2000年(平成12年)11月14日 愛媛新聞に
 掲載された「せき髄損傷治療に道」の記事


愛媛新聞 2000年(平成12年)11月14日(火曜日)

せき髄損傷治療に道  愛媛大研究

愛媛大・阪中教授ら
せき髄損傷治療に光明

神経まひ防ぐ物質開発

  交通事故やスポーツ中の事故などでせき髄を損傷した場合、神経の死滅からまひ状態になるのを防ぐ化合物を、愛媛大医学部解剖学第二の阪中雅広教授(四十七)らの研究グループが開発、動物実験に成功した。十四日、同大工学部で開かれる愛媛大全学シンポジウムで発表する。

「写真説明」
せき髄損傷を負いながら、化合物の投与を受け、
翌日から通常運動するラット=愛媛大医学部


動物実験に成功

  せき髄損傷など神経組織の外傷は、これまで効果的な治療はなく、半身不随や寝たきりなど重い後遺症が残ることが多い。現在、神経細胞の移植などあらゆる角度から研究されているが、見通しは立っておらず、医学会の常識を覆す画期的な治療薬になるものとして注目されそうだ。

  阪中教授らは、二年前から研究を開始。先ずラットの背骨を削り、せき髄に二十グラムのおもりを乗せてせき髄損傷のモデルを作った。このモデルに生理食塩水で溶かした化合物を静脈注射した場合と、生理食塩水のみを静脈注射した場合などで比較した。
 
  その結果、化合物を注射したラットは翌日以降、立ち上がり、通常運動が出来るまで回復することを確認。生理食塩水のみのラットはすべて寝たきり状態となった。

 投与する化合物の量について、一日当たり十二マイクログラム(一マイクログラム=百万分の一グラム)と六十マイクログラムで比較したところ、双方ともほぼ同じ運動能力まで回復。ごくわずかな量で効果があることも分かった。

  せき髄損傷による神経まひのメカニズムは、神経細胞や情報を伝える織維(グリア細胞)をガードしている物質が外的障害によってゆっくり死滅していく状態に陥る説が有力。化合物はこの死滅を抑止する効果があるという。

  阪中教授は「有史以来、人類を脅かしていた神経外傷(せき髄外傷)の画期的治療法が開発される可能性が出てきた。しかし、まだ基礎的研究の段階で、化合物の中身や治療薬としての問い合わせには応じられない」と話している。


今後の展開大いに期待

木村友厚・富山医科薬科大整形外科教授の話

  多くの研究者が取り組んでいる重要なテーマで、せき髄損傷時に起きる神経細胞やグリア細胞の死滅を抑止する発見は非常に興味深い。静脈内投与で改善につながる点も重要。効果的な治療法として今後の大いなる展開が期待される。



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