pdf形式でダウンロード k1.pdf  68kb

換気障害患者における
気管内挿管または気管切開チューブの抜管基準


―― ウィーニングへの新しいアプローチ ――
Criteria for Extubation and Tracheostomy Tube Removal
For Patients With Ventilatory Failure
CHEST 1996;110:1566-71
John R. Bach,MD,FCCP; Lou R,Saporito,RRT,BS
(訳者:赤十字語学奉仕団 古米稔子、関根孝江、田邉政子)



 本研究の目的は、気管内挿管チューブまたは気管切開チューブの抜管の成功を予測すると思われるパラメータをプロスペクティブ(訳注:計画に従って後に発生する事象を追跡する方法)に比較することである。換気機能に関係なく、主として神経筋障害による換気不全を持ち基準を満たした患者49名に対し、連続して62回の抜管が試みられた。34名の患者は人工呼吸器による補助を24時間必要とした。気管内挿管チューブまたは気管切開チューブを経由した間欠的陽圧換気(intermittent positive pressure ventilation=IPPV)の代わりに必要に応じて非侵襲的IPPVを用いた。抜管し切開部位が閉鎖し、それに伴う呼吸不全症状および血中ガスの悪化が少なくとも2週間見られない場合を抜管の成功と定義した。非侵襲的IPPVおよび咳の介助を行なっているにもかかわらず、呼吸困難、肺活量および動脈血酸素飽和度の低下が現れた場合を抜管の失敗と定義した。

 年齢、抜管前の人工呼吸器の使用期間、肺活量、咳の最大流速(PCF)を独立変量とし、抜管の成功の予測に有用であるかを調べた。PCFが160L/minを超える場合のみ抜管の成功が予測でき、反対に160L/minのPCFを介助によっても作り出すことができない場合は再挿管の必要性が予測された。PCFが160L/minを超える患者に対する43回の抜管は全て成功した。PCFが160L/min未満の患者に対する15回の抜管は全て失敗した。PCFが160L/minである患者4名については2名が成功、2名が失敗であった。我々は、神経筋障害による換気不全患者の抜管が成功するためには、自発呼吸の能力に関係なく、少なくとも160L/minのPCFを咳介助によってでも作り出せる能力が必要であると結論付けた。


キーワード:
咳(cough);強制排気(exsufflation);機械式人工換気(mechanical ventilation);筋ジストロフィー(muscular dystrophy);ポリオによる灰白髄炎(poliomyelitis);呼吸マヒ(respiratory paralysis);呼吸療法(respiratory therapy)

略 語:
ALS=筋萎縮性側索硬化症;IPPV=間欠的陽圧換気;MAC=器械による咳補助;PCF=咳の最大流速;SpO2=オキシヘモグロビン飽和度;SCI=脊髄損傷;VC=肺活量;VFBT=人工呼吸器を外して自力で換気していられる時間 


 人工呼吸器からのウィーニングに関するパラメータについてはすでに多くの記載があり、その相対的な重要性が討論されてきたが、我々の知る限り気管内挿管チューブや気管切開チューブの抜管に関する基準は存在しない。呼吸筋麻痺または胸郭の機能障害に起因する換気不全の患者では、肺活量(VC)が測定不能なほど少ない患者でも、肺胞換気は非侵襲的な方法によって長期に維持することができる。しかし、我々の研究では、肺活量がわずかであった多くの患者で気管切開チューブの抜管に成功した一方で、気道分泌物を排出できないため抜管できない患者も一部存在した。そして、排痰困難のため気管切開チューブの留置を余儀なくされた患者の中には以後、人工呼吸器使用を必要としなくなる者も含まれていた。

