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■ 第2回日本再生医療学会総会・抄録より
(2003年3月)


 SP6−4

アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用した神経変性疾患の遺伝子治療

自治医大神経内科l),同 遺伝子治療2)
○村松慎一l),王立軍l)2),池口邦彦l),藤本健一l),永田三保子l),中野今治1),小澤敬也2)

 AAVベクターにより神経細胞や筋肉へ効率よく治療用遺伝子を導入し長期間発現させることが可能になった。パーキンソン病に対しては,ドパミン合成に必要なチロシン水酸化酵素,芳香族アミノ酸脱炭酸酵素,GTP−Cyclohydrolase Iの各遺伝子を発現するAAVベクターの注入により線条体内で直接ドパミンを合成する方法と,神経細胞の保護作用のあるGlial cell line−derived neurotrophic factor(GDNF)などの遺伝子導入によりドパミン神経細胞の変性脱落を抑制する方法がある。また,筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対しては,筋肉でGDNFを発現させることにより脊髄の運動神経の脱落を抑制する方法がある。AAVベクターを使用したこれらの遺伝子治療について,モデル動物における実験結果を報告し,臨床応用への展望を紹介したい。


 SP6−5

脊髄損傷に対する神経幹細胞移植療法の確立

慶應義塾大学整形外科l),同生理学2)
○中村雅也1),岩波明生l),金子慎二郎l),三上裕嗣1),小川 裕人1),千葉一裕1),岡野栄之2),戸山芳昭1)

 近年の神経科学の目覚ましい進歩により,これまで不可能と考えられてきた中枢神経系の再生を目指した新しい移植材料として神経幹細胞が脚光を浴びている。損傷脊髄に対する神経幹細胞の応用も期待されているが,移植療法として確立するためには,1)神経幹細胞の分化誘導メカニズムの解明,2)損傷脊髄内の微小環境の変化からみた移植時期の検討,3)ラット損傷脊髄に対する神経幹細胞移植の有効性の確立と移植法の改良,4)霊長類損傷脊髄に対するヒト神経幹細胞移植の有効性の確立など,山積する問題を解決しなければならない。本発表では,これらの問題点についてわれわれが行ってきた基礎的研究を紹介し,さらに脊髄損傷に対する神経幹細胞移植療法の確立に向けた今後の展望について述べたい。


 SP6−6

脊髄損傷における内在性神経幹細胞への遺伝子導入

東京大学・医学部・整形外科l),同・大学院医学系研究科・神経生物2)
○ 山本真一l),中村耕三1),中福雅人2)

 近年,成体脊髄には神経前駆軸胞が広範囲に存在することが明らかとなり,その潜在的再生能を利用した損傷組織再生の可能性が示唆されている。我々はこれまでに,内在性前駆細胞は損傷に応答し増殖するも,そのニューロン分化が環境因子により抑制されていることを明らかにしてきた。この抑制機構として,既報のNotchシグナル系の他,BMPやCNTF等の関与が考えられる。成体前駆細胞の培養系において,BMP4やCNTFはアストロサイト分化を促進し,ニューロン,オリゴデンドロサイト分化を抑制した。

 Smad6/7,dominant negative STAT3の強制発現は,逆の効果を示した。また,Neurogenin2(Ngn2)の強制発現によりニューロン分化は著明に促進し,これはBMP4やCNTFの存在下でも観察された。そこで,切断損傷脊髄内に直接Ngn2発現ウイルスを導入したところ,ニューロンの新生を誘導し得た。同時に,グリア瘢痕形成に寄与するアストロサイト分化を抑制し得た。遺伝子療法や薬物療法を併用することで,内在性神経前駆細胞を用いた損傷脊髄の再生誘導療法につながる可能性が示唆された。


