| 日本脊髄障害医学会保険問題等検討委員会 活動報告 |
| 委員長 岩坪暎二 |
1. 一病院完結型の脊損医療で、どの程度費用がかかるかの調査を(東海大学、国立身障センター、熊本リハ病院、美唄労災、総合せき損センターの協力で集めた90症例)実施した(解析のまとめ)。
- 頚損(90日以内入院例N=55)の入院期間は
33.9日 総医療費は 1,940,147円 1日 104,258円 90日以後
入院
(N=43)276.6日 8,846,406円 32,592円
- 合併症あり(N=23)の入院期間は
347日 総医療費は 9,629,877円 1日 31,272円 合併症なし
(N=H)206日 6,918,936円 33,503円
- C4以上(N=12)の入院期間は
218.1日 総医療費は 8,373,517円 1日 36,909円 C5以下
(N=11)367.9日 8,257,209円 26,753円
- 完全麻痺(N=16)の入院期間は
408.1日 総医療費は 10,975,186円 1日 31,617円 不全麻痺
(N=19)195.4日 6,906,995円 36,677円
- 挿管有り(N=17)の入院期間は
173.8日 総医療費は 7,363,568円 1日 127,970円 挿管無し
(N=40)180.9日 4,825,853円 37,372円
- 救急施設管理(N=27)入院期間は
33.1日 この間の
総医療費は2,171,513円 1日 116,972円 脊損
専門施設
(N=19)171.3日 6,615,288円 55,571円
総 括:
(1) 合併症があれば入院期間が長く、医療費も高い。 (2) 高位頚損や挿管例の1日医療費が高い。 (3) 頚損治療費総額は、1日医療費が高い救急施設例よりも一貫治療の専門施設が経済的である。
米国における脊損医療費に関する本「Spinal Cord Injury: An analysis of medical and social costs, pp188, Monroe etal. Rutgers,theStateUniversity,Dcmos.1998」が有ります(住田幹男先生推薦)
2. 脊損医療の特殊性についての啓蒙文
脊髄損傷とは脊髄神経に麻痺が起きる結果、寝たきりや車椅子を必要とする障害者になる病態です。日本全国で毎年5000名以上の患者が発生し、治療とリハビリに約1年の期間と1,000万円の治療費が必要です。もし、適切な医療と十分な医学的リハビリテーションが受けられず、麻痺の回復と治療に支障をきたすと、後々篤い障害が残り、自宅や社会に戻れない人も出てきます。のみならず、退院後の医療、福祉にかかる社会的負担は恒久的に家族にとっても社会にとっても莫大になります。
適切な治療のためには重篤な麻痺に対処できる医療を可能にする治療・看護のマンパワーと纏まった期間のリハビリテーションが必要です。一貫した脊髄損傷専門治療が行われれば、合併症を併発することなく、早く、後遺障害が少ない状態で退院させる事が出来ます。その結果、医療や福祉にかかる費用を低減し、福祉の受給者としてではなく納税者として社会に貢献する事も可能になります。脊髄損傷をきちんと治療できるかどうかで経済的影響もプラスになるかマイナスになるか二倍に変わります。
脊髄損傷の基本的医療遂行にそぐわない保険点数のために、専門施設の運営そのものが危機に瀕する状況にあり、この構造的な医療の矛盾を是正するのに民間の自助努力には限界があります。本医学会は、国の脊損医療に関する基本政策に特段の配慮をお願いいたします。
〔「日本脊髄損傷医学会雑誌」16巻1号、2003年より〕