 実際、気道に分泌物があっても咳による排痰が不十分なために、自発呼吸ができるのに気道吸引だけの目的で気管内挿管チューブまたは気管切開チューブを留置している患者も多くいる。我々は、患者が人工呼吸器による換気補助を必要としているかどうかにかかわらず、分泌物を移動できる最大の呼気流速を作る能力が、安全に抜管できるかどうかを決定するパラメータになるという仮説を立てた。本研究の目的は、気管内挿管チューブまたは気管切開チューブの抜管の成功を予測すると思われるパラメータをプロスペクティブに比較することであった。人工呼吸器への依存性に関わらず、気管内挿管や気管切開チューブを抜管することは、換気不全の患者に対する、新しいウェーニングアプローチの一つである。


 被験者と方法

 気管内挿管または気管切開チューブを留置された主として神経筋障害による換気不全患者49名が、人工呼吸器からの離脱と抜管を目的として、人工呼吸管理室に入室した。49名のうち43名は従来の方法によるウィーニングに失敗し、残りの6名は人工呼吸器からは離脱したものの、急性期の入院期間中には抜管できず、気管切開チューブの留置を余儀なくされた。人工呼吸器使用者はいずれも、アシスト・コントロールモード、同期式間欠的強制換気(SIMV)、プレッシャーサポート換気、呼気終末陽圧、酸素付加を組み合わせて使用していた。人工呼吸器使用者43名のうち34名は人工呼吸器による換気補助を24時間必要としていた。患者の多くはこれまでウィーニングを試みて2回以上失敗しており、7名は抜管して再挿管した経験が1回以上あった。

 10名は通院患者で、残る39名は入院患者であった。少なくとも6名の患者は気管切開チューブを留置したまま医療施設以外の環境へ退院することができなかった。この患者らは退院後の環境で常時家族やヘルスケアの専門家の管理を受けて気管内吸引ができる状態でなく、またいずれの患者も長期の特殊看護ケアを望んでいなかった。

 さらに、気管切開を受けている5名の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者も抜管し(表1)、気管内挿管チューブを留置していた2名のCOPD患者は同様のアプローチで抜管した。気胸の既往症を持つ患者はいなかった。

 患者らが抜管の治療プロトコルの被験者となったのは、医学的に安定な状態で、発熱がなく、白血球値が抗生物質の点滴なしで正常な値であるか、もしくは値が上がっているがグルココルチコイドの投与のためであると説明がつく場合である。加えて、患者らには健全な認識力があり協力的であること、抗ヒスタミン薬以外の催眠薬や鎮静剤を投与されていないことが求められた。神経筋疾患の患者らは酸素付加をしないルームエアによる人工呼吸器の換気補助を使用または使用せずに、必要に応じて徒手または器械による咳介助を受け、60oHgを超える動脈血酸素分圧、92%を超える平均オキシヘモグロビン飽和度(SpO2)、正常な動脈血炭酸ガス分圧を維持する必要があった。COPD患者は補足的酸素を受け、中程度の高炭酸ガス血症は許容された。


表1 COPD患者の気管切開チューブ抜管時の臨床データ
年齢 TIPPV* FEV1 FEV1
FVC
自力の
PCF
aPCF†
ml % L/ml L/ml 成否‡ h/d§ F/u‡‡ C**
72.0 7 870 75 120 300 S 24 12 24††
72.9 7 700 60 250 250 S 15 2 0
46.3 6 320 31 250 250 S 24 24 24††
73.5 6 730 61 <50 <50 F 24 2 24††
53.0 4 650 55 190 190 S 8 22 8

* 抜管の前に気管切開による間欠的陽圧換気(TIPPV)からのウィーニングを試みた月数
aPCF(=assisted PCF)介助による咳の最大流速
抜管の成功(S)または失敗(F)
§ 抜管時に必要とした補助換気の一日あたりの時間
‡‡ 抜管後に使用した非侵襲的IPPVの使用月数
** 現在の一日あたり補助換気使用時間
†† 死亡直前の一日あたり人工呼吸器使用時間