 SP7−1

単一生細胞を対象とする機能分子マッピングと採取・同定法

東京工業大学生命理工学研究科
○ 猪飼 篤,長田俊哉,レハナ・アフリン,金賢徹

 これからの再生医療および細胞生物学研究の一つの方法として,培養生細胞上での機能分子分布のマッピング法と,細胞表面および細胞質からの分子採取と同定法の開発の現状について報告する。方法は主に原子間力顕微鏡(AFM)の探針を目的に応じて機能化した上で,細胞との接触を通じて行うものであり,次のような研究を行っている。1)特異的リガンド分子で修飾した探針を用いて細胞表面の受容体分子の存在箇所をマッピングする。2)オリゴTで修飾した探針あるいは無修飾の探針を用いて細胞質からmRNAを採取し,これを増幅後同定することにより単一生細胞内での発現されている遺伝子を一定の時間間隔をおいて同定する。3)共有結合性架橋剤で修飾した探針をもちいて細胞表面及び細胞質からタンパク質分子を採取し同定する。これらの方法を用いて,単一生細胞のレベルでの機能分子の発現状態と分布状態を解析する,「単一生細胞ナノ分析法」の開発を目指している。


 SP7−6

細胞ナノサージャリー

産総研ティッシュエンジニアリング研究センター
○中村 史,韓成雄,小幡谷育夫,武田晴治,中村徳幸,三宅 淳

 本研究では,径がナノスケールの超微細な針を用いて,低侵典な細胞操作技術を開発することを目的としている。この針にDNAなど様々な分子を担持し・細胞内部へ導入することによって,細胞へのダメージを抑えた状態で,外部からの直接的な操作を行う。このような微細な針は光学的に観察することが困難である。

 そこで,針の細胞への挿入の情報を正確に捉え,操作する装置として原子間力顕微鏡(AFM)を用いた。針を結合したAFMカンチレバーにかかる微小な力をモニタすることで,細胞への針の挿入を制御する。針にはカーボンナノチューブを担持した針(直径約20nm),エッチングによってシリコン製AFM探針を先鋭化した針(直径約200nm)などを使用し,細胞への挿入操作を試みた。針を細胞に徐々に接近させると,針が細胞膜に接触していることを示す斥力が観察され,針を細胞から引き抜く過程では逆方向の弱い引力が観察される。

 このように一連の動作において観測される力変化から,針と細胞との接触状況をリアルタイムにモニタすることが可能であることが分かった。現在、ヒト培養細胞を用いてGFP遺伝子の導入等を試みている。


 SP8(1)-1

成人多能性幹細胞(MAPC)の再生医学への応用

東海大学医学部再生医学センターl),同血液・腫瘍内科2)
○ 六車ゆかり1),中村嘉彦l),安藤潔1)2),堀田知光1)2)

 ヒトやマウスの骨髄中に骨,軟骨,脂肪細胞など沿軸中胚葉由来の細胞に分化しうる問葉系幹細胞(MSC)が存在することが知られている。さらに胚葉を超えた分化能力を有する成人多能性幹細胞(MAPC)の存在が報告され、その再生医学への応用の期待が高まっている。特に神経,骨格筋,心臓,肝臓などの再生医療においては骨髄を出発材料とできる点には大きな利点がある。

 しかしながら・現時点ではミネソタ大学以外から報告は乏しい。追試の困難な理由として誘導および増殖培養の難しさ,さらにヒトではin vivo分化実験の良いモデルがないことなどが考えられる。我々の施設では凍結ヒト骨髄液より,30 cell doubling population以上の継代数のMAPCの誘導に成功している。これらのMAPCは現在のところ,骨格筋,血管内皮,骨,軟骨,脂肪細胞,肝細胞の計6方向の分化誘導能を示した。本シンポジウムにおいてはわれわれの経験を踏まえてその現状および医療応用の可能性について考察する。


 SP8(1)−2

ES細胞と再生医療

京都大学再生医科学研究所発生分化研究分野/幹細胞医学研究センター
中辻憲夫

 無制限の増殖能をもち,あらゆる種類の細胞種に分化可能なヒトES細胞株の利用による再生医療が期待されている。ヒトES細胞は無尽蔵なヒト組織細胞の供給源として医学や創薬研究に利用できるとともに、様々な難治疾患に対する細胞治療を可能にする。我々はカニクイザル胚盤胞からES細胞株を樹立した。サルES細胞は、再生医学を目指した様々な基礎研究に利用されるとともに,疾患モデルサルヘの同種異系間の細胞移植治療のモデル系として,前臨床研究の重要なツールになる。

