| 第 20 章 |
| 住 宅 改 造 家を利用しやすくする |
住宅改造には多くの事項がある。あなたの家には、入口のスロープや浴室の手すりのようにわずかな手入れのみ必要な場合がある。しかしまた一方では、幅広い戸口や通路、低めの窓、エレベーターかリフトをつける改造が必要な場合もある。リハビリテーションプログラムの一部として、担当セラピスト(療法士)は一緒に家庭訪問をするだろう。
そのとき、寸法を測り、アクセスに関する問題点が明らかにされるので、どのような改造をするか、そのプランに役立つだろう。もし脊損センターの外に住むのなら、担当セラピストが家の使い方を教えてくれたり、資料として印刷したものを提供してくれるだろう。住宅改造の時、家を住みやすくするために、改造後の安全性を確認し、ニーズに沿ったものかなどの項目がたくさん存在する。このような改造は、特にあなたの状況に合ったものが必要である。OTやPTはそのための良い情報源となるだろう。
ソーシャルワーカーは住宅改造設計のための資料に一緒に目を通すことが可能である。また、この設計にかかる費用の負担を、政府や他の地域サービスを通して探すことができる。
この章では、高さや距離、その他の設計に関して推奨できることが記されている。何かの決断をする前に、正確に何を必要としているのか考えていこう。
本章の図には特別なニーズを満たすために、空欄スペースを設けている。
【図20-1】 車いすの回転に必要なスペース
【図20−2】 典型的なサイズ
◆ 指先で届く世界を持つ
食料の入った買い物袋を持って帰ってきたとしよう。スロープを上り、台所に入った。買い物袋をカウンターに乗せ、車いすを回転し冷蔵庫に何かを入れようとしていた。とその時、買い物袋が落ち、カウンターの向こう側にオレンジやリンゴが落ちた。それらを拾えるだろうか?
もしかすると障害物は、単純なものかも知れない。車いすを回転するのにも、そこから出なくてはならないような浴室、食器を洗うといつも服をびしょぬれにするような、ちょうど脇の下にぶつかる高さの流し台。
ほとんどの規格品はあなたのためにできているのではないことが明確である。自分用にあつらえるために、まず、計画を立てよう。そうすれば、あなたの家は本当に自分の家となるだろう。
車いすの寸法や水準の図は、あなたが車いすでも使い易い作業台・テーブル・ドアなどを作る時に役立つだろう(図20−1、2参照)。担当セラピストは、あなたの車いすの寸法を測ったり、車いすの回転スペースを測ったり、手の届く範囲を計算したりする手助けをしてくれるだろう。
◆ アクセス可能なプランは
家のスロープ
ときにはすべての世界に階段が存在していると思えることがある。多くの場所ではスロープがあるので、車いすでも動きやすいところがある。だが、そうでないところもある。確認しておくべきことは、傾斜した所が自宅にもあるかということである。スロープは急な斜面の階段に代わる安全策である。以下はスロープを造る上でのいくつかのヒントである。
* スロープの長さ 安全なスロープは、2.5cmあがるごとに30cmの長さが必要である。これは高さ:1対長さ:12のスロープまたは、8.33パーセントの傾斜を意味する。たとえば、2段の17.5cmの高さのステップや、35cmの高さのステップに対しては、4.20mの長さのスロープが必要である。
このガイドラインの例外となるのは、上肢の筋力がとても強い場合や、電動車いすを使用している場合である。このどちらかの場合なら、もっと急なスロープを使用することができるだろう。それでもわれわれは1対12の比率のものを使用することを勧める。食料品や子どもを自分の膝の上にのせて動く時のことを考えると、そのほうが良いと思うだろう。
* スロープの幅 幅は90〜120cmが勧められる。合板のベニヤは120×240cmの一枚板なので非常に便利である。
* 踊り場 スロープの中ほどには方向転換や8cm以上の高さを登るために踊り場が必要である。踊り場はどんなスロープでも最低150cm四方は必要である(図20−3参照)。
踊り場の先端はドアの把っ手側から50cm離れた位置にあること。
これは、90cmの通路の中央にいる場合には、180cmの足場が必要となることを意味する。ドアが開いた際の足場は奥行90cm、幅150cmは取るべきだろう(図20−3参照)。
【図20-3】 スロープ
* 手すりとエッジ 手すりはスロープ面から約80cmの高さにつけるのがもっとも安全である。5×5cmか5×10cmの木材、または直径3.75cmのパイプで作ることができる。スロープの両脇は車いすのキャスターが踏みはずさないよう、少なくとも5cmの高さが必要である。
* スロープの床面 適切な滑り止めが表面に使われないと、屋外にさらされたスロープは非常に滑りやすく危険になる。粘着性のある滑らない板、溝をつけたゴムマット、屋根に使うザラザラした材料を使うべきである。コンクリートのスロープには箒の掃き目をつけたような表面がよい。塗装された表面は濡れるととても滑りやすくなるので適切ではない。表面には、車いすの走行を困難にしたり不愉快にしたりするような凹凸があってはならない。
* 斜面台の材料 長持ちするスロープとしては、ベニヤ板(合板)やコンクリート、十字に組まれた5×10cmの細長い薄板を敷くことが勧められる。スロープは緊急時の出口となるので難燃性の材質であること。
歩道・エントランス
家の周囲の歩道は、庭のような、でこぼこのある地形で、堅い表面になっていることが重要である。そうすれば、特に雨や雪で地面が柔らかくなっていても、そこにはまることを心配する必要はない。もちろんそれは歩道が正しく造られていた場合である。
歩道は縁から滑り落ちないように最低105cmの幅があるべきである。さらに車いすの回転も考慮して、コーナーや折り返しの箇所では150cmの幅が必要である。 玄関は整頓され、開口部は最低80cm (90cmが望ましい)の幅があり、入口の斜面は13mm以下であること。
【図20-4】 ドアの幅
【図20-6】 ドアの広さ
玄関・通路
玄関を通るとき、運んでいる箱の角で指をぶつけたり、車いすの車輪で指を強打した経験はないだろうか? 不愉快なことである。ドア周まわりには十分なゆとりを作るようにしよう。
ドアの最低幅は90cm(開口して80cm)である。車いすに特別な付属品がついているならば、より広いドアが必要である。
セラピストに車いすの幅を決定するのを手伝うよう依頼しよう(図20−4)。
浴室や他の区切られた空間に対するドアは、外開きである。広く動かせるスペースのある大きな浴室では内開きのドアでもよい。内開きのドアは車いすから落ちて塞いでしまう危険性がある。スライドするドアを使用することも選択として考えられる。スライディング・ドア、ポケット・ドア、金属性の取りはずし出来る建具は他の選択肢である。
ドアの開閉は日常の生活における最大の障害物のひとつである。事実、ドアについては生活をより楽にするためのいくつかの注意点がある。
ドアを押したり引いたりが重すぎないか?