 VCは、気管内挿管や気管切開チューブ留置中はカフエアを膨らませた状態で、また、抜管した後は、上気道を通して測定された。できるだけ、器械による咳補助(訳者注:MAC=Mechanically assisted coughingと呼ばれる。使用する器械は、イン-エクサフレーター=In-Exsufflator、別名カフマシーン=cough machine、最近ではニューモデルのカフアシスト=cough assist;JH Emerson Co.社製;Mass州Cambridge)を行う前と直後の両方を測定するようにした。4〜7回測定して観測された最大値を記録した。

 人工呼吸器を外して自発呼吸をしていられる時間(VFBT)は間欠的陽圧換気(IPPV)を止めて患者が我慢できる時間から推定した。VFBTとはSpO2低下または終末呼気炭酸ガス濃度の上昇が発生し、患者が息切れのために人工呼吸器の補助を戻して欲しいと言うまでの最長時間である。VFBTは一日の時間帯、疲労度、周囲の温湿度に依存し、また慢性炭酸過剰症の患者ではその他の環境に依存するので、定量的、統計的な分析には使用されなかった。

 咳の最大流速(PCF)は介助なしの咳と介助による咳の両方で測定(簡単な器具であるピークフローメーター=Peak Flow Meter;HealthScan Inc社製;NJ州Cedar Gloveを用いて)された。介助による咳では、声門を閉じて最大の吸気を息溜め(air stacking)してから、声門の開く瞬間に腹部圧迫を加えてPCFを最大にした。4〜7回測定して観測された流速の最大値を記録した。

 人工呼吸器使用者の治療プロトコルの要約は次の通りである。ポータブル容量の人工呼吸器に切り換え、通常はアシスト・コントロールモードを使用する。肺実質障害のない神経筋疾患患者では、人工呼吸器による換気補助とMACによる気道分泌物排出を行って肺の酸素化を正常に維持することで、余分な酸素付加から離脱させる。その時点では窓を閉じておける有窓のカフ付きチューブに移行させる。次に、チューブの窓または気管切開部位のボタンが閉じられた状態で患者が必要に応じたマウスピースおよび鼻インターフェイスによるIPPVの使用に慣れてきたら、抜管し必要に応じてMACを含む咳の介助を行なう。最終的に、正常なSpO2を維持し、またCOPDでない患者では正常な終末呼気炭酸ガス分圧を維持しつつ、吸気補助を患者の耐えられる範囲で、さらに少なくしていき人工呼吸器の補助から離脱する。

 患者らは好みに応じて覚醒時は鼻インターフェイスかマウスピース、睡眠時は鼻インターフェイスかリップシールを経由してIPPVを受けた。COPD患者以外では意図的に酸素補給を回避した。回避したことにより、SpO2測定に基づいたフィードバックを行なうこと、ならびに睡眠中にも非侵襲的IPPVを使用することを最大限に効果的に行えるようにした。患者には、SpO2低下時は換気補助によって肺胞換気を正常にするか、あるいは徒手または器械による咳補助によって気道分泌物を排出せよという合図である、と指示した。どの患者もこの概念を短時間でマスターした。

 MACの設定は+30〜+50pH2Oから−30〜−50pH2Oとした。MACはカフを膨らませた気管内挿管または気管切開チューブを経由して使用した。気管切開ボタンを閉じた、あるいは抜管した患者では、フェイスマスクを通して呼気相で腹部圧迫を併用して使用した。患者は咳がしたい時にいつでもMACを使用し、特に気管支に粘液栓が詰まってSpO2低下が起きた時に使用した。この場合にはVCとSpO2が、粘液栓の詰まる前のベースラインに戻りそれ以上分泌物が排出されなくなるまで使用を続けた。血中炭酸ガス濃度が正常な神経筋疾患患者のSpO2のベースラインが積極的な介助咳にもかかわらず92%より下がる場合は、抜管に向けた次のステップへの進行を少なくとも一時的に阻むものであり、診断のための精密検査をさらに受ける必要があることを知らせるシグナルである、とした。