 ヒトES細胞株の樹立と使用に関する政府指針が施行されて,厳格な条件下での研究が開始しつつある。京都大学再生医科学研究所では樹立計画を進めている。国内で樹立され品質が確認されたヒトES細胞の供給体制を確立することが,我が国における再生医学研究を発展させるうえで極めて重要である。今後重要となる研究テーマは細胞や核の再プログラム化(リプログラミング)である。クローン動物の誕生は,分化したのちの体細胞核でも未受精卵に存在する未知因子の働きによって初期化されうることを示した。これと類似の脱分化または初期化現象が体細胞をES細胞と融合させることによっても引き起こされる。再プログラム化の機構解明と,それを利用して細胞の万能性を引き出す研究が極めて重要である。


 SP8(1)−3

中枢神経系の幹細胞生物学と再生医学

慶應義塾大学医学部生理学教室
岡野栄之

 神経幹細胞は,多分化能と自己再生能力を有する中枢神経系の組織幹細胞である。今回は,同細胞を用いた脊髄損傷や神経変性疾患の治療戦略への私達の取り組みについてお話したい。


 SP8(2)−1

クローンと再生医療

大阪大学微生物病研究所遺伝子動態研究分野
仲野 徹

 ヒトES細胞が再生医学のリソースとして注目されている。ES細胞から必要な細胞へと分化誘導をおこない,細胞移植に用いようというアイデアである。しかし,この場合にも拒絶反応が問題になる。そこで,核移植クローン技術を用いて,患者さんと同じ遺伝子をもったES細胞を樹立し,その「テーラーメードES細胞」から分化誘導することができれば,拒絶反応のない細胞をいくらでも利用できるのではないか,というわけである。

 このような方法が原理的に可能であることはマウスの実験から示されているが,ヒトについては未知の分野である。また,このような核移植クローニング「治療用クローニング(therapeutic cloning)」は,クローン人間作成である「個体作成クローニング(reproductive cloning)」と区別して研究を推進すべきだとする意見もあるが,現時点ではコンセンサスが得られていない。セッションのイントロダクションとして,クローンの再生医学への利用について,現状の概略を解説したい。


 SP8(2)−2

クローン技術の発展と再生医学

理化学研究所神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター ゲノム・リプログラミング研究チーム チームリーダー
若山照彦

 現在,いくつもの動物種でクローンの作出に成功している。しかしいずれの動物種でもクローンの成功率はわずか5%以下であり,たとえ生まれてきても肥満や肺炎などの異常が生じることがあり,いまだ不完全な技術である。だがこのクローン技術を利用することで,体細胞から胚性幹細胞(核移植由来ES細胞:ntES細胞)の樹立もマウスでは可能になった。つまり自分の体細胞から自分自身のES細胞を作ることも理論的に可能になったのである。

 ES細胞は分化誘導の研究から再生医療の強力な手段になりうると言われているが,そのままでは免疫による拒絶反応が起こってしまう。だが自分の体細胞由来ntES細胞から作られた臓器ならば拒絶反応は生じない。この技術を人に応用することが技術的および倫理的に許されるかどうかを判断するためにも,実験動物を用いた基礎研究は不可欠である。


 SP8(2)−3

クローン研究と社会

京都大学人文科学研究所・文化研究創成部門
加藤和人

 クローン羊ドリーの誕生は,かつてSFの中の存在であったクローン人間が実現する可能性を生み出した。以来,世界各国でクローン研究(と技術)に関する議論が行なわれ,日本やイギリス,ドイツなどを含む多数の国でヒトクローン個体の作製が法律で禁止されるようになった。ところが,クローン研究を巡る社会的な議論はいくつかの点で現在も混乱している。主な問題点は,(1)目的によってはヒトクローン個体を作っても良いのではないかという主張をどう扱うかという問題と,(2)再生医療のための「ヒトクローン胚」を作ってよいかどうかという問題である。

