| 2001年(平成13年)12月11日(火) 朝日新聞に掲載された 「ヒト胎児の神経幹細胞移植」の記事 |

朝日新聞 2001年(平成13年) 12月11日(火曜日)
ヒト胎児の神経幹細胞移植
サルのせき髄、機能回復−慶応大実験
せき髄が傷ついたサルに、死亡したヒト胎児の神経幹細胞を移植して運動機能を回復させることに、岡野栄之・慶応大教授(生理学)らが成功した。10日、横浜市で開かれた日本分子生物学会で発表した。ネズミ同士の実験はあったが、霊長類の実験の報告は初めてという。研究が進めば、せき髄損傷患者の治療に使える可能性も出てきた。
死亡胎児の神経細胞は国立大阪病院(大阪市)で倫理委員会の承認を受けた後、両親に研究計画を説明、同意を得て提供された。さまざまな種類の神経細胞のもとになる神経幹細胞を、培養によって増やした。
せき髄が傷ついて腕が動かなくなったサル、マーモセット5匹に、1匹あたり100万個の神経幹細胞を移植した。
約2ヶ月後、もっとも機能が回復したサルはほぼ元の状態に戻り、はかのサルも、移植しなかった5匹と比べると、回復が進んでいた。
「日本には約10万人のせき髄損傷の患者さんがいる。これまで神経は再生せず、治療はむずかしかったが、新たな治療法の可能性が示せた」と岡野教授は話している。
死亡胎児の神経細胞を利用した治療として、パーキンソン病患者の脳への移植が欧米で行われているが、1人の患者に数人以上の胎児が使われてきた。神経幹細胞を分離した今回の方法では、1人の胎児の細胞から、多くの患者の治療が可能になると期待される。