ドアの下にキックプレートがついているか?
ドアのハンドルは簡単に回せるか?
以下はドアが使いやすいかどうか確認するポイントである。
- いずれのドアも1つの動作で開けるよう仕つらえておくこと。
- ラッチハンドルは、回すタイプのものよりも容易である。セラピストがドアのハンドルやキャビネットのハンドルの適合についてさまざまな方法を考えてくれる(図20−5参照)。
- ハンドルのもっとも適した高さは約90cmである。セラピストが届きやすい位置の評価や、あなたに合ったベストの高さを決定する手助けをしてくれるだろう(図20−6参照)。
- たとえどんなに注意していても、車いすのフットレストがときどきドアを引っ掻いてしまう。この種のダメージからドアを守るために、ドアの両側にキックプレートをつけることが勧められる
玄関通路は車いすが部屋へ行けるよう少なくとも 90 cmの広さが必要だが、通路が狭すぎると回転が困難になる。玄関からドアへの通路は、図20−7に示すようにベストの形のものが、あなたのアクセス可能性を最大限にする。
便利な高さ
あなたが必要としている修正のいくつかは、ときとしてあなたが考えていた他の重大な変更点と混じって見逃してしまう場合がある。それらを見失わないために、以下の所定の測定値を参照してみよう。
- カウンター、テーブル、流し台:67.5〜82.5cm
- 電気コンセント:45〜105cmの高さ
- 電燈やサーモスタットのスイッチ:床から90cm〜105cm
- 壁掛け電話:82.5〜97.5cmの高さが通常もっともよい。最大限の高さ:120cm
- クローゼット
クローゼットのハンガーを掛ける棒:105〜135cm- 棚:最大限126.25cm
- 窓:眺めの良さを確保するために敷居を低くすることを勧める(76cm以上の高さにしないこと)。
テーブルやベッドなどの高さは、木製のブロックを使うことで、容易に上げることができる。セラピストは、これらの質問に対して適切な答えを示してくれるだろう。
バスルーム
浴室のすべての備品と設備は、セラピストとともに徹底的に検討しなくてはならない。便座の高さと手すりの配置は、あなたのからだとバスルームのタイプに沿った特定のものとなる。
リハビリ・プログラムの中に、バスルームの設備の評価も含まれているだろう。もし、変更や調整する必要性がある場合、セラピストと問題点を相談することができる。
◆ 安全面で考慮すること
- もし、とても急なスロープを使うなら、傾斜を下る際に車いすから落ちることを防ぐために、誰かに手を借りたほうがよいかもしれない。
- やけどや擦り傷の原因となる、剥き出しの給湯管や排水管、モーターは適切な場所に納めたり、断熱すべきである。ウォーター・ヒーターはあらかじめ65℃以下に調整しておく。
- 出入り口がひとつしかないようないくつかの狭い空間でのドアは、外開きのほうが良い。内開きのドアにすると、車いす利用者が転倒したり、ドアが(通路などを)ふさいでしまうといった危険を引き起こしてしまうからである。
- 緊急の場合に備えて、アクセスできる非常口をふたつに分けておいたほうがよいかもしれない。
- 緊急警報器の設置を考えたほうが良いだろう。たとえば、緊急の場合に備えて、近所の人や消防署,警察などに緊急事態を知らせるシステムである。
- 煙感知器は隅々に取りつける(玄関通路、台所)。もし難聴であれば点灯(あるいは他の方法)で警報を出すのは良い考えである。
- ヒューズボックスやブレーカーは、アクセス可能な位置にあること。
- 灯りが家の隅々を照らすようにしなさい。
- 電話をベッド際に置いたり、電話器のジャックをバスルームにつくることはアクセスする上で望ましい。コードレスフォンを家の中で持ち歩きなさい。
- 出来る範囲内で、すみやかに火を消すことは可能である。
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