| 骨髄間質による骨・軟骨形成 (「実験医学」21巻8号、2003年5月) |
梅澤 明弘(国立生育医療センター研究所生殖医療研究部長)
◎ はじめに
- 骨髄を採取し単層培養を行うとコロニーを形成する線維芽細胞が出現する。これが試験管内における骨髄間質細胞といわれる細胞である。この細胞の中に自己複製能と、複数の間葉系細胞へと分化する多分化能を有する幹細胞が存在している。
- 骨髄間質細胞の多くは20継代から40継代程度の増殖能力を持つものの、継代を重ねるにつれ増殖能、分化能の低下を認め細胞死を迎える。
- 骨髄間質細胞を採取し実験系に用いる場合、多分化能を有した状態を保ち、かつ細胞数を確保する点で難渋し、再現性のある結果が得られにくい。
- それに対して、細胞株〔cell line 細胞塊〕は単一細胞由来で細胞数を確保でき、実験系に用いるのに有用であることは言うまでもない。
◎ ヒト骨髄間質細胞の寿命延長
- ヒト骨髄間質細胞はマウス骨髄間質細胞と異なり、不死化細胞の自然発生はまず認められない。
- そこでヒトパピローマウイルスのE6およびE7遺伝子を導入し、寿命を延長させる。これらの遺伝子では、細胞の分化能力は保持され、移植しても腫瘍を形成しない。すなわち形質転換はない。
- しかし、染色体異常を引き起こし、細胞の継代を重ねた場合には形質転換する可能性は否定できない。
- 骨髄間質細胞の寿命延長を目的に、遺伝子導入が行われている。その細胞に1つであるUBET7は、脂肪、神経、骨格筋への分化能力を保持し、細胞形態も比較的正常に近い。現在、腫瘍化の有無の確認を行っており、ヒト骨髄間質細胞の細胞数の確保に有効な手段と考えている。
◎ おわりに <骨・軟骨形成の項は割愛した>
- 〔骨髄間質細胞は〕多分化能を持つ細胞だけに、目的とした細胞以外に分化することに注意しなければならない。他方向への分化が決まった前駆細胞を含まないように幹細胞を純化する培養法、細胞採取法を開発することも必要になってくる。
- 移植細胞数を選択するほど細胞の確保が困難になると予想される。
- 長期継代した細胞は増殖能、分化能が低下することが分かっている。その解決のために、形質転換を生じさせず、分化能を維持した形での寿命延長法の開発が望まれる。