 酸素付加から離脱した後、気管内挿管チューブを留置していた患者は抜管し、直ちに非侵襲的IPPVの管理下に置かれ、必要に応じてMACの使用を続けた。神経筋疾患患者12名のうち5名は非侵襲的にIPPVを受ける訓練を気管内挿管の前に経験していたので、抜管の直後から非侵襲的IPPVを容易に使用できた。残りの7名は短い期間だが非侵襲的IPPVのトレーニングを必要とし、その間VFBTのない患者はたびたび救急蘇生バッグによる換気補助を必要とした。

 このように、基準を満たした49名の神経筋疾患の患者では自発呼吸の能力にかかわらず気管内挿管や気管切開チューブの抜管が行なわれた。抜管後、気管切開部位が閉鎖し非侵襲的IPPVと咳補助の必要に応じた使用を続け、少なくとも2週間呼吸困難がなく血中ガスの悪化がない場合を抜管の成功と定義した。気道分泌物の貯留に起因するSpO2低下の進行および呼吸困難が3日以内に観察され、気管内挿管や気管切開チューブを再挿入しそれを経由してMACまたは気道吸引を行なわなければ解決しない場合を失敗と定義した。

 抜管を行なった時点での侵襲的IPPVの使用期間と一日使用時間を記録した。年齢、VC、PCF、人工呼吸器の使用期間と一日あたりの使用時間について、抜管の成否との相関関係が単変量および多変量分析によって評価された。脊髄損傷(SCI)患者、初めて抜管を試みる前に人工呼吸器から離脱していた6名を除くSCI患者、換気障害を主とするSCIでない患者、また換気障害を主とする患者グループ全体について、別々に分析した。COPD患者は気管切開チューブ留置者が5名、気管内挿管チューブ留置者が2名のみであったため、彼らのデータは統計的分析には含めなかった。単変量分析および逐次判別分析を用い、p値が0.05未満であれば、介入(訳注:ここでは抜管のこと)の成功が有意に予測されるとみなした。


 結 果

 37名の患者に対し、気管切開チューブの抜管が49回行われた。患者37名の診断は次のとおりである。脊髄損傷22名、肺胞低換気15名。肺胞低換気患者15名のうちわけは、進行性神経筋疾患11名、ギラン・バレー症候群2名、肥満性低換気症候群1名、部分肺切除および慢性肺胞低換気1名である。最初の抜管では25名の患者が成功し、12名の患者が失敗した。その後の実験では7名の患者が成功し、5名の患者が失敗した。成功した7名の患者のうち5名と、失敗した5名の患者のうち2名はすでに呼吸器から離脱していた。

 神経筋疾患患者に対し、気管切開チューブの抜管を37回試みた。これらの神経筋疾患患者は平均して9.4±13.1ヵ月間(期間は1〜65ヵ月)人工呼吸器から離脱したことがなかった。抜管後に、26名が平均して19.8±21.6ヵ月間(期間は0.2〜70ヵ月)の非侵襲的IPPVを必要とした。これら26名の患者のうち17名は現在も1日16.8±8.0時間(最低8〜最高24時間)の非侵襲的IPPVを使用している。気管切開チューブから非侵襲的IPPVの移行に成功した17名の患者は、24時間の人工呼吸を(平均して19.5ヵ月間;最大で65ヵ月間)要しており、これらの患者の以前の主治医は、気管切開チューブの留置の継続をすすめていた。

 最初の抜管前にすでに人工呼吸器から離脱していた6名のSCI患者に対して、抜管が行われた。そのうち3名が成功し、3名が失敗した。成功した3名の患者の平均年齢は55.6±26.3歳で、人工呼吸器離脱前に14.0±11.3ヵ月間の気管切開によるIPPVを使用しており、肺活量は1470±304ml、介助によるPCF は477±258L/min(範囲275〜790L/min)であった。失敗した3名の患者の平均年齢は、35.8±15.7歳で、人工呼吸器離脱前に7.0±11.4ヵ月間気管切開によるIPPVを使用しており、肺活量は1200±414ml、介助によるPCF は85±58L/min(50〜115L/min)であった。PCFにおける差のみが、P値が0.05未満であり、統計学的に有意であった。

