脊髄損傷各種合併症併存症相互の関連性について
−全国労災病院脊髄損傷データベースの分析−
真柄 彰* 住田幹男** 徳弘昭博***
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燕労災病院リハビリテーション科 |
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関西労災病院リハビリテーション科 |
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吉備高原労災医療リハセンター |
key words: Spinal cord injury(脊髄損傷) Complication(合併症)
Deep vein thrombosis(深部静脈血栓症)
[目的] 脊髄損傷の合併症,併存症の相互の関連性を検討する。深部静脈血栓症と間歇的(自己)導尿の間に関連があるかどうか、あるならばその原因と対策につき検討する。
全国労災病院は過去9年間にわたり4回の脊髄損傷リハ実態調査をおこなった。第1〜4次調査のうち3,4次調査のデータ約1200例が合併症の記載が明確なのでこれを中心とし、脊髄損傷リハの予後に影響の大きい合併症及び併存症の相互の関連性について分析している。今回は4次調査のデータ分析が未完成のため、3次調査の627例を対象に分析した。深部静脈血栓症の発生と損傷高位,受傷原因,尿路感染症,尿路結石,肝障害と自己導尿による排尿などと深部静脈血栓症の発生との間の関係を調べる。また胸郭拘縮と有酸素運動能力低下,血小板凝集能亢進などと深部静脈血栓症や褥瘡との関係を調べる。
[対象] 全国労災脊髄損傷データベースのうち米国脊損統計センターNSCISC(ナスキス)1,2)の項目を参考におこなった第3次調査(1997-2000,主任:徳弘昭博)調査例627例のうち排尿方法と深部静脈血栓症について明確に記載のあった480例を対象とした。
[方法] 併存症として脳卒中,糖尿病,肝,肺,腎疾患など.合併症として尿路感染症,尿路結石,肝障害,深部静脈血栓症,肺塞栓,痙性,麻痺域疼痛などを中心とした。これら相互の関連性につき独立性の検定,主成分分析,重相関分析などの多変量解析をおこなった。統計分析には「エクセル統計」(株:社会情報サービス)を使用した。
[結果] 深部静脈血栓症(DVT)について.分析をすすめるうちに,褥瘡,異所性仮骨,尿路感染,DVTなど脊損で注意すべき合併症が相互に関連しているように思えた。そこで今回はDVTを中心にすえて分析をすすめることとした。
深部静脈血栓症の発生には、下肢の弛緩性麻痺による静脈環流遅滞,血液凝固性の亢進,血管壁の損傷などが指摘されてきた。分析により、自己導尿による排尿,尿路感染症,尿路結石,肝障害と深部静脈血栓症の発生との間に密接な関係が認められた。また胸郭拘縮と有酸素運動能力低下が血小板凝集能を亢進させ,これが血栓性静脈炎や褥瘡の原因となると思われた。
表1. 排尿法と深部静脈血栓症の発生頻度
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深部静脈血栓症と排尿法
表1に排尿法と深部静脈血栓症の発生頻度を示す。調査票の作り方の問題で,介助者による間歇的導尿もこの数に含まれていると思われる。
表2. 自己導尿対留置カテ,自己導尿以外のχ2検定
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表2に示したように、自己導尿ではDVTの発生が9.3%と留置カテ1.8%より有意に高い(χ2検定)。
受傷原因との関係
受傷時の外力が強いほど、またフランケル分類が完全なほどDVTの発生率が高い。受傷時の血管内膜の損傷が関与していると思われる。損傷レベルとしては、頚髄部,胸腰髄移行部に多い。DVTと各種合併症との間の重相関分析では、肝障害,尿路感染,異所性仮骨,自律神経過反射,尿路結石,自己導尿と有意な相関が認められる。主成分分析の結果を図2に示す。
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| 図1. 損傷高位と自己導尿・自然排尿の比率 |
主成分分析では、DVTと尿路感染,尿路結石,呼吸器感染,異所性仮骨,褥瘡などが類似の合併症群に属し、DVTと尿路系のトラブルと関係が示唆される。対麻痺と合併症群の間に自己導尿があるように思われる。その他右下方に糖尿病,高血圧など併存症のグループが認められる。 図1に損傷高位と自己導尿・自然排尿の比率を示す。胸腰髄移行部の損傷で下肢が弛緩性となりミルキングアクションが低下し,DVTを起こす可能性がある。頚髄損傷群にもDVTの頻度が高いがこれは胸郭拘縮と有酸素運動能力低下が血小板凝集能を亢進させるのがDVTや褥瘡の原因にもなるのではないかと思われる。
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| 図2. 合併症・併存症の主成分分析 |
[考察] 神経因性膀胱に対し間歇的(自己)導尿を行っている脊髄損傷者に深部静脈血栓症が有意に多く認められた。間歇的導尿を行うことが適した対麻痺などのレベルの損傷における神経因性膀胱のタイプが原因でリスクが高いのか、また繰り返す導尿による尿道損傷などが原因なのか断定できなかった。間歇的導尿が原因だとすれば、適切な導尿器具の選定,適切な導尿技術の指導が大切である。
[まとめ] ベルギーの泌尿器科医J J Wyndaeleは"Complications of intermittent catheterization: their prevention and treatment"(7)のなかで「間歇導尿は脊損の神経因性膀胱の排尿に安全な第1適応という意見もあるが、尿道損傷などの合併症もありえる。親水性カテーテル使用により尿道損傷を減らせる。 間歇的導尿に適切な材料と手技の指導が重要である」と述べている。 間歇的自己導尿は脊髄損傷者の排尿には優れた便利な方法であることから、もし脊髄損傷者の健康に悪い影響があるとするのならば、丁寧な導尿方法の研究や指導が必要になる。
最後に脊髄損傷データベースに対しデータの供給に御協力いただいた全国労災病院および関連施設に深謝いたします。
【文献】
| 1) |
Chen D, Apple DF Jr, et al.: Medical complications during acute rehabilitation following spinal cord injury--current experience of the Model Systems. Arch Phys Med Rehabil. 1999 Nov; 80(11): 1397-401. |
| 2) |
McKinley WO, Jackson AB, et al. : Long-term medical complications after traumatic spinal cord injury: a regional model systems analysis. Arch Phys Med Rehabil. 1999 Nov; 80(11): 1402-10. |
| 3) |
Sumida M, Fujimoto M, Tokuhiro A, Tominaga T, Magara A, Uchida R: Early rehabilitation effect for traumatic spinal cord injury: Arch Phys Med Rehabil, 82: 391-395, 2001. |
| 4) |
Green D, Lee MY, Ito VY, et al. : Fixed vs adjusted dose heparin in the prophylaxis of thromboembolism in spinal cord injury. JAMA 1988; 260: 1255-1258. |
| 5) |
D. L. Kaelin: Deep vein thrombosis in the rehabilitation patient. IRMA
[ abstracts: 36-36, 1997. |
| 6) |
住田幹男,真柄 彰,徳弘昭博他:脊髄損傷のoutcome−日米のデータベースより−医歯薬出版。 |
| 7) |
J J Wyndaele: Complications of intermittent catheterization: their prevention and treatment. Spinal Cord: 2002 Oct, 40(10)536-541. |
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