脊髄損傷データベースからみた脊髄損傷リハビリテーションの問題点
徳弘昭博1) 住田幹男2) 真柄 彰3) 内田竜生4) 豊永敏宏5)
吉備高原医療リハセンター1) 関西労災病院2) 燕労災病院3)
関東労災病院4) 九州労災病院5)
Key words: Spinal Cord Injury (脊髄損傷)、database (データベース)、
rehabilitation (リハビリテーション)、Rosai Hospitals (労災病院)
【はじめに】
われわれは1994年以来、総合せき損センター、吉備高原医療リハビリテーションセンターを含む全国の労災病院における脊髄損傷(脊損)のリハビリテーション(リハ)治療の状況を調査してきた。その第一の目的はoutcome
studyで、リハ治療の効果を判定し治療現場にフィードバックし治療のquality
controlに役立てることである。調査に参加した病院は、32施設にのぼる。この調査で蓄積されたデータをデータベース化し1999年には名古屋市の労災リハ工学センターに脊損統計センターが設置され、データベースの管理にあたるようになった。
このデータベースには年間300〜400例が登録される。この分析によってさまざまなことがわかるが、今回は脊損治療の問題点、とくに人院日数に焦点を当て述べる。
【方法と結果】
1. 対象
対象は1997から2000年度に上記の労災病院で初回のリハ治療を受けた、脊損1237例である。
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| 図1. 対象 麻痺レベルの分布 |
これらの麻痺レベル(図1)や年齢の分布はこれまでのわが国の疫学調査の結果とほぼ同様である。
2.Functional outcomeとSocial outcome
図2にはimpairment scale A-C群を麻痺レベル別に社会的転帰を示した。割合で見ると、麻痺レベル高位であれば転院が多く、麻痺レベル低位では職業復帰・復学を含む家庭復帰の割合が多くなっている。図3は同じくimpairment
scale A-C群を麻痺レベル別にリハ終了時のtotal FIMを示したものであるがこのFIM
scoreは上記の結果を裏付けている。
なお、C1-4・C5-8・T1-6各群とすべての他群間に統計学的有意差が認められる(p<0.01、T7-12・L1-5・S群間はN.S.)。
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| 図2 社会的帰結 impairment scale A-C |
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| 図3 機能的帰結 impairment scale A-C |
3.Functional outcomeと入院日数
表1は麻痺レベルT1-12のimpairment scale A-C群を転帰別にリハ終了時FIM scoreと入院日数(LOS)を示したものである。各転帰の群のFIM scoreの間には有意差が見られているが(p<0.01)、LOSでは家庭復帰群と転院群間に認められる(p<0.05)のみである。つまり転帰はおおむねADLに応じて達成されているが、LOSでみれば転院群が比較的短く(といっても平均は約6ヵ月)、職業復帰群と家庭復帰群の問にはほとんど差がない(平均で約7カ月)という状況にある。
| 表1 FIMと入院日数 |
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4.麻痺レベルと入院日数
図4はimpairment scale A-CのFIM score群を麻痺レベル別にリハ終了時FIM
scoreとLOSを示したものである。FIM scoreではすべての他群間に有意差があり(T1-6群とT7-12群ではp<0.05、他はp<0.01)LOSではC5-8群とT7-12群間のみに有意差が認められた(p<0.01)。どの群でもFIM
scoreとLOSの間には統計学的相関は認められなかった。
LOSはC5-8群で285.3±175.9日、T1-6群で239.1±112.0日、T7-12群で205.6±143.4日である。
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| 図4 FIMと入院日数 impairment scale A-C |
【考察】
以上のことから、LOS〔入院日数〕削減が主眼である医療改革が進行中の現在、入院日数が脊損リハにおける最大の問題点となることは疑いがない。
図5はデータベース参加の労災病院のなかから対象脊損者の人院までの日数を基準に代表的なものを選んでその脊損治療の役割を分類したものである。脊損に関して一次的な救急病院型、主として一次的だが慢性期も受け入れる一般型、脊損では一次〜三次機能を持つ専門病院型、急性期入院のないリハ病院型である。
しかしLOSをみると救急病院型でも3ヵ月以上を要している。また専門病院型・リハ病院型はLOSの分布がほぼ同じパターンを示しているのは興味深い。
一般的には麻痺レベルに応じたADLが達成されるまでには対麻痺で6ヵ月、四肢麻痺では2年程度とされているが専門病院型・リハ病院型のLOSはこの期間を反映したものかもしれない。つまり脊損の専門的リハ、特に四肢麻痺においてはそのレベルに応じたfunctional
outcomeをえるにはある程度の時間は必須である。一方でこうした病院の機能を有効に使えない効率の悪さも無視できない。救急型の病院であってもリハ専門病院のキャパシテイー、特に四肢麻痺に関しての許容量はきわめて不十分で待機を余儀なくされ、長期入院が可能な、しかし脊損治療の機能は充分でない病院への転院も少なくないことがデータベースの分析からみてとることは可能である。同様に専門病院型・リハ病院型であっても最終的な社会的ゴールへの待機期間が必要とされている。
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| 図5 脊髄損傷治療の機能 |
われわれのデータベースはこうした種々の機能を持った病院群からのデータの集合である。住田は対象の年齢をはじめとして多くの違いがあり、また脊損治療のregional systemの整備された米国のLOSが短いからといってわが国での単純なLOSの削減は日米の脊損治療の効率の較差解消には繋がらないと述べている。わが国の脊損の特殊性をふまえたうえでのデータの綿密な分析は労災病院群のリハ治療のoutcome studyにとどまらず、脊髄損傷治療のsocial system、regional systemの構築を考えるうえでのevidenceとなりうるだろう。
【文献】
| 1) |
住田幹男・他 編集:脊髄損傷のoutcome. −日米のデータベースより− 医歯薬出版2001. |
| 2) |
徳弘昭博・他:脊髄損傷治療における労災病院の機能. −全国労災病院脊髄損傷調査から− 日職災医会誌48(5):443-448、2000. |
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