 抜管に失敗した患者3名のうち1名は6ヵ月におよぶ気管のゾンデ挿入を行ったことによって、気道が十分に拡張し、介助によるPCF が300L/minを超えたため、最近、抜管に成功した。以上のような方法で、人工呼吸器を使用していない13名の患者に対して、抜管が行われた。そのうちわけは、最初の抜管前に人工呼吸から離脱していた6名と、当初抜管が失敗したにもかかわらず人工呼吸器を使用しなくなった7名の患者である。

 抜管の成否に関わる独立変数についての単変量逐次判別分析の結果を表2に示す。逐次判別分析により、PCFだけが抜管の成功を予測し、他のパラメーターとは関係なく予測することが明らかになった。単変量分析はPCFと抜管の成功との相互関係を明らかにした。さらに、単変量分析は、SCI患者における抜管前の気管切開IPPVの長期使用と抜管成功との著しい相互関係を表している。

 COPD患者5名に試みた抜管の結果を表1に示す。5名の患者のうち4名は、抜管後、非侵襲的IPPV使用で維持されることに成功した(表1)。これらの患者のうち2名は24時間の非侵襲的IPPVを受け、それぞれ6ヵ月後、12ヵ月後に死亡した。抜管に失敗したCOPD患者は、人工呼吸室を出て数ヵ月後に気管切開IPPV使用のもと、死亡した。

 人工呼吸器を使用している神経筋疾患患者に対して行なった気管内挿管チューブの抜管は、13回行われ、全例で成功したため、統計学的な比較はできなかった。抜管に成功した患者の診断は次のとおりである。SCIが5名、進行性神経筋疾患が5名、ポストポリオ症候群が1名、離脱と抜管を異なる機会に行った肥満性低換気症候群が1名であった。抜管直前には、患者の平均年齢は37.3±18.4歳(16.7〜72.5歳)であり、気管内挿管チューブによるIPPVの使用期間は平均して18.2±9.9日間(2〜32日間)、1日平均23.5±1.7時間(18〜24時間)であり、肺活量は575±213ml(200〜1020ml)であった。

 抜管直後には、介助によるPCFは235±62L/min(範囲197〜436L/min)であった。抜管後、SCI患者5名のうち4名は1週間足らずで人工呼吸器から離脱した。残りの患者は、平均して15.2±8.6ヵ月間(範囲2〜30ヵ月間)の非侵襲的IPPVの使用を継続する必要があったが、当初は1日24時間、現在は1日11.6±7時間の使用である。患者全員は少なくとも夜間の非侵襲的IPPVの使用継続が必要であり、2名については24時間の非侵襲的IPPVを必要としている。

 最近、自発呼吸のできる重症肺疾患患者2名に対して、さらに抜管2回を試みたが、抜管後に2L/minの PCFも得ることができず、2例とも失敗に終った。

 人工呼吸器使用を必要とした期間の長短は、抜管の成功を予測する際に重要ではないことを裏付ける有力な根拠として、抜管に失敗した患者は、抜管に成功した患者に比べ、人工呼吸器の使用期間が短かった事実が挙げられる(表2)。


