物質や症状改善のための投薬が必要である。そのような診断には脊損クリニックのスタッフが診察する必要がある。深刻な呼吸障害に対しては入院治療が必要な場合もある。

 呼吸が短くなることを伴った発熱、悪寒、咳は脊損センターのスタッフにより診断されなければならない。


 睡眠時無呼吸

 * 睡眠時無呼吸とは何か 
 睡眠時無呼吸の人々は、睡眠中に少なくとも一度に10秒間呼吸が停止する。それは毎晩400回起きる。無呼吸の間、深い眠りからさめる。毎晩しばしば目覚めるとすれば、睡眠で十分な休息を得ることができない。

 * 睡眠時無呼吸を自分でどう知ることができるか
 * よき眠りを得るにはステップがある

 それでも問題があれば、睡眠中に口と鼻にかぶせる特製のマスクをつけなさい。器械から空気が流れ、呼吸に圧力を加えて、気道を確保する。ごくまれに、扁桃や喉の組織の一部を切除する外科手術が必要である。

 医師に睡眠時無呼吸の指導を求めても良い。




 BACK   NEXT ページ5  全28ページ