 これらには,文化的および宗教的要素など,科学的立場のみで判断できない問題が含まれている。ヒトクローン個体を作ることは科学的に許されないと研究者が主張するだけでは問題は解決せず,ヒトクローン胚についても異なる立場の意見がお互いに譲らずに対立している。本講演では,クローン研究(と技術)を巡る社会的議論の歴史と現状を紹介し,「社会の中のクローン研究」に関して広く議論するための素材を提供することを目指したい。


1716 機能面に着目した神経幹細胞移植の検討
慶應義塾大学医学部脳神経外科1),慶應義塾大学医学部生理学教室2),岡崎国立共同研究機構生理学研究所3)
戸田康夫1),内田耕一1),林 拓郎1),峯 裕1),河瀬 斌1),小泉 周2),岡野栄之2),籾山俊彦3)

 【目的】
神経上皮型幹細胞(NESC)の移植ドナーとしての有用性を機能面から検討することを目的とした。すなわち、@NESCが形態のみならず、活動電位をもった機能的神経細胞に分化するか,ANESCを移植した場合、どのような細胞に分化し,いかなる電気的活動を生じるのか、について検討した。

 【方法】
@ E10ラット中脳胞部神経板由来NESCを血清存在下に培養し,バッチクランプ法を用いて活動電位と膜電流を記録した。
A GFP遺伝子を導入した中脳胞部神経板組織を正常ラット線条体に定位的に移植し・免疫組織化学的,および電気生理学的検討を加えた。

 【結果】
@ 培養2日日で電流刺激により活動電位の発生を認めた。
A 移植したNESCはホスト線条体に生者し、その多くは神経細胞へ分化した。この分化神経細胞はGlutamate,GAD,またはTHを発現していた。さらにドナー由来のGFP陽性神経細胞から抑制性および興奮性の2種類のシナプス後電流が記録された。

 【結論】
NESCは機能的神経細胞へ分化し・成熟正常脳へ良好に生着し,神経回路を構築する能力がある。この能力により損傷された神経回路網の再構築を介する機能回復が期待できる。


2512 損傷部脊髄内セマフォリン3A阻害割による損傷軸索の再生
慶應義塾大学整形外科l),同生理学2),住友製薬研究本部3)
○ 金子慎二郎1)2),岩波明生l)2),中村雅也1),宮尾幸代2),岸野晶祥3),木村 徹3),熊谷和夫3),戸山芳昭l),岡野栄之2)

 われわれはこれまでラットとサルを用いて,脊髄損傷に対する神経幹細胞移植の有効性を報告してきた。さらなる損傷軸索の再生を目指すためには,中枢神経系に存在する軸索伸展阻害因子の問題の解決が重要となってくる。そこで今回われわれは,軸索伸展阻害因子のうち損傷部グリア療痕組織内に存在するセマフオリン3Aに対する阻害剤を開発し,その脊髄損傷に対する有効性を検討したので報告する。

 成体ラット胸髄完全切断モデルを作製し,切断部にミニポンプを留置して4週間薬剤を持続投与した。損傷後BBBスコアーによる後肢運動機能評価を行い,また損傷後3ヵ月の時点で経心臓的環流固定を行い組織学的解析を加えた。薬剤投与群では非投与群と比較して有意な後肢運動機能の回復が認められ,さらに薬剤投与群では切断部およびその尾側部に再生軸索が認められた。今後,神経幹細胞移植との併用によりさらなる機能回復が得られるかどうか検討する予定である。


2513 マウス胚性肝(ES)細胞からの神経肝細胞の分化誘導と脊髄損傷モデルでの移植治療の有用性

聖マリアンナ医科大学救急医学教室l〉,整形外科学教室2),免疫学・病害動物学3)
○ 濱田真里1),千葉俊明3),明石勝也l),青木治人2).鈴木 登3)

