2001年(平成13年)12月10日(月) 東京新聞に掲載された
 「神経幹細胞で脊髄損傷回復」の記事


東京新聞(夕刊) 2001年(平成13年) 12月10日(月曜日)

神経幹細胞で脊髄損傷回復
 −慶大グループ、世界初−


胎児組織使い 猿で確認

  ヒトの神経のもとになる「神経幹細胞」を胎児の脊髄(せきずい)から分離し、脊髄を損傷した猿に移植して運動機能を回復させるこに、岡野栄之・慶応大医学部教授(生理学)らのグループが世界で初めて成功した。同教授が十日、明らかにした。

  慢性化前移植で効果
  神経幹細胞は、ヒトの脳や脊髄に含まれ、将来は神経細胞などに成長する未分化な細胞。脊髄損傷は、背骨の骨折などで背骨の中を通る脊髄の神経が傷つき、手足などにまひが起きる。

  毎年新たに五千人の患者が出るといわれ、症状が慢性化すると機能回復は困難とされる。

  今回の実験は、損傷後の特定の時期の移植で効果がみられたという限定的なものだが、ヒトと同じ霊長類の猿での治療効果が確認できたことで、神経幹細胞によって脊髄損傷が治療できる可能性が出てきた。

  グループは、死亡した胎児の脊髄から独自の方法で神経幹細胞を選び出して培養。それを試験管内で大量に増殖させ、脊髄を損傷して両手の動きが不自由になったマーモセットという小型の猿五匹(いずれも成獣)の脊髄に移植した。

  猿が棒につかまる力は、損傷のため正常時の一割以下にまで低下していたが、移植の八週間後には正常時の半分近くにまで回復した。移植した幹細胞が神経細胞に成長し、切れていた神経の回路が再び繋がったと考えられるという。

  岡野教授らは、脊髄の損傷直後に幹細胞を植えても、急性の炎症のためうまく回復しないことに着目。炎症がおさまり、症状が慢性化する前の時期を見極めて移植し、効果を挙げた。

  岡野教授は十日午後、横浜市で開催中の日本分子生物学会で成果を発表。「今後は、損傷からもっと時間のたった慢性期に有効な治療法を検討したい」と話ている。


* 脊髄損傷
  脳と体の各部分をつなぐ細長い神経組織である脊髄が、首や背骨の骨折などによって、損傷を受けること。症状は損傷の場所や程度により異なる。損傷の初期に薬物による治療が行われるが、体が動かせないなど重いまひが残るケースが多い。




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