表2 気管切開チューブ抜管に関連する独立変量の統計学的比較
成 功 失 敗 単変量 判 別
SCI患者
変量 19 12 . .
年齢 37.2±20.9 34.1±18.4 0.68 NS
TIPPV† 9.7±11.0 3.8±3.4 0.04 NS
肺活量、ml 1045±707 1053±467 0.97 NS
時間/日‡ 12.8±10.7 8.7±10.4 0.29 NS
介助による
PCF、L/min§
278±157 101±40 0.0001 0.0006
SCI患者(初期の試みの時点ですでに、人工呼吸器から離脱していた6名を除く)
変量 16 9 . .
年齢 33.5±19.4 33.5±19.4 0.98 NS
TIPPV† 8.9±10.1 2.7±0.7 0.03 NS
肺活量、ml 966±725 1004±492 0.88 NS
時間/日‡ 15.3±9.9 11.6±10.5 0.39 NS
介助による
PCF、L/min§
242±100 104±44 0.0001 0.0008
換気障害を主疾患とする全患者
変量 32 17 . .
年齢 42.9±18.4 38.9±18.3 0.47 NS
TIPPV† 11.2±15.0 5.8±6.1 0.09 NS
肺活量、ml 892±609 982±466 0.59 NS
時間/日‡ 16.6±9.8 11.1±9.9 0.07 0.01
介助による
PCF、L/min§
259±128 103±40 0.0001 0.0001
SCI患者を除く全患者
変量 13 5 . .
年齢 51.4±9.4 50.6±12.7 0.88 NS
TIPPV† 13.2±19.8 10.8±8.7 0.80 NS
肺活量、ml 667±343 814±468 0.47 NS
時間/日‡ 22.0±4.9 16.8±5.9 0.07 NS
介助による
PCF、L/min§
229±60 110±43 0.001 0.001

*  COPD患者5名は本分析から除外した
† 抜管前の気管切開IPPV使用期間
‡ 1日あたりの人工呼吸器使用時間
§ 抜管後の介助によるPCF


 また、抜管できた患者は、1名を除き、抜管成功時に24時間の人工呼吸器使用が必要であった。さらに、自発呼吸の能力に関しては、抜管に成功した患者のうち26名は30分以下のVFBTしかなく、33名は24時間の人工呼吸器使用が必要であり、4名は座位で充分な呼吸が可能であるものの夜間に人工呼吸器使用が必要であり、6名は日中に10〜20時間の人工呼吸器使用が必要であり、6名は抜管を試みる時点で、人工呼吸器を使用していなかった。抜管に失敗した患者のうち、2名が30分以下のVFBTしかなく、4名は24時間の人工呼吸器使用が必要であり、3名は夜間の人工呼吸器使用が必要であり、5名は10〜20時間の人工呼吸器使用が必要であり、6名は人工呼吸器を使用していなかった。

 抜管に成功した患者において、VCとSpO2の急激な減少が生じ、気管支内の痰による閉塞を示したが、徒手あるいは器械による咳介助を行なって排痰したところ、VCはベースラインに、SpO2は正常値に戻った。しかし、抜管に失敗した患者においては、痰による気管支閉塞と関連のあるSpO2低下を迅速に改善できず、再挿管するまでベースラインSpO2は低下した。失敗した例では、抜管後2〜48時間以内に、気管切開チューブを再挿入することになった。

 抜管に失敗した18回は、計14名の患者に対して試みたものであるが、引き続き抜管を試みたところ、失敗したのはこのうち7名だけであり、この7名は気管切開チューブをつけたまま退院した。当初失敗した患者は咽頭ファイバースコープをうけ、後に、一部の患者は上気道の閉塞部を取り除く手術を受けた。すべての患者は、息溜め(air stacking)による最大吸気を高め、PCFを上昇させ、抜管を可能にした。

 抜管に成功した5名の患者は、4〜28ヵ月間気管切開チューブを留置しており、以前は、チューブ関連の合併症のために入院していた。抜管に成功した患者は気管内吸引を行わないので、少なくとも6名の患者は抜管後1週間またはそれ以内で退院し、自宅に戻った。この6名は、これまで2〜5ヵ月間人工呼吸器使用が必要なため入院しており、気管切開IPPV使用の状態で退院できずにいた。抜管の過程には、非侵襲的IPPV下での訓練、介助による咳の訓練、気管切開部位の閉鎖などを行うが、この過程に要した期間は3〜9日間であった。ただし、肺を部分切除したMilroy病である患者1名は12日を要し、持続的な気道内分泌物により気管切開部位の閉鎖が遅れたCOPD患者については2週間以上を要した。

