| 脊髄に歩くことを教える (Teaching the Spinal Cord to Walk) |
| 雑誌「SCIENCE」1998年1月16日号 VOL.279, pp.319-321 (囲み記事を除く部分の全訳) 翻訳 中久喜健司 |
| 図2 あっという間の回復 図中の線が示すように、クロニジン治療の前の脊髄を切断された 猫は(B)のようにほとんど後ろ足を動かすことができない。 しかしクロニジン投与後は(C)のようになる。普通の猫の動きは (A)に示されている。 |
この新しい手法の擁護者達でさえも注意を促している。「もっとたくさんの研究をしてそのトレーニングが大きな違いを生むことを示さなくてはならない」とEdgertonは言う。「我々はこの方法が大きな違いを生むと思っているが、そのことは非常に重大な結論であるから、慎重になる必要がある。
それらの実証のための研究の中にはすぐ実行されるものもある。マイアミプロジェクトのCalancieのチームでも運動神経トレーニングの試験をすでに始めている。トレッドミル上を歩かせる方法と、天井に取り付けられた円形状のレール軌道にハーネスを取り付けてそれで患者を吊り上げるようにして、ちょうどドライクリーニング店でラックをスライドしながら動くシャツのように、地面を歩くことができるという方法の両方で試験をしている。天井のレールを使う方法では、患者は自分の足の下で動く床の上を歩く代わりに地面の上を動くことができるので、トレッドミルよりも現実に近い歩行ができる、とCalancieは述べている。
そして、間もなく他の改善方法が登場するかもしれない。今月掲載予定のJournal of Neurophysiologyの論文でRossignol、Barbeauと彼らの大学院生であったConnie Chauは、クロニジン(clonidine)という薬が、脊髄が運動をつかさどる信号パターンを出す手助けをすることが分かっており、運動神経トレーニングと組み合わせて用いた場合に脊髄を切断した猫の回復を早めることができるということを発表している。Rossignolが言うには、「脊髄猫は一週間以内に後ろ足で歩けるようになる」、そしてそれ以上は薬を必要としなくなるという。クロニジンなしの場合、同程度の回復をするには3,4週間かかる。このような結果から、将来は脊髄損傷患者は薬の投与と歩行訓練を同時に受けることになるかもしれない。
今のところ、若くて気立ての良い、かつてはオートバイの自由を謳歌したThorsten Sauerのような開拓精神のある患者は、自分の足で数歩あるくことによって得られるほんの少しの自由に日々浴している。Sauerは力強く言う。「人間の体は座るためにできているのではない。時々は歩くべきなのだ。」
雑誌「SCIENCE」1998年1月16日号 VOL.279, pp.319-321
(囲み記事を除く部分の全訳)
翻訳 中久喜健司