 ES細胞から神経系細胞を分化させ脊髄損傷マウスに移植しその有用性を評価した。雌マウス胸髄を1.5 mm切除し完全離断した。ES細胞(雄)をレチノイン酸(RA)により分化誘導した神経系細胞を移植(RA群)し,PBS群,未分化ES移植群と比較した。温熱と針刺激に対する下肢の反応を観察し,Open field scoreとVertical gridを用い運動機能を評価した。またY染色体特異的遺伝子(Sry)を使い移植細胞を同定した。

 RT-PCRでmRNA発現を検討し組織学的検討も行った。RA処理細胞はネスチン陽性の神経幹細胞であった。移植後脊髄内では神経細胞,アストロサイト,オリゴデンドロサイトが生存していた。Sry+の移植細胞は損傷脊髄内を上下に数椎体分移動した。未分化ES群とRA群はBDNF−NT3+NGF+で神経成長因子による神経保護作用も示唆された。PBS群に比べ未分化ES群とRA群では下肢機能が改善した。

 RA群では早期より機能改善を認めやがて下肢3関節を使った。RA群では奇形種発生を認めなかった。以上ES細胞より誘導した神経幹細胞の脊髄損傷での有用性が示唆された。


2517 急性期脊髄損傷に対するIL-6レセブター抗体の効果
慶応義塾大学生理学1),慶応義塾大学整形外科2),中外製薬株式会社3),大阪大学健康体育部4)
○岡田誠司1),中村雅也2),大杉義征3),吉崎和幸4),戸山芳昭2),岡野栄之1)

 脊髄損傷後の急性期に移植された神経幹細胞も内在性神経幹細胞もアストロサイトヘと分化してしまいニューロンへは分化しないことが報告され,その要因として損傷脊髄内の微少環境の変化が重要と考えられている。特に損傷急性期に上昇する炎症性サイトカインであるIL-6は,in vitroの実験で神経幹細胞をアストロサイトヘと分化誘導することが証明されており,これを抑制することで損傷脊髄内にみられる反応性アストロサイトによる瘢痕形成を抑制し,運動機能回復へとつながる可能性がある。そこで今回われわれは,IL-6レセプター抗体の脊髄損傷に対する治療応用の可能性について検討した。

 損傷モデルは成体マウスを用いてMASCICモデルに準じた重錐落下法により胸髄損傷を作製し,マウスIL-6レセプター抗体を腹腔内投与した。損傷後脊髄内でIL-6レセプターが上昇することはwestern blottingにより確認した。免疫組織学的検討では対照群に比して新生GFAP陽性細胞数は有意に少なく,さらに炎症細胞浸潤の範囲も減少した。また,複数の運動機能評価で対照群に比して有意に良好な回復が得られた。


2521 骨髄問質細胞のドーパミン作動性ニューロンヘの分化誘導と移植応用
京都大学院医・生体構造医学l),形成外料2),横浜市大・医・脳外科3)
○ 出澤真理1),菅野 洋3),鈴木義久2),井出千束1)

 Notch細胞質ドメインを導入しbFGFなどの神経栄養因子を投与することによってヒトおよびラットの骨髄問質細胞から選択的にpost−mitotic neuronが誘導されることを見いだした。この系はグリア細胞を含まない。これらの細胞にGDNFを投与すると約40%がTH陽性となり,ラットおよびヒトの細胞から誘導したものをバーキンソンモデルラットに移植したところ,apomorphine誘導の回転運動が顕著に改善し,移植線条体においてneurofilament,TH,dopamine transporter陽性の神経細胞に分化した。骨髄問質細胞の神経疾患への応用が示唆される。


2522 脊髄損傷に対する樹状細胞移植による神経再生
慶應義塾大学医学部神経免疫研究グループ1),同整形外科2),同生理学3),同先端医科学研究所細胞情報部門4)
○ 三上裕嗣1)-4),岡野栄之3),坂口昌徳3),中村雅也2),島崎啄也3),岡野James洋尚3),河上 裕4),戸山芳昭2),戸田正博1)-4)