 死亡した神経筋疾患患者4名のうち1名は腎結石に起因した敗血症により、抜管に失敗し気管切開IPPVを続けていた1名は抜管を試みた数ヵ月後に肺炎により、2名は介助者不在時にIPPVのインターフェースがはずれたことにより死亡した。この患者2名とも呼吸筋を使用したVFBTはないが、2名の患者のうち1名は疲労のため継続ができなくなるまで最大8時間まで舌咽頭呼吸が使用できていた。死亡した非侵襲的IPPV使用者3名のうち2名を除いて、抜管に成功したCOPDでない患者達は、抜管後、上気道に感染を起こし、24時間非侵襲的IPPVと頻繁な介助咳を必要としても、再挿管を必要とすることはなかった。


 考 察

 通常の咳は、咳をする前に総肺活量の約85〜90%の自立吸気もしくは強制吸気を必要とする。続いて声門が約0.2秒間閉鎖し、十分な胸腔内圧が生み出され、声門開放時、通常、360〜1000L/min/分の最大瞬間呼気流量、すなわち咳の最大流速(PCF)を得ることができる。通常の咳をする時の総呼気量は約2.3±0.5Lである。

 呼吸筋麻痺患者は、肺を十分に膨らませることができないこと(肺活量の減少)、腹筋(呼気筋)が弱いこと、また、咳を生み出す前に深呼吸を保つため声帯を十分に内転して声門を閉鎖することがしばしばできないために、PCFが減少する。さらに、気管支痙攣もしくは、不可逆的な上部もしくは下部気道閉塞を引き起こすいかなる状態もPCFを減少させる。

 呼吸麻痺患者については、最大の強制吸気を行うことによってPCFを著しく増やすことができるということが明らかになっている。また、PCFは声門開放に合わせて適切なタイミングで腹部を押すことによって、さらに増やすことができる(徒手による介助咳)。強制的に深吸気をもたらすために、救急蘇生用バッグまたは携帯用人工呼吸器を使用することができる。しかし、VCの低下した患者では、口腔咽頭筋や声門筋が弱いと、わずかな強制深吸気しか得られなかったり、強い介助咳をするのに必要な強制深吸気を息溜めする能力が減少する。同様に胸郭変形、脊柱側弯、腹部膨満、満腹、過剰なやせや肥満など、効果的に腹部を押すことを妨げるような状態はいかなるものでも、介助によるPCFを減じることとなる。

 この研究では、160L/分を超えるPCFを達成できる患者はすべて、気管内挿管または気管切開チューブの抜管に成功した。一方、160L/分未満のPCFを持つ患者はすべて、気管内または気管切開チューブの抜管に成功しなかった。深吸気を保持することができない、横隔膜非対称、過剰なやせや肥満、もしくは腹部膨満などの理由で介助咳が不十分な場合は、特に器械による排痰(MAC)が有用になる。例えば、ある45.4歳の人工呼吸器を使用している脊髄損傷患者の介助によるPCFは、彼の腹部膨満の程度によって、120〜170L/分まで変化した。彼は膨満がひどい時、MACに大きく依存した。徒手による介助咳もまた、協力的な患者、患者と介助者間の十分な調整、十分な身体的努力、そして多くの場合頻繁な適用を必要とするが、MACはより単純で容易にできる。

 MACは、気道に直接600L/分の呼気流速を作り出すことができる。私達は、COPD患者以外の全ての患者において、気道分泌物を除去し、安全な抜管を可能にするために、MACが非常に重要であることを発見した。神経筋疾患患者で160〜175L/分のPCFを有し、永久的に抜管できている3名は、声門の開通性及びコントロールが保たれているため、MACによる気道分泌物の除去が可能になっている。上気道を介してMACを使用して分泌物を排出した後や、気管内挿管もしくは気管切開チューブを通してMACを使用した時に見られるVC及びSpO2の増加は、その有効性を立証し、さらなる気管内吸引の必要性を排除した。

