古田  では、今度は出産についてのお話を伺いたいと思います。皆さんどのようなお産をされたのか、記憶の一番新しいところで松田さんからお願いします。
松田  安産でした。
古田  自然分娩だったのですか。
松田  はい。無痛分娩ということで、誘発剤を打ち、苦しくなってきたときに麻酔を入れました。朝の7時ぐらいに誘発剤を始め、午後1時過ぎぐらいから痛みがきました。
古田  痛みは完全にわかるのですか。
松田  はい。先生も驚いていて、「感覚があるんだね」と言われました。麻酔は全部で3回入れたのですが、陣痛は変わりませんでした。ただ、お尻や股から下はすべて麻酔が効いていて触っても感覚がなくなっていました。これ以上麻酔をかけてもお腹の痛みは変わらないと思ったので、先生が4回目の麻酔を入れようとしたのは断りました。
 それから痛みの波もひどくなってきて、子宮口も開いてきて、夕方には分娩台に移りました。それが、婦長さんに「うんち出ているから見て」とお願いしたら、もう子どもの頭が出てきていたのです。準備にとりかかっている間に看護婦さんに「見て」と言われたときにはもう子どもが出てきていました。先生もびっくりして笑いながら子どもを出してくれました。私自身傷もなく、下も縫うこともなくきれいにお産ができたのです。
 本当は先生たちはチームを組んで出産に向かう計画を立てていたようでした。でも、そうする間もなく生まれてしまいました。先生も笑いながら「いいお産ができたね」と言って終わったのです。
道木  そのうんちが出たと感じられた時が、一般の妊婦さんや私の経験からも一番苦しい時ではないかと思うのですが。
松田  後で看護師さんと話をしたのですが、もし無痛分娩でなく麻酔をかけていなかったらもっとひどい痛みだったと思うのです。楽に出てきたというのは麻酔をかけていたおかげだと思うのです。麻酔が腰などに効いていて、痛みを和らげてくれているからひどい痛みでなく気持ち悪い痛みだけで終わったと思うのです。
古田  そんなに痛くはなかったのですね。
松田  ただ、「あああ、あああ」と言うぐらいで、足を動かしてほしいと思うくらい身体がだるく、あっちに横になりこっちに横になりとやっていました。そしてあっという間に出てきた感じです。若かったら、もう一人欲しいと思える感じでした。
図3 第1子出生時の母の年齢
図3 第1子出生時の母の年齢
 平成15年度厚生労働省の人口動態統計によると第1子出生時の母の平均年齢は28.6歳です。調査に協力していただいた方の第1子出生時平均年齢は30歳ですから、やや高い傾向にあるようです。
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古田  お産の際に血圧が上がるなどの心配はありませんでしたか。
松田  血圧は180〜190mmHgに上がりました。そのせいで産後も1ヵ月健診に行ったときも子どもは大丈夫だったのですが、私のほうが血圧が高くてもう1回、2ヵ月健診ではありませんが行きました。でも血圧は下がっていませんでした。疲れもあるだろうということで様子を見ようということになっています。疲れと寝不足で血圧も高かったようです
 子どもができたときに子宮筋腫も見つかったのですが、それは産道の邪魔にならないから大丈夫ということで普通に生まれました。
牛山  健常の人の陣痛と障害を受けた人の陣痛とは違うのだろうけれど、今まで子どもを産んだことがないから比較ができなくて、その違いがわからないですよね。
松田  私たちにしても健常の人でも、出産の陣痛をわからない人もいると思います。でもこれが陣痛だとかというのはその場になってみないとわからないし、ただ普通の感覚と多少障害されていることでの感覚の違いって、何かあるのかというあたりに興味があります。
  私はできれば誘発剤を使わず予定どおりに産みたかったのです。本当の陣痛はどうなのか私も味わいたかったです。誘発剤でお腹が苦しくなるのは生理痛のような感じですね。お腹が張っていて、腰のほうが痛くて歩けない状態でした。
道木  月経痛のような痛みということでしょうか。
松田  はい。本当に「痛い、痛い」という陣痛ではなかった。ほかにも周りに陣痛の人がいたのですが、その人たちはかわいそうなくらい痛そうでした。私は痛い、痛いといいながらご飯も食べられていたけれど、中には泣いている人もいました。
道木  人によって様々ですね。
寺岡  陣痛と陣痛の合間にご飯を食べられる人は確かにいます。