 成熟哺乳類の中枢神経系は再生困難であり,特に損傷後の脊髄ではニューロン新生は起こらないと考えられてきた。一方,我々は神経再生が困難な要因の一つとして,中枢神経系が免疫学的に寛容であることに着目してきた。そこで本研究では,免疫系を制御する樹状細胞を移植することにより,損傷脊髄の神経再生が可能であるかを検討した。

 マウス(BALB/c,C57BL/6,nestin- EGFPトランスジェニック)胸髄切断モデルを作製し,同種マウス脾臓からソーティングにより単離したCD11c陽性未成熟樹状細胞(DC;1×106個/匹)を損傷部に移植した。DC移植群では,内在性神経幹細胞/前駆細胞(EGFP+/BrdU+/GFAP一)の有意な増加,内在性神経幹細胞/前駆細胞からのニューロンの新生(Hu+/BrdU+)が観察され,さらに損傷尾側での軸索再生,運動機能(BBB score,RG score)の有意な回復が認められた。以上のことから,脊髄損傷に対する樹状細胞移植は,ニューロンの新生,軸索再生を誘導し,有意な機能回復をもたらすと考えられた。


2523 MPSZ新生児マウスへの遺伝子改変骨髄間葉系細胞の脳室内移植によるCNS病変の改善
 京慈恵会医科大学DNA(研)遺伝子治療研究部門l).小児科2),慶応義塾大学医学部病理学教室3)
○ 櫻井 謙1)2),飯塚佐代子1),沈 剄松l),森 泰呂3),梅澤明弘3),大橋十也1)2),衛藤義勝1)2)

 【緒論】
MPSZは,β−glucuronidase(HBG)の遺伝的欠損により,ムコ多糖がライソゾーム内に蓄積し,CNS症状等を引き起こす。今回骨髄間葉系細胞(MSCs)を用いたMPSZマウスのCNS病変の治療効果を検討した。

 【方法及び結果】
MSCsにretrovirusでHBG geneを導入し,MPSZ新生児マウスの脳室内に移植。脳のHBG染色で広範囲にHBG陽性細胞を認め,定量でも上昇を認めた。ムコ多糖の定量では,治療群で低下を認めた。Toluisine blue染色による形態学的検討では,無治療群で蓄積を示す泡沫状細胞を認めたが,治療群では認めなかった。

 【考察】
MSCsは採取が容易,自己の細胞を使用でき免疫学的問題が少ない。本方法により,ライソゾーム蓄積症のCNS症状の改善が期待できるものと思われた。


2524 アルギン酸ゲルを用いた神経再生
京都大学形成外科l),機能微細形態学2),奈良先端科学技術大学院大学3)
○ 橋本正1)2),鈴木義久1),Wu Sufanl),北田容章2),片岡和哉l),鈴木茂彦1),谷原正夫3),井出千束2)

 共有結合架橋アルギン酸ゲルをネコおよびラットの末梢神経再生に用いた。ラット坐骨神経に10mmのギャップを作成し,アルギン酸ゲルを用いて架橋した。術後4日では,再生軸索は裸で部分的に分解したアルギン酸ゲルに直接接しながら伸び,術後1〜2週では,共通のシュワン細胞に取囲まれた小神経束を形成し,その周囲の軸索がアルギン酸ゲルに直接接しながら伸びていた。また,末梢断端から基底膜を持たない多数のシュワン細胞がアルギン酸ゲル中に遊走していた。術後21ヵ月経過後には正常神経と同等程度まで回復した。次に,ネコ坐骨神経の50mmのギャップをアルギン酸を移植した。術後3ヵ月で電気生理学的に再生が確認され,術後8ヵ月では多数の再生有髄軸索が観察された。アルギン酸ゲルは再生軸索の仲良とシュワン細胞の遊走に好ましい生体適合性をもち,再生軸索は術後長期経過後には正常神経と同等程度まで回復することが分かった。