 MACは、球麻痺先行タイプのALS患者の多くや、協力できない小さな子供のように、呼気相で声門の通気性が保たれない場合、上部気道を介して使用するとしばしば効果がない。また、不可逆的な上部もしくは下部気道閉塞があるときも、MACは効果がないことがある。上部気道閉塞は、しばしば声帯を十分に外転できないこと、もしくは声門下気道狭窄に起因する。COPDにおいては、PCFは減少し、徒手または器械による介助咳は通常役に立たない。

 50名のALS人工呼吸器使用者に関する最近の研究では、非侵襲的方法で(気管切開チューブを使用せずに)長期間にわたって24時間の換気補助に成功した27名は、180L/分以上の介助PCF(平均275±65L/分)を有していた。非侵襲的な方法で換気補助を受けられなかった23名の介助PCFは150±80L/分であった。後者のグループがより高い平均VC(934対580mL)を有していたという事実にも関わらず、PCFが低いことで、非侵襲的換気補助は不可能であった。しかしながらPCFの著しい低下は、より高いVCを有している患者により重大な声門機能障害があることを示唆した。よって、180L/分以上のPCFを作り出す能力が、息を吸い込む能力よりもより重要であり、気管切開チューブを使用せずにALS患者における換気障害を長期にわたって呼吸管理することを可能にした。

 同様にこの研究では、介助無しであろうが徒手的介助であろうが、少なくとも160L/分のPCFを作り出す能力が、気管内または気管切開チューブの抜管及び気管切開によるIPPVから非侵襲的換気療法への移行の成否を予測する上で、VFBT、VC、年齢もしくは一般的な肺機能よりも重要であることが分かった。これは驚くにあたらない。なぜなら、進行性神経筋疾患を持つほとんどの患者は、しばしば慢性の肺胞低換気にも関わらず、上気道感染に伴って気道分泌物を除去できなくなり、急性呼吸不全を引き起こすまで、人工呼吸器を使用しないままでいられるからである。これらの患者のうち160L/分のPCFを達成する者はほとんどない。なぜならほとんどの患者は深吸気を息溜め(air stacking)する方法や介助咳をする方法について訓練されていないからである。

 我々の結論は、換気不全の程度にかかわらず、神経筋障害患者が安全に気管内または気管切開チューブを抜管できるかどうかを明確に予測するのは、介助咳によるPCFであり、年齢、VFTB、人工呼吸器使用期間、もしくはVCではないということである。予備段階のデータからは、このパラメータが、COPD患者においても、気管内または気管切開チューブの抜管の成否を予測する際に有用かもしれないと推測している。非侵襲的呼吸モニタリング及び非侵襲的な吸気および呼気筋の補助手段を活用するウィーニング方法は、人工呼吸器を使用していても適切なPCFを有する神経筋障害患者の気管内挿管や気管切開チューブの留置及び気管内吸引の必要性を排除しうる。

 このことは重要である。なぜなら、コストを大幅に削減するだけではなく、長期間の換気補助を受けるために気管切開下間欠的陽圧換気から主として非侵襲的換気療法に転換した59名の人工呼吸器使用者を最近調査したところ、彼らはそれを安全性、簡便性、快適さ、会話、嚥下、睡眠そして外見の点から好んだからである。非侵襲的方法から気管切開によるIPPVに移行した患者でさえも、圧倒的に非侵襲的方法を好んだ。また、人工呼吸器を24時間使用して非侵襲的換気補助を受けている喉咽頭機能が維持された患者は、気管切開による患者に比べて、呼吸関連の合併症を起こす数がはるかに少ないという証拠がある。

 このように、酸素からの離脱、気管内挿管や気管切開チューブの抜管、そして可能であれば非侵襲的換気療法からの離脱という戦略は、160L/分を超えるPCFを作り出すことができる場合、換気障害を主体とする患者に適用可能である。そしてこのアプローチはこうした患者にとって、従来のウィーニング方法よりも多くの潜在的長所を有しているのである。■



NEXT