浅野  健常の方でも一人ひとり全然違いますよね。
古田  ありがとうございました。浅野さんはいかがでしたか。
浅野  私は帝王切開でしたので、特に出産のときに大変だったというエピソードはありません。
古田  予定日になって帝王切開をされたのですか。
浅野  先生の都合で予定日より少し早くなったのです。出張で海外へ行くので、その間何かあったら困るからその前にということで。別に私はかまわなかったのですが、そのことに主人は怒っていました。
古田  腰椎麻酔ですか。
浅野  はい、はじめは腰椎麻酔で、途中、具合が悪くなったら全身麻酔に切り替えるという話はされていたのですが、結局、腰椎麻酔だけでした。
古田  手術のときに手術室で赤ちゃんをすぐに見ることができましたか。
浅野  はい。
古田  抱く事はできないですよね。
浅野  抱く事はできませんでした。そのまま遠くで「生まれた」というのを見て、すぐに連れて行かれたのです。もっとそばに連れてきてくれないのかなと思いました。何をしていたのかわかりませんが、産後の処置にはかなり時間がかかっていました。
古田  手術室に長くいたということですか。
浅野  ええ、何時間かかったのかな。お昼に手術室に入って、出てきたときには夕方になっていました。
古田  手術の後、車いすに乗られたのは何日目からでしたか。
浅野  次の日には車いすで「お乳をあげに行かなければいけないのよ」と言われました。私は熱が出ていたので、つらかったです。
図4 分娩方法
図4 分娩方法
 出産件数66件(出産経験者44名)の分娩方法の内訳を示しました。経膣分娩が33件(50%)、帝王切開が33件(50%)でした。経膣分娩のうち、正常分娩は24件、吸引分娩は8件、鉗子分娩が1件でした。
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古田  ありがとうございました。それではSさんはいかがでしたか。
 予定日の2週間ぐらい前におしるしというのですか、出血して、それで病院に行きました。その時は陣痛が微弱で生まれそうもないと言われましたが、病院が自宅から遠かったので、そのまま入院して1週間以上経ってやっと生まれたのです。
古田  1週間も入院なさったのですね。
 そうですね。その間も何回か陣痛のようになるのですが、微弱で出産までいきませんでした。
古田  どのような感じでしたか。体験されるのは初めてではないですか。
 なんと言ったらいいのでしょうか、そんなにすごい痛みではないのです。ちょっと締め付けられるような、妊娠中にお腹が張るという感覚がありますね、あれのもう少しきついような感じです。
道木  子宮がキューンとなるような感覚がはっきりわかるのですか。
 うーん。
道木  妊娠していないときはそういう感覚はなかったですか。
 ないですね。
道木  そのときに感じる。
 はい。
古田  お腹がパーンと張って硬くなりますが、我慢ができる痛みということでしょうか。
 我慢できる痛みです。あまり長く置いてしまうと、赤ちゃんにも良くないからそろそろ生んでしまいましょうと言われて、促進剤を打ちました。
古田  陣痛促進剤は点滴ですか。
 そうです。私は骨盤の形の問題で自然分娩は無理だと思っていました。泌尿器科の先生にも無理といわれていましたが、入院したときの産科の先生は最初は自然分娩でやってみようと言われました。私は尿管皮膚瘻という手術をしていて、なるべくお腹を切りたくなかったのです。できたら自然に産めたらいいと思っていたので、やってみたのですが、やはり陣痛が微弱で産まれなくて、赤ちゃんの心拍数が下がってきたので帝王切開に切り替えて産みました。
古田  では両方体験なさったという感じですね。
 そうですね。
道木  その間、苦しかったですか。
 やはり出産に近くなるにつれ、だんだん痛みが増したというのは覚えているのですが。
古田  そんなにすごい痛みではなかったのですね。
 そうですね。産後の傷のほうが痛かったです。尿管皮膚瘻の手術の傷があるので、お臍の上ぐらいを切ったのです。ですから息をするのが苦しかったです。
  次の日、赤ちゃんにミルクをあげに行こうよと言われたのですが、あまりにつらくて朝ではなく、夕方まで様子を見てからにしました。
表 脊損女性の出産方法と麻酔
表 脊損女性の出産方法と麻酔
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