2525 脳脊髄液経由でニューロスフェアーを脊髄損傷部へ移植する方法の開発
京都大学形成外科1〉,機能微細形態学2)
○ 鈴木義久1),Wu Sufanl),北田容章2),片岡和哉l),張弘富1),太招正佳1),江尻洋子l),鈴木茂彦l),野田 亨2),井出千束2)

 脊髄損傷の治療に神経幹細胞の有効性が期待されている。そこで,脳脊髄液経由で神経幹細胞を脊髄損傷部に移植できないかを検討した。GFPラットより海馬由来のニューロスフェアーを作成した。4週令のラットのT8−9のレベルで脊髄に圧挫損傷を加え,第4脳室に注入した。術後1ヵ月の観察では,脳脊髄液と共にクモ膜下腔を移動し脊髄表面の軟膜に付着していた。また損傷部で多くの移植細胞が脊髄実質へ遊走し突起を出して宿主組織に組み込まれていた。免疫組織染色ではアストロサイト,オリゴデンドロサイトヘの分化が観察された。神経根内ではシュワン細胞様の形状を呈していた。これらのことから周囲の環境により幹細胞の分化の方向が決定されると考えられる。以上,脳脊髄液中に注入した神経幹細胞は損傷された脊髄および神経根の表面に付着し,さらに組織実質内に侵入,分化することが明らかとなった。


2526 炭素負イオンを注入したシリコンチューブによる末梢神経再生に関する研究
京都大学大学院医研究科整形外料1),京都大学大学院工学研究科2)
○ 池口良輔1),柿木良介l),松本泰一l),中村孝志l),辻 博司2),石川順三2)

 シリコンチューブを用いて末梢神経欠損を架橋修復するとチューブ内に神経再生がおこることが知られているが,その再生距離には限界があり,実験的にはラット坐骨神経では10mmが限界である。また,炭素負イオン(C―)を注入することによってシリコン表面は改質し細胞接着特性が向上することが知られている。

 今回,ラット坐骨神経での15mm神経欠損部をC―を注入したシリコンチューブを用いて架橋し,C―を注入していないシリコンチューブをコントロールとし,神経再生を比較検討した。

 コントロール群では神経再生は全く認められなかったのに対して,12過でC―を注入したシリコンチューブ群では神経架橋の形成が認められ,組織形態学的にも再生神経遠位部で再生軸索が認められた。24週で電気生理学的にはpedal adductor muscleで複合筋活動電位が認められた。C―を注入することによってシリコンチューブ内での細胞接着特性が向上し神経再生に有利に働いたと考えられる。


2527 神経上皮型幹細胞の増殖と分化制御
慶應義塾大学医学部脳神経外科
○ 林 拓郎, 内田耕一,戸田康夫,峯 裕,河瀬 斌

 【目的】
神経上皮型幹細胞(NESC)は神経細胞への旺盛な分化能を有する。この性質を維持したままNESCを培養系で増殖することが可能か否か,栄養因子に対する反応性とその神経細胞への分化能を検討した。

 【方法】
@ E10ラット中脳胞部神経板由来NESCをbFGF添加,EGF添加,無添加群で浮遊培養し,NESCの増殖能をMTSアッセイで評価した。
A bFGF反応性neurosphereの培養期間による分化能の差異を,1週間及び2週間培養して得られたprimary 1 week-old /2 week-old sphereを2日間分化誘導し,その分化能について免疫組織学的に比較検討した。
B 1 week-old sphereより分化した神経細胞のphenotypeについて免疫組織学的に検討した。

 【結果】
@ NESCはbFGFにのみ反応し,培養1週間後に約7.5倍に増殖した。
A 1week-old sphereは神経細胞に100%分化したが,2week-old sphereでは32.5%のみが神経細胞に分化した。
B 1 week-old sphere分化2日後の神経細胞にはglutamate(79.9%),GABA(12.4%),TH(1.3%)の発現がみられた。

 【結論】
bFGFはNESCの増殖に関与するが,bFGF反応性sphereの神経細胞への分化能は時間の経過とともに低下する。




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